細谷雄一の発言 (財政金融委員会、外交防衛委員会連合審査会)
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○参考人(細谷雄一君) 堀井先生から大変貴重な御質問をいただきました。ありがとうございます。
なぜ国際社会はウクライナに対するロシアの侵略を防ぐことができなかったかということは、我々日本の将来の防衛を考える上でも極めて重要な御指摘だと思っております。
基本的には、国際社会の中で安全を確保するための手段は、私は三つあると思っております。一つが国連による集団安全保障システム、二つ目が同盟国との関係に基づいた集団的自衛権、そして三つ目が個別的自衛権に基づく自主防衛ということになるわけでございますが、元々日本国憲法は、国際社会の正義、信頼、公正や信頼に基づくと、こういう国際社会に対する信頼というものを日本の安全の基礎に置いているわけですが、国連の集団安全保障システムが機能するためには国連安保理の五大国の一致がなければ動きません。これは言い換えると、今の米中対立、あるいはアメリカとロシアとの対立というものがかつてないほど国連というものを機能させなくしてしまっている。
これ、大変嘆かわしいことでございますけれども、その結果として、日本もウクライナも、あるいはその他の諸国も同様でございますけれども、自国の安全を守るためには個別的自衛権に基づく自主防衛、自主、自分たちで自分たちの国を守るということ、そしてもう一つは同盟国との関係、この二つしかないわけでございます。日本が中国という日本の五倍近い防衛費を持った、軍事費を持った国に対して防衛をするということになりますと、これは単純に考えても膨大な軍拡というものが必要になるわけでございますから、私は、アメリカとの同盟関係というものに基づいて日本の安全を守るということは適切な施策だと思っております。
一方で、ウクライナは、一九九四年、ブダペスト覚書、これは今のOSCEのブダペストでの首脳会議で開かれたものですが、このブダペスト覚書で、自国に配備されている旧ソ連時代の核兵器を廃棄することに抵抗しておりました。自分たちの国家安全保障が確保されなければ核兵器は手放したくないんだと。それに対して、当時の細川政権、実は細川総理は電話でウクライナの大統領に非核化のために核兵器を放棄してほしいというふうにお願いをしているんですね。そのため、日本は核兵器廃棄のための技術支援や経済支援を行っております。そして、そのために、十二月にブダペスト覚書でアメリカとイギリスとロシアがウクライナの国家主権と領土というものを守ることを約束しているんですね。ウクライナは核兵器を放棄するときに、あくまでもこのイギリス、アメリカ、そしてロシアによって国境線が守れる。
当時、ウクライナが最も懸念していたのはクリミア半島です。当時、ロシアの中で右派民族主義は評価されておりまして、クリミア半島を奪還せよという声が出ておりました。したがって、そのクリミア半島が将来ロシアに軍事攻撃を受けて失うということを恐れて、それに対する保障を求めました。それがブダペスト覚書です。
したがって、二〇一四年のロシアによる一方的なクリミア半島の併合と、そして昨年二月以来のロシアによる侵攻は、このブダペスト覚書を違反し、それだけではなくて、国連憲章、さらには国連憲章の二条四項、さらには一九七五年のヘルシンキ最終議定書、全て違反するものでございます。
つまり、ウクライナは、国際社会に信頼し核兵器を手放し、そして自分たちの領土を守るという決意をしたわけでございます。しかしながら、二〇一四年にロシアの侵略によってそれが裏切られてからは、急速に八年間防衛費を増強しました。当然ながら、日本よりもはるかに経済的な脆弱なウクライナで防衛費を増強するということは大変なことでございますけども、その八年間にもしもウクライナが防衛費を増強していなければ、間違いなく今回は一週間もたずにロシアに占領されて、今やかいらい国家になっていたかもしれません。
つまり、ウクライナの主権と国家の独立が保たれたのは、二〇一四年以降、ウクライナが国家の防衛のために防衛費を増額したということが今のウクライナという国家の存続につながっているということを考えますと、もちろん大砲とバターということで、国民がより多くのお金をバターに求めるのは当然でございます。しかしながら、国家存続のために今の厳しい安全保障環境の中でやむを得ず大砲のためにより多くの国の財政を支出しなければならないというのが、これウクライナのみならずヨーロッパの多くの国々の現在の大きな潮流だろうというふうに思っております。