田中雄二郎の発言 (文部科学委員会)
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○田中参考人 おはようございます。東京医科歯科大学の田中でございます。
この度は、本学と東京工業大学との統合について、その点も含みます国立大学法人法の一部を改正する法律案について御審議いただいておりますことに心から御礼を申し上げます。
私、その該当する大学の当事者でございますので、私の陳述は、法人統合及び大学統合についてということでお話をさせていただきたいと思います。
お手元にありますような資料の一ページ目にあるのが東京工業大学と医科歯科大学のキャンパスの写真でございますけれども、次のページを御覧いただけますでしょうか。統合に至る経緯を簡単にお話しさせていただきます。
令和三年、今から二年前になりますけれども、秋に本学から東京工業大学の方に打診し、令和四年の春に統合形態について東京工業大学から御提案があり、ここに記されているとおりの経過で、八月九日から法人としての協議を開始して、十月には基本合意書を締結し、そして本年の一月に新大学の名称候補を公表させていただきました。
次のページを御覧ください。その統合形式ですけれども、先行事例としては一法人複数大学というのもありましたけれども、私どもが選択したのは一法人一大学、つまり、東京医科歯科大学と東京工業大学が一つの新しい大学になるということでございます。
次のページにその理由が書かれています。まず、一法人一大学として考えた最大の理由は、シナジー効果ということであります。両大学には重なる学部がほとんどないことから、統合に対する抵抗といいますか、そういったものもより少なく、一緒になることのシナジー効果の方が大きいと考えたからです。また、一から組織を見直すことができて、自由でフラットな文化、これはこれから私の陳述で再三出てくる言葉ですけれども、の組織を創造して、チャレンジしやすい環境をつくれると考えました。
次のページ、資料五ページを御覧ください。統合に至った背景について御説明させていただきます。
これまで両大学は、指定国立大学法人として、広く理工学及び医歯学に関する知見を創出して、そして自在に応用できる人材を育成し、産業の発展や医療の進歩に貢献してきたと自負しております。
しかし、今、私たちは、これまで想像し得なかった地球環境の悪化、それからコロナに代表される新興・再興感染症の世界的流行、少子高齢化の急速な進行など、様々な課題に直面しています。こういう地球規模の課題や、さらに今後起こり得る未知の問題の解決に向けて、両大学は、その知を結集して大きな役割を果たすことを社会から期待されていると認識しております。
次の六ページを御覧ください。社会からの期待というのは様々な形で測ることができると思いますけれども、一つの側面として、大学発ベンチャーの業種別割合を見てみました。
ここにありますように、これは、見にくいんですけれども、過去五年間の大学発ベンチャーの数が年々伸びていることを表していますが、分野別に見ると、下の棒グラフにありますけれども、バイオ、ヘルスケアが三〇%、東京工業大学との統合によって得られる領域はおよそ八〇%を占めるというふうになりまして、これだけを見ても、やはり社会のニーズというのはこういう組合せにあるのではないかというふうに考えた次第です。
その次のページ、七ページを御覧ください。統合の目的です。
これまでの実績、伝統、東京工業大学が百五十年、医科歯科大が百年になりますけれども、その伝統と先進性を生かしながら、統合によって、かつてどの大学もなし得なかった新しい大学の在り方を創出したいと考えました。そして、両法人の統合と新しい大学の設立を実現して、国際的に卓越した教育研究拠点として社会とともに活力ある未来を切り開くという決意を固めました。
どのような大学を目指すかについては、資料八ページに記載させていただきました。
まず第一は、それぞれの大学が行ってきた、とがった研究を更に推進するということであります。
第二は、部局等を超えて、理工学、医歯学、さらには、リベラルアーツ、人文社会科学のみならず、芸術を含む様々な学問領域を自由な発想で結合した総合知によって、コンバージェンスサイエンス、異分野融合科学を展開することであります。
三点目として、この総合知に基づいて未来を切り開く高度専門人材を輩出して、社会に貢献するということであります。
四番目は、新大学の在り方、組織文化として、全ての構成員に対して多様性、包摂性、公平性を持つ、そういう文化を創出して、その文化の下で、世界に開かれた知の創造と人材育成の場をつくっていきたいと考えました。
資料九ページを御覧ください。ここでは、新大学のキーワードであるコンバージェンスサイエンスについて御説明させていただきます。
スライドの下にありますように、現在、東京工業大学も東京医科歯科大学も、グリーンエネルギーから再生医療まで幅広く先端的な研究を推進しております。この二つの大学が統合することによって、統合時には、地球環境科学、生成AI医歯学、量子医歯科学のような、地球環境やウェルビーイング、トータルヘルスケアといった地球課題に直結する科学を創造することができると考えています。
さらに、その未来は私たちの予期しないような課題が生まれてくると思いますけれども、それに対しても、柔軟な組合せで新しい学術領域をつくって、社会とともにそれを解決していきたい、そういう存在になりたいと考えております。
資料十ページです。こういうコンバージェンスサイエンス、分野を超えた学問の融合というのはいろいろな形で生まれてくると思います。既に多くの大学で医学部と理工学部を持っておりますけれども、私たちはそれを更に進めたいと考えました。
スライド下に総合研究院というのがありますが、これはいわばボトムアップの研究院でありまして、研究者同士が自然に交流して自然発生的に新しい異分野融合の研究が生まれること、それを意図したものであり、それを大学として応援することを考える、その研究院であります。
しかし、他方、スライド上にあるような未来社会創成研究院では、そのときの大学が重点領域と考えた分野に研究者が集まるようにインセンティブを用意して、医工連携を始めとする異分野融合の研究を時代に即して促進してまいりたいと考えています。
さらに、両研究院から、社会実装に近づいたものは、今度は新産業創成研究院の場で産業界とともに実用化を図っていきたいというふうに考えています。
このような形でコンバージェンスサイエンスを実現していきたいと思っております。
資料十一ページは、そのコンバージェンスサイエンスの代表的なものとしての医工連携を生み出すことについての仕組みです。
私たちは、もちろん大学病院を持っております。大学病院は、現状は、率直に申し上げると、診療報酬に依存する今日の医療、診療と研修ですけれども、だけで、ほとんど精いっぱいな現状があります。
新大学では、明日の医療を支える研究と人材育成を別会計にすることを考えています。別会計の財源は、産学連携を始めとした様々な外部資金に求める構想であります。
次のページ、資料十二ページを御覧ください。新大学が目指す組織文化についてお話しさせていただきます。
新大学では、従来の日本の大学が陥りがちであった閉鎖的で階層的な組織文化を完全に払拭したい、本来アカデミアが持つ自由でフラットな人間関係を構築することは極めて重要であると考えています。その上で、精神の余裕を取り戻した多様性に富む構成員による、広く社会に開かれた創造空間を構築したいと考えています。
その実現に向けて、まず第一は、全ての構成員がその専門性と役割を尊重していくということであります。そして、その結果として自律と協調が実現できると考えております。
二点目は、試行錯誤を恐れずイノベーションに挑戦することを奨励していくことということであります。
三点目は、構成員のウェルビーイングです。これは、大学構成員自身の余裕と自発性が重要であり、余裕があるところに自発性が生まれ、結果として大学の知の創出の源となるというふうに考えています。
資料十三ページを御覧ください。構成員にチャレンジを求める以上、大学も常に変わり続ける組織でありたいと考えています。時代に先駆けた研究、教育、経営ポートフォリオの不断の見直しを行い、そのポートフォリオに基づいた研究教育組織の改革、財務戦略の策定、病院事業の変革が重要で、それを実現するために、学内の教育研究現場からの学長へのフィードバック、社会情勢を踏まえた経営の観点からの理事長へのフィードバックが重要だと考えております。
次のページを御覧ください。これは非常にビジーなスライドですけれども、要は、両大学が統合することで、職員数や経常収益は二倍の規模となり、研究実績なども国立大学のトップファイブに入るものになります。しかし、我々が目指しているのは、一プラス一が二になることではなく、三にも四にもなることであります。
資料十五ページを御覧ください。私も東工大に行くことが多いわけですけれども、東工大に参りますと、二二〇〇年までの未来年表があり、未来から今を考えて研究するという姿勢がよく分かります。他方、医科歯科大学は、目の前の患者さんから問題意識を抽出して研究がスタートします。いわば、今から未来を考えるという考え方です。
このように、東工大のバックキャストと医科歯科大学のフォアキャストの視点が融合することで、単に理工学と医歯学が交わる以上の効果を期待しています。そして、社会とともに課題を解決していきたいと考えております。
最後のページで、東京科学大学の名称候補についてお話しさせていただいて、私の陳述を終わりたいと思います。
元々、高度成長期を考えてみますと、便利な生活を希求する科学というものがあって、科学は幸せをもたらすものという認識でした。これからは、地球と調和し、人々がウェルビーイングな生活を送るための新たな価値を生み出す科学、こういったものが求められると考えています。これを、先端的な理工学と医歯学に加え、人文社会科学を含む多彩な分野が融合するコンバージェンスサイエンスを展開することで達成したいと考えております。また、科学の発展を担い、科学に興味を持つ多様な人々を引きつける大学でありたいとも考えております。
このような大学の目指す方向を端的に表す名称として科学を選び、本拠地を置く東京を名称に冠しました。そして、世界に伍する大学を目指す以上、英語名称であるインスティテュート・オブ・サイエンス・トーキョーがむしろ一般的に流布するような、そういう大学になりたいと考えております。
以上が私の陳述でございます。
御清聴ありがとうございました。(拍手)