蟹江憲史の発言 (資源エネルギー・持続可能社会に関する調査会)

⚠️ コピーしたテキストを転載する際は、転載元URL(kokkai-data.com)および原典URL(kokkai.ndl.go.jp)を必ず残してください。発言内容の改変・出典削除は禁止です。 詳細は利用規約をご確認ください。

○参考人(蟹江憲史君) 御紹介いただきまして、ありがとうございます。慶應大学の蟹江と申します。(資料映写)
 SDGsをめぐる世界と日本の現状ということでお話を進めさせていただきます。
 まず、この一枚目なんですけれども、SDG達成、今一番大事だと考えられているのは変革ということです。今ちょうど、国連の事務総長に四年ほど前に指名された十五人の独立科学者という専門家がおりまして、私もその一名になっているんですけれども、で、今年九月に国連のSDGサミットというのがございます。そこに向けて、GSDRと我々呼んでいますけれども、グローバル・サステーナブル・ディベロップメント・レポートという四年に一度のSDGsの進捗を見る報告書をまとめています。その中でやっぱり一番大事だと強調している点は変革だということです。
 これは、SDGsが中心を占めている国連の二〇三〇アジェンダというのがありますけれども、そのタイトルにも変革ということが書かれています。
 じゃ、変革って一体どういうことなのかというので、少し今ある知識をまとめたのがこの皆さんの手前に示させていただいている図です。これ、ローマ字のSの形を描いていますけれども、下の方のこの緑の方を見ていただきますと、いろんな変革の萌芽があるということで、萌芽があるんだけれどもなかなかそれが伸びていかない、なかなか、抵抗勢力もあってなかなか伸びていかないということです。それが一気に加速期に入っていくと伸びていって、そして安定期に入っていくということです。
 同時に、持続可能でないような経路を持つものも同じように、それが今、世の中に広がっているんだけれども、それがだんだん減退していって、それがフェーズアウト、廃止に向かっていくと。このクロスするSカーブをいかに描けるかということが勝負になっていくということです。
 実際の事例で、例えばノルウェーの電気自動車がここ数年で急速に普及していますけれども、そういった例なんかを挙げながら、このS字カーブをつくっていくエッセンスはどうなのか。特にこの加速期でどういったことが必要なのか。そこでは、サプライチェーンへの影響であるとか標準化であるとか、あるいは政策の力が非常に重要な役割を果たしますけれども、こういったものが必要だという知見がまとまってまいりました。
 まず最初に、この変革、トランスフォーメーションを起こすということが非常に大事だということを申し上げておきたいというふうに思っています。
 その上で、今の世界の現状ですけれども、昨年の夏に報告されました事務総長が毎年出している報告書がございます。それを見ますと、SDG達成が大きな危機に陥っているということになっておりまして、特にコロナ禍、そして気候変動の影響、そして国際紛争、この三つのインパクトで、ただでさえ達成が困難であったSDGsの達成が非常に難しくなっていると。中には、例えば極度の貧困の状況というのは、今まで改善されてきていたんだけれども、ここに来てむしろ後退していると、二〇一五年当時よりも後ろに下がってしまっているということが書かれています。飢餓の状態なんかもそうです。それから、暴力紛争は、一九四五年、第二次世界大戦終了以来、最大の人口がこの暴力紛争の中にいるということが言われていまして、世界の状況、プラスチックの量も増えています、CO2の量も増加しています、かなり悪くなっているというのが全体的なニュアンスになっております。
 先ほど申し上げましたGSDRというもので、今、二〇三〇年に向けて、ちょうど今、二〇一五年にできたSDGsが中間地点に差しかかっておりますけれども、その中間評価を見ています。まだこれ、今年の秋に出るものを、ちょっと出していいものだけをかいつまんで持ってきましたけれども、全体的に進捗速度は減退していると、しかも、幾つかの目標で進捗が反転、つまり進まなければいけないところが後退しているというグローバルな状況です。特に、環境関連、それから公平性関連の目標というのが後退している傾向であるということが分かってきました。それから、一時的なショックですね、コロナ禍、それから気候変動、毎年いろんな影響が出てきますけれども、そういった影響、そして紛争の影響など、こういった影響が非常に強く、そしていろんな分野に広がる形で出てしまっているというのが全般的な状況です。
 その一方で、我々、目標ベースのガバナンスという言い方していますけれども、目標をつくって、中長期的な目標をつくって、そして仕組みを変えていこうという行動変容というのはいろんなところで萌芽は見えているということも分かってまいりました。例えば、プラスチックの利用をやめていこう、減らしていこうというようなこと、動きも、二〇一七年にSDGsの文脈で海洋プラスチックごみ汚染の問題が取り上げられてから世界的に広がっていったということもあって、そういった目標をつくって進むということがだんだん効果を及ぼしているような分野もあるということも分かってまいりました。
 そういった中で、日本の現状ですけれども、既に御案内のように、SDGsという言葉を聞けば大体いろんな人が、あっ、あのことを言っているんだなと分かるぐらい認知度は非常に高いです。世界の中でも認知度は最高レベルと言っていいほど、八割近くの国民がSDGsという言葉は知っているというところまで来ています。一方で、その内容まで詳しく知っているとか人に説明できるという調査結果、まあ結果によってまちまちではありますけれども、非常にこれは低いということで、この聞いたことはあるんだけれども内容までは知らないというギャップが大きいというのが残念ながら今の日本の現状になってしまっております。
 そういった中で、毎年、これは国連が発表しているわけではないんですけれども、国連と連携しているSDSNというところとドイツの財団と一緒に世界的なランキングを出しております。そこを見ていきますと、毎年順位を日本は落としてしまっているというのが現状です。順位を落としてしまっているということ自体もそうですけれども、日本は、経済力を見ると、やはり日本、まだ世界三位を維持しているということを考えますと、経済、社会、環境というこの三つのサステナビリティーを総合的に評価するSDGsがここまで下がってしまっているというのは、やはり社会、環境の分野の遅れというのが目立っていると言わざるを得ない状況かなと思います。そこをいかに経済の課題に統合していくか、それが非常に重要になってくるんだと思います。
 で、SDGsをめぐる日本の制度枠組みですけれども、二〇一六年に、前回のG7の議長国になったときにこの枠組みができています。SDGsができた翌年という、ちょうどその年ですけれども、実施指針ができまして、SDGサミットのたびにこの実施指針が改定していますので、二〇一九年に改定されています。
 その指針の下で、SDGs実施の推進本部というのが本部長、内閣総理大臣の下でできておりまして、その下に我々ステークホルダーの代表が集まったSDGs推進の円卓会議というものがございます。これ一応内閣官房が事務局ということですけれども、実質的には外務省地球規模課題審議官の組織が中心に運営されているという状況になっております。
 御覧になっていただいて分かるように、実施指針ということで法的基盤が非常に弱いというのも一つの特徴になっています。それから、六月と十二月に基本的に推進本部の会合が二回開催されるということが毎年行われていますけれども、SDGsの扱う課題が非常に多い、それから、いろんな盛り上がりを見せている中で、なかなか政策の方向付けをするというところまで行っていないというのが現状のように見えます。
 ということで、円卓会議の方では、二〇二〇年からは分科会というのをつくりまして、より頻繁にミーティングをするということをやってきています。それから、一方で、毎年政策を集めたリストとしてのアクションプランというのがございます。それから、ジャパンSDGsアワードというので、やり方が分からない、決まっていないので、SDGsの場合は褒めようということで、アワードをつくっているという状況になっております。
 そういった中で、ただ、やっぱり実施指針による弱い法的基盤によって、本来、指針の中では司令塔の役割を推進本部が果たしていただきたいというふうになっていますけれども、なかなかそこまでの状況になっていないというのが現状でございます。それから、円卓会議と推進本部もリンクがほぼないという状況になっているところです。それから、アクションプランございますけれども、その進捗はどうであるのか、何を目指しているのか、SDGs、本来目標を定めて進めるべきところですけれども、その目標もよく分からない、それから指標がないので測れないということで、実際の政策実施というところではそれほど、まあ形は整っておりますけれども中身がまだ付いてきていないというのが実質的なところかと思います。
 一方で、自治体であるとか、自治体はSDGs未来都市というのが内閣府の地方創生推進事務局の下に進んでいておりまして、今百五十四の自治体がSDGs未来都市ということで進めております。それから、金融関係も、ESG投資、サステナビリティー投資というのが次第に盛んになりつつあります。それから、企業も、経団連がソサエティー五・〇フォーSDGsということを言っていることを始めとして、大企業、中小企業、いろいろなチャレンジを進めていっています。これは、世界的な潮流がサステナビリティー当然だという中で、そこと競争していくためには、持続可能性しっかりと取り組まなければいけないという認識があるように思います。それから、教育分野、我々のところでもそうですけれども、教育の中にSDGsの考え方あるいはSDGsの目標を検討するということが取り込まれるなど、萌芽と言っていいようなことはいろいろなところで出てきているのが現状です。
 この政策の現状、そして民間での動きということを見ながら、昨年二回ほどSDGs実施指針の改定に関するパートナーシップ会議というのを開催いたしました。これは、先ほど申し上げた円卓会議の民間構成員、我々が主催して進めていきました。まあ本来政府の方で主催していただければ大変有り難かったんですけれども、予算の関係等で我々民間の方で進めていったということで、オンラインベースでしたけれども二回ほどミーティングをして、国民全般のSDGsに関する課題認識というのを拾い上げることをやりました。
 そこで出てきた様々な御意見まとめますと、一つは、総合的、横断的な政策実施の推進というのが非常に大事であると、だが、これはまだ十分なされていないということが言われました。
 例えば、ジェンダー、少子化対策、日本政府の方でもいろいろやられていますけれども、もっともっと推進する、横断的なことをできることがあるんじゃないか。それから少子化、ジェンダー、かなり一緒に政策を推進した方がいいようなこともあるけれども、その調整というのもまだまだしていく余地があるんじゃないかというような考え方が出てきました。SDGsの文脈では、シナジーを強化する、そしてトレードオフを解消していくということをいいますけれども、そういったことをやっていく必要があるだろうと。本日の課題の一つでもあるこの気候変動であるとか、あるいは生物多様性、例えば気候変動対策で木をたくさん植えればいいんじゃないかという話を推進してそれだけを考えてしまうと、逆に同じような木ばっかりになってしまって、生物多様性が損なわれてしまうと。それは極端な話ですけれども、そういった課題間の調整というのが非常に重要になってきているということで、総合的、横断的な政策実施というのが非常に重要であるという認識が示されました。
 それから二つ目ですけれども、環境それから社会政策を経済政策へ統合していく必要があるということで、SDGs、本来は、本質的にはこれ成長戦略であると。特にヨーロッパ諸国を中心として、サステナビリティーが今や国際競争力を決定していると言っても過言ではない状況になりつつあります。
 電気自動車であるとか再生可能エネルギー、それから人権デューデリジェンスですね、ビジネスと人権、そういったものもしっかり守っていないと、なかなか経済政策も進まない、足下もすくわれがちであるということですけれども、この辺りをもっとしっかりと統合していく必要があるという御意見が出てきました。我々の円卓会議の構成員の中にも渋澤健委員がいらっしゃいますけれども、彼なんかも、人的資本へのインパクト投資を重要課題ということに考えるべきだということもおっしゃっています。この辺りの経済政策へのサステナビリティーの統合というのが非常に大事だと。
 それから三点目ですけれども、これは、気候変動にしろパンデミックにしろ、これで終わりになればそれにこしたことないですけれども、これからますます災害、変化というのが多くなってしまう可能性が高いと言われています。そういうことで、次なる災害、変化にしっかりと備えておく、それがSDGsの推進とつながっているということが課題として出されました。
 こういった点をまとめまして、我々円卓会議の方から提言をまとめて、先日、岸田総理大臣の方にお渡ししたところです。
 まず、その軸として、一つ目は、実施指針を改定するとき、今年の年末に予定されていますけれども、これを是非基本法の制定へと持っていっていただきたいというのが一つ目です。
 今、SDGsというと、皆さん、自分でできることを探してできることからやりましょうという形になっておりますけれども、サステナビリティーの問題、これはもう本当、成長する上でも待ったなしだということを発信する上でも、是非基本法を制定していただくということが大事だろうということです。それから、地方自治体、それから企業のレベル、いろんなところで、なかなかこの課題進めようとしても予算化が難しいという声が聞かれています。そういうこともありまして、予算化を着実に進めていくという力になるためにもこの基本法制定が大事だと。それから、何よりもG7、それから今年控えているSDGサミット、リーダーシップ発揮するためにもこういったものを考えていただきたいというのが一つ目です。
 それから二つ目ですけれども、国としてターゲットを是非設定していただきたいということで、実は、SDGsが中心になっている国連のアジェンダでは、各国がこのSDGsのターゲット、より具体的な年限とか数値目標とかを含んだ目標、それを定めるということになっていますけれども、まだ日本でその全体がリスト化されたターゲットというのが設定されてございません。是非これをやっていただきたいというのが提言の二つの大きな柱となっております。
 他国の状況を見ましても、例えばカナダでは、基本法を既に二〇〇八年に制定しておりまして、二〇二〇年にそれを改定しています。戦略を三年ごとに定めているということで、その中で目標、ターゲットを設定したり、ターゲットの所管官庁の設定、実施戦略を立てていったりということをなされています。ドイツも、ドイツは、全ての意思決定に持続可能な開発という考え方を適用するということで、同じく目標、ターゲット、それからそれを測る指標というのを具体的に定めまして、持続可能性の影響を評価する、これを義務化しているという状況でございます。それから、お隣の韓国も、昨年、持続可能な開発基本法というものを制定して、国内目標、それから指標を設定しています。そういった中で、国内、地域の目標を定めたり評価指標を策定するということなどが決まっております。
 こういった事例を踏まえて、提言の中に基本法の構成案というのが出されております。お手元にもこの提言を配付させていただいておりますので御参照いただければというふうに思いますけれども、ターゲットを含む基本方針を定めていただきたいということであるとか、施策におけるSDGsの影響を評価する、あるいはSDGs達成推進戦略本部を設置して、事務局を置いていただき、定常的に政策を推進できるようにすると、そしてその上で、現行の推進本部と円卓会議、政治的な意思決定とステークホルダーの意思決定が今必ずしも一体化していないので、是非一体化していただきたいというようなことを書かせていただいております。
 例えば、二〇〇〇年代初め、インターネットの推進ということが言われていましたけれども、そういったことも基本法ができて初めて政策として推進されたというふうに聞いておりますので、是非こういったことを皆さんで考えていただければなというふうに思っております。
 最後になりますけれども、SDGsに関する今後のプロセス、大きなものを申し上げますと、今年の九月にSDGサミットというのが開かれます。そして、今年G7の広島サミットが行われますけれども、実は次に日本がサミットの議長国になるということになるのは二〇三〇年、このSDGsの目標達成期限の年になります。
 是非、そこに向けて、このSDG達成に向けた加速をするべく変革を促進するというような勢いを付けていただきたいと。そういったことが実は大阪万博にも効いてくると思いますし、それから先、二〇三〇年以降の目標の議論というものも開始されると思います。そういったところでも、日本の考え方をSDGsの次の目標にも入れていくためにも、政治的なイニシアチブを取っていただきたいというふうに考えているところです。
 以上です。

発言情報

speech_id: 121115364X00420230412_003

発言者: 蟹江憲史

speaker_id: 1851

日付: 2023-04-12

院: 参議院

会議名: 資源エネルギー・持続可能社会に関する調査会