國重徹の発言 (憲法審査会)

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○國重委員 おはようございます。公明党の國重徹です。
 前回の審査会において、本庄幹事から、繰延べ投票と参議院の緊急集会でも対応できないような、全国の広範な地域で相当程度長期間選挙ができない選挙困難事態というのは一体いかなる状況なのか、説得力ある科学的検証は示されていないとの問題提起がありました。そこで今日は、その御指摘のうち、全国の広範な地域で選挙ができない事態とはどのようなものなのか、広範性に着目をして深掘りをしてみたいと思います。
 我が国において、全国の広範な地域で選挙ができない事態といえば、まず自然災害、とりわけ地震が考えられます。この点、政府の地震調査委員会の予測によりますと、今後三十年以内に南海トラフ沿いでマグニチュード八から九クラスの地震が発生する確率は七〇から八〇%とされています。また、南海トラフ沿いで最大クラスの地震、いわゆる南海トラフ巨大地震が発生した場合には、九州から関東にかけた広範な地域で震度六弱以上の強い揺れが想定されています。
 具体的には、東日本大震災において震度七が観測されたのは宮城県栗原市の一市のみでありましたが、南海トラフ巨大地震では、震度七が何と百二十七市町村にまで及ぶ、都道府県で見ると、静岡県、愛知県、三重県、兵庫県、和歌山県、徳島県、香川県、愛媛県、高知県、宮崎県と十県にも及ぶと予測されています。
 また、震度六強を基準としますと、東日本大震災においては宮城県、福島県、茨城県、栃木県の四県であったのに対し、南海トラフ巨大地震では二十一府県にも及び、さらに、震度六弱を基準にすると、東日本大震災においては岩手県、宮城県、福島県、茨城県、栃木県、群馬県、埼玉県、千葉県の八県であったのに対し、南海トラフ巨大地震では二十一府県に及ぶと予想されています。
 これを震度面積で見ますと、東日本大震災と比較して、南海トラフ巨大地震は震度七で九十六倍、震度六強で十一倍、震度六弱で四倍になると推定をされています。南海トラフ巨大地震がいかに広範な地域に影響を及ぼすか。被害エリアの広範性、被害の深刻度は、未曽有の被害をもたらした東日本大震災をはるかに上回ります。
 東日本大震災後の地方選挙の実施状況を前回の衆院選に当てはめた憲法審査会事務局の試算によりますと、本来の期日に選挙が実施されず、選出されない議員は六十九名、定員の一五%となりますが、南海トラフ巨大地震が国政選挙と重なった場合には、より広範な地域で選挙困難事態に陥る蓋然性が極めて高く、選出されない国会議員は一五%を大きく上回るであろうことは明白と言えます。
 そして、少なくとも、これだけの府県に影響が及んだ場合には、全国の広範な地域で相当程度長期間選挙ができない選挙困難事態に当たると思われますので、国政選挙と重なった場合には、選挙期日の延期が必要になると考えられます。
 一方、濫用防止の観点から、その判断基準を明確にする必要があります。
 この点、前回の審査会で本庄幹事から、議員任期を延長すれば被災地以外の大多数の有権者が本来行使できる選挙権を行使できなくなる、議員任期延長論の中で、この点についての十分な比較衡量はなされているのかとの問題提起がありましたが、本質的な指摘であり、選挙期日の延期の判断基準を考えるに当たって、被災地以外の有権者の選挙権を考慮しなければならないことは当然です。
 他方で、選挙期日を延期した場合、被災地以外の有権者は本来行使できる選挙権が行使できないことにはなりますが、その場合でも、選挙期日の延期に伴って議員任期が延長されれば、前回の選挙における民意を反映した国会議員は存在することになります。そして、選挙が可能となった時点で速やかに選挙を実施すれば、選挙権は回復できます。
 これに対し、被災地においては繰延べ投票で対応するとされた場合、大規模災害のときにこそ被災者の意思を反映した施策が求められるにもかかわらず、被災地の有権者は選挙権を行使できないばかりか、被災地には前回の選挙時の民意を反映した国会議員も存在しないことになります。この場合、被災地の有権者は、被災地以外の有権者に比べて、いわば二重の不利益を被っていると言えます。
 この点、国会議員は全国民の代表であるところ、この全国民の代表は、伝統的には、議員は、選挙区など特定の選挙母体の代表ではなく全国民の代表であること、また、選挙母体である選挙区などの命令には拘束されないことを意味するものと解されてきました。しかし、現在では、国民の意思と代表者の意思の事実上の類似が重視されるようになり、国民の多様な意思ができる限り公正かつ忠実に国会に反映されなければならないことを意味すると解されています。
 このように考えますと、被災地選出の議員を中心に多数の議員が選出されないという状況は、国民の多様な意思をできる限り公正かつ忠実に国会に反映するという全国民の代表の要請を満たしていないと考えられます。
 繰り返しになりますが、被災地以外の選挙区の有権者の選挙権が阻害されるという指摘はもっともであり、十分に考慮しなければなりません。ただ、選挙期日の延期の判断基準の問題は、あちらを立てればこちらが立たず的なところがあるため、その考慮要素一つ一つを単独で考えていくのではなく、様々な事情を総合的に勘案して、合理的な制度を仕組む必要があると考えます。
 本庄委員の問題提起に敬意を表し、今後、これに関する議論も活発に行われることを期待し、私の発言といたします。

発言情報

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発言者: 國重徹

speaker_id: 6432

日付: 2024-05-23

院: 衆議院

会議名: 憲法審査会