鈴木達治郎の発言 (外交・安全保障に関する調査会)
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○参考人(鈴木達治郎君) ありがとうございます。
このような機会を与えていただきましてありがとうございます。
私の方は、パワーポイントの資料をお手元に用意させていただきました。そこにタイトルが書いてありまして、私の今日のお話はこのタイトルを中心にお話ししたいと思います。
核抑止に依存しない安全保障政策への転換。そのために七つの提言を最後に出したいと思います。長崎を最後の被爆地にというメッセージですが、今まさに核兵器が使われるリスクが高くなっているという状況で、今こそこのメッセージを伝えたいということで今日お話をさせていただきたいと思います。
一ページ目、開けていただきますと、御存じの、よく御存じの終末時計ですね、今年の一月に、アメリカのブレティン・オブ・アトミック・サイエンティスト、原子力科学者会報というところが毎年出している終末まであと何分かというのが、今年は九十秒になってしまいました。戦後最悪の状況でありまして、この最大の理由がロシアのウクライナ侵攻と核の威嚇、これも既にお二人からもありましたけども、今、最も核使用のリスクが高くなっているということを警告しております。
この下に、そのほかにも、核軍縮、核不拡散の問題で重要な項目が書いてありますが、一つちょっとお二人から話がなかったものとしては、アメリカとロシアの近代化、核兵器の近代化計画、それから新兵器の配備、それから中国の核軍拡に加えて、イギリスが最も熱心であったんですけども、去年上限を、百八十だったのを二百六十発に引き上げるという発表をいたしまして、まさに今お二人から話がありましたように、核軍拡の時代に戻ってしまったというのが現状ではないかと。北朝鮮問題、インド、パキスタン、いろいろ書いてありますけども、非常に今厳しい状況にあるというのが一ページ目です。
二ページ目は、私ども長崎大学核兵器廃絶研究センターが毎年発表している核弾頭のポスターなんですけども、一目で核弾頭の数が分かるようなポスターになっておりますが、右手のグラフがアメリカの全米科学者連盟が出しているデータの推移を写したものですけども、御存じのとおり、冷戦時代の七万発から確かに大きく減ってはいるんですが、今後は増加するかもしれない。先ほどのように、核軍拡の時代に入っていますので、また増加の時代に入っているかもしれないということであります。
三ページ目見ていただきますと、先ほどの終末時計の推移を見たものですが、いろんな過去の国際条約ができますと終末時計の時間が余裕が出てくると、核実験や国際関係が緊張すると悪くなっていくんですが、先ほどの核兵器、核弾頭の数のグラフがどんどん減っていっていますけど、冷戦時代から、しかし、必ずしもそれが終末時計の時計が増えているわけではなくて、逆にどんどん悪化しているというのが現状であります。最近、特にここ数年は戦後最悪の事態を更新していくと、悪い状況になっているということですね。
それから、危機、例えば五三年、米ソ水爆実験、これ一番、二分で一番厳しかったですけれども、その直後、キューバ危機があったときに、その後に部分的核実験禁止条約が結ばれて危機を回避したということで、非常に危ない、国際関係が緊張したときこそむしろ核軍縮の機会であるということもこのグラフは示しているんではないかと思います。
次のページ行っていただきますと、ウクライナ侵攻の話も今出ましたが、一番心配しているのは、ウクライナの侵攻によって、核兵器を持っていた方が自国の防衛に役立つんではないかということを示したというふうに考えられる国が出てきたということですね。最初の方は、核兵器をウクライナが放棄したことで、NPTに参加したことで逆に今回守られなかったんじゃないか、持っている国の方が安全ではないか、そういう言説が回ってしまったということではないかと思います。
次のページ行っていただきますと、同じように北朝鮮もどんどん核兵器を増やしているわけですが、私が一番心配しているのは、昨年の九月八日の新しい核兵器政策の法制化ですけれども、この中で、これまでの先制不使用の政策を変えて先制使用を示唆したと。ロシアと非常によく似た表現になっているんですけれども、核兵器だけではなくてほかの通常兵器でもほかの大量破壊兵器でも、相手からの攻撃や攻撃が差し迫ったと判断された場合には核兵器を使うという新しい法律を作ったということで、この北朝鮮の核の脅威も、いつ核兵器が使われるか分からない状況になったと。
次のページは、それに対して、まあ当然ながら、日韓米の同盟関係にある国が拡大抑止力を強化するということを明らかにしております。これは、今までお二人のお話からもありましたように、当然、核軍拡の時代にどうやって相手の核を止めるかというときに拡大核抑止力を強化するということになるわけですが、この声明の中には、実は前半には、朝鮮半島の完全な非核化に対するコミットメントを再確認する、それから対話をするということも一応入ってはいるんですけれども、ここもまあ重要なところですが、拡大核抑止の強化ということが基本的な方針として大々的に打ち出されているために、これがますますこの緊張を、この地域の緊張を増すおそれがあるということですね。問題は、拡大核抑止、核抑止そのものが効くか、本当に効くのかということですね。それを確保できるのかと。
次のページめくっていただきますと、核抑止が成立する条件として、まあこれ、私、四つ挙げてはいるんですけれども、例えば、核兵器システムが必ず確実に機能する、信頼性が確保されている、これがないと核抑止は効かないんですけれども、例えばサイバー攻撃で核兵器システムがやられてしまいますと、相手がサイバー攻撃してきて、されてしまいますと、撃つ方は、相手の方は、核兵器システムが相手はもう信頼、動かないと分かっていれば先制攻撃をしてくるかもしれない。それから、お互いに相手の意思をちゃんと確認できているかどうか、これができていないとやはり抑止は効かない。それから、限定核戦争でとどまるというふうに思っていれば先に核兵器を撃ってくるかもしれない、三番目はそうですね。それから四番目が、通常兵器と核兵器の区別が付かなくなってしまいますと、核攻撃されれば必ず認識できるという前提がないと、これも核抑止が効かなくなる可能性があって、今、これら四つの状況がどんどん現状に近づいていると、現状はこうなってきているということで、核抑止が効かない場合はどうするんだということについての、この核抑止の神話ですね、核抑止に頼っていれば大丈夫だということで本当に大丈夫なのかということを考えなければいけない。
ということで、長崎大学の我々、核兵器廃絶研究センター、RECNAでは、次のページめくっていただきますと、アジア太平洋核軍縮・不拡散リーダーズネットワーク、APLNとノーチラス研究所と三者で共同研究を始めまして、もし北東アジアで核兵器使用されたらどうなるか、それを止めるにはどうしたらいいかという三年プロジェクトを始めました。
昨年の一月に、二十五の考えられる、十分に起こり得るケースというのを出しました。このときに、軍事、安全保障、あるいは朝鮮半島や核軍縮、危機管理の専門家に集まっていただいて、十分に起こり得るケースというのを考えて、二十五のケースを、事例を出しました。それから得られた示唆が次のページになるんですが、二十五の事例のうち約半分が誤解による先制使用、それから、ほかの問題に気を取られている間に発生してしまう、それからコミュニケーション不足でよって核兵器が使われてしまう。約半数の事例が意図せざる核兵器使用であったということですね。
それから、一旦核兵器が使われてしまうと、その後の展開を測るのが非常に難しい、予見が難しいと。制御不能な核戦争へと激化する可能性が十分にある。
それから、難しいのは、核兵器の種類も質も量も非常に多様化しているので、単純な核抑止論だけでは止まらないかもしれない。したがって、この核兵器をいつ使うか、使わざるかという意思決定も非常に難しくなっている。これも先ほどお話がありましたけれども、非常に抑止論が複雑化しているという先ほど表現でしたが、複雑化しているということは実際に核兵器の使用を止めることが難しくなっているということであります。
次のページめくっていただきますと、ということで、その安全保障の改善を待って核軍縮を始めるというのを待ってられない、このままだといつ核兵器が使われるか分からないという状況であるという認識から、これは国連の中満泉さんが「世界」に寄せられた原稿なんですが、論文なんですが、三つのことをおっしゃっておりまして、まずは、絶対に核兵器は使わないという規範を全員で確認することであると。それから、核兵器使用のリスクを低減するための具体的な議論を始めるべきだ。最後に、核不拡散条約の規範、これをきちんと守ることだと。核兵器は、始まってしまう、核戦争が始まってしまいますと人類を破滅させかねないという、こういう問題であるということを共通認識として取り組む必要があるということであります。
ということで、その次のページからは私の後半の七つの提言に入ります。次のページめくっていただきますと、まず、先ほど戸崎さんの方からもありましたが、外務省が主催された核軍縮の実質的な進展のための賢人会議の提言が出ておりまして、すばらしい提言が出ておりまして、その中の文章をちょっと読ませていただきますと、これは核兵器国も非核兵器国もみんな専門家が入って議論をした結果なんですが、核抑止についてこのように書かれています。ある環境下においては安定を促進する場合もあるとはいえ、長期的かつグローバルな安全保障の基礎としては危険なものである、したがって、全ての国はより良い長期的な解決策を模索しなければならない、すなわち核抑止に依存しない安全保障政策を構築していくことであるということで、今日、その七つの下に書いてある提言を一つ一つ説明させていただきます。
最初の三つまでは、あっ、四つかな、四つまではリスク低減の提言、リスク低減のための提言ですね。それから、五、六、七は、核抑止脱却を図って、いずれ核兵器廃絶に向かうための提言ということであります。
では、次のページめくっていただきます。
提言一と二は、先ほどからも何回か言われておりますが、核兵器は絶対使ってはならない国際規範を徹底するということであります。これもさっき引用がありましたが、去年の一月三日に五大核兵器国の首脳が共同声明を出した中に、核戦争に勝者はなく、核戦争は決して戦ってはならないという原則が入っております、表現が入っております。これを是非今回の広島サミットでも国際規範として打ち出していただきたい。
二番目は、これももう既にお二人から提言がありましたが、実際に核兵器を持っている国々の間で核兵器が利用されないためのリスク低減のための対話を始めること。ホットラインの確保はもちろんですが、政策の透明性確保や対話による核戦略の相互理解、それから、サイバー攻撃を禁止する、核兵器に対する、など、核リスク削減のための合意を図っていく、このために日本も、核の傘の国もそういう対話を進めるよう提言をすべきだと思います。
次のページお願いいたします。
三番目は、ここから安全保障における核兵器の役割低減ということですが、今、これから始まる核兵器のない世界に向けた国際賢人会議には是非これをテーマにしていただきたいと思います。
実はここで引用されているのは、もう二年前になりますか、衆議院の予算委員会で斉藤鉄夫議員の質問に答えた茂木外務大臣の国会答弁で、現実の安全保障上の脅威にどういう形で対応していくかということですが、安定的な形で核に頼らずそういうことができるというのが望ましいというふうに日本政府も考えているということでありますので、是非この政策を実現するために皆さんで検討していただきたいということであります。
そのうちの具体例として、一つ、次のページめくっていただきたいんですが、既にこれもお二人から御意見があったと思うんですけれども、先行不使用、いわゆるノー・ファースト・ユースと言われている政策ですね、あるいはアメリカでは唯一の目的政策とも呼ばれていますが、これが残念ながらまだ採用されていない。アメリカでは、前のオバマ政権、今回のバイデン政権で、この先行不使用政策あるいは唯一の目的政策を採用しようという議論があったんですが、残念ながら、主に同盟国、日本や韓国やNATOの国々の反対によって実現していないと。
これは、アメリカの有識者の方々の提言なんですけれども、アメリカの通常戦力を考えれば、拡大核抑止というのは核兵器だけではなくて通常戦力も考えているわけですが、核以外の攻撃を抑止するのはもう十分に米国の通常戦力で通用すると。したがって、核兵器を先行する必要はない。それから、もしアメリカがこの核兵器先行不使用政策を導入していない今の状況だと、ほかの国がやはり、じゃアメリカよりも核兵器の数少ないわけですから、先に使うオプションを重要視してしまうと。ということは核兵器の使用リスクは高まるということで、是非、核兵器使用のリスクを下げるためにも、アメリカの核先行不使用政策を日本政府が支持すると、これが大事ではないかということをこのアメリカの有識者の方々が提言されております。特に日本が被爆国であること考えますと、先行不使用の政策を是非支持していただきたいというふうに思います。
次は、次のページめくっていただきますと、核兵器の材料である核物質、この量が相変わらず増えているということであります。
これは、これもRECNAで毎年発表している核物質の量を広島型原爆と長崎型原爆に換算したらどれぐらいになるかということを示したものでありますが、分離プルトニウムが五百四十四トン、高濃縮ウランが千二百五十四トンで、合計すると十一万発分も核物質が存在していると。で、今年、昨年発表した数字で初めてこれ全体としては減少したんですが、この減少はほぼ全部高濃縮ウランの減少分で、残念ながら分離プルトニウムは依然増加しています。
次のページちょっとめくっていただきますと、分離プルトニウムの増加を見てみますと、この下の一番下の青い部分が軍事用のプルトニウムで、これはもう冷戦時代からほぼ増えてはいません。増えているのはグレーの部分ですね、民生用の原子力から出てくる分離プルトニウム、それから赤いところが日本の分離プルトニウムでありまして、この民生用、原子力発電所から出てくるプルトニウムを再処理して出てくるものですが、これを止める必要があると。これは、核セキュリティーの面からももちろん大事ですし、将来の核兵器のリスクを下げると、これ以上の核兵器を造らせないという意味でも、この民生用プルトニウムの増加を止める必要があると思います。
では、次のページお願いいたします。
それから、核抑止を乗り越える代替案として、先ほどもお話が出ました消極的安全保証についてお話ししたいんですが、消極的安全保証を国際法で決めている、取決めしているのは、この非核兵器地帯というものであります。非核兵器地帯には当然ながらその地域中に核兵器は置かないということと、消極的安全保証を条約として保障する、核兵器国は非核兵器国を攻撃しないということですね。そのための遵守の検証をするという機関があります。この非核兵器地帯の現象をちょっと、現状を見ていただきますと、次のページ見ていただきますと、既に南半球はほぼ非核兵器地帯で覆われておりまして、世界で百十四か国を対象になっております。むしろ、核の傘の国は世界では少数派であるということであります。
次のページお願いいたします。
実際に北東アジアでこの非核兵器地帯を促進しようということで、これはパグウォッシュ会議が二〇二一年、バイデン政権が誕生するときに提言をいろいろ出しているわけです。そのときの提言の趣旨なんですけれども、北朝鮮の段階的非核化を進めて、朝鮮半島をまず非核兵器地帯条約を目指し、日本も参加して北東アジア非核兵器地帯を設立するというのが提言になっております。当然ながら、地域の安全保障の枠組みをつくってやっていこうという提言をされています。既に実はこの北東アジア非核兵器地帯条約を推進する国際議員連盟が昨年八月八日に発足しておりますので、是非御関心のある方は参加していただきたいと思います。
次のページを見ますと、核軍縮と持続可能性の連携ということで、実は広島県が最近提言を出しておりまして、昨年末にG7サミットに向けた提言も首相に提出しております。この持続可能性との連携によって核問題の議論の場が広がる、ステークホルダーも広がるということで、大変重要な提言だと私は思っております。
次のページお願いいたします。
この橋渡しの役割を果たすのは、もう既にお二人からもかなりありましたので簡単にさせていただきます。特に、核兵器禁止条約への支持、支援、これを是非お願いしたいと思います。趣旨に賛同し、署名に努力するということをまず明言して、実際に署名、批准できなくても、被爆者支援や検証措置への貢献というTPNWへの貢献は日本でもできる、それから、もちろんオブザーバー参加もできるということで、これを是非橋渡し役としては実現していただきたい。
それで、最後のページめくっていただきますと、岸田首相が昨年、NPT会議で演説をされたのは非常に良かったと思います。その中で、この二点をおっしゃったことは非常に私は重要だと。核兵器不使用の継続の重要性と長崎を最後の被爆地にしなければならないということをおっしゃったことで、これを是非今日の私の提言に最後にしたいと思います。
どうもありがとうございました。