宇都宮浄人の発言 (国民生活・経済及び地方に関する調査会)
⚠️ コピーしたテキストを転載する際は、転載元URL(kokkai-data.com)および原典URL(kokkai.ndl.go.jp)を必ず残してください。発言内容の改変・出典削除は禁止です。
詳細は利用規約をご確認ください。
○参考人(宇都宮浄人君) 関西大学の宇都宮でございます。本日はこのような機会をいただき、ありがとうございます。(資料映写)
私の方からは、地方都市圏の交通政策の課題ということでお話をさせていただきます。
こんな内容でございますが、まずは地方都市圏の衰退、今までもお話ありましたけれども、一つは移動スタイルが大きく関わっている。これは高知の例ですが、ほとんどの方が車を利用されている、皆さんもそういう実感だろうと思いますが。それに対して、市民はやっぱり満足度が低い。何とか公共交通してくれということで、やはり市の施策の中で高知市の場合は一番満足度が低いのは交通であると、こういうのが現状かと思います。
のみならず、これは高知ですが、例えば兵庫県の丹波篠山市民の声ですが、やはりもう若い人はこの地に住みたくないという声が結構ある。それはなぜかというと、やはり交通の便が悪いからということがやっぱりトップに来ている。あるいは、じゃ、どうしたら若い人住んでくれるというと、これはもちろん働く場所とか子育てってありますが、やっぱり公共交通機関の充実でしょうという声がやはり四位には来ている。じゃ、にぎわうためにというと、やはりそれも働く場所というのはありますが、交通機関、公共交通の充実、こういうことが求められているという現状。
つまり、先ほど来、地域のシャッター街とか御議論ありましたけれども、やはり地域が衰退している、中心市街地が衰退している、その裏には公共交通の衰退と自家用車依存度の高まり、この悪循環がある。つまり、車がなければ暮らせない、公共交通がどんどんサービスが減っていく、なぜならお客が乗らなくなるから、そうするとますますサービスを減らして利用者が減少する、人は車に頼らざるを得ない、そうこうしていると、中心市街地ではなく郊外のお店に行ってしまい、都市がスプロール化し、財政が悪化し、結果的に人が流出していく、こんな悪循環が繰り返されているわけですね。このモビリティーの低下というのは、やはりこれは生活の質を悪化させているということが地方の現実だと思います。
ただ、先ほど来のいろんな循環を変える一つのキーが、私は交通にあると思っている。もちろんいろんな地域があります。一定の集積があれば、実はこの地域公共交通がもっと便利になれば、三十分に一本来れば、十五分に一本来れば、魅力ができれば、あっ、車じゃなくて公共交通で動こう、そうなれば町に行く、この悪循環が逆の循環に変わる可能性というのはあるし、実際それはヨーロッパで行われている。つまり何か。それは、交通まちづくり、そしてそのためのやっぱり統合的な政策ですね、運輸事業をどうするかという狭い範囲ではない、こういうことが求められているんだということをまず最初に申し上げておきたいと思います。
交通というのは、先ほど来の持続可能な話はありますが、SDGsということを議論する、非常に実践的なんですね。というのは、例えば、都市、住み続けられる町づくり、これはダイレクトです。それから、エネルギー、気候変動、こういったところはやはり自家用車に依存してちゃいけないよねということも比較的ストレートに分かるわけですが、それ以外、例えば、成長・雇用、先ほど来の域内循環ができていないという話ですけれど、交通、赤字じゃないというけれど、そこで働く人は地元の人なんです。ある意味で、公共交通産業というのは究極の地場産業です。もうちょっとそういう循環ができないでしょうか。あるいは、教育。現状、バスが不便である、あるいはもうなくなってしまうということで、学校の選択が限られてきている。まさに、平等な質の高い教育を受ける選択権が交通が原因で奪われている。言い換えれば、これを変えることによってSDGsの実践にもつながっていく。あるいは、保健、医療。百メートル先も車で行く、こんな暮らしをしていたんでは、やはり健康ではなくなります。公共交通と適度に徒歩を使う。もちろん車も必要だけれども、こういったことをやっていく。こういう仕組みをつくることが結果的にSDGsの実践につながると私は考えておる次第です。
実は、政府もそういうことを意識して、コンパクト・アンド・ネットワークということで、町を、これまで広がってきたけれども、もう少しコンパクトにして、その分をネットワーク、公共交通で結ぶ町づくりをしようぜということは政府もやってきておりました。ただ、それがうまくいっているかどうかということも一つあるし、さらに、このコロナ禍でやっぱりこういう声もあるわけです、三密だからコンパクトシティーってどうなのって。これはまあコロナが最初の頃ではありますけれども、ただ、ちょっと見逃せない発言って、やっぱり車は利用定着しているんだから、もういいんじゃないと。あるいは、自動運転が何とかしてくれるよみたいな考え方があるし、実際それに対して一定の理解はあるんですが、ちょっと待ってください。自動運転で本当にできますか。
なるほど、私は、自動運転の技術がどんどん発達し、安全が確保でき、一定程度の自動運転は行われますが、ここで言うような地方都市で、お年寄りやあるいはティーンエージャー、車のない人が自由に自動運転でできるこのレベル5ってやつですね、これは専門家に聞いても、十年や二十年でできません。何か、レベル4まで来たのでレベル5、あと一つだって思いそうなんですけど、ここには大きな段差があるということ、本当に自動運転で、期待で思考停止してはいけない、その辺りも私、最近の風潮ちょっと気になるところですので、ここで申し上げておきたいと思います。
そして、結局何を目標を実現するんですかということを考えたときに、いや、自動運転ですといっても、渋滞しているわけです。むしろ公共交通がしっかり乗ってくれたら、この左側の百台以上の車はバスが三台で済む、あるいはライトレールと言われる路面電車であれば一編成で済んでしまうわけですね。むしろ道路建設を今までしてきたわけです。それは逆に、誘発交通、新たな自動車を招いて渋滞を解消しない。
ここで、ちょっとややこしい話ですが、ダウンズ・トムソンのパラドックスという話をしたいと思うんですね。つまり、ある地点を移動する人たちが一定量いたとき、そのとき、地方であれば七割の人が車を使って三割が公共交通、あると思うんですけど、その場合、どこでその量は決まるかというと、車の場合、やっぱり人がたくさん乗ると渋滞する、つまり利用者が増えるとやっぱり渋滞するわけです。逆に、公共交通は逆で、利用者が増えてくると、まあ固定費が高いこともあるので、逆に一人当たりの費用は低下していくわけですね。
なので、この左側からの軸は自動車交通を使う人、右側からの軸が鉄道を使う、公共交通を使う人ということで見ていただく。これ一定量だとするときに、じゃ、今渋滞しているから自動車を使おう、自動車の道を広げようとなると、この自動車費用曲線という点線があると思うんですが、少し下がります。あっ、道が広くなったんで車で速く行けるやと思うわけですね。そうすると、皆さん車に乗るようになります。
ところが、車に乗るとどういうことが起こるかって、公共交通を使う人が、もし公共交通のサービス改善しなきゃ減るわけです。ということは、結局、じゃ、どこで均衡するかというと、渋滞が解消された、車に乗ったんだけど、結局渋滞がだんだん増えていく。というのは、公共交通が一人当たりのコストが上がって運賃が上がる、あるいはサービスが悪くなると、それだったら車がいいやと思っているうちに車の人増えちゃう。結果的に、道路を整備することによってむしろ公共交通が不便になった分、全体のコストが上がるという、こういうことなんですね。渋滞がむしろ発生してしまう。このコストというのは、ここで時間的なコスト、渋滞によるコストも掛かるんですが。
これ、どうでしょうか。今の日本の地方で実際起こっていることなんですね。要するに、道路をどんどん造ってみんなが車に乗るからかえって渋滞がひどくなる、公共交通のサービスは悪化していく、ますます公共交通、人が乗らなくなる、じゃ、車に乗る。結果的に全員が損しているんです。というのがこのダウンズ・トムソン・パラドックスという経済学の一つの原理なんですね。
じゃ、海外はどうかというと、日本も最近はコロナ禍そして燃料費の高騰ということでむしろ運賃値上げとかサービス削減やっていますけど、先ほどあったオーストリア、ドイツ、逆なんです。コロナで人が減った、あるいは燃料費が上がっている、じゃ、今こそ公共交通だろうというので、一日三ユーロ、これを年間サブスク、年間で買ってしまう。すると、千九十五ユーロ、大体十数万払うとオーストリア全土の新幹線も含む全ての公共交通が全部乗り放題になるんです。ドイツも今年、多分一か月四十九ユーロでもうどこでも乗れるという切符、作ります。
これ重要なのは、一見さんではない、住んでいる人は、車じゃなくて、あるいは二台目、三台目の車やめて公共交通使ってもらおうね、この機会に、こういう政策を打って出ているんですね。これによって、グリーンイノベーションができて、公共交通が増えていく、こういうことをやっている。日本は、サービスを減らして値上げしている。SDGsにも反するわけですね。こういう状況であると。圧倒的に違う。
地方都市の事例で、例えば、人口二十九万、さっきの高知と同じぐらいなグラーツの町、高知も路面電車ありますけど、こういうきれいなトラムがあって、しかも、郊外のショッピングセンターもあるんですけど、そこにもトラムが延伸するわけです。そして、トラムが行けないところはバスが接続する、電車の横から接続するんですね。こうやって都市機能を高める。
ちなみに、グラーツ、二十九万の町ですけど、これだけのネットワークがあって、しかも、ここも年間乗り放題サブスクチケット、大体四・五万円最初に払ってしまうと、もうグラーツ市内はどこでも行ける、これグラーツ市民ですけれどもね。住んでいる人に対してこういう恩恵を出すわけです。
ちなみに、それはどういうことかというと、グラーツ市としてはこういうことをやりたいというコンセプト、構想があるわけです。見ると、やっぱり自動車の分担率を減らしていく、これ脱炭素に向けてですね、公共交通を増やし、自転車、徒歩を増やす。ちなみに、日本にもあるし、向こうもショッピングセンター、郊外の開発あるんですけど、例えばここの州は、ショッピングセンター開発するんだったら、三百メーター以内に三十分に一本以上の頻度で公共交通の停留所の存在がある、これが条件になるんです。田んぼの中に突然造られても、それは認めないんです。ちゃんと公共交通でアクセスできて初めて商業ができる。
こういう計画を今ヨーロッパ全土でEUが決めたSUMP、サステーナブル・アーバン・モビリティー・プランというのがあって、これ日本語にも訳したこういう冊子がありますけれども、要するに、生活の質を向上するということの基礎に交通、モビリティーがあるんだ、だから逆に、交通計画は、渋滞するから道路を造るという話ではなくて、人がいかにアクセスできるか、幸せに暮らせるか、こういう計画にしなきゃいけないんだ、だからハードもそうだし、先ほども言ったような運賃施策も別の観点から考える。
じゃ、何でそんなことできるのか。バックキャスティングですね。最初に目標を決めて、この地域はどうしたい、そこから、じゃ、そのために何が必要なのという、そういう発想です。あとは、もう一つは、先ほどもお話ありましたが、いろんな政策が絡むんですけど、それを整合的にやることによって効果をもたらす、統合的な政策という言い方、インテグレーションという言い方をします。こんなことがヨーロッパでは行われる。これSUMPという言葉、是非知っていただければいいなと思うんですが。ちなみに、こんな冊子でございまして。
この結果、例えばですよ、地方都市圏で、先ほど御紹介ありましたオーストリアのケースでいえば、人口二万人以上の都市であれば、ほぼほぼ人口の八割、住んでいる人の八割は利便性の高い公共交通のサービス、三百メーター以内のバス停に、あるいは五百メーター以内の駅に二十分から四十分にバスや列車が来る、これぐらいのサービス。やはり、日本とは大分レベル感が違っていることをやっているわけです。
じゃ、なぜできるかというと、公共交通は公共サービスという概念で公的に支援しています。ちなみに、これインフラ費用を除く運営費を考えてみても、人件費、燃料費に対して運賃カバー率というのはもう一〇〇パーないんですね。日本的に言うならば圧倒的な赤字です。けれども、公共サービスって、それによって公共の、人が、みんなが便益を受けるわけです。みんなが幸せになる、だから社会全体で支えましょうねと。日本だって森林課税とかいろんな形であるわけですね、と同じ。あるいは、日本の市民プール、別にあれで黒字にならないわけですけれども、五割程度は負担の料金をいただいて、それで市民サービスを行う。それと同じだというのがヨーロッパの公共交通の考え方なんですね。その結果、シャッター街はなくなり、最初申し上げたような悪循環もない。
ちなみに、日本もこういうことをやろうとしているところがないわけではない。栃木県の小山市、ここは、何とコロナ禍で利用者増と増収を達成してしまったんですね。小さなコミバスが走っていて、おじいちゃん、おばあちゃんのものという感じがコミュニティーバスってあると思うんですが、格好よくデザインして宣伝してというのを、何といっても、けれども、先ほどのウィーンと同じで、年間サブスクチケット、八千四百円を二千四百円にしちゃった。七割引きです。そうしたら、若い人がみんな乗ったわけですね、定期券を持って。そうすると、みんな車からバスに乗る、コミバスがいつの間にかおじいちゃんの乗り物ではなくて市民の乗り物になって、そして町がにぎわいになる。こういうことをやっているところもあるわけです。
ちなみに、小山市は、もちろんそのために、七割引きですから、小山市がお金を出しています。そんな金あるの。いや、けどですね、この程度であれば全体予算の〇・二%でできる。一人当たり予算が八百三十七円。これは小山市のホームページではっきり公表しています。ということをやり、まあ言わば、小山市というのはまさに、先ほどのヨーロッパではないんですけど、これは公共サービスだと、交通は。で、それはただ公共サービスというだけじゃなく、それによって都市の経営のツールとして生かすんだ、都市を発展するんだって、そういうことですね。
ともするとコミバスとかというのは、何かお年寄りの足を守らなければとかいう、何か守るためだけにやっているけれども、そうではない。まあヨーロッパもそうですが、このSUMPの考え方もそうですが、モビリティーとか交通というのはそれが都市経営のツールになって、そこから地域が再生するんだ、こういう発想です。
じゃ、ちなみに、どんな効果があるのか。これ、実は国交省もこうやってまとめているわけですね。公共交通は準公共財ですよと。外部不経済を削減、つまり車による環境汚染であるとか渋滞であるとか安全問題、これを削減する。一方で、地域全体の効果をもたらす外部経済効果がある。国交省もちゃんとこういうことを言っているわけです、二〇〇七年ですが。ただ、それがいまだに現実になっていない。
例えばですけれども、昨今、鉄道なんかも路線廃止の議論ありますが、ここで例えばオプション効果。いつでも利用できる安心感、いや、今は別に収支は合わないよ、けれども、ひょっとすると自分が年を取ったときに鉄道があることの安心感、あるいは自分の子供が高校や中学に通えるようになったときに鉄道がある安心感、それはやっぱり大きいわけで、これはまあ経済学の用語でオプション価値というんですけれども、こういったオプション効果がある。つまり、今乗っている人の運賃だけで収支を合わすというんではそこは返らないわけですね。こういったことをしっかり考えた上でやっぱり公共交通の存在意義というのを考えなきゃならないし、実際それは意義がある。
あとは、富山市で実際こういう京大なんかのチーム含めて計測をしたわけですが、富山市がやっているおでかけ定期券、まあ年間千円払うとバスの運賃が一回百円になっちゃうというものなんですけど、それをやると、みんながバスと歩くことになると、結果的にみんなが健康になって医療費抑制効果があったという話ですね。何と一億円の事業費で約八倍の効果があった。こんな試算もできる。こういうのをクロスセクター効果といいますが。ということで、単に運賃収入で経費がカバーできないから赤字だ無駄だという議論では全然ない、むしろ地域がこれで元気になるということです。
まとめたいと思います。
民間事業が今、日本の公共交通を全部運営しています。丸投げです。けど、これが成り立ったのは東京や大阪の大都市圏があるから、あるいは高度経済成長があっただけです。けれども、今もそれをやろうとしていると、むしろ、おまえな、ちゃんと節約しているのか、生産性上げろと言うと、乾いた雑巾を絞るがごとくになり、公共交通の事業で働いている方は低賃金と非常に厳しい労働環境の中で働かざるを得なくなっている。だから人手不足になるわけです。そうなると、まあせっかくですので、やはり道路運送法とか鉄道事業法とかというこれまでの右肩上がり時代の公共交通を規定する法律の改正というのを考えていかなきゃならないんじゃないんでしょうかという話ですね。
そして、あとは道路。道路には公共事業、あれ物すごくお金使っているわけですが、道路、土地利用、環境、いろんな関連するものと、これ町づくり、地域づくり、統合的に政策をやる必要がある。道路予算を公共交通に使うというのは、まあヨーロッパなんかではもう当然のようにやられているわけですが、日本ではなかなかそれもできない。
あと、ここで最後言っておきたいのは、例えば通学定期の割引って御存じだと思いますが、これって今、日本では民間の交通事業者が負担しています。これは理論的にも全くナンセンスな利用制度なんですね。元々、国鉄が社会政策としてやっていたことから始まっているんですけれども、実を言うと、これどういうことかというと、民間が負担しているということは、それは運賃収入でコストを払っているわけです。これ、運賃収入誰が払っているかというと、地方部の場合であればお年寄りと高校生です。お年寄りと高校生から集めたお金で通学定期を割引をやっていてということですね。で、自家用車を運転している人はそんな関係ないよ。バリアフリーも一緒です。バリアフリー制度って利用者負担といいますが、あれって本来社会で全員参加の社会をつくるための制度じゃないですか。ところが、それを、利用者ということは、鉄道へ乗っている人だけが負担してて、車を運転している人は負担しないわけです。経済学の観点からいうと、それは受益と負担が全く整合的ではありません。この辺り、ちょっと新聞記事を私、朝日新聞で書いたのを載せていますけれども、後でお読みになればと思います。
ということで、やっぱり別に民丸投げではなくて、民間事業者の活力が私は重要だと思うんですが、是非これから、右肩上がりの時代の枠ではなく、官民の役割分担、責任分担をもう一回考え直して、地域づくり、町づくりという観点からは交通まちづくりというものが必要になる。それが結果的に、今であれば、本当に人手不足とか低賃金で悩んでいる民間事業者も元気になるし、日本の地域の活力になるんではないかなと、こういうふうに思っておる次第でございます。
ということで、あと参考資料としてSUMPの話であるとか国交省の計画の話なども付けております。お時間のあるときにお読みいただければと思います。
御清聴ありがとうございました。