上山隆大の発言 (文教科学委員会)
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○参考人(上山隆大君) おはようございます。内閣府の総合科学技術・イノベーション会議、我々CSTIと呼んでおりますけれども、そこの常勤議員をしております上山でございます。
このような機会をいただきまして、今回、国立大学法人法の改正についての御審議をいただくと伺っており、この間、数年間にわたってCSTIと文科省で図ってきた政策の最終的な形として法案に至ったということを大変有り難く思っております。このような形で意見陳述をさせていただくことは、この法案の成立に向けての大きな一歩となると思いますので、是非とも御審議をいただきたいと思っております。
この数年間、文科省と一緒になりまして、内閣府のCSTIでは、この法律の背景にある国際卓越大学制度、十兆円のファンドを動かしながら国際卓越大学を制定していくというスキームをつくってまいりました。同時に、それと補完する形ではありますけれども、地域中核・特色ある研究大学振興パッケージというものをつくり、トップ層の大学のみならず全ての国立大学に、あるいは私立大学、公立大学も含めて支援をしていくという背景をつくってまいりました。
このような動きの中の背景を二つほど申し上げます。
まず一つは、二〇〇四年の国立大学の法人化以来、国立大学に対する運営費交付金は毎年一%ずつ、十二年間にわたって削減を徐々にされてまいりました。もちろん、その資金というのは競争的資金へとして、決して全体としてのフレームワークは変わりませんけれども、国立大学の自由に使える運営費交付金というものが毎年一%、十二年間にわたって削られていったということは、大学のパフォーマンスを考えるときには非常にシリアスな問題であると考えたのが一つの背景でございます。
もう一つは、各国のトップ層の大学の研究あるいは教育のシステムががらがらと大きく変わりつつあるこの二十年間を見据えなければいけないということでございました。例えばトップ層でいうとスタンフォード、ハーバード、MITといったところですね、に対する国家の支援は急速に伸びております。全般として、世界のどの国においても、アカデミア、大学、研究に対する国家的な投資というのは確実に増えている、しかもまた、その増え方が加速度的に増えているという現状でございます。
同時に、国由来の資金だけではなかなか手当てのできない非常に複雑な研究と教育の在り方に関して、例えばハーバード大学は独自の基金を一九七〇年ぐらいから積み上げてまいりまして、今大体六兆円ぐらいの独自の基金を持ち、その基金を世界中のマーケットに投資をして、毎年九%ぐらいの利益を上げ、そのうちの五%を必ず大学の研究と教育、フェローシップ、学生への支援に向けるということをやっております。すなわち、毎年国由来の資金でないものが二千億から三千億円ぐらい各大学に入っているという現状でございます。この間、各国のトップ大学は、その財務構造を見ますと、ほぼ大体毎年七%ぐらいの勢いで確実に伸展をしている。七%で伸びるということは、十年たつとその大学の財務構造がほぼ倍になるという激しい勢いで各大学の、各トップ大学の競争力を高めているという現状でございます。
翻って、我が国の研究大学、いわゆるトップ、大型大学を見ますと、相変わらず運営費交付金と僅かな民間からの資金を得ながら、東京大学、例えば例を挙げますと、年間の財務が大体二千五百億円でございます、これは病院収入も入れてですが。例えば、私のよく知っているスタンフォードなどですと、今もうほぼ一兆円に迫ろうとしています、年間の予算がですね。これがこの十年間でほぼ倍になりました。この倍になる勢いというのは、もちろん国家による公的な税金由来の資金が入ったということもありますが、同時に、スタンフォードで今大体四兆円から五兆円ぐらいの基金を持って、かつ寄附を拡大させながら、財務構造を健全化させているという現状でございます。
果たして我が国においてそのようなトップ大学は何校必要なのか、あるいはあり得るのかということについてはいろんな議論がございますが、恐らくは五校から八校ぐらいの間の研究大学が世界におけるトップトゥエンティーに入り、そういったトップ校と競争していき、様々な大学からのリクルートメントで研究者を引き抜きながら競争しているという現状に対して、どのような方策を我が国のトップ研究大学はなすことができるのかということが問題の背景としてございました。
もしハーバードやスタンフォードが数兆円規模の研究基金を持っているとすれば、それを到底各大学が今の現状ですぐに確保することができない。だとすれば、その彼我の差を埋めるためにも十兆円規模の基金をつくって、その基金を国として回して、国として投資の仕方をモデルをつくって、各研究大学にそのモデルを引き受けてもらうと。そのためのある種の種銭としての十兆円を考えてほしいということが我々の希望でございましたし、同時にそのことを文部科学省では非常に切実に強く受け止めていただいて、タッグを組んでこの十兆円規模の国際卓越大学用のファンドというのをつくったところでございます。
同時に、先ほど第一点と申し上げましたように、トップの研究大学だけではなくて、全ての研究大学に対してのやっぱり研究支援を国家としてやるべきだということの中から、改めて財政当局と図って二千億円の資金をつくったところでございます。今この二千億円については六十九校の大学が申請を出してきて、今申請の審査の最中でございますが、先般二十七大学に絞り、さらにまた、恐らくは十三大学ぐらいまで絞ることになると思いますが、その目的というのは、トップ層の支援する研究大学のみならず、幅広い国立大学、公立大学、私立大学にも視線を向けながら、研究の在り方、教育の在り方に対して国家的な支援をしていくというフレームワークでございました。
このようなことを考えますと、我が国の研究大学あるいは大学に置かれている世界における環境は極めて劣後していると思います。
かつ、世界中の国々がなぜ大学にこれほどの資金を入れるようになったかと申し上げますと、それは、明らかに全ての国において知識基盤型の社会がもう到来をしているということです。従来のような産業社会ではなくて、新たな知恵を生み出し、新たな人材を生み出し、新たなスタートアップ企業を生み出していって、そして社会の負託に応えることができるような大学をつくっていく、そのためにも国家的な投資を拡大しなければいけないという背景があったと思います。言わば、その知識基盤型社会における大学の在り方を考えますと、単に十八歳の学生がやってきて、四年間、企業に行くまでの間の教育をやっているという大学の形では、到底世界の中でのこの劣後環境を改善することはできないと強く信じております。
そうすると、単に大学の研究者だけが考える大学でいいのか。社会の負託に応えるためにも、様々な社会の声を大学の中に引き受け、その声を大学のシステムの中に反映するような第三者のアドバイスが必要だろうと考えたことも事実でございます。それは何も第三者が大学の自治を侵すということではなくて、むしろ大学の在り方、研究の在り方、教育の在り方に関して幅広い社会のステークホルダーの声を反映させる組織として、運営協議体、日本もつくるべきだと考えたことは事実でございまして、それは、とりわけトップ層の大学についてはこれは国際的に活動をしていかなければいけませんから、そのステークホルダーというのは、単に国内のみならず、海外のステークホルダーの声も反映するような第三者委員会が必要だろうと考えました。
しかしながら、これは単にトップ校だけではなくて、恐らくはこのような意識を持っている大学は今後増えていくだろうと、そのような大学をサポートするような組織体というのもあり得るかもしれないと考えたことは事実でございます。今回の国立大学法人法の中でその範囲が広がり過ぎているという声があるとは理解をしておりますが、我々は、基本的にこれは国際卓越大学のフレームワークの中で考えたことでございまして、それが、そのような方向が正しいと考えられる、お考えになるような、国立大学においても同じようなシステムが広がっていくかもしれない、それはそれぞれの大学の御判断に任せるべきだというふうに考えております。
その意味で、しばしばなされるような大学の自治を侵すとか、あるいは学問の自由を侵すということはかけらも考えたことはございません。むしろ、このような潤沢な資金をもって国家がサポートをし、あるいは幅広い社会のステークホルダーがサポートすることによって大学の自治が守られる、あるいは学者の自由が守られる、そのような方向性をずっと探ってまいりました。
外部の運営方針会議なるものができますけども、この運営会議は、先ほど申し上げましたように、幅広い社会の声を反映させる一つのメカニズムにすぎない。また、その運営会議の在り方に関しては、大学の中における教員、学生の方々の声が反映されて決まっていくものですから、最終的にはそれは大学の自治の中できちんと担保されるはずだと強く信じております。最終的にその方向性が大臣によって承認されるという構造についても様々な議論があるとはお伺いしておりますけども、これは今の国立大学においても最終的に学長の承認についてはやっぱり文科大臣の承認が必要だということになっておりますので、そのことの整合性については、新しいシステムとこれまでのシステムとそれほど大きな差異はないだろうというふうに考えてございます。
また、特定大学あるいは準特定大学という用語が飛び交ってあるとは聞いておりますけども、これは何も大学を二つに分けるとか三つに分けるということを恐らくは文科省はお考えになっておられないと思います。CSTIの中ではそのような議論をしたことはございません。
私たちのところでは、まずは特殊、非常に強い研究大学をつくる、そのためのファンドを形成をし、それに重点的な支援をし、かつそれを多くの大学の中にその成果を広げていくということだけを考えておりまして、その意味では、今回の国立大学に関する法人法が順当に成立することによって、改めて、今既に始まっております国際卓越大学のフレームワークを更に前に進めていき、そしてまた、そのような大学だけではなくて、幅広い研究大学、あるいは教育大学、あるいは地域に対して大きな貢献をなすような大学に対しても国家としての支援を広げていっていきたいと、あるいは広げていっていただきたいと、こういう強い希望を持ってございます。
この間のプロセスについては、できる限りトランスペアレンシーを持って、透明感を持って様々な関係者に対して御説明を申し上げてまいりましたし、CSTIの中でも専門調査会を開き、その中でも多くの方々に来ていただいて、御批判をいただきながら、国際卓越大学のフレームワークをつくったところでございます。
でも、やはり何十万人といるそれぞれの研究者の中には様々な御疑問を持たれる方もいらっしゃると思いますので、今後はこのプロセスを推進していくとともに、できる限り多くの大学の関係者、教職員、学生たちとも対話を重ねながら、私たちが意図していること、あるいは文科省とともにやってきたフレームワークが決してこれまでの大学のシステムを壊すものでもないし、むしろ我々は強い応援団としてアカデミアを支えていきたいと、大学あるいは研究者、学生たちに対する強い応援団であっていきたいと思って、このシステムを進めてまいりました。
今回の国立大学法人法の改正というのは、その最終的なメルクマールでございますので、是非とも先生方には真摯な御検討をいただいて、この法案に対して積極的な御賛同を賜れば大変有り難いと思っております。どうぞよろしくお願い申し上げます。