高村ゆかりの発言 (資源エネルギー・持続可能社会に関する調査会)
⚠️ コピーしたテキストを転載する際は、転載元URL(kokkai-data.com)および原典URL(kokkai.ndl.go.jp)を必ず残してください。発言内容の改変・出典削除は禁止です。
詳細は利用規約をご確認ください。
○参考人(高村ゆかり君) ありがとうございます。本日は、調査会にお招きをいただきましたこと、この場を借りて、この場でお礼を申し上げたいと思います。(資料映写)
私は法学を専門にしておりまして、特に国際的な法律、条約、国際条約などを専門にしておりますが、その中でも特に環境分野の法を専門にしております。あわせて、二〇一四年頃からだと思いますけれども、国のエネルギー政策、特に再生可能エネルギーの政策に関わらせていただいております。先生方の御承認を受けて買取り制度の運用の委員会を務めさせていただいております。
本日、また限られた時間ではございますけれども、とりわけ昨今の資源エネルギー、そして持続可能な社会をめぐる情勢について、本日は四点大きくお話をしたいと思っております。私、いろいろな資料をたくさん付けてしまう悪い癖がございまして、適宜飛ばして、省略してお話をさせていただこうと思います。
お二人の参考人からもございましたけれども、二〇二〇年に日本が二〇五〇年カーボンニュートラルを目指すという目標を表明して以降、特に気候変動対策、大きく動いてきていると思います。二〇二一年に先生方の御審議を経て改正をされました地球温暖化対策推進法の基本理念の中にこの長期目標は既に盛り込まれております。国、自治体、事業者、国民が対策を取る際の基本理念として位置付いております。
最初にお話を申し上げたいと思いますのは、この気候の分野は、御存じのとおり、気候変動に関する政府間パネルという、IPCCという、科学者が研究成果をお互いにレビューをし合って報告書をまとめていく、そうした母体を持っております。ちょうど最新の報告書の、取りまとめた報告書が三月に出ておりますが、その中で私が重要と思いましたメッセージ、二つございます。
一つが、決定的な十年というメッセージであります。
先生方もお気付きのように、ここ数年を見ましても、特に日本の場合は雨あるいは台風などによる被害が地域で起きております。例えば、二〇一八年は西日本豪雨、七月にございました。岡山県、広島県あるいは九州地方、四国、そして岐阜県などでも大きな被害をもたらしましたが、実に二百名を超える方が命を落とされた水害、豪雨ではございます。
気候の科学の分野で気候変動がこうした異常な気象現象にどれだけ寄与しているのかということを定量的に示すことができるようになってきております。こうした西日本豪雨に関して言いますと、こちらにお書きしていますように、我々の過去の排出によって雨の降る量が上乗せされているという評価をしています。六・七%という、これは気象研究所のグループが中心になったものですが、この六・七%の上乗せが史上最高の降雨を降らせた、四十八時間雨量、七十二時間雨量ですね、史上最高の記録を、雨を記録をした地点を大きく増やしているという評価をしております。
こちらの翌年には、二〇一九年にこちらの首都圏に参りました台風十九号ございました。こちら、実に東日本で百四十六か所の河川の決壊を招いた台風でございます。スライドの七枚目にお示ししていますが、この年、世界で最も大きな経済損失をもたらした自然災害でもございます。二〇一八年、一九年は損害保険会社が一兆円を超える自然災害、気象災害による支払を行った年でもございます。
今お話をいたしましたのは、スライド四に戻りますけれども、気候変動のリスクがかなり現実的な経済損失として生じてきているという認識であります。ちょうどこの三月二十日はアメリカのバイデン大統領が経済報告書を議会に提出をしましたけれども、そのアメリカ経済に与えるリスクの一つとしても気候変動というのが挙がっております。
このIPCCの報告書がなぜ決定的な十年というメッセージを私出してきたかといいますと、パリ協定の掲げる目標の達成には、遅くても二〇二五年までには世界の温室効果ガスの排出量を頭打ちにするような対策が必要だということを記しております。こちらにその一・五度目標、二度目標、これはパリ協定で合意をされた目標ですが、三五年、四〇年、五〇年と、どれぐらいの規模感で排出を減らしていく必要があるのかということを示唆している科学の知見をまとめたものでございます。
二つ目のこの報告書のメッセージとして申し上げたいのは、二〇一四年の先立つ報告書から数年の間で、目標の引上げ、政策、法令というのは、極めて大きく日本だけでなく拡大をいたしました。課題は、それを本当に効果のあるものとして実施ができるかどうか、実施ができているかどうかというところに課題があると評価をしています。
こうした中で、スライド飛ばさせていただきますけれども、今、それではどこが課題かということで、スライドの十三枚目のところを御覧いただければと思います。
今の我々の社会のありようそのままで参りますと、二一〇〇年には二度を超える気温の上昇がもたらされるおそれがある。本日、資料飛ばしましたけれども、気温が上がっていきますと、先ほど申し上げた気候の変化が更に大きくなるという予測も報告書は示しております。
日本も二〇三〇年の目標を大きく引き上げたことで、これは世界も大きく引き上げたわけですけれども、世界各国も引き上げたわけですが、世界の排出量は下方に転じる、減少に転じる機会を今直面をしております。そういう意味では、今の掲げている対策をしっかり取っていくということがまず第一に重要であるということであります。先ほど言いました、目標は出た、これをどうやって魂の入ったものにするかということが課題であります。
しかし、もう一つの課題は、一・五度といった目標と照らしますと、それでもなお三〇年に世界が必要とする排出量を実現できる目標にはなっていないということです。五〇年、六〇年時点の長期の目標はかなり整合したものになっているわけですが、三〇年の時点で見ると、その目指したい気候変動のリスクができるだけ抑えられた社会の実現ということが難しい道筋に我々の三〇年辺りの政策の水準があるということです。
それゆえに、この十年ほどの間に、このまま推移をしますと、三〇年、それを越えた頃には一・五度を超えてしまうおそれがあるということでもあります。それゆえに、決定的に重要な十年というメッセージです。
じゃ、これをどうやって埋めるかということでありますが、当然、あと数年、まあ十年ほどの間ですと、今手元にある実は技術でその足りない部分を埋めることができるという分析が、エネルギー分野について少なくとも国際エネルギー機関から出されています。他方で、将来を見たとき、更に大きく削減をしていくためには新しい技術も必要です。
したがって、私たちは、これは私たち研究者もそうですし、同時に、まさに政策をおつくりになる政策決定者のところで必要だとお願いをいたしたいと思いますのは、今、二足のわらじを履いていただく必要がございまして、足下でいかに将来の持続可能な社会実現のために対策を強化できるか、そして、更にその先のより良い持続可能な社会づくりのためにどういう仕込みが、新しい技術の開発も含めてどういう仕込みができるか。少し時間軸が違う、しかし今まさにやらなければいけないことが二つあるということであります。
二点目でございますけれども、先ほど申し上げましたように、先生方のこの国会におきましても、日本でも多くの実は法令をこのために制定をしていただいております。
スライドの十九枚目でございます。
特に、二一年、二二年の通常国会見ていただきますと、プラスチック新法を始めとして、多くの脱炭素あるいは持続可能な社会実現のための、まさに魂を込める法改正が行われております。
その具体的なやはり狙い目といいましょうか、焦点が二つあると思っていまして、一つは地域であります。まさに、その人々が住んでいる、スライドの二十一辺り御覧いただければと思いますが、自分たちの地域を排出をできるだけ抑えた持続可能な地域にしていきたいという取組が先行的に動いてきております。見ていただきますと、それぞれの自治体に加えて、企業、金融機関も協力をしてその地域の取組を進めています。
その中で、スライドの二十四でございますけれども、もちろん脱炭素化のためではあるわけですが、この脱炭素化を進める中で地域の諸課題を解決する取組というのが進み始めています。
これは千葉県の睦沢町の取組ですが、ちょうど台風十五号で千葉県房総域で停電が起きたときに、再生可能エネルギーとコジェネレーションをちょうど直前に入れて、これが停電期間中の住民の生活を守ったという取組の御紹介であります。
さらに、今、農業人口が極めて大きく減ってきている、高齢化も併せて直面しているわけでありますけれども、こちらは千葉県の取組、千葉県匝瑳市の取組ですけれども、発電事業をしながら、そこで得られた収益で、例えば不法投棄、農地に不法投棄をされた廃棄物の撤去ですとか、あるいは若手の農業者の育成支援といった形でこうした収益を充てていく取組が進んできております。
ここで申し上げたいのは、カーボンニュートラル、脱炭素の取組というのは、うまく設計をするとこうした地域が抱える課題についても対処ができる可能性を持っているという例としてここで御紹介をいたしました。
もう一つ焦点が当たっているところというのは企業でございます。日本の気候変動政策も大きく変わってきていると思っておりまして、一つは、もちろんこれは環境対策なのでありますけれども、大きく脱炭素に向けて変わる日本と社会のマーケットに対応した産業の競争力強化、産業政策として行われているという点であります。それは同時に、民間ベースでも気候変動を中心にサステナビリティー、持続可能性を考慮した企業経営に着目をして、金融市場、金融機関や、まとめて言えば金融市場、資本市場がそれを評価し始めているという点であります。
皆様御存じのとおり、ESG投資という言葉、耳にされている、環境あるいは人権など、こうした環境、社会配慮を考慮をした投資というのが元々二〇一五年辺りから世界的に進み始めていたわけですけれども、それを大きく、民間ベースで行われてきたこうした取組を大きく拡大するためには、企業自身がそのサステナビリティーを考慮をした取組を情報開示していただかないといけない。この情報開示、ディスクロージャーを政策で支えるという動きであります。
これはスライドの三十一でございますけれども、金融機関自身が既に、自身の排出削減はもちろんでありますが、例えば今、三つのメガバンクさん、フィナンシャルグループは二〇三〇年までに自社の排出をゼロという目標を掲げていらっしゃいます。今、その目先、目線といいますのは、世界的には、投融資をしている先の企業や団体の排出量を五〇年頃には全体としてゼロにするという目標であります。こちらに、機関投資家ですとかアセットマネジメント会社、資産運用会社、そして、今申し上げました銀行、保険会社でこうした取組を世界的に協力して進めている日本企業のお名前を紹介をしております。
今、ディスクロージャー、情報開示というお話を申し上げました。スライドの三十四でございます。
民間ベースで進んできたこの取組が、今、国際的に統一した情報開示の基準を設定をして、それを使ってもらうという動きに変わってきております。今まではばらばらと民間の企業が、民間の団体がですね、この情報開示の指針を作ってきていたわけでありますけれども、それを国際的に統合した基準を設定するようになってきています。
日本におきましても、これに対応する形で日本版の基準を設定をすることが始まっております。さらには、金融庁を中心に審議をし、審議会で審議をして、有価証券報告書の中に、ですから、上場企業については、こうしたサステナビリティー情報の開示の義務化がこの三月末以降に有価証券報告書を出す企業に対して求められるようになっております。こうした動きは、先ほど申し上げました自社の排出量だけでなく、自社のビジネスに関わるサプライチェーン、バリューチェーン全体の排出を削減をし、まず把握をし、管理をし、削減をし、そして将来的にはゼロにしていくという、こうした取組と結び付いているものであります。
スライドの三十六。
御紹介しておりますけれども、日立製作所、ソニーグループ、先ほど三つのメガバンク、フィナンシャルグループ御紹介いたしましたが、日立製作所は五〇年まで、ソニーグループは四〇年までにこれを取り組んでいく、自分たちのビジネスに関わるサプライチェーン、バリューチェーンの排出量をゼロにしていくという動きです。
これ、グローバルな動きになっておりまして、マイクロソフトの例、サプライヤー選定の際にこの排出量の取組を見てサプライヤーを決める取組、アップルでありますけれども、再生可能エネルギー一〇〇%でアップル製品を作ってくれるようにサプライヤーに働きかける取組、こうしたグローバル企業の取組に対応するものでもございます。
こうした機会は日本企業はむしろ先駆けてビジネスチャンスとして動いている企業もあるという御紹介がスライドの三十九でございます。
データ処理というのは当然ビジネスの場面で排出の源になる、排出源にもなり得るわけですけれども、それを再生可能エネルギーでゼロエミッションのデータセンターを、データ処理を提供するというのを、北海道、再生可能エネルギーのポテンシャルの大きな北海道石狩市と協力して行われているものであります。これは、先ほどありました脱炭素のモデル地域としても選定をされている地域であります。
さて、三つ目に申し上げたい点といいますのは、今、カーボンニュートラルを中心にお話を申し上げましたけれども、この問題が、資源循環、サーキュラーエコノミー、そして生態系の保全、自然の再興といった問題と結び付いたものとして認識をされ始めたということであります。
もう先生方には当たり前のことと思われるところがあるかと思いますけれども、元々、ここ、プラスチック見ていただくと、海洋汚染、海ごみの問題として認識されたわけですが、汚染の問題、健康の問題、そしてさらには、それを焼却をしたときの温室効果ガス、気候変動の問題とも連関している典型的な問題です。
生物多様性の悪化がここ数十年の大きな減少を、ここ数十年、生物多様性が大きく減少してきていますが、その原因の一つとして科学者が評価をしていますのは、我々の土地や海の利用に加えて、気候変動というのが入っています。
また、気候変動に本当に対処をしていくとすると、バイオマス、バイオ資源をうまく使っていくことも必要です。こうした気候変動、自然生態系の保全との連携に加えて、昨今、スライド四十六でございますけれど、注目されていますのが、気候変動とサーキュラーエコノミー、循環経済との関係であります。
世界の排出量に占めるマテリアル生産に由来する排出量がかなり大きなものにこの数十年でなってきている。しかも、バージン材ではなく再生材をうまく利用していくとCO2の削減効果があるということも、環境省あるいは経産省の報告、調査の中でも分かってきています。
日本は3Rといった形で、こうした資源循環には非常に熱心な、もったいないという言葉に象徴されるように非常に熱心な国民性と政策があるわけですけれども、まさにこうした資源循環、循環経済の実現が排出削減にも気候変動の問題にも貢献し得るという問題であります。
ただ、もう一つ、先生方へのメッセージとしてもう一つ申し上げたいのは、この問題は国の経済安全保障、資源安全保障の点からも重要だという点であります。
今、大きくエネルギー転換をしていこうと、カーボンニュートラルに向けてしていこうとしていますけれども、それに伴って必要な鉱物が、スライドの五十一でございますが、大きく変わります。
必要な鉱物の所在というのは、いずれも鉱物はどこかに集中して偏在しているケースが多くございますけれども、資源に乏しい日本としては、獲得をした資源をできるだけ丁寧に使い尽くす戦略、あるいは偏在している資源に依拠しないために新しい素材を作り出している技術政策、こうしたものとともに進めていく必要があるというふうに思っております。
最後でございます。二〇二二年の二月、ウクライナ侵攻を経てなおその状況の中で、とりわけエネルギー、食料、様々な分野で影響が出ています。ここでお示ししているのは、特に化石燃料価格の上昇を見ていただきますと、二〇二二年から約半年の間で石炭の価格上昇、大変顕著であり、原油、天然ガスについても同様であります。
円安の傾向も、円安の理由もございますけれども、輸入量は変わらないけれども、日本が輸入し対外的に払うお金というのはこの一年で三倍以上になっております。世界的に見ますと、エネルギー消費をできるだけ減らすエネルギー需要側の対策、そしてエネルギー供給をできるだけ国産化、内製化していく、そうした取組というものが進んできています。
これはお金のレベルでスライド御覧に入れていますが、まさにこうした中でこそと言えるかもしれません、再生可能エネルギーの投資は史上最高の五千億米ドルに近づいておりますし、同時に、先ほど言いましたエネルギー需要側の投資というもの、こちらは熱の電化、交通の電化、そして新しい持続可能な、例えばバイオマスを使った燃料の創出、こうしたところに大きなお金の流れが生まれております。
その結果、二〇二二年、大変懸念をしておりましたけれども、経済成長三・二%、世界的にGDP三・二%増えたのに対して、全体としての排出量の伸びは大変幸運なことに〇・九%増になっています。しかし、史上最高の排出量を記録したということでもございます。
企業の取組は、このウクライナ侵攻下の様々な状況の中でも、特にネットゼロを掲げる大排出企業の取組は進んできております。いかにこうした素材価格やエネルギー価格の高騰に対処をしながら、しかし将来的にはエネルギーの内製化、資源の内製化がより強靱なエネルギーシステムと資源システムを日本にもたらすとすると、私はここに政策の大きな役割と期待を感じております。
最後でございます。今日、お二人の参考人もおっしゃった一つのキーワードは、変化だというふうに思います。大きく変化をしている、しかも持続可能な社会に向けては大きく変化しなければならないという課題の中で、私は政策に大きな期待をいたします。それは、先ほど申し上げましたように、単に一つの課題だけではなく、うまく政策を設計できるとすると社会が掲げるそのほかの課題にも貢献することができるという点であります。まさにそうした政策の構想力というのが今問われているというふうに思っております。
先ほど、短期的な視点と、今行っていただく対策として今何をするかと同時に、更にその先を見据えた二つの時間軸の違う対策を考えていただきたいというお話をいたしました。これ、今、短期をなぜと申し上げますのは、まさに決定的な十年という気候変動対策や生物多様性の保全の観点からもそうですが、企業にとってみますと、今まさに事業の中で収益が上がって投資を振り向けることが、将来の新しい技術を生み出していく、将来の新しいビジネスモデルをつくっていくために必要だからです。
今申し上げましたのは、いかにこうした民間主体の取組、地域の主体を後押しをしていく政策というのが非常に重要であること、そしてこうした政策の中で、経済安全保障や資源の安全保障、エネルギーの安全保障をいかに実現していくか、こうした観点から、先生方に大きな期待をし、今日の議論を楽しみにしております。
どうも御清聴ありがとうございました。