羽場久美子の発言 (外交・安全保障に関する調査会)

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○参考人(羽場久美子君) この度は、非常に貴重な参議院の外交・安全保障に関する調査会にお呼びいただき、誠に光栄に存じます。
 二十一世紀の戦争と平和と解決力、新国際秩序の構築ということこそ、冷戦終えん後ずっと考えてきたテーマでありますし、また、本日の会長の猪口邦子先生が「戦争と平和」の著書で考え続けてこられたテーマでもあります。国際政治学者として、最初に、大きな視点から、世界平和と新国際秩序、日本の役割を考えたいと思います。
 ちょうど今年の初めに、「100 Years of World Wars and Post-War Regional Collaboration: How to Create 'New World Order'?」という本を出しました。まさに新国際秩序をどうつくるかということで、先生方とともに考えていきたいと思います。
 本日の話は、大きく二つに分けて、今はどういう時代なのかということをデータと世界平和の観点から分析します。最も重要なことは、戦争を生まないメカニズムは何なのか、市民が犠牲にならないためにはどうしたらいいのかということを考えたいと思います。
 そして、米英の戦略、そしてアジアの戦略の違いをそれぞれ見た後、これらを理解した上で、新世界秩序をどのように平和と繁栄によって構築していけばいいのか、市民の犠牲や地球の荒廃を招かない形で新しい世界秩序を二十一世紀につくっていくにはどうしたらいいのかということを考えていきたいと思います。
 それでは、お手元に資料があると思いますので、こちらの方を御覧くださいませ。
 まず、データを四つ、五つ紹介したいと思うんですけれども、まず表の一の一は、アジアが今後急速な発展をしていくという自明のことが、アンガス・マディソンが二〇〇七年に、西暦ゼロ年、西暦一年から二〇三〇年までの長期にわたるGDPをメガコンピューターで打ち出したものです。これで見ると、実にインドと中国が西暦ゼロ年から一八二〇年まで十八世紀の間、世界の経済を引っ張っていっていたということが分かります。その後の欧米近代というのは二百年続くわけですけれども、その間に二つの大戦があり、大戦後に再び中国、インド、アジアの国々が成長していくということが示されています。これをアンガス・マディソンは、今のアジアの成長というのは奇跡ではない、過去に回帰しているのだという有名な言葉を残しました。
 次のページを御覧ください。
 これは現在のGDPとPPPベースのGDPですけれども、見ていただくように、現在のGDPでアメリカに次いで中国が世界第二位の地位に来ています。中国が日本を抜いたのは二〇一〇年ですけれども、その後の十三年間で日本の四倍に成長し、そしてインドが五位に上がってきているというような状況があります。赤いBRICSの国々が次々に十位以内に入ってきている。また、その横のPPPベースのGDPを見ていただきますと、既に、購買力平価のGDPは新興国に有利と言われていますが、これが十年後の名目GDPになると世銀やIMFが言ってから非常に注目されるようになりました。中国は二〇一四年にアメリカを抜き、インドは二〇一三年に日本を抜いて今や一位、三位の地位に来ています。
 表二を御覧ください。
 これは、デモグラフィーなんですけれども、世界人口の推移です。現在八十億人ぐらいいますが、二十一世紀の間に百億人を超え、二一〇〇年には百十億人弱になると言われていますが、そのうちの八割がアジア、アフリカ、黄色がアジア、赤がアフリカで、水色がラテンアメリカなんですね。そうすると、いわゆるAALA、アジア、アフリカ、ラテンアメリカを合わせて九割になる。米欧は一割を切る時代があと八十年で到来するということです。
 そしてさらに、パンデミックですけれども、次の二枚はパンデミックですけれど、二〇二〇年のコロナ禍、パンデミックの感染の死亡者数をファイナンシャル・タイムズが詳しく追っています。青が欧州、ネズミ色がアメリカで、当初の段階では実に九割が米欧、そして現在に至っても五割が米欧と言われています。パンデミックに非常に脆弱な欧州、アメリカということが見て取れると思います。
 表四は、現在のコロナ感染です。最近、日本や韓国が大きく上がってきておりまして、日本が六位、世界の中で六位、韓国が七位ということで、感染率が高まっています。中国は表に出てこないんですけれども、八億人近くが感染しているのではということも言われます。
 ただし、東アジアについて言えば、右側の死亡率ですが、死亡率が全く違います。米欧が主に一%から〇・五%なのに対して、日本は〇・二%、韓国は〇・一%、日本の半分ですね。つまり、欧州やアメリカの十分の一ないしは五分の一の死亡率ということで、これを山中、ノーベル賞の受賞の先生は、アジアやアフリカ起源のパンデミックであって、非常にその米欧に影響力が拡大していると言えるのではないかというふうに言われています。
 これらを見てくると、あと百年もしないうちにアジアの時代になる、それも世界の半分が飢えるとスーザン・ジョージが言った二十世紀のアジアではなくて、豊かさ、経済力、IT、AIなどを身に付けた豊かなアジアの時代がやってくるということだと思います。
 最後に、日本の変化なんですけれども、御存じのように、少子高齢化と労働者不足の中で、日本の人口は二〇六〇年には労働者人口が半減すると言われています。つまり、今の二十歳の若者たちが六十歳、老人になる頃、老人人口は四〇%、つまり一人が一人を見なければならない時代になってくる。
 こうした中で、入管法の改正や移民の受入れも始まりましたけれども、これらの流れを見てくると、私たちは、近隣国のアジアあるいは成長するアフリカと連携して、日本や欧州、先進国の少子高齢化にも対応していかなければならないという時代になりつつあります。これらについて、この間、ナショナリズムではなくて軍縮と地域協力、あるいはアジアの地域協力の重要性や欧州に学ぶ和解、敵との和解とエネルギーの共存ということがいかに重要なのかということを書きましたので、もしよろしければお使いください。寄贈させていただきました。
 次のページ、御覧ください。にもかかわらず今危機の時代が広がっているということが次のところです。
 アジア、特に日本ですけれども、近隣国との友好が不可欠であるにもかかわらず、この間、米中の経済対立から日本も、御存じのように、防衛費の増額や、それから武器の配備が始まっています。沖縄諸島にミサイル配備が開始され、沖縄タイムズや琉球新報では、様々な形でミサイル配備に反対する住民の方々の声が書かれています。沖縄は、御存じのように、歴史的にも、中国との関係で朝貢や冊封体制を続けてきて友好関係をつくってきた国々です。目と鼻の先にある中国に対してミサイルを配備することに対する危惧が住民の間に広がっています。
 また、日本列島の南部を含め、南西諸島と沖縄に地下の司令塔がこの一月に入って配備されることが決まりました。単に沖縄だけではなくて、大分や青森にも、日本全土に司令塔やミサイルが配備されるということで、住民の間に不安が広がってきています。
 今見たように、そのアジアの経済力とITや平和の力、あるいはパンデミックに強靱な力を持って二十一世紀を生きていくためには、アメリカとともに、アジアの国々との連携が極めて重要になってきているのだと思います。
 他方で、また危機ですけれども、目と鼻の先に北朝鮮の弾道ミサイルの危険が迫ってきています。今年に入り、の前に、二〇二二年の十一月の段階で、火星17は、ICBM、一万五千キロで、米国全土と欧州が射程に入るようなミサイルを開発し、繰り返し日本列島の周りで実験を繰り返しています。
 このような中で、御存じのように、東アジアの安全保障が全く新しい形で準備されてきています。それが十七ページのところです。東アジアの安全保障として、クアッド、クアッドプラス、そしてAUKUS、ファイブアイズのような動きが出てきています。
 クアッドは、御存じのように、日米豪印の四か国の戦略対話ということで安倍首相が提唱したと言われていますけれども、ひし形の形でアメリカと日本とインドとオーストラリアが結ぶ形となっています。そして、クアッドプラスというのは、それを補強する形で、韓国、ベトナム、ニュージーランド、そして台湾などがこれに協力する形となっています。
 ところが、インド、今回ちょうど訪問して先週帰ってきたところなんですけれども、インドの位置が非常に重要であり難しい位置にあって、クアッドに対しては比較的懐疑的で、インドはロシアとも軍事関係、経済関係を結び、そしてアジアの何よりも盟主ということで、独自に非同盟の関係を結ぼうとしています。
 そうした中で今始まってきているのが、AUKUSと、それからファイブアイズという動きです。これは、アジアの国を含まず、頭文字として、オーストラリア、アメリカ、イギリスの軍事情報三国同盟として四億人を超える同盟が結ばれ、そして、これにカナダとニュージーランドを含めてファイブアイズという諜報網も形成されています。
 この二つは、いわゆるアングロサクソン、米、英、豪、ニュージーランド、カナダの協力関係と言われているんですけれども、特徴的なのは、ヨーロッパ大陸が入っていない、そして日本や韓国の同盟国も除外されているということです。これはウィキリークスで同盟国や欧日にも盗聴器が仕掛けられたということも言われていますけれども、現在そうしたそのアングロサクソンの同盟関係が強まっている中でアジアがどういうふうにしていくかということがとても重要な意味を持ってくることになります。
 次のページを御覧ください。
 日本列島は、アジア大陸の端っこにくっつきました、アジア大陸から多くの歴史的な、あるいは宗教的な、文化的な、慣習的な影響を受けてきた地域でありますけれども、現在の枠組みの中では、三千キロにわたるフロントラインを形成するような形になっています。この小さくて長い三千キロのフロントラインを横に倒してみますと、単に中国だけではなくて、朝鮮半島それからロシアを含む非常に長大なフロントラインになっている。
 この細腕で、弁慶のように、もしロシアや北朝鮮や中国の三方から飛んでくるミサイルに対して一億二千五百万人の国民を守れるのかということで考えると、私たちにとって考え得ることは、ここにミサイルを配備するということではなくて、アジアともアメリカとも関係を強めていくブリッジになっていくことが極めて重要なのではないかと思います。
 右を見ていただけますでしょうか。
 もし東アジアという非常に狭い地域に、十数億人が住んでいるところで戦争が起こったらどうなるかという図ですけれども、最近、ノルウェー、スウェーデンの調査によれば、チェルノブイリから三十年以上たった後、ノルウェーやスウェーデンのトナカイの肉やキノコに放射能が出てきた、屠殺せざるを得ないような状況が出てきたというふうに言われています。
 この千二百キロをもし北朝鮮で核爆発が起こったらということで円を描いてみますと、実に驚愕の事実が出てきます。北朝鮮で起こっただけで日本列島のほぼ全域が入る。網走や沖縄を除くほぼ全域が入り、朝鮮半島はもちろんのこと、北は極東のロシアから、南は北京から上海などを含むほとんどの経済領域が壊滅してしまうことになります。これが東アジアの状況です。台湾や沖縄で有事が起こった場合には、ちょっと手で描いてみましたけれども、日本列島の半分あるいは中国が、経済圏が壊滅するような状況が起こってくる可能性があります。この狭い領域で戦争を起こすことが極めて危険なことであることが分かると思います。
 どうしたらよいのか、どうなっているのかというのを次に新興国のレベルで見てみたいと思うんですが、非常に興味深い動きがあります。アジア周辺大国の地域協力です。
 中国は、地域の協力関係を重視して、東ではなく西の方向、クアッドやAUKUSとの対抗を避けて、陸と海の経済投資とインフラ、IIといいますけれども、AIIBですけれども、地球を半周するような経済協力をインフラと経済投資で進めています。様々の問題も起こしていて、ギリシャの港を買い占めたりとかいうようなこともありますけれども、基本的には経済拡大、地域協力でやっていこうとしています。
 また、ロシアも同じように、ソ連邦が崩壊してから、スラブ・ユーラシア連合というものをつくり、欧州、アジア、アフリカに石油や天然ガスや穀物の供給で経済関係をつくろうとしている。
 更に興味深いことに、十四億のインドも、次のページなんですけれども、周辺協力を、地域協力を行おうとしています。二つの段階があり、注目しているんですけれども、SAARCという南アジア地域連合と、それからもう一つは、BIMSTECと呼ばれるベンガル湾多分野技術経済協力イニシアチブと言われるものです。この度、SAARCの大学に訪問して講演をしてきましたけれども、そこには、アフガニスタンやパキスタン、スリランカの子供たち、大学院生が学び、共にこの地域を発展させるために勉強していたことが非常に印象的でした。
 そして最後に、ASEANの地域協力ですけれども、ASEANの重層的なグッドガバナンスというのは世界的にも有名で、国内にも国境線をめぐり対立を持っていますが、経済それからパンデミック、さらには社会保障や政治関係も含めて、教育関係も含めて協力し、世界経済をリードするというような状況が言われています。日本もRCEPやCPTPPなどでこうしたアジアの経済協力関係に加わってきています。
 では、どうしたらいいのか、日本がどうしたらいいのかということを最後に考えて終わりにしたいと思います。
 以上のように見てくると、日本は防衛準備ではなくて、日本を中心とした平和のハブをつくってはどうか、特に沖縄、台湾を平和のハブにしていくということが極めて重要なのではないかと思います。
 東アジアで戦争をしないということを念頭に置きつつ、かつ、次のページを見ていただくと分かるように、沖縄は、中国やASEANや日本を含めて、あるいは韓国を含めて、実に人口約二十億人の巨大マーケットのセンターにあります。そして、歴史的にも、シャムや周りの国々と長い友好関係を持ち、発展してきました。この地域にミサイルを配備するのではなくて、アジアの平和と市場のセンターにしていくことが極めて求められているのではないでしょうか。
 中国とも日本とも韓国とも、そして東南アジア諸国とも連携をしてきた、一度もその琉球時代に軍事を持ったことがなかったという琉球王国の伝統を踏まえながら、この地域を平和の地にしていくことというのが極めて大事なのではないかと思います。
 きらびやかな文化、芸能の写真がありますけれども、首里城に東アジアの国連をというのが、今私たちが考えている新国際秩序、二十一世紀後半の新国際秩序です。沖縄は、多文化や多芸能、文化都市としての平和のセンターとして近隣国と友好、話合いを継続していく位置にあります。
 モデルはあります。ヨーロッパが冷戦の二極化で一番緊張が高まったときに、中立国のフィンランド・ヘルシンキでCSCE、欧州安全保障協力会議というものを打ち上げました。これは、東と西の国々が互いに対話をしながら問題を解決していくというカウンセル、会議の組織だったんですけれども、それが立ち上がって十五年間、冷戦が終えんし、この組織はオーガナイゼーション、機構に変容しました。まさに欧州の危機を乗り越えるための対話の組織、欧州の国連がCSCEとしてあったとすれば、アジアで今危機が高まる中で、むしろ米中のブリッジとしてCSCAないしは欧州の国連を日本がつくっていくことがとても大事なのだと思います。
 最後にですけれども、アジア、東アジアは世界の最強の六か国が集っています。アメリカ、ロシア、中国そして南北朝鮮と日本です。誰が戦争を止め、誰が平和をつくっていくことができるでしょうか。もし大国の指導者に任せることが困難であるとすれば、市民や自治体の側からそれをつくっていくことができるのではないかということで、今沖縄の玉城知事が既に自治体外交室を作成して、独自に米、中、韓国、台湾と対話を始めています。このような形で、平和の自主外交を市民からしていくことが大切なのではないかと思います。
 最後にまとめですけれども、二十一世紀はアジアの繁栄の時代になっています。脅威ではなくて、平和と軍縮をアジアから、沖縄や日本を平和のハブにし、東アジアの国連を市民からつくっていく。SDGs、誰一人取り残さないという状況を日本がリードしていくことがとても重要なのではないかと思っています。アジア人同士の戦争は、この狭い東アジアで行わない。米欧、ASEANと連帯して平和を学び、EUのように沖縄に東アジアの国連を設け、東アジアで是非ノーベル平和賞を実現したいと思います。
 以上です。御清聴ありがとうございました。

発言情報

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発言者: 羽場久美子

speaker_id: 28248

日付: 2023-02-22

院: 参議院

会議名: 外交・安全保障に関する調査会