馬渕磨理子の発言 (財務金融委員会)
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○馬渕参考人 おはようございます。経済アナリストの馬渕磨理子です。
今日は、参考人としてお招きくださいまして、本当にありがとうございます。
私自身は、年間百五十社以上のトップ企業、トップ経営者と取材をするということと、また、自身が昨年乳がんを患うまでは、地方に足しげく足を運び、年間百回ほど地方の中小企業の方々と交流を深める、そういう活動をしてまいりました。
そうした中で、本日は、日本の現下の金融経済情勢と、事業性融資の活用について申し上げます。
今、デフレからは脱却しつつある時期に、この本国会で事業性融資の推進に関する法案の議論が進んでいること、この時期が重なっていることに意味があると感じています。また、法案にも、国の責務として進めていくというこの文言に対しても、非常に力強いものを感じております。
そこで、改めてデフレの正体、これは何なのか、失われた三十年の現状を数字で確認する必要があると思いますし、それが本法案を議論する上での本質上の問いになると考えています。
デフレの正体は、貨幣愛だと結論づけることができます。それが、賃金、物価、金利の上昇は起きないと思う固定概念、つまりノルムにつながり、人よりも現金に価値を置いてきた時代、これがデフレの時代です。
三ページ目にございますアメリカの状況、直近三十年までのデータをこちらにお示ししていますが、アメリカ経済というのは、名目GDPの方が実質GDPよりも大きく、毎年物価が上昇する、その結果、賃金も上昇してきた国です。一方、日本はアメリカとは真逆で、実質GDPの方が名目GDPよりも大きく、毎年値下げが起きる社会でした。そうしますと、利ざやが小さい企業は賃上げなどができない状況が続いています。
また、一番右側の法人企業統計ですけれども、バブル崩壊からの三十年間というのは、企業の売上げは一千五百兆円で停滞しています。その中から賃金を払うわけですが、賃金も百五十兆円で横ばいです。一方、実は稼ぐ力は高まっていて、経常利益はバブルの絶頂期から一旦半減しますが、現在は右肩上がりで、九十五兆円まで増加しています。その三分の一に当たるものを配当に分配していて、現在、三十兆円のお金を配当に回しています。
そして、右側の青いデータですけれども、これが現金の推移です。つまり、企業は稼ぐ力が高まったんだけれども、有望な成長投資先を見つけることができずに、現金を積み上げ、現在は二百九十兆円に積み上がっている状況です。これは、何かあったときに身を守れるものは現金だという貨幣愛が詰まっていった、高まっていった、こういった背景があると思います。
ですので、粘着質なデフレ構造を、日本を変える場合には、それ相応のかなりのエネルギーが必要だと思っています。ですので、インフレも厄介なんですけれども、デフレへの処方箋の方が難解ではないかというふうに思います。
続いて、四ページ目を御覧ください。
デフレから脱却するために、金融緩和で、株式市場自体は過去の景色を塗り替えることができました。ただ、過去のバブル期との違いは、一九八九年台の日経平均の投資家の期待値は七十倍でした。つまり、コップにビールを注いだ場合、泡だらけだった時期がバブル期です。しかし、現在の日経平均の期待値は十六倍から十七倍、つまり、泡の割合は非常に薄いわけです。これは、中身が変わってきたというふうに理解することができます。
では、五ページ目を御覧ください。何が変わったのか。
これはアベノミクス以降の株価推移ですが、株価というものは、一株当たり利益掛ける投資家の期待値で決まります。そうしますと、アベノミクスがスタートした時期、日経平均の一株当たり利益は七百円、それに期待値が十五倍、掛け算されて一万円水準でした。そこから、二〇二四年は、一株当たり利益が二千二百円まで拡大し、期待値は十七倍、つまり、稼ぐ力は三倍ほどに拡大しています。こちらは、先ほどの法人企業統計で経常利益が拡大していることと重なると思います。
ですので、我々は、過去のバブルと比較して物事を判断するのではなく、もう今の基準で生きていて、異なる基準でバブル期の高値を更新したということです。見るべきは未来、将来性だと思います。事業性融資というものは、未来を見る法案だというふうに感じております。
続いて、六ページ目を御覧ください。
未来のコミュニケーションの在り方として、アメリカの中央銀行、FRBと日銀のコミュニケーションを比較したいと思います。
本法案では、経営者が金融機関に対して事業性の説明や密なコミュニケーションが求められるという法案になっていますけれども、例えばアメリカの中央銀行も国民に対して熱心にコミュニケーションを取っています。FRBの考えるアメリカの潜在成長率は一・八%であり、物価目標は二%を目指し、そして将来的には金利は二・六%にしたい、こういうふうなメッセージを、国全体が向かう方向性を国民全体に共有しているのがアメリカのFRBです。
日本はこれまで、二番目のインフレ目標だけは長らく掲げてきましたが、潜在成長率や金利の水準については、もちろん言及できないほどに低かったわけです。しかし、植田日銀総裁が日本の潜在成長率を〇・七%程度だというふうに明言したことから始まり、そこからいかに二%を目指すのか、さらには、三月にはマイナス金利を解除し、金利を〇・一%というふうに移行しました。
ですので、日本も、アメリカほどではないものの、日本の向かう方向性をようやく中央銀行としても明示できるような環境になってきた。これもデフレからの転換の兆しだというふうに感じております。
では、七ページ目を御覧ください。
そうしますと、日銀が今後、短期金利をどこまで引き上げるのかというところが論点になります。
まだ、日銀としては、緩和的な状況が必要な経済環境だとおっしゃっていますが、何をもって緩和的なのかということなんですね。
ここは、本来は、この図にお示ししましたとおり、中立金利、景気を冷やしもふかしもしない中立的な金利を議論するべきところなんですが、なかなかこの水準は、今、現段階でも専門家の中でも幅が広く言及できないというふうに話されています。
そこで、日本の潜在成長率から短期金利の見通しを推測することができます。つまり、現在、日本の潜在成長率がおよそ〇・七%程度であるならば、それ以下の短期金利の水準であれば緩和的な状況と整理することができます。つまり、今現在〇・一%の金利が、〇・五%ぐらいまでは引き上げる可能性が十分にあり得るということになります。
ここからは、事業性融資の活用について申し上げます。十ページを御覧ください。
事業性融資は、不動産担保や経営者保証等によらず、事業の実態や将来性、無形資産を評価して融資を行うものです。
こちらは内閣官房の資料を引用させていただきましたが、時価総額に占める無形資産の割合は、アメリカを代表するSP五〇〇は九〇%を占め、日経二二五は三二%と、明らかにこちらは差があります。これは、企業の競争優位を支え、イノベーションを生み出す根本的な要素である研究開発や人材、こういったところに重きを置いてこなかった日本経済の実態があるというふうに考えております。
そして、次に、十一ページ目ですが、ここまで、いかに回収するか、労働者保護の観点については議論されてきましたので、私からは、マクロ環境から見た事業性融資の意義を申し上げます。
メインバンクがはっきりしないケースが数多く見られますが、事業性融資によってメインバンクを明確化することで、迅速に経営改善と支援が可能になると考えます。
また、企業価値というものは、金融機関のサポートで、実は減少したり増加もするわけです。能動的に支援することで、本来の貸し手と借り手の関係を再構築することに寄与する法案だと考えております。
また、事業性融資を通じて、目利き力の醸成、こちらは金融機関の自社内にノウハウをもう一度積み上げていくこと。これが、地域経済、それから事業者の成長につながりますし、また、金融機関の収益力強化にもつながると感じています。
さらに、審査能力に関しては、こちらは事例を積み重ねることで精度が高まることが想定されますが、例えば、VCやコンサル、また非財務情報の調査を行うリスク審査企業の助言も有効だと考えています。
事業性融資は、審査時点に、これまでは有形資産を評価する、つまり、現金化ができるであろうというものを非常に重視した偏重型の貨幣愛、こうした日本経済の脱却につながるような法案だと思い、ある意味、日本のノルムを変えていく可能性があるというふうに希望を感じております。
続いて、十二ページ目を御覧ください。
本法案が成立した場合に、普及のポイントになるであろう点を御提案申し上げます。
今回の事業性融資の活用想定のメインは、一つ目、スタートアップ、成長力のある企業、そして二つ目は中小企業の事業承継、さらには三つ目が事業再生なんですが、これに加えて、サテライト活用として、四つ目のゾーンであります上場新興企業の買収資金のファイナンス活用を提案したいと思います。
実は、上場後に、時価総額が小さく行き詰まっている企業は数多く、これは日本の大きな社会課題の一つでありますが、まだ誰も手をつけていない現状があります。例えば、上場後に、ほかの企業から買収されたいが、しかし、キャッシュフローの回収能力から非常に慎重に判断されるケースが多いわけです。なので、MAの対象として、上場後の小型企業にこういったものを適用していく場合には非常に意味があるというふうな声も現場から聞いております。
ですので、上場新興市場というのは、そもそも与信がありますし、金融機関とのリレーションであるとか財務情報の開示、四半期開示も行っておりますので、この辺りはモニタリングコストが低い企業ゾーンだというふうに理解することができますし、今、人的資本や非財務情報の開示もどんどん進めている企業ゾーンであります。
ですので、ここが、もちろんメインの利活用ではないとは理解していますが、サテライトとして同制度の活用事例を増やしていくような観点から考察の余地があるのではないでしょうか。
最後は、審査機能のサポートが可能な分野について申し上げます。
融資とはリスクを取る程度は確かに異なるものの、エクイティー側の目利きや審査を参考にできると思います。VCや株式投資型クラウドファンディングという会社は、社内に審査機能があり、ノウハウが既に蓄積されています。
また、売り掛け債権保証業とのデータ連携です。
売り掛け債権保証というのは、売掛金の支払いを保証するものですので、取引先が倒産、支払いが行われなかった場合に、保証会社が支払いを行います。そうした場合、売り掛け債権を保証する企業としては、財務データに反映される前段階の動的データを、営業員を全国に配置し情報を収集していて、リスクを事前に把握するような業態です。ですので、取引情報であるとか何らかの遅延の情報、こういった情報に加えて、経営者の資質などモニタリングコストの部分を既に本業で行っていますので、金融機関の審査機能に寄与が可能だと考えています。
このように、本業で既にそのものを回していくために、非財務情報であるとか動的データを把握しているような企業との連携は、モニタリングコストを下げる点から有用性が高いというふうに考えております。
私からは以上となります。ありがとうございました。(拍手)