吉川元偉の発言 (外交・安全保障に関する調査会)
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○参考人(吉川元偉君) ありがとうございます。
私、今日はここにお招きいただいて、楽しみにしてまいりました。お二人から非常にいいお話が聞けて、特に明石さん、この本、これは四版で、初版が出ているのは一九六五年ですよ。是非、お読みになってない方は、岩波新書「国際連合」。
私、今日は、ロシアのウクライナ侵攻という問題の国連との関係というか、国際社会との関係での本質は何か、日本は何をするべきか、それから安保理事会の改革、この三つお話ししようと思ったんですけど、この順番は、北岡先生、安保理の話、今、最後に非常にいいことを明石さんおっしゃった。この続きがあるんで、私、一番先にこの安保理の改革の話をしばらく、ちょっと十分掛からないと思いますけど、させていただきたいと思います。
お手元には、国連方式で発言メモというのを先に出して、実際このとおり読みませんから、御心配なく。これは、こういうことを言ったらどうかなと思って書いたんで、チェック・アゲンスト・デリバリーでお願いいたします。
安保理の改革ですけれども、国際社会で法的に拘束力のある決定を下せる機関は安保理しかありません。シリアの問題で決定ができないとか、北朝鮮でロシアと中国が結託してビートーを使ったとか、いろいろありますけれども、安保理の重要性というのは変わらないと思うんですね。カンボジアの成功の話は、今、明石当時の国連代表がお話しされていたように、成功例いっぱいありますね。北岡さんは無力だとおっしゃったけど、まあそうだけど、かなり実績も僕は上げているんじゃないかというふうに思います。
そこに常時席を占めて意思決定に参加すること、注意してこれ書いたんです、常時席を占めて意思決定に関与することは、日本の考えを反映できて、日本の安全保障にもつながって、国益に直結している問題だと思います。世界第三位の経済大国の責務だと思うんですね。他方、安保理事会に座っていろんな問題に、はい、駄目だとかいいとか言っていると、これは判断を求められるんで、時には当事国から嫌われます。何でこんなのに賛成するんだとか、何でこんなのに反対するんだとか。だけど、それがやっぱり日本の責務だと私は思います。
今度、岸田総理の平和のための岸田ビジョンの中に安保理改革入っているのは結構だと思います。是非検討いただきたいんですけど、国連憲章の改正を伴うということは、ハードル高いです。非常に高いことは既に北岡先生お話しされて、歴史的な話も、今お二人から、特に北岡先生からいろいろお話があったんで。
僕が見るところ、国連改革については、これまで三つのうねりがあった。一回目の、アジア、アフリカ諸国が独立して、加盟国が五十一から百十二とか三とかかなり増えたときに、最初のうねり。これ、でも簡単に、これは本当に簡単にできましたね、十一を十五に拡大する。
このときの注目するべきは常任理事国の対応だったんですね。北岡先生お話しされた。細かくここに書いておきましたけど、賛成した国は、五か国で唯一ですよ、中華民国。これは北京に代表権移る前です。中華民国が唯一賛成した。反対したのはソ連とフランス、二人とも反対。アメリカ、イギリスは棄権したんですね。
で、今度は第二段階で批准の段階になる。批准の段階になると、何と一番最初に批准したのはソ連なんです。総会で反対したソ連は賛成したわけ。で、イギリス、中国、フランス、反対したフランスも、早い段階でフランス賛成する。最後の最後はアメリカの上院ですね。三分の二が批准したことを見届けてアメリカは批准しているんです。
国連の中で安保理改革の話をすると、いや、P5が、常任理事国が拒否権持っているから、この案じゃ駄目だよ。で、僕は、それはそんなことはないだろう、歴史的に見たらソ連とフランスは反対しておいて批准したぞ、特にソ連は真っ先にしているじゃないか。これ、分かりますよね。今は中国を例に取ってもいいけど、アフリカの国がみんな賛成して、安保理を拡大して我々もその中にちゃんと入れてくれという案にロシアと中国反対できますか。僕はできないと思うのね。
だから、大事なことは、百二十九票を取って三分の二を取れば、三分の二を取れば、ハードル高いですけどね、P5がキーではない。これが一番目のポイントですね。
二回目のうねりのところで言いたいのは、日本にとってはこの問題はすごい大事な問題だったんですよ。一九七一年、世界に先駆けてですよ、安保理を拡大、安保理改革をしないといけない。もうこのときは既に拡大された後ですよ、十五か国になった後、愛知揆一外務大臣は安保理改革の必要性を訴えたんですよね。腹の中には日本も常任理事国になりたいというのはあったんだ、だけど言わない。
おっしゃったのは、九四年、河野洋平副総理兼外務大臣。僕はそのときの国連担当課長。彼の演説を書いた。起草、起草提案、起草案を書いて、常任理事国として責任を果たす用意があるということを河野さんおっしゃったんですね。その次の日の朝日新聞朝刊。今日持ってきた。一面トップですよ、一面トップで、常任理事国の責任を果たす用意はあり、同時に、武力不行使とも明言。朝日ですよ、これは。で、各紙トップに取り上げた。それは、それだけこの安全保障理事会の常任理事国というのが日本の国内の中で二十何年間もめているわけですよ、手挙げる、手挙げない。
今、さっき小泉総理大臣の逸話を北岡先生お話しされましたが、僕が課長のときに、当時、小泉厚生大臣終わられて、小泉衆議院議員は、安保理改革について外務省の独走を止める会会長だった。で、連立与党の中の重要なメンバーで、君らが勝手に走るのを俺は止めるということをおっしゃっていた。その心は、憲法改正が先だ、憲法改正をしないで常任理事国になると、日本は行使できない軍事行動をさせられるか分からないんじゃないか。まあ、私の当時の議論は、いや、それ待っていても国連改革の電車がどっか行っちゃうか分からないですよ、国内と国際が一緒に動くかどうかはこれタイミング違いますからね。まあ、これはちょっと別の話。
こういう慎重論はあったんですけれども、河野洋平外務大臣が意見表明された九四年、それで九四年のその頃に国連に安全保障理事会改革の作業部会というのができるんですね、九四年。もう今から三十年ですよ。私、その頃、国連政策課長。この作業部会をつくる会議に僕は行きました。九三年の冬ですね。この頃、これを仕切っていたのはインドとシンガポール。アジアの国々が途上国の代表権をどうやって増やすか。で、そこに行って、その当時の日経新聞の記者は、日本はこれを重視して国連の担当課長をよこしたなんて書いている。
この雰囲気がもう熱気にあふれているわけですね。ほとんど途上国、ヨーロッパいない、日本。で、そこでやろうとしているのは、この機会をつかまえる、この機会とは何かというと、冷戦が終わって、安保理は動き出してんだ、これまで無力だった安保理はこれからいろんな仕事ができるはずだ、ここに入ろう。もう既に、カンボジア、明石さんの活動はちょうど終わった頃ですよ。
この熱気と、東京に帰ったら、外務省の独走を止める会、呼び出して、何やってんだって。このギャップ、正直に言って非常に大きいギャップがあるわけですね。我々も、ちょっと僕らにも走らしてくれよと。もうヨーロッパ、じゃないや、アジアの国々、シンガポールですよ、シンガポールの代表部がこの作業部会のタームズ・オブ・レファレンスを僕らで議論するわけだもの。こういうのでね。だから、それはやっぱり外務大臣にお願いして、もっと前に行きましょうよと。これが九三年で、結局、この第二のうねりは最後は非同盟が反対して潰れます。
で、第三回目のうねりというのが、さっき北岡先生が詳細にお話しいただいた日本が失敗したというときですね。このときのベースになったのは、アナン国連事務総長が自分で選んだ賢人会議の案、A案、B案なんですね。で、この賢人会議には日本からもメンバーは入っています。緒方貞子、UNHCRがその一人なんですね。まあ緒方さんは亡くなられたから分からないけど、緒方先生はB案だったと思う。それは私の教え子としての感じ。
ともかく、今のポイントは、ウクライナがどういうふうに戦争終わるか、大事ですよ、ただ、この後、四回目のうねりを起こすべきだと思う。ほっといたって起きませんよ、風というのは自分がやらなきゃ。九二年のときは、一回目はインドですよ、アジア、アフリカが動かした二回目のうねりの真ん中に日本はいたんですよ。愛知揆一であり、河野洋平であり、いろんな歴代の日本の政治家は、安保理入ろう。まあ一番熱心だったのは中曽根康弘総理、これはもう間違いないですね。日本の国力は落ちていくんだ、発言権をちゃんと取っておこうと、G7でどれだけそのウィリアムズバーグ・サミットで自分はSS20の配置を止めたか、発言権なんだよというね。
ここから、ちょっと言いますと、これもお二人が話されたのと軌を一にするんですけども、まあ一点目は、日本は九〇年代から自他共に認める安保理改革の旗振りだった、これはもう。安保理の中での重要なのは、私自身の経験では、常時席を占めて発言権を持っている。実際に、明石さんがおっしゃった安保理の公式会場の横の非公式会場に行けば、そこでは拒否権持っているとか持っていない、関係ないですよ。意見を持っているかどうか、そこでそれをちゃんと案文にできるかどうかの起案能力を持っているかどうかですよ。
二〇一六年の一月に、一月五日に北朝鮮が核実験した。直ちに安保理が招集されて、そこで安保理の議長として遺憾表明、これから我々、具体的な措置をとるぞという発表しようと。日曜日かな、みんな朝集まって、アメリカの書いた紙をみんなで見る。ロシアはチュルキン、なかなかのすごいおっさんがいて、このチュルキン大使がさっさっさっと三つぐらいの修文をぱっぱっぱっと言うんですね。
で、僕はそこで、一番目の、二番目かな、彼が入れた、メジャーズをリスポンスに変えている、さらっと。いや、駄目だと、メジャーズは安全保障理事会の用語だよ、国連憲章の。措置。リスポンス、これ、何をやってもリスポンスになる。いや、リスポンス駄目だよ、メジャーズだよ。で、彼は、ふんと笑って、もうすぐ降りるわけですね。それは、出してみて、みんな黙っていたらリスポンスで通るか分からない。
拒否権のあるなしにかかわらず、理事国は安保理で対等に議論ができます。ただ、いなきゃ駄目よ。いなければ、アメリカに日本の大事な点はこれとこれです、やっておいてねみたいなね、腹話術で国益は守れませんよ。
私は、ですから、お二人と同じ意見ですね。まあ言い方はいろいろあると思いますけど、できるだけ任期の長い、任期の長い、私の名前はスタンディングメンバーなんだと、ノンパーマネントと言うと何かもう、何だ、セミパーマネントだとビジネスクラスみたいな感じに、ファーストじゃない、非常任、いや、準常任、準って、僕嫌だな。スタンディングメンバー、これは常時います、拒否権はないです。
今聞いたところ、北岡先生、明石代表、同じ意見。亡くなった大島賢三さんも国連大使を辞めてからは、常任理事国なかなか難しいぞ。僕も辞めてからはこのスタンディングメンバーがいいんじゃないかと言っているんですけどね。
ただ、これは私の実感としても、現場にいないと駄目ですよ、ただその冠だけもらっていても駄目ですよ。だって、日本が常任理事国になりました、拒否権使うって、どこで使うんですか。そんなものは要らないと思う。
ということで、ちょっと言いたかったことを、残って、本題の方というか、一番目の議題なんですけど、私は、この安保理の機能不全とウクライナの問題、特にこのウクライナの問題は非常に本質的な問題を抱えていると思うんですね。それは、ロシアがやっていることは、国際の平和維持という、常任理事国ですよ、大きな責任を託されている常任理事国が、ここから先が大事なんです、意図的に、一番ですね、重大な国際法違反を犯している。常任理事国が意図的に重大な違反を犯している。これが最大の問題で、例えばクウェートがイラクに侵略された、それで多国籍軍を出した。これはイラクという普通の国が重大な国際法違反を犯したケースですから、こういう場合には安保理事会で制裁決議をするとかですね、これ可能なんですね。ただ、常任理事国が違反を犯しても、拒否権持っているから何にもできないわけですね、その国に対しては。ここが根本的な違いだと思うんです。
ウクライナのゼレンスキー大統領は、去年、安保理とか日本の国会にもいらっしゃって、国連安保理からロシアを排除しろ、ロシアはその名前に値していないとアピールを行われましたけれども、ロシアの意に反してロシアを国連から除名することも安保理の議席を剥奪することもできません。これは無理です。
今起きていることは、僕は、国連憲章の想定外の事態だと思うんですよね。だから、想定外の事態なんで、国連自体では対応できない。もう何もできないわけですから。だから、できていることは、国連の外で経済制裁をする、軍事支援をする、こういうことをやっていますけれども、それを超えた措置はできていないというか、解答を持っていない。
今度の戦争がどういう終わり方をするかが非常に大きいと思うんですね。仮にロシアが、クリミア半島だけじゃなく、ドンバスだけじゃなくて、もっとですよ、仮に取って、そこで戦争がフリーズで、そこで停戦協定か何かやったら、重大な国際法違反を意図的に行った大国がそれを手に入れてしまうことになるじゃないですか。だから、この終わり方によってはロシア以外にも意図的に重大な国際法違反を犯す常任理事国が出てきますよ。というか、出てくるでしょう。出てくるかもしれない。
だから、この戦争がどう終わるかというのはウクライナとロシアの問題だけじゃ僕はないと思いますよ。国連のよって立っているそのところがもうぐらぐらぐらになっているわけですから。シリアとかイスラエルとかの問題は、ロシアが自分の関心があるからシリア問題を止める、アメリカはイスラエルを守りたいからイスラエル・パレスチナ問題については拒否権使うというのはありますけど、今度のは本質的に違う。ここの部分を僕はやっぱり考えないといけないと思います。
ただ、このロシア・ウクライナ問題について、国連憲章は一つの解答はくれているんですね。それは憲章五十一条、国連加盟国には個別的……あっ、もう終われと言われているので。国連加盟国に個別的及び集団的自衛権を認めておりますから、例えばアメリカがウクライナの要請によってEUと一緒に集団的自衛権を発動して戦争に参加する、可能ですよ。合法的。何ら問題ない。NATOに加盟するしない、関係ないですよね。参戦していない最大の理由は、核兵器を持っているロシアと戦争したら第三次世界大戦になるからなんですよね。
だから、大事なところは、安保理だけじゃなく、国際社会にとってこのウクライナがどう処理されるかというのが非常に大きい。そうすると、日本の取る政策というのはおのずと見えてくると思うんですね。日本は、ロシアによる他国の領土侵害という国際法違反に対して、これを断固批判して、それを行動で示して、ウクライナをできるだけ支援するということが大事だと思います。資金供与だけではなく、私は武器供与も検討するべきだと思います。
かつて湾岸戦争で、日本は増税までして膨大な資金協力をしましたが、人的貢献をしなかったので誰からも感謝されなかったという事実を想起しないといけません。また、日本自身がロシアとの間で北方領土問題を抱えている、ロシアが北方領土を占拠したままになっているということも忘れてはいけないと思うんですね。
その際、これからの話は、国連、残念ながらそんな強力じゃないですよ。国際世論の話は数字を入れてこの発言の中に入れておきましたけれども、これからは国連だけではなく、価値観を共有する国々との国際機関、グループ、この関係を強化、拡大するということが大事だと思います。典型的には、G7、OECD、IEA、クアッド、NATO。まあ日本がNATOに参加するということはないでしょうけれども、NATOがやっているようなことをどこまで日本自身ができるのか。このライク・マインデッド・カントリーズ、価値観を共有する国々との協力拡大という点では、課題はやっぱりASEANだと思いますね。ASEAN諸国との間でどういう関係を、突っ込んだ関係ができるのか。
G7については相対的な地位が低下しているという批判とかいろいろありますけれども、私は逆じゃないかと思っている。元々はフランスの反対があって、G7は政治は話さないというのがあったんですよ、昔ね。今や、ロシアに対する経済制裁から分かるように、政治問題に決定していますね。で、決定したことは直ちに実行する。非常に実効性があります。むしろ重要性は増していると思うので、ここからもう一度言いますけど、安保理に常時席を占められない日本には特に重要な場所になっています。今年は議長国だし、来月は広島サミットだし、是非指導力を発揮いただきたいです。
最後に一言だけ言いたいのは、こういういわゆる多国間の外交というのは、外交官が方々でちゃらちゃらやる話じゃないんですよ。これは日本の政治です。日本の政治家、政治の仕事なんですよね、政治を動員した仕事。安保理改革だって同じですよ。どれだけ国民がこの問題を日本の国益とくっつけて考えているか。多分、票にならないと思うな。だけど、やっぱり先生方には頑張っていただきたい。
積極的な多国間外交を展開するためには二つ必要ですね。強固な二国間関係、それぞれの国との関係。それから国内ですね、国内での、二国間というと割合分かりやすいんだけど、国連でどうする、このG7で何かするということが日本の話なんだと、国内政治だというところを強調して、終わりたいと思います。
ありがとうございました。