藤山浩の発言 (国民生活・経済及び地方に関する調査会)

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○参考人(藤山浩君) お招きいただきまして、ありがとうございます。(資料映写)
 私は、民間の研究所を展開している立場から、持続可能な地域社会を目指す上での現状、課題、可能性を四つの観点から述べたいと思います。
 いろんな本も書いておりまして、やはり今の、従来のやり方の延長線上にやっぱり解決はあり得ないと、やっぱり地元から世界をつくり直すような新しいアプローチが必要だと思っています。
 このように、本部は島根県にありますが、全国のいろんな県、市町村、あるいは省庁、大学と共同して研究を展開しております。そして、何よりも綿密な地域診断、あるいは住民を主人公とした話合い、そして持続可能な計画作りといったことを全国各地で支援しております。
 日本という国はいまだに東京一極集中が続いておりますが、こういった事例は実は欧米先進国でほとんど見られません。むしろ、二、三十年前から田園回帰ということでして、例えばドイツにしても、百万以上の都市はベルリン、ハンブルク、ミュンヘン、ケルンしかないと。やはり、この異常な一極集中というのをそろそろ本気で本当は田園回帰に持っていく必要があると思っています。
 私の研究所では、全国全ての市区町村の現状、予測、安定化シミュレーションをやっておりますが、ここ十年ぐらいで注目されているのは、極めて縁辺性の高い山間部、離島で少なからぬ社会増自治体見られると、こういったことが注目されます。その一方で、先ほどの松原先生の地域経済の在り方にも問題があると思いますが、地方都市というのが非常に今人口減少が加速していると、こういった現状が見られます。
 さて、先ほどのように、地元からつくり直すということで、やはりボトムアップの取組が必要だと思います。ここでは、新潟県で行われている人口や就農者の診断を基にした計画作りの事例を御紹介します。こちらの方は、毎年十五地区にそれぞれチームが県や市町村、JA等を横断してつくられ、徹底した診断、話合いでプラン作りをボトムアップでやっている事例です。
 例えば、これはその対象となった三十三の合計の地域人口のデータですが、七十代前半がもう主力世代になっていると。しかも、年代別の人口増減率では、非常に全世代流出が激しくなっていると。これをこのまま放置すると、極めて急速な人口減少、高齢化、あるいは少子化が起こりつつあるということです。
 ただ、これは放置すればこういうことでありまして、例えばここに、こうした人口の一・二%分の定住の増加、あるいは流出の防止というのをやると、実は安定が見えてくると。こういったことを、地区別も含めて具体的にどの世代を何組、何人定住で増やしたらうちの地域が人口が安定するのかと、こういう目標を定めていただきながら話合いに移っています。
 やり方は、同じやり方で、農業の担い手についてもかなりもう徳俵に足が掛かった状況です。七十代前半が主力世代と。農業の平均引退年齢、これ草刈りをやめた時期ですが、七十六・七ということなんです。もう本当に待ったなしで担い手確保が不可欠だと。
 こちらでも大量の引退が七十代、八十代起きています。それを補う六十代以下の新規就農は十分ではありません。これを放置すると、大体十年で半減すると。これ、新潟県のみならず、全国のほとんど、同じようなところでほとんど同じトレンド、傾向です。
 こちらの方も、だったらどのぐらい取り戻したら、就農増やしたらいいかというのが逆算できます。大体〇・六%分ぐらいを取り戻すとこういった長期的な安定は見られると。これを各地域ともやっていく必要があります。
 実際には、十五地区はばらばらではなくて、合同の研修会しながら、あるいは現場でのいろんな支援も含みながらやっていると。
 そして、こちらは十日町市の川手地区の事例ですが、ここでも、診断しますと、十年間で三人を三十代を取り戻すということが安定の条件と。やっぱりこういった極めて分かりやすい目標の設定が必要です。
 それに向けて、地元関係図という、農業のみならずいろんな分野の体制というのをどうつなげていくかというのを総合的に考えていくと。そして、いろんな計画の柱づくり、そして具体的なスケジュール、そして最終的には、単に農業だけというよりも、そこで家族の暮らしが成り立つような、そうした地域の打ち出し方、地域ぐるみの求人広告のような、こういう形で定住や就農を呼びかけていくことが必要だと思っています。
 さて、次は、より具体的な地域経済の話です。
 私ども全国駆け巡っておりますが、どこ行ってもこういうふうなロードサイドショップ、大型ショッピングセンターという風景が目立ちます。一見華やいだように見えますが、その多くは域外資本、特に東京資本でして、ここで生み出される消費のかなりの部分はそのまま吸い上げられていくと。
 一方では、壮絶なシャッター街というのが広がると。こういう風景も特にヨーロッパの先進国には見られないところであります。なぜこうなったのかというと、余りにも外にお金がもう流出していると。
 これは二〇〇〇年代初頭のデータですが、島根県の高津川流域、人口七万で、域外から千四百二十億円、一人当たり二百万、外の財やサービスを買っていると。これはもう住民の所得額に等しいわけですね。ここまで来ていると。これを補助金、交付税、年金が補っていると、こういう構造です。
 ただ、これ、でも絶望すべきかというと、非常に厳しい状況ですが、来年から、ではどうすればいいかというと、これだけ所得に等しい額を外から買っているのであれば、自分たちのお金の使い道、百分の一、一%分を外から中に切り替えて、そこで原材料から作り切れば、その付加価値は中で発生して、それが所得のちょうど一%に当たる、こういう計算も成り立つと。そういった、やっぱり年に一%ずつでも中に、地産地消に切り替えていくということが逆に有効でもあります。
 こういった経済対策を進めるためにはお金の流れをしっかりつかむ必要はあるわけですが、今までは産業連関分析が主でしたが、もっと簡単にお金の流れ、地域内循環の様子、様相を捉えるものとして、LM3というやり方があります。これは三回分の域内の取引を追っかけていくことで循環の度合いを出していこうと。
 より分かりやすくは次の事例、これは実際に四年前に地元の益田市で、徹底して飲食店から出発する地域経済循環を追っかけていきました。下が最近増えている、どこでも増えている全国チェーンの居酒屋と。全国チェーンは、その経営方針からしてほとんど地元仕入れを行っておりません。ですから、同じ仕入れ、売上げでも経済効果が違うわけです。上が地元密着型の居酒屋と。同じ売上げであっても、それが問屋さん、商店を介して、そこの一次産業、農家や漁師さん、あるいは酒屋さんにちゃんと及んでいくと。この経済循環というのが非常に重要なわけです。
 同様に、いろんな、パンというのを見ても、こういう地産地消のパン屋さんですと、実は思っている以上に経済効果は大きいと。同じ二千万の売上げのパン屋があったとしても、外から持ってきて並べて売るうちは一一%、二百二十万円の所得しか生まれません。焼き出すと七百六十万。米粉、小麦粉、あんこ等もそろえると九百二十三万、半分近い。確かに、外から持ってきた方が安いパンになる可能性は高いですが、それ以上に所得を失っているということです。
 野菜についても、こちらは島根県の地場のスーパー、キヌヤさんですが、こういうふうに、大型店の進出に対して地産地消で逆に域内循環を強化することで生き残ろうというアプローチも見られます。こういった産直コーナーのような取組も実は見かけ以上に効果が大きいと。同じ二千万円分の生鮮野菜を買ったとしても、一切地元の野菜を置いていなかったら二百二十万しか所得にはならないと。全て地元の野菜でそろえたら一千万と。こういったことが余りにも見逃されているんではないでしょうか。
 更にピンポイントの対策をするのであれば、私の研究所でも大体年に一、二町村一緒にさせていただいていますが、家計調査をして、これは国の統計ではなかなか地元で買っているか外で買っているかまで分かりません。全部これを品目別にも突き止めて、この赤い部分が外で買っている部分です。ナンバーワンは外食、次が肉といったところです。こういうふうにしますと、どこでどれだけ外にお金が出ていっているのか、逆に新たに域内に取り戻せるのはどこかということがピンポイントで対策が立てることができます。
 さて、地域経済循環も、これからは必ず我々は循環型社会に向かわないといけないと。我が国も、あるいは政府も、遅ればせながらではありますが、二〇二〇年に、二〇五〇年には脱炭素の社会に日本もなるという宣言をしていただきました。循環型社会は、先ほどの松原先生の分析とも重なると思いますが、まさに重層的な循環圏を一番身近な地域から地方都市、地方ブロックへと重ねていくところにその基本的な構造があると思っております。
 今までの大規模、集中、グローバルで外からどかんと、とにかく、特に国外も含めて持ってくるようなやり方というのは、国外にあっては資源の枯渇、あるいはモノカルチャーによる持続性の喪失、国内、特に地方においてはそういう大量流出により第一次産業が壊滅すると、こういったことになっています。循環型でやるんであれば、今まで顧みられなかった小規模、分散、ローカルのシステムをまさに地元から築き直すような、こうしたアプローチが必ずや必要となるということです。それぞれにそういった結節点としての拠点あるいは事業体というのをそこへ設置、つくっていくと、こういう時代だと思います。
 こちらの方も、もう絵空事の抽象論ではなくて、極めて具体的にやっぱりそれぞれの地元から組み立て直さなきゃいけない。これは、いろんな家計調査等も含めてやっている中から、主に島根県の中山間地域をベースに千人の村のお金の流れというのを図示してみました。介護、医療が実は一人六十万で六億掛かっているんですが、出費の御三家は食費、交通、エネルギーです。このうち、四分の三の六億、一人六十万が外に実際に出ています。ここを本当は、豊かな森林、農地も含めて拠点や会社をつくって、域内循環型に組み直していくということがポイントなんです。
 いろんなチャレンジは始まっています。こうした農業生産とエネルギー生産を両立させるソーラーシェアリング。あるいは、四年前ぐらいにかなり私もドイツ、オーストリアでエネルギー自給村をずっと歴訪してみましたが、本当に次々とそういったところが生まれていると。これは、メタンガス発酵で、牧場で乳製品だけでなくてエネルギーでも売上げを上げていると。日本は周回遅れ、いや、これもう二周遅れだなというのを実感した次第です。
 地方都市にあっても、これはオーストリアのチロルのクフシュタイン、一万四千人、堂々たる中心街、シャッター街見られない、非常に栄えている。しかも、その地下には最先端の熱供給システムが張り巡らされていると。これは、ドイツ、オーストリアには、自治体ごとの言わば電力、交通公社、シュタットベルケと呼ばれていますが、これが一手にそういったものをつないでいると。こうしたやり方が長い目で見ると賢いと言わざるを得ません。そうした分散、分権的なシステムづくりが急がれるわけです。
 さて、そうした今後の投資に向けては、こちらは秋田で県立大学の共同研究ですが、改めて、地域の本当の資源である農地、山林あるいは世帯一軒一軒までもデジタル的に、こういうデジタルマップにきちんとデータ整備を行う。そして、今後の食料やエネルギーのシミュレーションというのを可能にするような基盤、情報基盤の整備が必要と思われます。
 非常に手間が掛かる作業ですが、こういうのをやると、例えば、現に今一年当たりそれぞれの森林のそれぞれの区画でどのぐらい成長しているのか、こういったものを広葉樹転換も踏まえながらシミュレーションすると、五万人から八万人分の暖房や給湯のエネルギーが供給可能となる。こうした実は地域に秘められた底力を住民と一緒に見える化する取組が不可欠です。
 そして、今後は、食料や肥料も含めて、肥料や飼料も含めて、餌ですね、域内で回す時代が来ております。最適な、長い目で見て最適な土地利用、森林も農地もそれぞれの世帯も結んでやっていくと。ここでは、長い目で見てこれだけ持続可能なエネルギーや食料の供給力があるんだと、これを例えば二十一世紀の石高とも称して、やっぱり、困っているから定住、就農してくれじゃなくて、ここにこれだけの力があるから暮らそう、あるいは投資を行おうということが必要です。
 こうしたデジタルマップ等も含めた言わば地域の資源の棚卸しによって、じゃ、長期的にどれぐらい投資したらどれぐらいのリターンがあるのかと、あるいはどれぐらいの域外流出が防止できるのかということが初めて見通せるということなんです。
 そして、こちらは島根県立大学の豊田先生の研究成果ですが、千人規模で熱も電気も供給するようなプラントをやるとするとどのぐらいでペイするのかと、こういったことを本当にそれぞれのところで真剣に考えると。ほっておくと、今大体もう十兆円近いお金が、実は金融資産が流出しているような状況もあります。将来的にはまた東京に集中するわけです。それを、やっぱりこれからの本当の、真の成長の可能性があるこういった地方の再生可能な資源、エネルギーにきちっとした見通しとともに投資するような、こういうスキームが必要だと考えています。
 そして、今までのいろんな地域振興、地域、地方創生の中でも間々自治体同士の蹴落とし合いみたいな様相も見られました。これからは、マスローカリズムといって、同時多発的にいろんなその地域の特色に即した現場のチャレンジを行う、その共通する阻害要因、促進要因というのを政策化する、こういうエビデンスに基づいた政策形成が必要だと思いますし、それと同時に、こういった多様なチャレンジをつないで、自分と同じような地域が何をして成功、失敗しているのか、こうしたマスローカリズムという考え方にのっとったことで、共進化、共に進化を加速するような枠組みが新しい地方創生に必要だと。そのためには、いろんな地域の情報を素早く比較検討できるデジタルの地域カルテのようなものも早晩必要となるでしょうし、一方では、ボトムアップの取組を住民とともに汗を流しながら応援する、ここではグリーンレンジャーと呼んでいますが、こういったデジタル、しかし温かい心も持って住民と協働する人材配置というのが必要と思われます。
 世界大恐慌期、実は当時のルーズベルトは、民間国土保全隊といって五十万人の若者を地域に送り込んで、そこで環境保全等も従事させています。是非、長い目で見ると、今が実は、もう失われた三十年が続くのかどうなのか、あるいは循環型社会に日本もちゃんと乗り遅れから脱するのか、分かれ目になっていると思います。是非、そうした長い目で見て、日本の底力あるいは地元の底力を呼び戻し、つなぐような、こういった政策の展開を是非望みたいと思います。
 私からの意見は以上です。ありがとうございました。

発言情報

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発言者: 藤山浩

speaker_id: 34043

日付: 2023-02-15

院: 参議院

会議名: 国民生活・経済及び地方に関する調査会