岸田文雄の発言 (本会議)
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○内閣総理大臣(岸田文雄君) 浅田均議員の御質問にお答えいたします。
中小企業の賃上げの現状認識と価格転嫁対策についてお尋ねがありました。
今年の連合集計の春闘の賃上げ率は、全体で三・五八%、中小企業においては三・二三%と両者の間に差はあるものの、三十年ぶりの高水準であったと承知をしています。また、従業員規模の小さな中小企業を対象とした厚生労働省の調査でも、賃上げ率は二・一%と二十六年ぶりの水準となっています。これを更に引き上げていかなければならないと考えています。
いずれにせよ、持続的で構造的な賃上げの実現に向けては、賃上げのうねりを中小企業や地方にしっかりと広げていくことが重要であり、中小企業の生産性向上支援や賃上げ費用の価格転嫁対策等を進めてまいります。
具体的に、具体的な価格転嫁対策としては、年二回の価格交渉促進月間における発注企業の価格交渉、価格転嫁の状況についての公表や、下請Gメンによる価格転嫁に関する調査、パートナーシップ構築宣言の推進による元請、下請企業における機運醸成などを着実に進めるほか、賃上げ費用の適切な転嫁のための価格交渉に関する指針を年内に策定することとしています。こうした取組を通じて、中小企業の賃上げをしっかりと後押ししてまいります。
激変緩和事業と揮発油税等の当分の間税率の関係についてお尋ねがありました。
燃料油の激変緩和事業では、現在、全国平均でリッター百七十五円をガソリン価格の実質的な上限とすべく補助金を支給しているところです。当該事業について、御指摘のように、揮発油税等の当分の間税率を廃止した上で、その税率相当分の補助金を減額するとした場合、それらの財源総額は基本的には変わらないと考えています。
ただし、揮発油税等については、平成二十一年に道路特定財源は廃止されましたが、地球温暖化対策の観点や厳しい財政事情を踏まえて、それまでの税率が維持され、当分の間税率とされたものと承知をしています。こういった状況は現在も変わりはなく、特に気候変動が社会課題となる中、こうした税制上の取扱いを変更することは考えておりません。
ライドシェアの導入に向けた決意についてお尋ねがありました。
人口減少の下でも、これまで以上に質の高い公共サービスを提供し、利用者起点で社会変革を実現していくため、御指摘のタクシー不足に対応する緊急措置にとどまらず、デジタル行財政改革会議の下で議論を開始したところであります。
ライドシェアは、各国の事情によって状況は様々ですが、多くの国でデジタル技術を活用しながら自家用車の有償利用を進めています。
日本では、これまでかなり限定された地域と厳しい条件で自家用車の有償利用を認めてきましたが、地域交通の担い手不足あるいは移動の足の不足といった深刻な社会課題に対応しつつ、ライドシェアの課題に取り組み、早急に方向性を出してまいります。
ライドシェア導入の目的と論点についてのお尋ねもありましたが、ライドシェアにつきましては、デジタル行財政改革会議の立ち上げに際し、河野デジタル大臣と関係大臣に対し、不便解消に向けた地域の自家用車ドライバーの活用、さらには自動運転の事業化などの検討を加速するよう指示したところであり、これらの取組は、新しいフロンティア、イノベーション、そしてスタートアップにつながるものであると考えています。
先日、十六日ですが、デジタル行財政改革会議の下の課題発掘対話において、ライドシェアの安全確保の課題も含め議論が行われたところであり、今後、規制改革推進会議の地域産業活性化ワーキング・グループでも、論点あるいは目的を含め議論、進めてまいります。
そして、資産運用特区についてお尋ねがありました。
政府としては、家計の資産、家計の資金が投資に向かい、その恩恵が家計に還元されることで、更なる投資や消費につながるという好循環を実現してまいります。その一環として、資産運用立国を目指し、国内外の優れた資産運用会社や人材が日本に集まり競い合うことで、より良い商品やサービスが家計に提供されるとともに、国内投資が活性化される環境に向けて、国内外からの資産運用業への新規参入を促進してまいります。
このため、意欲のある自治体と連携して、ビジネス環境と生活環境を重点的に整備する資産運用特区、これを創設してまいります。
所信表明演説では、経済活動の基盤である金融市場の変革に取り組み、資産運用業の改革を進めてまいりますと申し上げたわけでありますが、この考え方に基づいて、資産運用特区を重要施策として進めてまいりたいと考えています。
そして、物価高対策のスピード感、国民への具体的な還元方針と、いただいた提言についてお尋ねがありました。
物価高に対して、政府はこれまで、ガソリン、電気・都市ガス料金の激変緩和措置、低所得世帯への給付金、そして地方自治体が地域の実情に応じてきめ細かく支援できる重点支援地方交付金、これらを重層的な対策として機動的に講じてきました。引き続き、物価高に最も切実に苦しんでおられる低所得者の方々への支援など、スピード感を持って対応してまいります。その上で、国民への還元については、本日夕方、政府与党政策懇談会を開催し、与党税制調査会に検討を指示するなど、早急に具体化を図ってまいります。
そして、その際、減税や社会保険料減免は、一旦いただいた税負担や社会保険料負担をお返しするという意味で還元という概念になじみやすく分かりやすい一方、給付金については必ずしもそうではないと考えています。
ただし、消費税については、急速な高齢化等に伴い、社会保障給付費が大きく増加する中で、全ての世代が広く公平に分かち合う観点から社会保障の財源として位置付けられており、その税率を引き下げることは適当でないということ、また、社会保険料減免については、給付と負担の対応の関係をゆがめるなど、それぞれの社会保険制度に与える影響が大きく、保険者の実務上の負担など課題も多いこと、これらを留意する必要があると考えています。
御党の提言については、政策の手法について異なるところはありますが、物価高から国民生活を守るという思いは同じであると考えています。いただいた提言も参考にさせていただきながら、物価高から国民生活を守り、我が国経済を新しい経済ステージに移行させるために効果的な施策、積み上げてまいります。
最低生活保障、最低所得保障制度の必要性についてお尋ねがありました。
我が国の社会保障制度は、人生における様々なリスクに対し、本人と事業主が保険料を拠出することで備える社会保険方式を基本としています。こうした理念に照らせば、御指摘の最低生活保障、最低所得保障制度については慎重な検討が必要であると考えています。また、その制度の導入には、年金、雇用保険を含む既存の制度との関係をどう整理するかなど、乗り越えるべき大きな課題があるとも認識をしています。
政府としては、最後のセーフティーネットである生活保護制度なども含めたきめ細かな対応を基本としつつ、能力に応じて皆が支え合い、必要な保障がバランスよく提供される全世代型社会保障の構築に向けて取り組んでまいりたいと考えています。
そして、デジタル歳入庁の創設についてお尋ねがありました。
御提案は、税と社会保険について共通のシステムで運用するということだと思いますが、現状においても、例えば、国民の利便性向上として、マイナポータルを通じた税、年金等に関するオンラインでのワンストップサービスの提供など、デジタルの力を活用して必要な連携を進めてきているところであり、今後もデジタル改革は進めてまいります。
年収の壁に関しては、例えば、御指摘の一定以上の報酬に対してのみ社会保険料を賦課するということにつきましては、賦課範囲の減少が制度に及ぼす影響が大きいため慎重な検討が必要だと考えており、壁を意識せず働くことが可能となるよう、短時間労働者への被用者保険の適用拡大、最低賃金の引上げに取り組んできたところです。
その上で、若い世代の所得向上や人手不足の解消の観点から、当面の対応策として年収の壁・支援強化パッケージ、これ速やかに実行してまいります。
これまでの経済への認識や物価高対策と金融政策の関係についてお尋ねがありました。
一九九〇年代のバブル崩壊以降、長引くデフレを背景に、企業はコストカット最優先の対応を続け、その結果、消費と投資が停滞し、デフレを脱却できないという悪循環が生じてきました。こうした日本経済に対する認識は変わりはありません。
そして、二〇一〇年代以降、アベノミクスは、デフレでない状況をつくり出し、GDPを高め、雇用を拡大し、企業収益の増加傾向にもつながりました。一人当たり平均の実質賃金は伸び悩んだと認識しておりますが、これまでの政府の方針、政策、これを全面的に否定しているものではありません。
これまでの成果の上に立ちながら、しっかりと成長を実現した上で、成長の果実を国民に分配することで所得の向上につなげていく、こうした新しい資本主義の二年間の取組が、三十年ぶりの三・五八%の賃上げ、過去最大規模の名目百兆円の設備投資、五十兆円ものGDPギャップの解消の進展などにつながったと認識をしています。
こうして、三十年ぶりに新たな経済ステージに移行できる大きなチャンスがめぐってきました。このチャンスをつかみ取り、低物価、低賃金、低所得のコストカット型経済から持続的な賃上げや活発な投資が牽引する成長型経済への変革、これを実現してまいります。
また、日銀の金融政策は、賃金上昇を伴う形で持続的、安定的な物価安定目標の実現を目指すものであり、このエネルギー、食料品等の物価高騰の影響にきめ細かく対応しようとする政府の累次の物価高対策と矛盾するものではないと考えております。
産業の供給力強化と規制改革についてお尋ねがありました。
コストカット型経済からの完全脱却に向け、供給力の強化を図り生産性を引き上げていくためには、言うまでもなく規制、制度の徹底した改革も必要です。新しい資本主義の下では、気候変動などの社会課題を成長のエンジンに転化するとしており、デジタル行財政改革の下、市場環境の整備も含め、あらゆる分野において規制、制度の徹底した改革、これを進めてまいります。
なお、御指摘のGXリーグについては、企業が自主的に排出量取引を行う枠組みとして今年度より試行的に開始をしましたが、既に日本の排出量の四割以上を占める企業が参加をしています。二〇二六年度の排出量取引制度の本格稼働に向けて、企業の参加率、更に向上させて競争的環境、これを整えてまいります。
経済対策における需要喚起策についてお尋ねがありました。
物価高に直面している生活者、事業者の方々を支援するに当たっては、物価高の影響の現れ方やニーズが地域により様々であることを踏まえれば、自治体を通じたきめ細かな支援を講ずることが有効であると考えています。このため、昨年九月に創設した重点支援地方交付金を活用して、自治体を通じた支援を実施しています。
その際、消費者がそれぞれのニーズに応じた商品、サービスを購入できるようにして、選択肢を提供することで需要を喚起すること、これは重要であると認識をしています。重点支援地方交付金の奨励事業メニューにおいて、プレミアム商品券や地域で活用できるマイナポイント等を発行する取組などを示しているところです。
引き続き、地方自治体が地域の実情に応じた需要喚起策を講じられるよう、今般の経済対策において重点支援地方交付金を追加することとしており、これらの交付金が効果的に活用されるよう努めてまいります。
ウクライナ支援のスピード感についてお尋ねがありました。
御指摘の案件については、この御指摘の案件以前の支援として、我が国はロシアのウクライナ侵攻直後の昨年三月から、自衛隊が保有する防弾チョッキ、ヘルメット、化学防護衣、ドローン、あるいは車両等の装備品をウクライナの要請に応じて既に提供してまいりました。また、同じく要請に応じ、ピックアップトラック、クレーン付きトラック、ホイールローダーも既に数十台供与しています。
その上で、御指摘の案件については、ゼレンスキー大統領からの要請を踏まえ、自衛隊が現在使用中の高機動車やトラック等を必要な整備等を行った上で順次提供をしており、百台の発送についても今年度中に発送ができるように加速をさせているところであります。
今後とも、ウクライナのニーズに沿った、寄り添った支援、迅速に実施してまいります。
そして、憲法改正についてお尋ねがありました。
憲法改正は先送りできない重要な課題です。内閣総理大臣の立場からは、憲法改正について、議論の進め方等について直接具体的に申し上げることは控えなければならないと考えておりますが、憲法改正は最終的には国民の皆様による御判断が必要であり、国会の発議に向けた手続を進めるためにも、条文案の具体化等、国会においてこれまで以上に積極的な議論が行われること、心から期待をしております。
また、自民党総裁としてあえて申し上げれば、総裁任期中に憲法改正を実現したいという思いはいささかも変わりはありません。国会での議論に資するよう、党内の議論を加速させるなど憲法改正の課題に責任を持って取り組む決意です。今はそのことしか考えてはおりません。(拍手)