秋山正臣の発言 (厚生労働委員会)

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○秋山参考人 全国労働組合総連合、略称全労連で副議長の秋山と申します。
 本日は、発言の機会をいただき、ありがとうございます。労働者の立場から、雇用保険法の一部を改正する法案についての意見を述べさせていただきます。
 初めに、厚生労働委員会は、国民生活に深く関わる政策を所管しており、様々な課題が山積していると思います。こうした問題に日々向き合いながら、国民生活の向上に向け、委員の皆さんが昼夜をたがわず御奮闘いただいていることに心より感謝を申し上げたいと思います。
 私からは、問題意識を三点に絞って申し上げたいと思います。
 第一に、雇用保険給付の財源と給付に関してであります。
 雇用保険制度の本来的な役割を考えるのであれば、労使負担だけでなく、国庫負担は欠かせません。行うことが基本です。資料の方に、二ページに入れましたが、雇用保険失業給付の国庫負担は僅か二・五%にすぎません。育児休業給付は、八分の一ということで、一二・五%です。
 先般、財務省が国民負担率に関する推移を公表しましたが、資料三ページに入れているとおり、社会保険負担の比率が二〇〇〇年代に入り高まっています。社会保険料や税負担の増大が実質賃金の低下に大きく影響してきました。特に中高年層は、昨年と今年の春闘でベア引上げが言われていますが、賃金引上げが余りなされず、負担ばかりが増大しているというふうに思います。
 三月二十七日に厚生労働省が二〇二三年賃金構造統計調査の結果を公表していますが、資料のページ四に入れました第四表、企業規模、性、年齢階級別賃金、対前年増減率及び企業規模間格差によりますと、大企業の三十五歳から五十四歳のところは前年よりも賃金が減少しています。
 今年の春闘で賃金が大幅に引き上げられたということは報道もされていますが、中高年層の賃金が上がるのか、疑問を持ちたくなります。
 これらのことを考えると、労働者の実質賃金低下をもたらす保険料の引上げは避けるべきだというふうに思います。五ページに厚生労働省の資料も入れておきましたが、国庫負担の減少によって給付の抑制が進められ、受給者も絞り込まれてきたと思います。
 特に、失業給付の基本手当については、現行の給付水準が低過ぎると思います。上限額が低いだけでなく、改正法案では下限を引き下げることになっています。育児休業給付は、給与の八〇%を給付するという実質賃金を保障する方向であるにもかかわらず、失業した場合には所得代替率が現在の水準を更に下回るのではないかと思います。こうした給付の抑制をやめるべきだと考えます。
 全労連は、全国一律の最低賃金制度を確立するよう求めています。同時に、直ちに千五百円を実現させるべきと考えていますが、下限の引下げにより更なる低賃金労働者を再生産するようなことはすべきではないということを申し上げたいと思います。国庫負担の拡充で給付の拡充を図っていただきたいと思います。
 二つ目に申し上げたいのは、雇用の流動化政策に関することであります。
 最近のテレビを見ていますと、職業紹介会社や人材派遣業のコマーシャルを見ることが多いと感じております。
 株式会社ビデオリサーチが運営されているVRダイジェストというページに、今年一月の広告主出稿ランキングというものがありました。資料の六ページに入れましたが、一位はリクルートさん、二位は日本マクドナルド、三位は興和といった、名立たる企業の名前が並んでいます。二十位にはリクルートスタッフィングの名前もあります。人材紹介、派遣業の最大手であるリクルートは、テレビ広告でも圧倒的な量を出されています。リクルート以外のCMもよく拝見しますが。
 七ページを御覧いただくと、有料職業紹介は拡大をし続けています。手数料の総額は、二〇二二年には六千三百十五億円とコロナ前の水準となっており、今後ますます増えていくと思われます。
 転職に当たって情報量が多いにこしたことはありませんが、転職するなどほとんど考えられなかった私の若い頃とは大きな違いを感じます。八ページに、厚生労働省の雇用動向調査から入職者の経路をグラフとして入れておきましたが、職業安定所の利用が減少し、広告の割合が高まっています。
 中小零細企業にとって、人員を確保することは容易ではありません。縁故採用が難しくなっていることもあり、人材紹介企業や広告を利用することが多くなっています。そのため、経費が大きな負担となっています。人材紹介企業を通じて採用したが短期間で退職してしまい、経費ばかりがかかっているという話も聞こえてきます。働く者が確保できなければ成り立たない社会福祉の分野では大変であります。
 そもそも、労働者供給事業は中間搾取であり、禁止をされていましたが、一九八五年の労働者派遣事業法の施行以降、派遣労働者など不安定な雇用労働者が増加してきました。その後、職業紹介事業の規制緩和、インターネットの発展による情報提供業者の増加など、転職を仲介する手段は多様化してまいりました。
 転職に対する壁を低くしてきたことは悪いことだとは思いませんが、プラス面よりも負の側面が一段と大きくなっているのではないでしょうか。転職を繰り返す人が増えることによって、日本全体の技術力の低下につながっていないだろうか、日本が世界に誇ってきた技術力は、現場で培われてきたものだというふうにも思います。雇用の流動化政策は、CMに見られるような転職をあおる風潮を起こしているように思えてなりません。
 労働組合に加入している組合員は、その仕事が好きで続けていきたいと考えています。だからこそ、私もそうでありましたけれども、働きやすい職場にしたいと考え、組合に加入して、環境改善について経営者と交渉を行います。
 また、雇用政策でありますが、無料の職業紹介事業や雇用保険業務を国の出先機関である公共職業安定所が直接行っているからこそ成り立ち得るものだというふうに思います。地域経済や働く者の雇用安定のためにも、公共職業安定所の役割を再確認していただきたいというふうに思っております。
 三つ目に申し上げたいのは、行政体制の拡充についてであります。
 雇用保険の適用拡大という今回の改正は、セーフティーネットの拡充として受け止めています。その上で、最も強調したいのは、実務を担う人員体制の強化が不可欠であるということです。
 雇用保険被保険者の手続として、資格取得届が月平均六十万件強、離入職の多い四月から五月には百万件の手続が行われています。ページ九に資料を入れておきましたので、御参照ください。今日も全国各地で手続を待っている長蛇の列ができていると思います。
 今回の適用拡大では、対象となる労働者が五百万人とも言われています。大幅な人員増がなければ、公共職業安定所、ハローワークの雇用保険窓口はパンクしかねません。
 電子申請の活用も考えておられると思いますが、電子申請を活用できるのは一般的に規模の大きな事業所であります。それだけでなく、電子申請であっても、今回の適用拡大によって労働時間に関することを詳細に把握する必要があります。むしろ窓口での手続の方が効果的、効率的ではないかとも思われます。いずれにしても、膨大な業務量をこなす人員が必要であります。
 新規に適用される労働者が増えれば、受給者も増加します。しかも、短時間パート労働者ですから、ダブルワークが容易に想定されます。給付の窓口では、失業状態の確認がこれまで以上に慎重にならざるを得ません。
 さらに、雇用保険二事業の対象にもなりますが、最も影響が大きいと思われるのが各種助成金の対象者になることであります。特に、新規雇入れを対象とする助成金の種類が多く、今回の適用拡大で対象者が急増することも見込まれます。
 助成金の目的や内容を十分に理解して、適切に受給してもらう必要がありますが、事業所に対しての事前説明や申請時の確認、実際の審査、支給に至るまで様々な対応が必要であります。しかも、公共職業安定所による紹介を要件としている助成金も多く、職業相談の窓口でも、求職者に対して要件を満たしているかどうかの確認が必要となります。同時に、紹介先事業所に対して助成金の対象者であることを説明することも必要になります。
 資料の十ページと十一ページに人員数と人口の関係を示すグラフを入れましたが、公共職業安定所の人員数を拡充していただきたいということを申し上げておきたいと思います。
 以上、三点にわたり申し上げましたが、短時間労働者や複数就業者などをカバーするなど、雇用保険の適用範囲を広げていることについては歓迎をしますが、依然として、フリーランスやギグワーカーといった労働者性の強い人々の問題が残っています。また、個人経営者と同様な状況に近い中小零細企業の経営者も保護の対象として考える必要があるのではないかとも思います。ただし、雇用保険という制度の限界も見ておく必要があることは間違いありません。
 いずれにしましても、社会の変化に対し、政策が迅速に推進できるよう、行政の体制拡充を重ねてお願い申し上げ、陳述を終わりといたします。
 御清聴ありがとうございました。(拍手)

発言情報

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発言者: 秋山正臣

speaker_id: 29545

日付: 2024-04-09

院: 衆議院

会議名: 厚生労働委員会