國重徹の発言 (憲法審査会)
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○國重委員 公明党の國重徹です。
緊急事態における国会機能の維持については、これまで活発な議論が行われ、論点は既に出尽くした感があります。前回の審査会で我が党の北側幹事から、今後は、具体的な条文案のたたき台を作成し、それを基に議論を深めていくべきだとの提案がありましたが、私も同じ意見です。
内容の賛否はさておき、具体的な条文案のたたき台を基に議論する方が、より建設的な議論になります。反対の点があれば、条文案のたたき台をベースに具体的に指摘していただいた方が、議論も深まり、国民にとっても分かりやすくなると考えます。改めて、条文案のたたき台の作成を進めるよう、私からもお願いを申し上げます。
次に、同性婚について意見を述べます。
二〇一九年以降、同性婚に関し、全国で六件の訴訟が提起され、地裁判決は全て出そろいました。先月十四日には初の高裁判決となる札幌高裁判決が下され、同性婚を認めていない民法等の規定について、憲法二十四条及び十四条一項に違反すると判断をしました。その上で、同判決は、「喫緊の課題として、同性婚につき異性婚と同じ婚姻制度を適用することを含め、早急に真摯な議論と対応をすることが望まれる」と付言をしております。
先週から当審査会の実質審議が始まりましたが、これまでのところ、どなたもこの札幌高裁判決に言及されておりません。立法政策の在り方は他の委員会の所掌ですが、憲法論についてはこの審査会で発言し問題提起することも許されると思いますので、本日は同判決を踏まえた意見を述べたいと思います。
これまでの六つの地裁判決では、五つが、同性カップルの関係を保護する国の制度が一切ないことについて、十四条一項や二十四条二項に違反する、あるいは違反する状態だと判断し、残りの一つも、将来的に違憲となる可能性を指摘しました。しかし、二十四条一項については、六つの地裁判決の全てが、両性や夫婦の文言等から同項の婚姻は異性婚を指すもので、同項には違反しないと判断してきました。
これに対し、札幌高裁判決は、二十四条一項について新たな判断をしました。具体的には、「二十四条一項は、人と人との間の自由な結びつきとしての婚姻をも定める趣旨を含み、両性つまり異性間の婚姻のみならず、同性間の婚姻についても、異性間の場合と同じ程度に保障していると考えることが相当である。」としています。
私は、昨年、この審査会におきまして、二十四条一項をめぐる学説の状況について、多くの学説は、二十四条一項は同性婚を禁止しているのではなく、これを許容し、立法政策に委ねられていると解釈していること、さらに、最近では、立教大学の渋谷秀樹名誉教授が、二十四条一項について、今や同性婚の婚姻にも異性婚の婚姻と同程度に保障を与えているという見解を発表していることを述べました。
今回の札幌高裁の、二十四条一項が同性間の婚姻についても異性間の場合と同じ程度に保障しているという判断は、このような学説の動向と軌を一にするものと言えますが、司法がここまで大きく踏み込んだ判断をしたことに驚きました。最近の世論調査では半数以上が同性婚の法制化に賛成し、多くの自治体による同性パートナーシップ制度の創設が社会の変化を更に下支えをしています。こうした国民意識や社会の変化は、着実に司法の判断に影響を与えていると思われます。
加えて、最高裁判所の首席調査官を務めた経歴を持つ千葉勝美元最高裁判事が、本年二月に出版された「同性婚と司法」という著書の中で、憲法二十四条一項の両性、夫婦という文言は、当事者、双方という文言と同じものとして文理解釈することが可能であると述べており、注目を集めております。なお、千葉元判事は、同著において、価値観が対立する事例については、法原理機関としての司法が多数決原理とは離れて対応してきた旨を述べた上で、同性婚問題について、法原理機関としての最高裁大法廷判決による明確な憲法判断による解決が司法に期待されている点を強調されています。
立憲主義の歴史を振り返りますと、十九世紀には、ヨーロッパを中心に、法律の制定によって政府による人権侵害を防ぐという意味で、議会こそが人権保障の担い手とされてきましたが、二十世紀では裁判所による人権保障が主流となり、現在に至っています。千葉元判事の指摘は、このような立憲主義の歴史や違憲審査制の重要性に沿ったものと言えます。
しかし、少数者の権利保障は司法だけの役割ではなく、むしろ、まずは我々立法府こそが矜持を持って取り組むべき課題です。基本的人権の保障は日本国憲法の三大原理の一つであり、多数派原理に基づいて運営される国会も、憲法の規定にのっとって、少数者の権利を守る立法を行う責務を負っております。仮に、この責務を怠り、最高裁で国会の立法不作為を非難されることがあれば、それは立法府として恥ずべきことです。
さきの札幌高裁判決は、同性婚が根源的には個人の尊厳に関わる事柄であると指摘をしています。この判決を始めとする司法からのメッセージを踏まえ、国会は、最高裁の判決を待たずに、不利益を受けている方々の状況について理解を深めながら、真摯な議論と具体的な対策を進める必要があります。
その際、価値観が対立するテーマであるからこそ、性的指向や性自認に関する正しい理解を広げるとともに、社会の多様性がマイノリティーのみならず社会全体にとってどのような利益、価値をもたらすのかについても、国民に分かりやすい形で議論し、社会を対立と分断の渦に巻き込まないようにしていくことが重要になると考えます。
以上、緊急事態における国会機能の維持と同性婚についての私の意見表明といたします。