階猛の発言 (憲法審査会)
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○階委員 立憲民主党の階猛です。
前回の当審査会で、自民党の中谷筆頭は、憲法改正や国民投票は、国民に理解していただくためにはプロセスや内容が非常に大事だと発言されました。
その後、岸田首相は、来年九月までの自民党総裁任期中の憲法改正を目指す旨、答弁しました。
中谷筆頭に伺います。
岸田首相のこの答弁を受けて、前回の見解に変わりはないですか。変わりがないとすれば、岸田首相の言われる来年九月という期限に当審査会は縛られないというお立場だと理解していいですか。後ほどお答えください。
そもそも岸田首相は、憲法改正の期限にはこだわるものの、改正の内容についてはこだわりが見えません。二十二日の予算委員会でも、三木委員から、緊急事態の際の議員の任期延長について憲法改正議論を進めることについて見解を問われ、答弁を避けました。憲法改正の期限については自民党総裁の立場を持ち出して積極的に答弁しつつ、憲法改正の内容については内閣総理大臣の立場を持ち出して答弁を避ける、これは極めて御都合主義です。
今に始まったことではありませんが、岸田首相は、ぶれずに一貫した言動を取るべきです。仮に内閣総理大臣の立場にこだわるのであれば、行政府のトップとして憲法尊重擁護義務を負う以上、憲法改正の期限に言及すべきではありません。他方、自民党総裁の立場にこだわるのであれば、憲法改正の内容を示さずに改正の期限だけを指定するのは、建築工事の発注において、設計図を示さずに完成時期を指定するようなものです。立ち位置が定まらない岸田氏の発言は百害あって一利なしだと申し上げておきます。
さて、憲法に関し、国会が何を優先して議論すべきか。今年五月の朝日新聞の世論調査が参考になります。
それによると、七項目の中からの複数回答で、一位が憲法改正のための国民投票の在り方で四六%、二位がデジタル時代における人権保障の在り方で四四%、三位が敵基地攻撃能力の保有で四三%です。緊急事態時の国会議員の任期延長は一八%にすぎず、下から二番目です。
我が党は、国民が最も関心を持っている上位二つのテーマにつき、通常国会終了後にワーキングチームをつくり、私が座長となって検討を進めてきました。このうち、憲法改正のための国民投票の在り方については、後ほど奥野委員と中谷委員から発言する予定です。
もう一つの、デジタル時代における人権保障の在り方については、生成AIの急激な発達、普及や戦闘地域でのフェイク情報の拡散により、先ほどの世論調査の時点よりも更に国民の関心は高まっているのではないでしょうか。
私たちは、インターネットとSNSの普及に加え、昨今のAIやデジタル技術の急速な進展が国民に多くの恩恵をもたらしていることを否定するものではありません。他方で、利用者の関心を引きつけることを重視するアテンションエコノミー、対象者の特性や個人情報を分析し、嗜好や行動パターンを推測して情報提供するマイクロターゲティングの悪影響は看過できません。そして、こうした手法などにより、個々人が自分の趣味、嗜好に合う情報だけに取り込まれてしまうフィルターバブルや、同じような意見を持つ者同士で議論を重ねて極端な考えに至るエコーチェンバーという現象が見られるようになっています。
また、誤情報、偽情報といった有害無益な情報や他者を傷つける情報が拡散し、周知されやすくなる一方、本来拡散、周知されるべき公共の利害に関わる重要な情報については、公権力による廃棄、隠蔽、改ざんや報道機関への圧力によって拡散、周知されにくくなっている状況が生じていることは極めて問題です。
これらの結果、社会の分断が進み、民主主義の前提たる建設的な議論が困難になるほか、個人の意思形成過程がゆがめられ、内心の自由が侵される憲法十九条の問題、本人に無断でその人物像が形成、利用され、個人の人格的自律が脅かされる憲法十三条の問題、匿名による無責任な誹謗中傷や個人情報の発信、拡散により名誉権やプライバシー権が侵害される同じく憲法十三条の問題、国民が本来入手すべき情報を入手できないことにより言論の自由や取材、報道の自由が空洞化する憲法二十一条の問題などなど、数々の憲法問題が現に生じたり、将来生じたりする危険が高まっています。
以上の問題を解決する方法として、現状の憲法規範には手を加えず、法令で必要な措置を講じるべきか、それとも、憲法規範そのものを必要な範囲で見直すとともに、これを具現化する法令を制定していくべきか、両論あり得ると思いますが、議論に際しては、憲法が志向する国家観が大きく変容してきたことを念頭に置くべきと考えます。
すなわち、十九世紀以前の憲法は、夜警国家を志向し、国家の役割は極力限定して、国家からの自由を保障することが中心でした。しかしながら、産業資本主義と都市化、工業化の進展により、二十世紀の憲法は、福祉国家を志向し、国家による自由を保障するようになりました。そして、二十一世紀の今、金融資本主義とグローバル化、デジタル化の進展により、憲法は、情報国家、つまり、国民の自己実現と自己統治にとって不可欠な思想、言論の自由市場を機能させるために国家が積極的な役割を果たす国家、これを志向する必要があるのではないでしょうか。
こうした歴史的視座に立った場合、情報国家にふさわしい憲法はどうあるべきかというテーマは極めて重要です。憲法改正という選択肢も視野に置きつつ、党派を超えて建設的な議論を行うべきです。
最後に。この会議室では、これまで、国会議員の任期を延長すべしという意見があちらからもこちらからも上がり、響き渡ってきました。これぞまさしくエコーチェンバーであります。当審査会が、時代や民意から隔絶されたフィルターバブルに陥ることなく、国民が真に望む重要なテーマについて腰を落ち着けて虚心坦懐に議論する場となることを切に望みまして、私の発言を終わります。