小野山静の発言 (厚生労働委員会)
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○小野山参考人 日本労働弁護団本部事務局次長の小野山静と申します。
本日は、日本労働弁護団本部事務局次長として、また、小学生の子供を育てる一人の親としてお話をさせていただきます。
日本労働弁護団としましては、現在審議されている育児・介護休業法等の改正案について、主なものだけでも四点、問題点があると考えております。
まず一点目が、子の看護休暇制度の見直しが極めて不十分だという点です。
今回の改正案は、子の看護休暇を、対象年齢を現行の小学校就学前から小学校三年生修了前まで引き上げるという内容になっていますが、小学校三年生までとする合理的な理由はあるんでしょうか。
お手元に配付しました、子の看護休暇制度に関するアンケートを御覧いただくと、日本労働弁護団が実施し、四月二十一日時点で七百十四件の回答が集まっております。このアンケートにおける、子の看護休暇制度は子供がどのくらい大きくなるまで必要ですかという問いに関する回答結果を御覧いただくと、小学校三年生まで必要であるという回答は僅か三・九%です。小学校卒業までという回答が四五・二%、中学校卒業までという回答が三二・四%となっています。
小学校卒業まで必要であると回答された方の中には、病気の小学生一人では病院に行けないからという意見が多く見られました。また、中学校卒業まで必要であると回答された方の中には、中学生までは小児科扱いで受診には保護者の同伴が必要だから、また、田舎では通院に車が必要なため子供だけでは通院ができないという意見が見られました。実際に子育てをされたことがある方であれば、こうした意見は当然納得されると思います。
国民の声に真摯に耳を傾けていただけるのであれば、子の看護休暇制度の対象年齢は少なくとも小学校六年生まで引き上げていただきたいです。小学校三年生までというのは、はっきり申し上げると中途半端です。
また、今回の改正案は、子の看護休暇の取得日数については何ら触れていません。つまり、現行の日数のままということになります。しかし、一年間に五日、子が二人以上の場合には十日という現行の日数は、十五年も前に改正されたものです。十五年前と比較して、共働き世帯は約三百万世帯も増加しています。それでもまだ、十五年前に改正された日数で足りると思われますでしょうか。
アンケートにおいても、現行の日数では十分ではないと回答した方は実に九二・五%に上ります。現行の日数で足りていると思う当事者なんてほぼいません。アンケートの結果を見ると、子一人当たり年間十日、二人以上の場合には二十日を希望する人は四四・三%、子一人当たり年間十五日、二人以上の場合は三十日を希望する人は四一・七%です。
インフルエンザなどの感染症にかかった場合に、年に一度感染しただけでも五日間の看護休暇を使い果たしてしまうことがあります。子の看護休暇制度の拡充を求めているおかゆプロジェクトのメンバーの方も、既にインフルエンザ、溶連菌、扁桃炎で入院もあって、残り有給休暇五日、子の看護休暇二日ほどしか残っていない状況で、あと八か月、これで乗り切れるとは到底思えないとお話しされています。
こちらに関しても、国民の声に真摯に耳を傾けていただけるのであれば、子の看護休暇の取得可能日数も是非速やかに見直していただきたいです。ちなみに、スウェーデンでは子一人につき百二十日間の看護休暇制度が設けられていて、フランスでも最長四か月の子供に付き添うための休暇というものが設けられています。
さらに、今回の改正案は、子の看護休暇の有給化についても一切触れられていません。しかし、アンケートの結果を見ると、子の看護休暇制度を有給にすべきであるという回答は八二・九%に上ります。
有給にすべきであるという回答の理由を見ると、有給でないと金銭面でも苦しい、子供とお金をてんびんにかけたくないという切実な声が上がっています。親であれば、経済的な心配をすることなく、病気の子供の看護に専念したいです。しかし、残念ながら、子の看護休暇を有給としている事業所の割合は二七・五%にとどまっています。
子の看護休暇制度を本当の意味で労働者にとって利用しやすい制度にするには、法律による有給化が急務と言えます。
二点目は、柔軟な働き方を実施するための措置に関する提案が不十分な点です。
改正案では、柔軟な働き方を実施するための措置として、始業時刻変更等の措置、在宅勤務等の措置、短時間勤務制度、新たな休暇の付与、ベビーシッターの手配や費用負担、これら五つの中から事業主が二つ以上選択して措置を講じる義務を設け、労働者は事業主が選択した措置の中から一つ選べることとなっています。
しかし、はっきり申し上げて、事業主が二つ選択して、その中から労働者が一つ選択することができる、まだそんな次元の議論をしているのかというのが改正案に対する率直な意見です。
始業時刻変更等の措置、在宅勤務等の措置、短時間勤務制度、ベビーシッターの手配や費用負担、これら四つは日常的な働き方に関する措置と言えますが、全部必要かつ重要です。私も、夫と共働きで小学生の子供を今現在育てていますが、これら四つをフル活用して何とか仕事と育児を両立させているのが現状です。
確かに、柔軟な働き方を実施するための措置を講ずる事業主の義務というものが新たに設けられること自体は前進と言えます。しかし、今回の改正はあくまで経過措置にすぎないと考えていただき、将来的には、原則としていずれの措置も労働者が選択できる制度を構築すべきであると考えております。
また、柔軟な働き方を実施するための措置について、改正案では、子の対象年齢が小学校就学の始期に達するまでの子とされています。
この部分を読んだとき、正直申し上げて、私は自分の目を疑いました。小一の壁が社会問題にもなっていて、早朝から出勤する保護者の子供を受け入れるために、大阪の小学校が朝七時に校門を開放することにしたというニュースが先月も報道されたばかりです。それなのに、柔軟な働き方を実施するための措置に関して、子の対象年齢を未就学児までにしようとしている。本当に子育てをしたことのある方がこの改正案を検討されたんでしょうか。
小一の壁のほかにも、小三の壁も言われています。少なくとも子供が小学生の期間は、仕事と育児やキャリア形成の両立を果たすには柔軟な働き方が必要不可欠です。そのため、対象年齢は小学校六年生まで引き上げていただきたいです。
三点目は、男性による育児休業取得に関する目標設定が不十分な点です。
二〇二三年六月に出された、今後の仕事と育児・介護の両立支援に関する研究会の報告書では、政府において男性の育児休業取得率の目標を掲げる場合には、取得率だけでなく、男性の育児休業取得日数や育児、家事時間等も含めた目標の検討が必要であると記載されていました。ところが、改正案では、男性の育児休業取得率の公表義務の対象が拡大されただけにとどまり、男性の育児休業取得日数や育児、家事時間等も含めた目標の検討という部分が削除されてしまっています。
なぜ、議論がこのように後退してしまうのでしょうか。出産、育児による女性の離職を防ぎ、男女共に育児と仕事やキャリア形成を両立できるようにしていくためには、男性の育児参加は不可欠であるということはもはや誰もが分かっていることだと思います。
しかし、残念ながら、現状は、育児休業を六か月取得したのは、女性が九五・三%であるのに対し、男性は僅か五・五%であり、男性の育児休業は五日未満が二五%、五日以上二週間未満が二六・五%で、半数余りが二週間未満の取得となっています。
男性が育児を手伝うのではなく、男性も女性も育児を共に分かち合うようにしていくためには、速やかに男性の育児休業取得日数の増加や家事時間等の確保も目指すべきであり、それらも含めた目標の検討が現段階から必要です。
最後の点は、長時間労働の是正という観点が極めて希薄であるという点です。
仕事と育児、介護の両立の最大の障壁は長時間労働です。現在の長時間労働による働き方が変わらないままでは、仕事と育児、介護の両立を幾ら掲げても、現実に家庭責任を負わされがちな女性労働者や、配偶者とともに育児や介護を担う責任感のある男性労働者がキャリア形成から阻害されてしまうことになります。また、両立支援に向けた制度をどんなに充実させても、周囲が長時間労働を行っている中では制度を利用しづらいというのが実態です。
育児や介護もそうですが、誰しも、ほかの人と負担を分け合わなければ乗り越えられないような人生のステージがあります。私も、夫と育児の負担を分け合い、両親に支えてもらって、どうにか弁護士として十年以上働き続け、今日ここでお話をさせていただきました。女性労働者だけが育児や介護の責任を感じて勤務の継続やキャリアの形成を諦めるという状況を、もういいかげん打破していかなければいけません。
今まさに育児や介護に向き合っている当事者の声に耳を傾けていただき、異次元と呼べる抜本的な法改正をお願いいたします。
以上です。(拍手)