木原稔の発言 (外交防衛委員会)
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○国務大臣(木原稔君) 防衛大臣の木原稔です。北村委員長を始め、理事及び委員の皆様に防衛大臣としての挨拶を申し上げます。
国際社会は戦後最大の試練のときを迎え、既存の秩序は深刻な挑戦を受け、新たな危機の時代に突入していると認識しており、我が国を取り巻く安全保障環境も戦後最も厳しく複雑なものとなっています。
こうした中で、中国は、国防費の急速な増加を背景に、我が国を大きく上回る数の近代的な海上、航空アセットを保持するに至っています。さらに、宇宙、サイバー等の新たな領域における能力や核・ミサイル戦力の強化、無人アセットの開発、配備を進めています。
このような軍事力を背景として、中国は、尖閣諸島周辺を始めとする東シナ海、日本海、さらには伊豆・小笠原諸島周辺を含む西太平洋等、いわゆる第一列島線を越え、第二列島線に及ぶ我が国周辺全体での活動を活発化させるとともに、台湾に対する軍事的圧力を高め、さらに南シナ海での軍事拠点化等を推し進めています。
特に、我が国周辺においては中国海軍艦艇が尖閣諸島周辺海域での活動を活発化させており、そうした状況の下、中国海警局に所属する船舶が尖閣諸島周辺の我が国領海への侵入を繰り返しています。また、中国海軍艦艇が南西諸島周辺の我が国領海や接続水域を航行する例が見られています。
このような中国の対外的な姿勢や軍事動向等は、我が国と国際社会の深刻な懸念事項であり、我が国の平和と安全及び国際社会の平和と安定を確保し、法の支配に基づく国際秩序を強化する上で、これまでにない最大の戦略的な挑戦となっており、我が国の防衛力を含む総合的な国力と同盟国、同志国等との協力、連携により対応すべきものと考えています。
北朝鮮は、体制を維持するため、大量破壊兵器や弾道ミサイル等の増強に集中的に取り組んでおり、技術的には我が国を射程に収める弾道ミサイルに核兵器を搭載し、我が国を攻撃する能力を既に保有しているものと見られます。
特に、弾道ミサイルについては、その発射の態様を多様化させるなどして、関連技術、運用能力を急速に向上させています。近年は、低空を変則的な軌道で飛翔する弾道ミサイルの実用化を追求し、これらを発射台付車両、潜水艦、鉄道といった様々なプラットフォームから発射することで、発射の兆候把握、探知、迎撃を困難にすることを企図していると見られます。
北朝鮮は一貫して核・ミサイル能力を強化していく姿勢を示しており、昨年以降、これまでにない高い頻度で弾道ミサイルの発射を繰り返しています。
このような北朝鮮の核・弾道ミサイル開発等は、累次の国連安保理決議等に違反するものであり、地域と国際社会の平和と安全を著しく損なっており、こうした軍事動向は、我が国の安全保障にとって従前よりも一層重大かつ差し迫った脅威となっています。
ロシアは、ウクライナ侵略を継続するとともに、我が国周辺においても北方領土を含む極東地域において、新型装備の配備や大規模な軍事演習の実施等、活発な軍事活動を継続しています。さらに、近年は中国とともに艦艇の共同航行や爆撃機の共同飛行を実施するなど、軍事面での連携を強化しています。
こうしたロシアの軍事動向は、我が国を含むインド太平洋地域において、中国との戦略的な連携と相まって防衛上の強い懸念となっています。さらに、今後、インド太平洋地域においてこうした活動が同時に行われる場合には、それが地域にどのような影響を及ぼすかについて注視していく必要があると考えています。
このように、戦後最も厳しく複雑な安全保障環境の中で、国民の命と平和な暮らし、そして、我が国の領土、領海、領空を断固として守り抜くため、防衛大臣として大きく四つの施策を特に推進していく考えです。
一つ目は、昨年末に策定された国家安全保障戦略、国家防衛戦略、防衛力整備計画に基づく防衛力の抜本的強化の着実な実現です。
その裏付けとなる防衛費の規模は五年で四十三兆円程度であり、その一年目に当たる令和五年度は約六兆六千億円の予算をお認めいただきました。スタンドオフ防衛能力や無人アセット防衛能力といった将来の中核となる能力の強化に優先的に取り組む必要があり、先月には、スタンドオフ防衛能力の構築に向けた取組について前倒しして実施することを指示したところです。
加えて、防衛力強化の迅速化のためには、必要な装備品を速やかに取得するだけでなく、部隊に届いたらすぐ運用できるようにする必要があります。特に、スタンドオフミサイルやイージスシステム搭載艦など、新たに取得する装備品を取得後速やかに運用できるよう必要な準備を進めてまいります。
また、持続性、強靱性の強化も重要な課題です。現有装備品を最大限有効に活用するため、装備品の可動数向上や弾薬、誘導弾の十分な確保、防衛施設の強靱化への集中投資を進めてまいります。
二つ目は、同盟国、同志国等との連携です。
今や、どの国も一国では自国の安全を守ることはできません。既存の国際秩序への挑戦が続く中、我が国は普遍的価値と戦略的利益等を共有する同盟国、同志国等との協力、連携を深めていくことが不可欠になっています。
米国との同盟関係は我が国の安全保障政策の基軸であり、先日の日米防衛相会談の成果も踏まえ、日米同盟の抑止力、対処力の強化に向けた具体的な取組を着実に進めてまいります。
また、普天間飛行場移設を含む在日米軍再編を進める中で、抑止力の強化を図りながら、沖縄を始めとする地元の負担軽減にも引き続き取り組んでまいります。
さらに、地域の平和と安定のためには同志国等との連携を強化することが重要であり、自由で開かれたインド太平洋の実現に資する取組を進めてまいります。
そのために、地域の特性や各国の事情を考慮した上で、共同訓練や防衛装備・技術協力を始めとする多角的、多層的な防衛協力・交流を積極的に推進してまいります。その際、同志国等との連携強化を効果的に進める観点から、円滑化協定、物品役務相互提供協定、防衛装備品・技術移転協定等の制度的枠組みの整備を更に推進してまいります。
また、日米を基軸とした多国間協力の発展が不可欠です。北朝鮮のミサイル警戒データのリアルタイムでの共有を含む日米韓防衛協力、日豪円滑化協定を活用した共同訓練を始めとする日米豪防衛協力、そして、多国間共同訓練マラバールに象徴される日米印豪といった多国間防衛協力を更に深化させてまいります。
三つ目は、人への投資です。
防衛力の中核は自衛隊員であり、少子化が進む今日、人材の確保は大きな課題です。厳しい募集環境の中でも優秀な人材をしっかりと確保していくため、募集能力の強化のみならず、民間人材を含む幅広い層からの人材確保、女性の活躍推進や再任用の拡大による人材の有効活用、人材の育成、処遇の向上や生活、勤務環境の改善等を通じ、全ての隊員が高い士気と誇りを持って働ける環境を整備してまいります。
そして、ハラスメントは人の組織である自衛隊の根幹を揺るがすものであることを各自衛隊員に改めて認識してもらい、ハラスメントを一切許容しない環境を構築することが必要です。防衛大臣として、着任時や部隊視察の際の訓示において、隊員一人一人にハラスメントに対するこうした私の思いを伝えているところです。さらに、先月三十日には、全てのハラスメント案件について厳正に対応するよう、改めて私から指示しました。
また、衛生機能の強化についても、持続性、強靱性の観点から、有事において危険を顧みずに任務を遂行する隊員の生命、身体を救う組織に変革するため、戦傷医療能力向上のための抜本的改革を推進してまいります。
四つ目は、防衛生産・技術基盤の強化です。
防衛生産・技術基盤は、自国での防衛装備品の研究開発、生産、調達を安定的に確保し、新しい戦い方に必要な先端技術を防衛装備品に取り込むために不可欠な基盤であることから、言わば防衛力そのものと位置付けられるものであり、その強化は必要不可欠です。
特に、本年十月一日には防衛生産基盤強化法が施行されたところであり、同法に基づく施策を強力かつ迅速に進めていけるよう、先頭に立ってしっかりと取り組んでいきたいと考えています。
最後に、今国会提出法案について申し上げます。
防衛省の職員の給与等に関する法律の一部を改正する法律案は、人事院勧告の趣旨を踏まえ、自衛官の俸給月額等を引き上げる等の改正を行うものです。
委員各位におかれましては、御審議のほど、よろしくお願いいたします。
以上、防衛省・自衛隊が直面する課題に対し、防衛大臣として、全身全霊、職務に邁進していく所存です。
皆様におかれましては、一層の御指導、御鞭撻を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。