古賀之士の発言 (本会議)

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○古賀之士君 立憲民主・社民の古賀之士です。
 岸田文雄総理の所信表明に対し、会派を代表して、総理に質問いたします。
 まず、総理にお聞きします。
 昨夜、山田太郎文部科学大臣政務官兼復興大臣政務官が辞任されました。施策目標に青少年健全育成を掲げる文科大臣政務官が突然の辞任に至ったことは大変残念であります。
 昨日、我が会派の田名部幹事長が岸田内閣における副大臣、政務官の人事等についてお尋ねした際、答弁の中に総理は、本人の人格、識見を踏まえ、適材適所の考え方で行っているとおっしゃいました。適材適所であると評したばかりの政務官の一人が早々に辞任したことに総理の任命責任は重いと考えますが、この点について御説明を願います。
 冬は長い、生活はつらい、パンは高い。ヴェルディ作曲のオペラ、「ドン・カルロ」の一節です。舞台は十六世紀のスペイン。五百年前の話ですが、この一節はまるで今の二十一世紀の庶民の声のようです。
 多くの国民は、一円でも安い店を探して歩き回っています。毎日毎日、一円のために靴底をすり減らしているのです。スーパーで安くなる時刻を待って、自分が食べたいと思う品に割引のシールが貼られる瞬間を待っています。
 東京で自炊している私も、このことが今に始まったことではないということは理解をしております。ただ、物価高の実感は政府が発表される数%ではありません。卵はかつて物価の優等生とも言われましたが、地元福岡のスーパーでは十個入り一パック三百円以上が普通です。サンマのかば焼きの缶詰は、百円前後で買えたものが、普通に三百円ぐらいします。物価高の実感は数%ではなく、物によっては二倍以上です。
 インボイス制度についてお聞きします。
 このインボイス制度をめぐっては、そもそも、税のスペシャリストである税理士会の皆様が反対を唱えた経緯を御存じと思います。今、中堅、中小、零細、個人事業主などに今月にインボイスを導入する必要はあるのでしょうか。
 事務的な負担に加え、実質的な増税となり得るインボイス制度。総理は所信表明で、国民の消費や投資状況は力強さに欠ける状況、足下の賃上げが物価上昇に追い付いていませんと述べていらっしゃいます。
 岸田総理はなぜこのタイミングでインボイス制度を行うのか、見解をお聞かせください。
 総理が所信表明で強調されていた、結果を示してきました、お示ししてきましたということについてお尋ねいたします。
 お示ししたとおっしゃる結果とは何でしょうか。本来は、政策を行ったことで社会経済のどこがどの程度変わったのかを示すアウトカム、これが結果として認識されるのがごくごく一般的です。
 例えば、少子化対策で言えば、少子化対策に予算を講じるアウトプットによって、出生率が五年間で一・三から一・六に向上しましたというようなアウトカムという具体的な時間と数字が公表されて初めて結果と言えるのではないでしょうか。
 しかし、残念ながら政府のやっていることは予算を講じたというアウトプットにとどまっています。異次元の予算を配ります、講じましたとおっしゃっていますが、それはアウトプットしたというだけです。
 私たちが知りたいのは、お金を配れば世の中がどう変わるかです。そこがはっきり分からないまま、異次元の予算を講じたことで満足してしまい、決算重視の参議院としても、何より国民の皆様がどういう世の中をイメージしてよいのでしょうか、対応に困っていると思います。ばらまきに終わらないためにも、よりアウトカムを意識する必要があるのではないでしょうか。
 岸田総理にお尋ねします。
 少なくとも、所信表明で述べられている政策の全てについて、どんな世の中に変わるのか、いつまでにどう変わるのか、スケジュール、規模を御説明ください。それが、少なくとも政府・与党の重大な役割と考えます。
 供給力の強化についてお尋ねします。
 総理の所信表明にある供給力の強化は、ほぼ、第二次産業、製造業をターゲットにした政策イメージに見えます。
 一方、現在の日本経済の多くの割合であるサービス業は、どうやって供給力を強化するのでしょうか。また、サービス業分野で省力化投資の効果は限定的な分野も少なくないでしょう。その方法や政策をお示しください。
 サービス業は、人手不足からまず賃上げをせざるを得ないのに、そこに価格転嫁できないから、皆さん困っているのです。
 日本商工会議所の調査では、賃金を引き上げる主な理由で価格転嫁が行えたことはおよそ一割にとどまり、原資の確保に課題を抱えながら賃上げ傾向が継続とされています。つまり、賃上げ、価格転嫁、利益向上、更なる賃上げという望ましい環境、循環が生じていないのです。こういうデータが、まさに今月、現在進行形として日本商工会議所が発表しているのです。
 総理の供給力の強化は、特に中小のサービス業には当たらないと考えます。所信表明のままでよいのか、総理の答弁を求めます。
 特に、サービス業では、価格転嫁には当然質の高い人材の確保が必要です。人手不足倒産が続出しているのは、価格転嫁が十分でないことが大きな要因です。先日のNHKでも、多層下請構造の産業では、下請、孫請、更にその先の零細、個人事業主まで賃金が行き渡らないと伝えていました。
 ただ、岸田総理は、いわゆるBツーB、中堅・中小企業における企業間取引条件の適正化は、総裁選に立候補された際、車座で直接当事者から話を伺うなど、公約だったはずです。その視点が今回の所信表明には欠けております。
 事実、先日、あるテレビ番組で、ラーメン業界には千円の壁があると特集していました。
 かつて豚骨ラーメンを作った経験から申し上げると、ラーメンのスープ、特に豚骨スープは、骨割りから完成まで、最低でも十時間を超える長時間の強い火力など、エネルギーコストが掛かります。当然、火力の調整や豚骨スープが途中で焦げないように巨大なずんどうを独自の道具で骨を混ぜることにも経験や労力が必要です。
 そこに見えない価格の壁があれば、経営は苦しくなって当たり前です。ラーメン店は、一杯売って手元に残るのは二百円とも言われています。
 東京商工リサーチによれば、コロナ禍で倒産が相次いだ二〇二〇年のペースを上回り、前年同期に比べ、実に三・五倍の倒産件数となっています。豚骨ラーメン発祥の私の地元、福岡県でもラーメン店の倒産が増えています。即効性のある給付も検討、実行すべきと考えます。総理の見解を求めます。
 岸田内閣の重点政策について伺います。
 若者の経済、暮らしについてお尋ねです。
   〔副議長退席、議長着席〕
 所信表明の中で、特に二十歳代への政策が抜け落ちていませんか。多様な生き方を尊重している我が党は、二十歳代にも選択肢の多い自由な人生を歩んでもらいたい。そのための中長期の対策は、ほかの世代の皆様にも大きな影響を与える極めて重要な課題です。
 そこで、総理も、そして議場の皆様も、昔のことで実感がなかなか湧かないかもしれませんが、二十歳代のリアルな人生を思い起こしてください。
 親、保護者の年収が国民平均の四百万円台であるなら、仮に子供が大学進学を希望し卒業できたとしても、学費負担は相当厳しいはずです。
 学費の数百万円は、保護者、親か子供自身が借金として背負うのが前提となります。もはや、子供への仕送り額はどんどん減っていって、一部の裕福な世帯の子供以外は、大学入学後にアルバイトに専念し過ぎて学業がおろそかになる、社畜ならぬバ畜という言葉さえあります。これでは本人が何のために大学に行っているのか分かりませんし、何とか卒業できたとしても、すぐに就職してお金を稼がなければなりません。この状況で、結婚願望があったとしてもかなえることができるでしょうか。
 二十歳代では、それまでの保護者の影響から離れていきながら自立の道を歩んでいきます。私たちは多様な生き方を尊重していますが、世間では、いわゆるいい高校からいい大学、いい企業という昔ながらの価値観がいまだに変わっておりません。二十歳代のうちに新しい会社を起こしたり、地域に貢献したり、親孝行したり、若いうちにしかできないことを自由に、夢中に取り組んでほしいのです。
 これは本人だけの問題だけではありません。親、保護者の世代や、おじいちゃま、おばあちゃま、祖父母の世代も、子供さんやお孫さんの将来が気掛かりで仕方がないのではないでしょうか。
 二十歳代は、単線型ライフスタイル社会から、もっと多様な価値観が生かされる複線型のライフスタイルが当たり前の社会になれば、一度や二度の失敗をしても何度もやり直しが利くと思いますし、そのことが三十歳代以降にも影響を及ぼすことが期待されます。
 総理が希望の大学になかなか入学できなかったと伺っております。総理は、その後も頑張られて総理大臣にまでなられたのですが、一般の方々にとって、必ずしもうまくいくものでもないでしょう。
 もちろん、大学進学が全てではありません。中卒、高卒から一度就職して、子育てしながら、改めて希望すれば大学に通うという選択肢があってもよいと思います。総理が提唱されるリカレント教育は、まさにこうした若者の将来の支えになってもらいたいものです。
 二十歳代の経済や暮らしに対する不安を取り除くには、二十歳代の賃金の大幅な上昇などの若者向けの経済支援策が必要です。
 例えば、賃金の大幅上昇以外でいえば、二十歳代には、家賃を一部、自治体によっては全額補助して、生活基盤を公的に支えることも考えられます。また、リカレント教育を受講したい人には、その費用を全額公費負担にすれば、キャリアアップを目指す人には朗報になるでしょう。
 やり直しができるチャンスをしっかりと国がサポートしていくことに対して、岸田総理のお考えを伺います。
 広島県は、製造業を中心に大量の外国人が働いています。振り返ってみれば、移民として全国で最も多い十一万人が海外に渡ったのが広島県出身者です。ちなみに、私のふるさと福岡県は第五位です。日本から海外へ移民された方々がどんな苦労をされてきたのか、長年の外務大臣の御経験からも重々存じていらっしゃるはずです。
 つまり、日本に来る外国人も多くの苦労をされているのです。例えば、スーパーでは開店を前に朝から並ぶ外国人の姿があることを御存じでしょうか。前の日の売れ残りや、賞味期限が迫った品を求めるためです。そんな外国人との共生を私たちは提案しています。
 なぜか今回の所信表明では触れられなかったようですが、外国人労働者の受入れ拡大は、現在進められている重要な政策です。実際に、配偶者や子供を帯同することができる特定技能二号を拡充しました。日本人並みの労働の自由があり、配偶者や子供の呼び寄せもできる永住者も着実に増加しています。
 これにより、働く者だけが短期間滞在して帰国する回転ドア型の外国人労働力から、長期にわたって滞在する外国人が増加するのは間違いありません。もはや、外国人労働者が日本で長く暮らすがスタンダードになりつつあります。その結果、配偶者や子供も含めて日本社会に溶け込んでもらう共生社会を実現しなければならないのです。
 私たちは、特に日本育ちの外国人は日本にとって極めて有力なサポーターになり得る存在であり、その教育は極めて重要と思っています。しかし、日系の外国人が多いあるエリアでは義務教育に就学できていない子供が大量に指摘されるなど、大きな課題となっています。
 対策として、まずは義務教育を受けるための基本的な日本語の習得支援。その際は、外国語を話せる教師の育成というマンパワーだけではなく、簡単な日本語教育のためのスマホアプリの活用も考えられますが、岸田総理はどのようにお考えですか。
 さらに、多様化する外国人と地域社会を結び付けるために、JICAなど海外での生活経験のある日本人の活用など、これまで以上に共生社会実現に向けた対策の拡充が必要ではないでしょうか。
 これらを地域社会が全て担うのは、さすがに厳し過ぎます。外国人を労働力としてだけではなく、住民として、日本人と共生できる社会が実現できるよう、総理の積極的な答弁を求めます。
 所信表明で触れられていない地方創生で大事な転職なき移住について伺います。
 まち・ひと・しごと創生法の第一章第一条には、この法律は、我が国における急速な少子高齢化の進展に的確に対応し、人口の減少に歯止めを掛けるとともに、東京への人口の過度の集中を是正しとなっています。総理の目玉政策であるデジタル田園都市国家構想は、まち・ひと・しごと創生のバージョンアップ版です。今回の所信表明では、一丁目一番地だった東京一極集中の是正に言及がないのはどうしてでしょうか。お答え願います。
 デジタル田園都市国家構想でキーワードの一つは、転職なき移住です。地方にいながら大都市圏の仕事をリモートワークで行うということで、東京一極集中是正に資するものです。転職なき移住は、地方に移住する方に副業や兼業で地方で活躍してもらえれば、総理が所信表明で挙げられているオーバーツーリズム、農業のスマート化、グリーン化といった地域経済の様々な課題解決にも寄与できます。さらに、総理が推進するデジタル田園都市国家構想は地方でのデジタル人材の不足が大きな課題ですが、リモートワークに適しているIT人材の地方分散にも資するものです。もちろん、子育て世帯にとってリモートワークによる転職なき移住は非常に有力なツールとなるでしょう。
 私たちは、転職なき移住の更なる促進を提案いたします。現状は、コロナ禍の最悪の状況に比べリモートワークは徐々に縮小しているにもかかわらず、転職なき移住を定着促進するための国の施策は、残念ながら、表彰制度とかガイドライン作成とか情報提供にとどまっております。転職なき移住を定着促進するために、もっと思い切った制度を創設してはどうでしょうか。総理の前向きなお考えを期待して、答弁を求めます。
 結びに、二十世紀は戦争の世紀と言われています。二十世紀は、世界大戦を終えた後半になって二十世紀らしい繁栄や成長を遂げてきました。様々な困難にある二十一世紀ですが、私たちが幼い頃思い描いてきた二十一世紀らしい日は必ず来ると信じて、代表質問を終わります。
 御清聴、誠にありがとうございました。(拍手)
   〔内閣総理大臣岸田文雄君登壇、拍手〕

発言情報

speech_id: 121215254X00420231026_016

発言者: 古賀之士

speaker_id: 27432

日付: 2023-10-26

院: 参議院

会議名: 本会議