阿部彩の発言 (国民生活・経済及び地方に関する調査会)
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○参考人(阿部彩君) このような機会をいただき、ありがとうございます。(資料映写)
東京都立大学人文学部教授、また、子ども・若者貧困研究センターのセンター長を務めております阿部彩と申します。
今、とても差し迫ったお話を、清水さん、また渡辺さんの方から私も聞かせていただき心を打たれたところであるんですけれども、私は貧困に関する研究者として、ちょっとステップバックをしてお話をさせていただければなというふうに思っております。
私は、やはり子供の貧困について一番よく知られているかなというふうに思いますけど、子供という観点からもう少し離れて日本の貧困対策ということを考えてみたいというふうに思っております。
まず、子供の貧困の観点から申し上げたいことが三つあります。
一つは、子供の貧困対策には、まあこれは子供だけではないんですけど、貧困対策には長期的な成長戦略が必要だということです。これ、後ほどお話しいたします。なぜかといいますと、今、平場で聞かれているたくさんの生活困難というのは、コロナだから初めて起こった問題じゃないんですね。コロナの前からある問題なんですね。実はもう三十年前からある問題です。それも追ってお話しさせていただきます。
もう一つが、子供の貧困対策と子育て支援策とは違うということです。同じではないということです。子供のある世帯全体の経済状況は、必ずしもコロナになっても悪くなっていないですし、先ほど渡辺さんもおっしゃったように、平均所得は比較的高いです。ですので、子供の貧困、今非常に少子化になってきて、少子化対策ということで子育て支援策、私、この二つも一緒ではないと思いますけれども、が話されていますけれども、それと子供の貧困対策、また、子供の貧困対策と全体の貧困対策も同じではないです。今、日本の国民の中で子供を、今、進行状況でお子さんを育てている国民、何%いると思いますか。本当、マイノリティーのマイノリティーですよね。女性の中で見てもそうだというふうに思います。恐らく一〇%以下ぐらいになるんじゃないかなというふうに思います。ですので、子供の貧困対策やっているからといって、日本全体の貧困対策をやっているわけではありません。
三つ目、この点は私は非常に強調させていただきたいと思います。財政を悪化させる政策は子供のためにはならないということです。
順番に行きます。
まず、このグラフは、皆さん御存じのとおり、厚労省が発表している貧困率のグラフで、八五年からになります。あいにくこの次の二〇二一年の数値がまだ公表されておらず、恐らくこの夏から秋にかけて公表されることになるんではないかなというふうに思います。ですけれども、私のお話ししたいのはコロナの前の話ではありますので、この二〇一八年の数値、データまで使ってお話をさせていただければというふうに思います。
この推移を年齢別と見てみますと、例えば男性を見てみますと、赤で書かれてある部分が八五年のグラフからだんだんだんだんと上がってきたグラフということになります。済みません、色が余り差がないように見えるかもしれませんけれど、下の方が八五年で、上の方に上がってくれば上がるほど高くなってくるのが、赤いのが二〇一八年の数値になります。高齢期を見てみますと、高齢者の貧困率が徐々に下がってきて、赤のグラフというのが八五年のグリーンのグラフに比べて大分低くなっているということが分かります。
これ、女性でも同じですけれども、女性の方は、見ていただくと分かりますように、高齢期の貧困率が下がっておりません。若干後ろ倒しにはなっておりますけれども、その分、寿命も延びておりますので、女性の貧困率というのは実のところそれほど変わってはいないんです。
それを非常に分かりやすくしたものがこのグラフになります。三つの年齢層に分かれているわけですね、八五年から二〇一八年。
二十歳未満と二十歳から六十四歳の勤労世代で見れば、やはり二〇〇九年、二〇一二年の一番景気が悪かったときを山にしているんですけれども、二〇一八年の非常に景気のいいときであっても、八五年や九〇年代に比べればまだまだ高いところにあったねといった状況が見て取れます。
ただ、六十五歳以上を見ていただきますと、先ほど申しましたように、男性に関してはこの間、貧困率すごく下がりました。ですけれども、女性の方は貧困率はそれほど下がらなかったんですね。
私、この三十年間というのを非常に重要視しておりまして、三十年間、一世代変わる世代です。三十年間貧困対策やってきたはずなんですけれども、三十年間たっても高齢女性の貧困率は下がらなかったですし、実は高齢男性の貧困率も、これ、隣の二十―六十四歳と二十歳未満とやっていますけれども、それでもまだ高い方なんですよね。
実は、二〇一五年、二〇一二年ぐらいから高齢者の貧困率はまた上がり始めています。これが、やはり年金等をカットしてきたといったようなことがあり、公的年金等がこの後どれぐらいこれに影響してくるのかといったところになるかなというふうに思います。
もう一つの観点として、じゃ、地方というのを今まで支援してきたわけなんですけど、地方と都市部はどう変わってきたかということで、貧困率を都市規模別に見たものです。
実は、かつては都市規模による貧困率の差というのが非常に大きなものがありました。これ、勤労世代をお見せしています。ですが、三十年間で収れんしてきたといった状況です。つまり、どこに住んでいようと余り貧困率が変わらなくなってきたということなんですね。大都市と郡部とさほど変わらなくなってきているといった状況があります。それは、大都市の方が貧困率が上がってきて、郡部ですとか人口五万未満の方は横ばいぐらいになってきているかなというようなところがあります。これ、子供と高齢者で見ても同じような状況にあります。
もう一つ、子供の年齢別の貧困率なんですが、実は八五年の頃は貧困率はそれほど差がありませんでした。ですが、年度がたつごとにだんだんだんだん子供の中での貧困率の差が大きくなってきます。一番上の濃い深緑みたいな色のものが二十―二十四歳。この二十―二十四歳ですので、もう高校生も卒業した年齢ですし、一番ぐわっと下がっているのがゼロから四歳になります。じゃ、子供の貧困率が上がっているということと、それと子供のある世帯の所得がどうなったのかということは、これまた別問題なんですね。これは分布の問題ですので。
これを、お見せしているのは、児童のある世帯の所得分布。申し上げましたように、これは集計表をそのまま載せたものですので世帯人数等のコントロールはしていないんですけれども、それで見ますと、八五年がこの黄緑みたいな色のちょっと太くしているやつで、その次、九一年にちょっと飛ぶんですけれども、その中間層も入れるとそこにグラフがいっぱいあり過ぎるのでちょっと飛ばして十年間やったんですが、二〇二〇年は赤になります。
何が起こっているかといいますと、全体的に、所得というのは全体的に上がっていますので、山は右の方に動いてはきているんですけれども、見ていただければ分かりますように、非常に所得が高い層というのもかなり増えている状況にあります。これ、先ほど渡辺さんがおっしゃったように、格差が大きくなっているということに表れるところかなというふうには思います。
ちなみに、児童がある世帯のうち所得が八百万円以上の世帯の占める割合、児童のある世帯の中で占める割合を三十年間プロットしてみますと、御覧になりますように、二〇二〇年、特に二〇一八年、一九年に比べても、二〇二〇年、非常に上がっておりまして、もう四〇%近くになっています。八五年は、この数値というのは一四%ぐらいだったんですね。特に急激に上がったのが九〇年代と、それと二〇一五年以降になります。ですので、二〇一五年以降もこの高所得層というのは増え続けているんですね、今でも。
で、このグラフが私が、でも一番皆さんに見ていただきたいグラフというものです。
じゃ、貧困層が増えているんじゃないかと。貧困率、実際に八五年から二〇一二年まで増えて、それから好景気で若干下がったんですけれども、じゃ、どこがどういうふうに、どこが悪いのかということなんですね。何で八〇年代からこんなに増えたのか。
濃いグリーンの方が再分配前、これは所得や、所得税や社会保険料を取る前、また児童手当ですとかを取る前のグラフですね。で、黄緑の方が再分配後になります。ですので、二〇〇九年までは再分配が全然機能していなかったので、あっ、二〇〇六年までですね、再分配後の貧困率が高いなんという状況があったんですけれども、見ていただきたいのはこの黄色い線です。
八〇年代から二〇〇九年、まあこれ一番悪かったときですね、二〇〇九年、二〇一二年、一番悪かったときですけど、その間に再分配前の貧困率は一〇%以上上がったんですね。つまり何を示しているかというと、この子供のある世帯の稼ぐ能力、親の所得だけで、一人親であろうと二人親であろうと親の所得だけで貧困から逃れている状況がなくなっているという状況が、その逃れる能力というのが下がっているということなんですね、一部の中で。もちろん、所得が高い人の層がある中でそういった層もいると。
だから、ということなんですけど、でも、御覧ください。再分配、その後、児童手当を拡充したりとかいろいろしてくださっていますけれども、再分配した後の一番多く再分配効果があったのが二〇一二年の一八・五%から一六・六%。下がっていますけれども、せいぜい二%ぐらいですね、今の財政状況でやっていても。
私がここで申し上げたいのは、だったら、じゃ、再分配を増やしてくださいということではないんです、恐らくそう言うと思っていらっしゃると思いますけど。というのは、この濃い緑の方の貧困率のこのグラフの上昇を下げない限りは、その差分を、一〇%の差分を再分配で補うんですかということなんですよ、日本の財政状況で。それができないでしょうということなんですね。
なぜか。それを考えると、まず第一にやらなければいけないのは、親の所得を、再分配する前の所得を向上することなんですね、子供の貧困率でいっても。これは子供でお見せしていますけれども、それはほかの勤労世代でも同じです。
これは恐らく皆さんもよく御存じのことかというふうに思いますけど、この頃やっと言われるようになってきたということですけれども、PPP、購買力平価で平準化した形でのいろんな各国の所得を見てみますと、これ子供のある世帯を見ていますが、薄い方のグリーンは、これは子供のある世帯全体の可処分所得の中央値ですね、可処分所得の中央値です。先ほど申しましたように、貧困、非常に高くなっている層もいるんですよ、所得が。
でも、平均的に見るとどれぐらいかというところになりますけれども、その数値というのは、今はもう韓国や台湾の平均的な子供のある世帯より低いです、日本の子供のある世帯というのは。もちろんノルウェーですとかアメリカですとかカナダですとかオーストラリアですとか、そういった欧米諸国よりも低いんですけれども、韓国や台湾と比べても低いんですね。で、濃いグリーンの方は子供のある世帯の中で一番下の二〇%の子供たちです。このある中で日本より低いのはイタリアだけで、そのほかの国々、例えば韓国や台湾なんかに比べても、韓国は下の二〇%の子供は一万七十七PPPドルに対して日本は六千八百二十九ですね。ですので、七掛けぐらいにしかならないということです。
そういった中で、貧困等よりも、それよりちょっと上の層も含めますけれども、二〇%、日本の二〇%の下の子供たちは、薄い方のグラフも入れて見れば、その子たちが国際競争に勝てるわけがないでしょうと思うんですね。
これは、じゃ、東アジア諸国が何でそんな子供の世帯になっているのかというと、実は東アジア諸国というのは、韓国や台湾、香港を出していますけれども、香港を除き、この韓国と台湾のところでは非常にやはり再分配のところが大きいです。この雇用所得というのは平均賃金の五〇%で男性が働く夫婦という想定で計算したものなんですけれども、たまたまなんですけれども、ほとんどの国でほとんど変わらないです。ですけれども、韓国や台湾というのは、そういった世帯、平均賃金の五〇%、いわゆる中間層ですね、中間層でもかなりの手厚い給付をしています。でも、韓国や台湾がこれができたのは、成長期がある中で、それでこういった世帯にお金を回すことができたからなんですね。日本はもう、実は高成長したときに子育て世帯に対して何もこういった再分配の制度をつくってこなかった。今は低成長なわけですから、韓国や台湾と同じような手で所得を上げるということにはいかないというふうに思います。
現状、まとめますと、三十年間にわたる親の稼得能力、貧困からの防御力の低下が子供の貧困率の場合は要因として挙げられます。この増加、最貧層の人々の勤労所得ですね、再分配所得ではなくて勤労所得の増加をするのがまず必要だというふうに思います。ほかのアジア諸国は、高成長に支えられて貧困世帯、特に子供のある貧困世帯への支援策を拡充してきました。日本は高成長期にこれをやってこなかったんですね。ですので、でも、もう起こってしまったことは仕方ない、じゃ、これから先何をやっていくかというふうな話です。日本は、今の財政状況で、財政状況がいかに危機的になっているのはここにいらっしゃる皆さんにわざわざ私から説明することでもないかというふうに思いますけれども、じゃ、どういうふうにして貧困対策をやっていくべきなのかという話です。
もう一つ、コロナ禍による生活困難ということは今盛んに言われますけれども、今ある生活困難のほとんどはコロナで初めて現れた問題ではありません。確かに、コロナ禍によって影響を受けた子育て世帯というのが下の方の世帯に限られているという、限られているというのではなくて偏っているというのは確かです。それは先ほどの渡辺さんのデータの中にもありました。ですけれども、影響を受けたのは全体の中では一部です、子育て世帯全部の中で比べる、の中では。というのは、お父さんもお母さんも正社員であれば、別に所得が下がったわけではないですよね。なので、これをやはり肝に銘じる必要があるかなというふうに思っています。
それと、収入が減った、誰でも収入が減ると生活苦しいと思うんですね。ですけど、収入が減ったということと生活困窮ということは違います。年収が八百万の人が収入が六百万になれば、それは厳しいです、つらいと思います、その人は。ですけれども、その方がもう生活に困って生活が立ち行かなくなるというのとは違うわけですね。なので、私はやはりコロナ禍によるという形で支援をすることに対しては非常に慎重にやるべきだというふうに思っています。
ちなみに、このグラフは二〇一七年です。まあ比較的に景気がいいときですよね、アベノミクスでといったときで、に料金の未払や債務の滞納があった世帯の割合、全世帯の割合の中でです。確かに一人親世帯、非常に高いです。とんと突出していますけれども、ですけれども、例えば非高齢の男性世帯では六%ぐらいがなっていますし、一番低いところで、例えば夫婦のみで、共に非高齢者の夫婦のみ世帯なんて何で苦しいんだろうというふうに思いますけど、この世帯であっても二%弱の世帯はこういった困窮がありました。
私が申し上げたいのは、直接支援というのはもう限界が来ているんじゃないかということです。まず、ターゲティングというのが非常に困難になってきているということです。カテゴリー別では生活困窮者が把握できない。例えば一人親世帯ですけれども、実際は二人親世帯でも困っている人、今いるよと。子育て世帯じゃなくても困っている人いるよ。年金生活者って何か生活困窮者と同じような形で使われることありますけど、年金生活者の中でも全員が困っているわけじゃないんですね。なので、カテゴリー別に支援をしていくというのはどうしてもやはり漏れが起きてくるかと思います。
もう一つのこの弊害というのが、じゃ、国民全体に、全員に対する給付でない限り、かわいそう競争になってしまうということです。これ、私自身もこの一端を担いでしまったということがあるんですけれども、私が一番最初に子供の貧困と言い出したとき、これは二〇〇八年ぐらいですけれども、その頃には困っている子育て世帯があるんだということ自体が余り知られていなかったので、こんなに大変なんです、こんなにかわいそうな世帯が、子供たちがいるんですというのをデータをたくさん出していったわけなんですね。でも、もうそれから十五年以上たちました。
その後に、高齢者の貧困があり、女性の貧困があり、高校生の貧困があり、大学生の貧困があり、若者の貧困があり。先ほどお見せしたように、例えば高齢女性なんというものは一人親世帯と同じぐらい貧困率高いですけれども、もあります。つまり、どのカテゴリー取っても貧困の方々っているんですよ。
なので、その中で、私がこのやはり貧困研究を二十年以上やってきた中で見ているのは、かわいそう競争というのの声を上げるのに勝ったところが支援がされてくるなというところです。
例えば、独り暮らしの高齢女性の貧困率って五〇%超えるんですね。これ、母子世帯より高いですよ。誰が彼女たちのために声を上げてくれますか。誰も何とも言いませんよね。新聞記事にもそれはなりません。国会でももちろん議論にもなりません。でも、同じ状況にはあるわけなんですね。なので、私はその○○の貧困という形でやるのはもう限界なんじゃないかなというふうに思います。
それと、かわいそう競争はやめましょうと。こっちの方が大変なんです、こっちの方が大変なんです。財源が限られている中でですからね。なので、それはやめるんじゃないのか。そこのところに給付をしていくと、結局のところ、財源を将来世代に回すだけかなというふうに思います。じゃ、所得制限、どんどんどんどん上げていくんですかと。いろんな、就学援助費もそうですし、児童手当もそうですし、どんどんどんどん上げていって、で、それでどんどん財源を大きくして、必要財源を大きくして将来世代に回していくという、これちょっともう限界なんじゃないかなというふうに思います。
アイデア的に言えば、困窮世帯というのは、生活保護制度は困窮のみに着目するので理念的には正しいんですけれども、かなりもうスティグマが付き、手あかが付き過ぎになってしまっていると。先ほど申したように、イベント、例えばコロナ禍ですとか、まあいろんな、不況だとか、いろんなのがある、災害だとかありましたけれども、それは、というのももう恒常的な生活困窮には何も対応はできていないと。
そうしたときに、じゃ、何が必要かといったときには、やはり、私、国民的な議論が必要なんじゃないかと思います。これは政治の話です。つまり、どのような人にでも最低限保障すべきな生活というのを非常に明確に打ち出すということですね。
例えば、どんな人であっても、どんな属性の人であっても絶対に必要な医療を受けることができますというのは、我が国であれば絶対に受けることができるんですよと、そのラインをつくりましょうというような、そういったような、何かここで、例えばライフライン、ライフラインがやっても、でも健康に問題のあるような方ですから、子育て世帯とか高齢者世帯だとか、すぐに健康に問題のある世帯にはライフライン止めませんとか、そういった合意をつくって、でも、じゃ、これを達するためには、私も身も切らなきゃいけないです、ですので私も税金払います、消費税も上げるのも納得します。で、こちらの方々は法人税を上げていただきます、働きます、みんな身を切りますけれども、でも私たちみんなでこのラインは守りましょうねという議論は必要なんじゃないかなと思います。
これは、まさにもう政治のリーダーシップの問題かなというふうに思っていて、今のように困った困ったと言っているだけでは先に進まないのではないかなというふうに思います。
不安で非常に萎縮して、お金が何でも掛かるわけですね。先ほど、例えば子育て世帯、恐らく子育て世帯の八割、九割方は生活苦しいと思っております、かなり所得が高くてもですね。それは塾に行かせなきゃいけない、大学に行かせなきゃいけないというのがずっとあるわけなんですね。ですけれども、別に塾に行かなくたって自分の好きなことができる……