細谷雄一の発言 (財政金融委員会、外交防衛委員会連合審査会)

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○参考人(細谷雄一君) 今日は、このような貴重な機会に発言をさせていただけますこと、大変光栄に存じます。
 私の方からは、今、国際環境は大きく変わりつつあります。その国際環境が大きく変わりつつある中で、このような防衛費の問題どのように考えたらいいか、防衛力の増強の問題をどのように考えたらいいかということを三点を強調してお話をさせていただきたく存じます。
 その前に、まず冒頭に大砲とバターのお話をさせていただければと思います。多くの方は御存じのとおり、大砲とバターという言葉が一世紀ほど前からしばしば使われるようになりました。大砲とは防衛費、軍事費に国家の予算を使う。そして、バターとは社会保障や経済のために予算を使うと。どちらにより多くの支出をするかということは、多くの国にとってこの一世紀、常に大きな悩みであり難しい課題でございました。言ってみれば、そのどちらも必要ということを前提にすれば、その中でどのような最適な均衡点を見出すかということが、恐らくは優れた政治の課題だったんだろうと思います。
 そのように考えたときに、この参議院の場で財政金融委員会、そして外交防衛委員会の先生方が集まってこのような連合審査会をなさるということは、この均衡点を見出す上では最良の機会ではないかというふうに考えてございます。
 一方で、イギリスの歴史家で「大国の興亡」という本を書いて一九八〇年代に随分と話題になりましたポール・ケネディという歴史家がおりました。私の専門がイギリス外交史でございますが、このポール・ケネディは幾つかの本の中で、十九世紀のパックス・ブリタニカのイギリスの強さの根拠とは、十分な軍事力を持っていたことと健全な財政が背後にあったということ、このどちらもがパックス・ブリタニカの強さの秘密であると。
 そう考えますと、実は余り十分に考慮されないこの財政の健全さというものが国の強さの根底にあるということを考えますと、改めてこの最適な均衡点、大砲とバターの最適な均衡点というものが重要だということがうかがえるような気もいたしております。そのように考えますと、安全保障環境が改善すれば、当然ながら平和の配当と呼ばれるより多くの支出をバターのために使える。一方で、安全保障環境が悪化すれば、好ましくないと多くの人が考えるだろうけれども、やはり多くの支出を防衛費、軍事費に使わざるを得ない。
 そう考えますと、今の日本が、これ一点目でございますけれども、戦後最も厳しく複雑な安全保障環境に直面している、これは岸田総理の言葉でございますけれども、このことが現在のような形で防衛費、防衛関連費というものを増加させる大きな必要の根拠になっているのだろうというふうに感じております。
 日本は現在、かつてないほど厳しい安全保障環境の中にございます。日本は、世界の中でも最も不安定で、最も軍事衝突が発生しやすいと考える地域に位置してございます。このことは既に多くの方々が、こちらでも御指摘されていらっしゃる方もいます。そのような中で、日本は防衛力の強化を通じて、侵略や軍事攻撃を未然に防いで平和を維持するための抑止を強化して、さらには安全保障上の同盟国やパートナー諸国との安全保障協力を強化することが喫緊の課題になっているのだろうと思います。
 既に多くの方が御存じかと存じますけれども、今から二年前の三月十日には、アメリカのインド太平洋軍のフィリップ・デービッドソン司令官が、アメリカの上院軍事委員会の公聴会で、今後六年以内に中国が台湾を侵攻する可能性があると証言しました、これは二〇二七年ということになりますが。これについては多くの議論がございます、賛否多くの議論がございますが、今年の一月に日本に来て発言した際に、この退官されたフィリップ・デービッドソン氏は、今年の一月の自民党本部での講演では、この自らの認識に変わりはないということを発言してございます。
 さらには、昨年の秋でございますけれども、アメリカ海軍のマイケル・ギルディ作戦部長が、中国による作戦、中国による台湾侵攻が二〇二三年までに起きる可能性は排除できないという見方を示しました。多くの専門家は、必ずしもそこまで中国の軍事侵攻というものを喫緊の問題とは捉えてございませんが、しかしながら、この地域の安全保障環境が悪化しているということは恐らく疑いがないのではないかと思います。
 さらには、トランプ政権での対中政策を担当したマット・ポッティンジャー氏が日経新聞の取材に対して、日本の戦略が決定的な抑止力になるという発言をしております。つまり、日本の抑止力というものによって中国の軍事行動に大きな影響を与えられるということが発言の趣旨だろうと思います。
 そして次に、三ページに移りまして、今日、本日お話ししたい二点目でございます。
 そのような安全保障環境の悪化というものを背景としまして、世界全体で防衛力強化が急速に進んでございます。これはもちろん望ましくないことでございますけれども、それを前提に日本の防衛政策というものも考えなければならない。このような安全保障環境の悪化ということを受けて、世界の主要国は過去二十年ほどの間に防衛費を増大させて、そして防衛力を強化してきました。
 例えば、資料の九ページの表の四を御覧いただきますと、アメリカと中国がこの過去二十年間にいかに軍事費を広げてきたかと、この二つの国が今や世界を動かす大きな原動力となっているということでございます。そして、それ以外の国々、特にNATO諸国も、GDP比で二%の防衛費支出というものを数値目標として、それぞれが防衛費を増額しているのが現状でございます。
 ドイツ、イギリス、フランスのような主要な民主主義国は、当然ながら国内では大きな問題がございます。コロナ禍での財政支出も増え、そして今はインフレ、そしてエネルギー価格の高騰と、まさに国民はバターを求めて大きな声を上げているわけでございますけれども、そのようなドイツ、イギリス、フランスでも今後急激に防衛費を増やす必要というものが指摘されて、ドイツでも、日本同様に国内のGDP比で二%超へと国防費を増やすということが国内で議論され、政府から提案がされました。
 続いて、今度は四ページ目の三番目、最後に私が申し上げたい点ございますけれども、このような世界の大きな潮流の中で、やはり国際社会で日本は責任ある主要国としての義務があるんだろうと思います。
 これは、日本が今年、G7サミットの議長国として広島サミットで大きな役割担った、その中で、首脳コミュニケの中で、我々は、より安全で豊かな未来を築くため、中核となる外交政策及び安全保障上の課題に対して結束する。また、我々は、差し迫ったグローバルな課題に対処し、国際システムがこれらの課題に効果的に対応できることを確保するために、幅広いパートナーと共に取り組むという決意を再確認する。言わば日本は、フリーライダーとなって国際社会において十分な責務を果たさないような国家ではなく、やはりその主要国として、責任ある大国として国際社会の平和と安全のために十分な役割を担うべきだろうというふうに考えております。
 昨年の二月のロシアによるウクライナ侵攻以来、先ほど申し上げたとおり、日本を取り巻く安全保障環境はより一層悪化し、さらにはAIや無人機、ミサイル技術などの開発が加速してございます。そのような現状を踏まえますと、旧来型の装備や技術というものが日本の防衛力を考える上では日本の弱さになってしまうと、技術開発というものを著しく向上させなければ、このような安全保障環境の中で日本が取り残されて、旧来型の装備というものが日本の安全を守る上では十分でなくなってしまうということが言えるのだろうと思います。
 当然ながら、日本にとっては、このような侵略、軍事攻撃が発生しないように、同盟国との信頼関係、協力関係、さらには政府が繰り返し述べているような法の支配に基づいた国際秩序を強化することによって軍事力を使わなくてよいような国際環境をつくることがまず最初に必要でございますが、同時に、そのような秩序が大きく崩れ、今回のウクライナがロシアに侵略されたように、全く想定外の形での軍事衝突が発生したときに、やはり日本政府が、日本国民の安全を守り、日本を防衛をする十分な力を持ち、また、それが発生しないような十分な抑止力を持つということも必要になっているというふうに考え、今回の法案を私は支持いたします。
 私からは以上でございます。

発言情報

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発言者: 細谷雄一

speaker_id: 15406

日付: 2023-06-06

院: 参議院

会議名: 財政金融委員会、外交防衛委員会連合審査会