宮川眞喜雄の発言 (外交・安全保障に関する調査会)

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○参考人(宮川眞喜雄君) どうもありがとうございます。
 二十一世紀の戦争と平和と解決力、大変大きな重いテーマの下で、本日は持続的な防衛基盤整備の在り方についてというテーマでお話し申し上げますが、そもそも、なぜ外交官が防衛基盤だとか防衛装備だとかというテーマについて加わることになったのか、そんな議論に加わることになったのかという辺りのところから少し御説明申し上げたいと思いますが、世界は今新しい時代に入りつつある、その新しい戦略的な環境の中で日本の防衛基盤の整備が非常に重要だというところ、ここからお話し申し上げたいと思います。
 三ページのところからお話し申し上げますが、世界は今、第三の時代、戦後第三の時代に入りました。第一の時代は、御存じのとおり、米ソ冷戦の時代。第二の時代は、それが終わった後、ベルリンの壁が崩壊してそれが終わった後、グローバル協力の時代。この時代には、企業の方々もどこに行ってもいい、世界は自由だ、そういう資源のあるところ、人件費の安いところへ行って大いに活動された。しかし、新しい時代は、また難しい時代、対立の時代に向かっているということだと思います。
 アメリカの戦略的な方向転換は、そこに書きましたように、二〇一六年あるいは一七年の頃から、中国の危険性を認識したアメリカ政府、戦略的な基本方針を転換して、米中の貿易戦争が最初の一歩となりました。しかし、世界の対中国、中国に対する経済的な依存度は依然として高いので、米ソの冷戦の深刻な対立のような時代にはならないのではないかという観測もありましたが、しかし、昨年のロシアのウクライナ侵略があり、中国がロシアを支援し、新しい対立の時代、これは決定付けられた。御存じのとおり、もはやグローバル協力の時代に戻ることはないだろう。
 四ページに、新たなこの対立の時代の特徴は何かというところなんですが、冷戦で終わるのか、あるいは熱戦に発展するのか、まだ予想が付かないということが第一。
 第二は、対立の主軸は米ソじゃない、米中で、アメリカにとって、アフガンの戦争もウクライナの戦争でさえ二次的な意味しかない、中国のことが第一。
 第三に、米ソの冷戦期の対立のメインシアターは欧州でありましたけれども、新しい対立のフロントラインは欧州じゃなく、ここです、東アジアであり、極東であり、西太平洋。
 その米ソの対立の時代、第四に、東西の貿易は元々希薄でありましたけれど、新しい対立の時代、中国も含めて、随分経済的な相互依存度が高まってきていますけど、経済制裁がどんどん長期化するに従って恐らく分断が深化して、進んでいって、この経済対立も深まっていくんだろうと思われます。
 戦略空間は、既に陸海空だけではなく宇宙に広がっているし、電子空間の中に忍び込んでいる。
 防衛装備も軍事技術もデュアルユースが主流で、そういう意味で、軍事と商業を分けることができなくなってきている。安全保障に、それだけに官民の連携が必要な時代が来ている。
 無人の兵器が前線で対峙すると、人と人が対峙すればその戦闘に入るかどうかにちゅうちょしますけれど、機械はちゅうちょしないので、戦時と平時の仕切りがすぐに曖昧になる。防衛と攻撃の区別も不明瞭になる。専守防衛という言葉もそのうち意味をなさなくなる時代が来るだろうと思います。
 ハイブリッド戦争という言葉がよく言われますが、あらゆる国家の活動や資産、それが経済であれ技術であれ法律であれ何であれ、攻撃や防御の道具になって、輸送網や電力網、土地、データ、こんなもの全てが戦争の対象になってくる。こういう時代が今来ているということです。
 次のページ、五ページに、ウクライナの戦争の教訓ですけれど、これは前回のこちらの調査会でもお話になっておられたと聞きますが、安保理の常任理事国が重大な国際法違反を行って平和を破壊しておる。国連を含めた国際機関にはこれを制止する制度的な能力がない、そういうことが実証された。
 中国とロシア、双方安保理常任理事国ですが、この両国が天井のない協力をする。中国は一方的に現状変更の意図を隠さなくなっている。我が国は、そういう意味で、安全保障の力量を拡大強化する必要に迫られているということだと思います。
 自衛の能力を拡大するためには、先ほど言いましたように、ハイブリッド戦争が起こる可能性があることを想定すると、様々な国力、経済であれ技術であれサイバーであれ、の強化が必要で、同時に、国連、国際機関が機能しないとなれば、個別的あるいは集団的な自衛の能力を強化する必要がある。同志国との連携が必要だ。
 自ら戦う意思と能力を実践してこそ、これがウクライナ戦争の非常に重い教訓ですけれど、ウクライナはあのようにして自ら戦っている、その戦いをしているからこそ友邦は様々な支援をしてくれる、経済であれ軍事であれ外交であれ。自ら戦わない国や国民の面倒などなかなか見てくれない。これがウクライナ戦争の重い教訓だと思います。
 次のページの六ページに、バランス・オブ・パワーの話をちょっと書きました。これは十九世紀の欧州で広まった平和構築のシステムですが、諸国が総意として合意した安全保障の体制ではありません。平和構築というよりも、相手を凌駕しようとして、まあ合従連衡して各々の行動の結果から得られた言わば偶然の平和といいますか、結果論的な平和なんですけれど。
 しかし、このモデル、第一次大戦で欠陥が露呈した結果、国際連盟を含めた集団安全保障体制に発展していくわけです。
 しかし、その期待に反して、多くの人々の期待に反して集団的安全保障体制は機能不全になっていて、特に昨今、そのように思われる。そこで、またバランス・オブ・パワーの効用が改めて考えられている。
 このバランス・オブ・パワーをつくっていくためには自らの努力が必要である。おぼつかない原則に依存するより、これは現実的で実践的で一定の力学の作用がある。こういう意味で、これもまた一つの、平和を守るためのつまりシステムとして認識していく必要があるのではないかと思われます。
 高坂正堯先生という方がいらっしゃいましたが、一九九〇年代の最初の頃、よく議論をさせていただきました。冷戦後の世界についてどうですかというのには、宮川さん、決して楽観してはいけないぞと言っておられたのを懐かしく回顧します。
 もう一つ、ここに書きましたX論文というのは、御存じのとおり、ジョージ・ケナンというアメリカの外交官であり学者さんが、この最初の米ソの冷戦が始まった年にフォーリン・アフェアーズに匿名で書いた論文です。この論文で、彼は、ソ連との冷戦に対して何をしないといけないのかは三つだと。一つは、相手の意図を楽観してはいかぬ。意図というのは、まあよく言われます、脅威は意図とそれから実力との積である。意図はなかなか見えない、だけどその見えない意図を楽観してはいけないぞと、第一に。第二に、焦らずに腰を据えて対峙をし続ける必要がある、まあ長期戦だと。これからの新しい対立の時代も恐らく長期戦でしょう。そして、デモクラシーの強みをちゃんとあかし続ける必要がある。共産主義は特に、資本主義は必ず腐敗すると言いますけど、いや、そうじゃないんだということをよく認識していく必要がある、こういうことを言った。これが恐らくこれからの新しい対立の時代に向けての我々の決意なり確信であるべきだろうと思います。
 その七ページに、実は昨年の末に防衛三文書というのが出ました。この出ました防衛三原則に、非常にきちっといろんなことが書かれております。特に、国家安全保障戦略には、戦略環境に関する評価、それから我が国の政策目標はどうであるべきかというのが書いてあります。戦略環境は、戦後最も厳しく複雑な安全保障環境であるという認識、我が国の周辺では軍備増強が急速に進展しているという認識、これらのことが書いてある。そして、それに対する我が国の政策目標ですけど、ここはなかなか厳しいことが書いてありまして、主権と独立、それから外交や国内の政策を自主的に決定できる国であり続ける、さらには、有事の発生を抑止、脅威が及ぶ場合にこれを排除する、さらにもう一つ、経済が成長できる国際環境を主体的に確保する、こういうことがこの文書に書かれていて、これがこれからの我が国の政策になっていくということなんです。ただ、これをどうやって実現するかということが恐らく問題でしょう。
 もう一つ、三文書の二つ目の国家防衛戦略には、ここに書きましたとおり、様々な評価と政策目標を更に具体的に明記されています。ちょっと全部読むと時間がないので、例えば三番目のところ、我が国に対する侵攻には我が国が主たる責任を持って対処する、我が国自身の防衛力を抜本的に強化する。第四のところに、自国での装備品の開発、生産、調達を安定的に確保する、新しい戦いに必要な力強く持続的な、持続可能な防衛産業の構築をする、先端技術の防衛装備品への取組をする、販路の拡大もする。さらに、防衛装備移転三原則とその運用指針を始めとする諸制度を見直す、装備品の移転の促進のための基金も創設する、こういうことが書いてあります。こういうことが本当に実現するかどうか、これはこれからの政府の恐らく役割だろうと思います。
 次のページに行きますと、ハイブリッド戦争についてちょっと書いておきました。ハイブリッド戦争というのは、先ほど申しましたように、国家の様々な活動を全て兵器化していこうという、そういう試みです。二十年ほど前に中国の軍人が超限戦という言葉で提唱したものと同じでありますが、中国は特に、ゲリラ戦、毛沢東のゲリラ戦もそうでした、民間人と軍人との間に差別を付けないようにして、分からないようにして攻撃をしたりしてくる、これが恐らく強いんだろうということ、それをこの新しい時代においても実行しようとしているんだろうと思います。そういう意味では、経済も技術も法律だって宣伝だって心理だって、あらゆるものをこの攻撃、防御の道具にしてこようとしている、これがハイブリッド戦。
 次のページに行っていただきますと、そういう意味で、この経済技術戦といいますか、経済力そのものも国家の安全保障の大きな力になる。この様々な活動、経済活動、市場を使うこと、戦略的な重要産業を興すこと、基幹インフラを強靱化すること、これら全部防衛基盤です。防衛基盤の中にカテゴライズされるべきものだと思います。投資であれ、技術者に対する支援であれ、あるいはまた情報を管理することであれ。
 その一番最後に、防衛装備及び技術開発を強化すること、潤沢な予算を確保してこれを強化すること、これも言わば経済安全保障といいますか、ハイブリッド戦の一部。そういう意味で、今日の本題であります防衛装備を強化することもこのハイブリッド戦に備えることの一つだという、そういうことだと思います。
 次のページに行きますと、防衛装備の国産化というのがなぜ重要であるかということについて言及しておきました。六つ、私はここで挙げております。
 第一に、防衛装備品の技術を国内で開発、生産するというこの能力を喪失すると、他国から干渉や制約を受ける、自衛力が危うくなる、そういう意味で国家安全保障の根幹だと、これはもう皆さん御承知のとおりだと思います。
 第二に、日本には国営の武器製造工場がありませんので、そういう日本では装備品の生産は民間企業に全面的に依存している。そういう意味で、大手の企業が縮小、撤退すれば、中小の企業はもう生死の問題が起こって、熟練工や技術者は離散していって問題国に引き抜かれていく。こういう状況があるので、これを是非直していかないといけないということだと思います。
 コロナのときに、サプライチェーンが断絶してえらい困ったということがありました。装備品の問題でサプライチェーンが断絶すると、それは国家の防衛に危険を生じさせる。戦略物資や防衛装備の生産基盤を国内に確保し、物づくりができるような中小企業群を国内に確保することが大事。
 第四に、この装備品の開発、生産というのはやはり研究開発基盤が大事。生産ラインの確保にしても技術者の養成にしても、危機が迫ってからでは遅い。早急な体制づくりが必要だと思います。
 次のページに五つ目書きましたが、先ほどもちょっと申しましたが、軍民の境界が希薄になっているということなので、防衛のために官民の連携が不可欠な時代が来ている。
 六つ目に、これからは一国で防衛するだけではなく友邦と協力して防衛しないといけないという、そういう環境の中では、同盟国や友邦への装備品の提供、これは防衛協力の非常に有効な手段でありまして、信頼される防衛協力の相手とみなしてもらうためにも重要な能力だろうと思います。外交上も有効なカードであります。我々も、そういう意味で、外務省もこの問題に非常に強い関心を持っています。
 次の十二のページに、十年前に、先ほど三文書のお話ししましたが、十年前も同じような政府の三文書ができております。しかし、その中で、国家安全保障戦略もあり、防衛計画の大綱もあり、さらには防衛生産の技術基盤戦略もあったんですけれど、そこにもたくさん書いてあります、書いてあるんですけれど、しかし、実際には過去十年、むしろ状況は悪化していて、政府は、国産化、防衛装備の国産化の方針を放棄したし、調達に一般競争入札を導入したし、コーポレートガバナンス・コードはますますこの防衛装備を生産する企業にとっては首を絞めているし、予算は決して増えていなかった。これが過去十年であります。
 こういうところから、どのようにすればこれから防衛装備の生産活動を活発化していくことができるのか、これがテーマであります。
 次の十三ページから、七つの項目を挙げて、防衛装備品、技術の国産、開発が進展しない理由とその対策について述べています。
 あと二分しかないのでちょっと急いでまいりますが、第一に、装備品に対する研究開発費が非常に低い。韓国の四分の一であります。もう言うまでもなく、技術開発が遅れると装備品のレベルも低くなる。中国やロシアや北朝鮮の動きを考えると、我が国はできるだけ早くこれに対処しないと水を空けられてしまう。今年度の予算増で三割増しにしていただきましたが、しかし、なお低位です。研究開発費二千億円強、韓国は既にもう五千億円のレベルです。
 第二に、この技術のレベル、これは装備品の問題、生産の技術を高めることができないだけではなくて、民間の装備品以外でも技術レベルが下がってきている、開発力が低下しているという問題があります。
 先端技術はもう世界競争の時代に入っていて、日本の民生技術開発速度は落ちて、世界の技術順位をどんどん下げていて、電子通信産業はハードウエア技術を放棄している、材料や電子デバイスの技術も低下している、こういったことになっている。
 しかし、政府が防衛生産・技術基盤を強化すれば、成果は民生技術に転用されていく、デュアルユースですから。産業技術力を牽引して、それが産業全般への波及効果もある。企業の支援をすれば、研究開発が改善して、加速する産業政策、そういう意味で、その産業政策を加速する必要があるんではないか。
 アメリカの国防総省のDARPAのことは皆さんもう御存じのとおりですから申し上げませんが、我が国にも類似の組織が有用で、大学の工学部系の研究を国家安全保障に活用できるように、総合科学技術・イノベーション会議に安全保障分野を拡大するとか、産官学の協力活動を可能にする等、整備をいろいろ進めていただきたいと思います。
 第三に、先ほどちょっと申しましたが、日本は数年前に国産化、装備品の国産化の方針を放棄しました。同時に、競争政策の原理を防衛装備品の調達に適用しております。この結果、何が起こっているか。実は、WTOでもOECDでも安全保障というのはルールの例外なんです。そういうわけで、欧米諸国はこのルール例外を最大限に活用していますが、日本はその趨勢に逆行しているということなんです。
 日本の企業は輸出が、防衛産業、輸出ができない、そういう意味で市場が狭い、よってコストが高い。外国企業は、海外への移転は自由、そういう意味で市場は広い、コストがだから下げられる。その二つを日本の装備品の市場で自由競争させると結果は明らかで、これを続けていくと、日本の防衛産業は必ずその開発機会を失って技術的蓄積ができなくなって、最後には自ら産業基盤を弱体化させてしまう、この問題があります。これが三つ。
 四つ目、官民の協力体制が重要だということは先ほど申しました。ところが、この十六ページの②のところに書きましたが、原価監査付契約というのがあって、これは実際に造って、企業が造られてコストがどんどん下げられて、企業努力で要は収入が増えた場合には、増えた部分は元々決められている利益率から超えた部分を国に返還しなさいということになっているのに、逆にコストが増加して損が出た場合は、それは企業で勝手に負担しろと、こういう制度がある。それは、積年の企業、民間企業の不満を誘発して、官民協力の意欲を著しくそいでいるというふうに思います。
 こういったものに加えて、ガバナンスが強化されることに、一般競争入札が広まるとガバナンスが強化されて、民間の技術者さんは官の技術者さんに会えない。民間の技術者さんはどんな防衛装備を造ってもらいたいのか官から聞きたいんですけど、これは聞けない。官の人たちは民間企業にどんな装備があるのか分からないから、お互いに手探り状態になってどんどん縮小していくという、こういう問題があります。
 あと三つなので、ちょっとやらせてください。

発言情報

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発言者: 宮川眞喜雄

speaker_id: 10799

日付: 2023-04-26

院: 参議院

会議名: 外交・安全保障に関する調査会