森本敏の発言 (外交・安全保障に関する調査会)

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○参考人(森本敏君) 本日、参考人として所見を述べる機会が与えられたことについて、お礼を申し上げたいと思います。
 宮川大使の方から非常に包括的な御説明をいただいて、大体私が申し上げようとしていたこと、ほとんどカバーしていただいたので、私は問題を絞って、大きく分けると、つまり、今、この今次通常国会で国会に提出されている、いわゆる防衛産業基盤育成のための法律、それから、これを、何のためにこの法律を上げているかというと、その後に控えた、いわゆる防衛装備移転の原則ではなくて、実は運用方針なのですが、運用方針をどのように実効性のあるものにするかという政策的な問題がこの後に控えていて、双方は非常に深く関連しているわけで、この二つの問題をどのように考えればよいのかということについてお話をしたいわけです。
 その前に、それでは一体、今どきどうしてこういう問題が起きてきたのかということですが、私は明らかに背景が二つあると思います。
 一つは、経済安全保障推進法というのが出て、この推進法の中に防衛分野が含まれていない。したがって、ここから下りてくる研究開発その他の予算を防衛産業は活用することが、十分に活用することができないので、したがって、防衛の分野に所属する防衛産業、ここが抱えている現実の問題を解決していくために、別途防衛産業を、助けるわけではありませんが、どのようにすれば基盤を強くすることができるのかということを、別の側面から法案を作ってこれを実行し、防衛産業という言わば日本の防衛力の基盤的な力、これをもう一度つくり直す、このために、どういう法案を作り、どういうふうに国民に説明できるのか、これがこの法案を上げた第一の理由です。
 したがって、いわゆる戦略三文書から出てきたという、必ずしもそういうことではなくて、経済安全保障の中から、入っていなかった、つまり、排除されたわけではないんですけれども、含まれていなかった防衛産業そのものを別途の法律で救うためにどうしたらいいかという、こういう発想がこの法案の背後にあると、これが第一です。
 第二は、ウクライナ戦争ももちろんそうですが、それ以外に、日本がイギリス、イタリアとともに共同開発をしている次期戦闘機、こういうものを念頭に置くと、これから、ウクライナでは、必ずしもリーサルな防衛装備をウクライナ軍に提供をすることができなかったわけですが、新しいコンセプトを採用して、それ以上のことが何かできないのか、できるとすればどのような運用方針を触り、改正し、そしてどこまで国民の皆さんにこれが納得していただけるのか。
 この二つの問題、実は絡んでいるわけですが、この二つの問題を速やかに、できればG7のサミットの前に完結したいという考え方があって法案が上がり、政策の見直しが行われるということになったわけで、どのような環境条件の中からこの問題が出てきたかということは、まずしっかり我々として認識した上でこの議論をしないといけないということなのではないかと思います。
 私はたくさんの資料を作っていないんですが、私が申し上げたいと思うポイントだけはお配りしてあるレジュメの中に書いてあるんですが、結論は一の(一)のところに書いてあるんですが、国にとって防衛産業というのは防衛力そのものでありますので、特にその中で、非常にクリティカルな問題であるサプライチェーン、今、宮川大使のお話のように、やっぱりサプライチェーンというのは非常に大事で、これをどのようにして維持確保していくかということを法律を通じて実効性のあるものにしないといけないと。同時に、今申し上げたように、装備移転、これを法律を通すことによってよりもっと進めることができるのかできないのかと。
 それからもう一つは、やはり日本の防衛産業というのは裾野が非常に広いわけで、艦船、航空機などに関わっている産業は一千何百社、場合によっては二千社に近いわけでありますが、しかし、ほとんどこの防衛産業を中心になって賄っているのはプライムであります。プライムの下にベンダーがある。つまり、下請の小さな、本当に町工場というような小さな企業がひっついていて、このベンダーは、その装備品の主体、本体の開発、設計には関わることができないわけです。しかしながら、そのことは何を意味するかというと、自分たちがどういう防衛産業でなければならないのかということを、プライムを通じてしか申し述べたり、あるいは意見を述べたり、あるいは政策として考える余地がないと。
 はっきり申し上げると、ベンダーはプライムから来たオーダーをできるだけ安価に速やかに解決していくかということにその営業のほとんどを、営業努力のほとんどを費やしているという状況にありますので、例えば、先月、幕張で三日間、ちょうど一か月前になりますが、防衛装備の展示をやりました。宮川大使と私も準備のための委員で、全期間そこにいましたが、日本の企業でそこに展示しようとして実際にお店を開いて展示をした会社というのは、前回、二年前のが六十社プラス、今回はやっと八十社になりましたが、何千という会社の中でたったそれだけぐらいしか自分たちの造っているものを諸外国に売れそうにないということなので。
 これはどういう意味かというと、相変わらず日本は非常に細かい小さなベンダーで全体が成り立っていて、プライムが実際の防衛産業の運営を賄っていて、そして、アメリカやイギリスのように、防衛産業が再編、統合を図って大きな、例えばロッキード・マーチンのように、会社の八割ぐらいが軍需産業だというような会社になるということが現実の問題としてできないわけです。
 どうしてかというと、プライムでさえ、自分の会社で防衛産業のところというのは会社の全体の本当に一〇%以下というか、全体の会社の機能でその一〇%が動いているわけで、その一〇%を引き抜いてどこかと合併したらどうにかなるのかというと、ならないのです。ならないなら造れないのです。
 したがって、はっきり申し上げると、日本の防衛産業の再編、統合、併合というのはちょっと現実的でないと。そういう現実的でない現象の中で、どのようにして防衛産業を力強いというか力のあるものにしていくのかと、これが今回の法案の最も大切な目標であり、目的であったのではないかと思います。
 かかる観点から、まず、この法案がどういう考え方に立ってできていて、どこに問題があるのかということを冒頭に申し述べて、そして、私が本論として一番述べたい防衛装備移転の問題について、残りの時間を使ってお話ししてみたいと思います。
 最初に、言うまでもなく、日本の防衛産業というのは、安倍政権が始まるまでの間、それまでの間、防衛費がずうっと下がってきて、結局は発注がない。その主たる理由も、今、宮川大使のおっしゃったように、FMSでほとんど完成品をアメリカから買うと。かつてのように、ラ国というんですか、ライセンス国産で日本の企業を使って生産ができるというような状態ではなく、かなり高額な武器を言い値で買ってきて、それでは日本の防衛産業にオーダーが下りないわけですから、当然利益にもならないと。その結果として、利益率というのは非常に低いレベルに抑えられている。こういう問題に対してどのようにこの問題を解決していけばよいのかということが、これが第一の課題だと思います。さっき申し上げたように、プライムに依存してきたベンダーが自分たちで長期ビジョンを作ることができずに、結局は企業倒産あるいは防衛産業から撤退していくという傾向がこの数年の間続いてきました。
 さらに、装備移転が低調で、この一年間で海外に出せた装備品はフィリピンにレーダーが出せただけということです。韓国は、この一年間に円でいうと二兆四千億円という膨大な軍事品を海外に移転している。これはちょっと制度が違うからもあるんですが、しかし、その何分の一でも日本ができるようにするのにはどうしたらよいのかということはやっぱり考えないといけないので、この問題については後にお話しするとして、こういうことがあって、結局、日本の防衛産業に利益が落ちない、そして、その結果として新規の投資もできない、サプライチェーンも低下していく、技術の優位が失われていく、レピュテーションのリスクもある。これでは日本の防衛産業は強くならないのはもう理の当然ということであると思います。
 その結果、いろんな問題が出てきて、今回の法案は、この問題の中で最も深刻な問題についてのみ、経済安全保障推進法の中でカバーされていない分野について新たな法案の中で救っていこうとして法案ができたわけであります。完璧なものではもちろんないと思いますが、こういう日本の戦後の法制、戦後の防衛装備の法制の中では画期的な意味を持っていると思います。
 一番最初に作って、これをどうやって運用し、良いものにしていくかというのはこれから我々の努力でありますが、そのポイントになるのは、この紙の三のところに五項目書いてあります。お読みいただければもう歴然と分かるので、余り細かい説明を必要としないと思いますが、特にユニークなのは、この(二)に書いてあるように、製造工程の効率化あるいは必要に応じて事業の承継というか継承というものを進めると。それから、3DプリンターだとかAIというのを導入してリスクを低減するための設備投資を進めるために必要な基金を出しましょうということです。
 それから、例えば防衛装備品を造って移転するときにどうしてもスペックダウンをしないといけないと、そういう予算はないという場合に、装備移転をしやすいようにスペックダウンに係る経費は国が出します、あるいは企業が後継者が見付からない、あるいは相当な資産を投入しないと設備ができないといったものについては、国が基金を提供して、これをまず国が実際の施設や装備品というものをマネージ、保有して、そしてその運営は民間に任せるといった、いろいろ中小の企業では到底やっていけない財政的な支援を、この法律を通じて基金を使って救っていくということを考えたわけであります。それ以外に、四のところに書いてございますように、利益率を上げること、あるいは随意契約を進めることなどが書いてあります。
 いずれにせよ、この法案は国会で御審議いただいているとおりでありますけれども、一番最初の法案が完璧なものであると私は思っておりません。やってみないと分からないところがあり、あるいはこの法案に基づいて考えていたほどは余り資金がビジネスのところに流れなかったというような失望感を招くようなことも起こるかもしれません。しかし、いずれにしても、問題があればこれをフィードバックして、できるだけこの法案が日本の防衛産業の活性化に活用できるような法案にしていく努力、これが我々の大きな努力を傾注する方向なのではないかと思います。
 時間がないので、最後に、装備品の移転というのをどうやって進めるかですが、これは三文書の中に書いてございますが、装備移転の原則を触るというか変えるということではありません。今日の報道、昨日のテレビなんかを見ていますと、防衛装備移転三原則の見直しとかというのが書いてありますが、この三原則の見直しをするということでは必ずしもありません。三原則は維持するんですが、防衛装備移転のやり方などについて検討し、できれば運用指針、これを、今の運用指針はかなり狭い範囲のものになって決まっているので、もう少し広範な分野について装備移転ができるように見直した。
 結果として何を目標にしているかということですが、非常に乱暴なやり方ですが、この五の二のところに、こういうことはやってもいいんじゃないかということが例示して書いてあります。
 一つは、直接リーサルに当たらないようなものというのは、どこの国とは言いませんが、例えばウクライナを念頭に置いて、火器とか弾薬、あるいは警戒監視用のレーダー、無人の偵察機、あるいは対空ミサイル、地雷探知機など、提供できる分野のものがあるのではないか。
 それからもう一つは、ほかの国、韓国なんかもやっていますが、突き出し移転といって、どこかの国に、その国の要請に応じて装備品あるいは経費あるいは経済支援を出して、その国がその国の持っておるリーサルな兵器をウクライナに提供するという突き出しの、突き出して移転していくというやり方で装備移転を行うということであります。
 最後に私は申し上げたいのは、さっき申し上げたように、装備移転のフェアをやりましたが、今後、日本が主催するこの種の装備フェアの会場に各企業が出展したり、外国から人を招いたり、あるいは外国からいろいろな装備品の展示をしてもらうときに、ほかの国がやっている装備展示のやり方を少しまねて、防衛費の中から経費を分担して国が装備移転の行事を賄っていくということにする必要があるのではないかと思います。
 このような一連の装備移転の原則を触る最後の目的は、最後の行に書いてあるように、現在開発中のFXを日英伊で開発に成功した後、これを第三国に移転するというのは今の原則ではかなり厳しい状況なので、これを可能にするための新しい枠組みを検討しておく必要があり、これに基づいて必要な協定、条約等を関係国と結んでいく必要があるというようなことを今後考える必要があるということだろうと思います。
 以上で終わります。ありがとうございます。

発言情報

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発言者: 森本敏

speaker_id: 34495

日付: 2023-04-26

院: 参議院

会議名: 外交・安全保障に関する調査会