成田憲彦の発言 (政治改革に関する特別委員会)

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○成田参考人 駿河台大学の成田でございます。
 政治改革特別委員会にお招きをいただきまして、ありがとうございます。
 衆議院に政治改革の語を冠する特別委員会が設置されましたのは、平成六年の政治改革調査特別委員会以来三十年ぶりではないかと思います。是非実りの多い改革が実現いたしますよう祈念いたしております。
 時間が限られていますので、冒頭では三点、企業献金、政策活動費、政治資金規正法の特徴についてのみ、私の考えを述べさせていただきます。
 まず、企業献金についてであります。
 私は、長いこと企業献金容認論者でした。その理由は、個人献金に比べて安定的で寛容な資金源と言えるからです。寛容という意味は、金を出しても余りあれこれ細かいことは言ってこないという意味です。
 しかし、私は、近年の日本の様々な指標での世界順位の低下、端的に言って日本の衰退の原因の一つは、長期的な日本の資源配分の偏りにあり、その要因の一つが企業献金だったのではないかと考えるようになりました。
 例えば、公的資金の投入先で日本が世界に比べて突出して多い分野があります。道路です。一方、自民党に最も献金の多い業界は建設業界であります。
 これに対して、例えば教育は、最近は、岸田総理が看板にし、教育を冠する政党も現れてはいますが、それでも、日本ではまだ、教育費は親あるいは家庭が出すのが当然だという考え方が強く残っています。しかし、世界を見ますと、どの国でも教育への公的資金の投入量が多いことに驚かされます。日本で教育に資源配分がなされてこなかったのは、教育業界の献金量が少なかったことも背景にあるように思っています。
 企業も政治献金の自由を有しているというのは、よく知られた一九七〇年の八幡製鉄政治献金事件の最高裁判決です。その後、最高裁は、一九九六年の南九州税理士会事件で、強制加入の税理士会の政治献金を目的外行為とし、献金のための特別会費の徴収の総会決議を無効とする判断を示しました。これが最高裁による八幡判決の見直しにつながるかは、肯定と否定の両説があります。しかし、八幡判決が今なお盤石だとは必ずしも言えないことは、政治も心しておく必要があるのではないかと思います。
 世界でも、企業献金に対しては、禁止や、禁止に至らないまでも規制を強化する国が増えており、日本も再考の時期になっているのではないかと考えております。
 次に、政策活動費について申し上げます。政策活動費は多くの党にありますが、ここでは主に、問題になっております自民党の幹事長の政策活動費を念頭に申し上げます。
 自民党の政策活動費は、自民党自身が、党勢拡大、政策立案、調査研究のために党役職者に職責に応じて支出されているものと説明しており、メディアでは、政党から議員個人に支給される、使途を明らかにしなくてよいお金と報じられています。しかし、このような説明、特にメディアの説明では、要するにどういうお金かイメージが湧きませんし、このお金の本質を捉えることはできないのではないかと思っています。
 政策活動費は、要するに政党の機密費であります。したがって、議論の枠組みとしては、政党は機密費を持つことが許されるか、あるいは、日本の政治資金制度の中に政党の機密費を適切に位置づけることができるかということになると考えています。
 なお、機密費というのは、組織がその活動のために使途を公開しないことを前提に有している資金のことで、国に内閣官房機密費や外交機密費があるように、私は機密費という語を否定的に使っているわけではありません。
 政策活動費の問題が取り上げられた初期の頃、政策活動費は、政治資金規正法第二十一条の二第二項により、政党から議員個人に寄附されたお金という説明が流布しました。しかし、報じられているその実態は、規正法第四条第三項の寄附の定義に当てはまりませんし、岸田総理を始め自民党も、寄附でないと明言しています。
 もし寄附なら、幹事長に渡った後は幹事長個人のお金ですが、寄附ではないので、幹事長に渡っても党のお金です。
 こう申し上げると、党から幹事長へは党内部の資金移動で支出にならないという指摘がありますが、この問題を解くのが、会計処理方法の渡し切りというものです。渡し切りの語は、立憲民主党、国民民主党共同案でも、日本維新の会案でも使われていますので、説明は省略しますが、要するに、事後の精算を必要とせず、受領者が受け取った時点で支出が完了し、受領者が書くのは預かり証ではなく領収書です。なので、それだけで収支報告書を作成することができます。この渡し切りは、かつては国の会計法にもありましたが、二〇〇二年に廃止されました。
 政策活動費の使途が幹事長から先は不明となるのは、議員個人や収支報告書の提出義務のない団体などに渡っているためと思われ、別に、元々制度的に公開しないことが認められているものというわけではありません。自民党が、公開しないで済むように、その時々の規正法の規定を巧みに使ってきたということなのだと思います。
 政策活動費はどのように管理されているのでしょう。もちろん私には知る由もありませんが、幹事長が何千万から一億円のお金を机の引き出しにしまっているとは考えにくいのではないでしょうか。
 そこで、モデルとして考えられるのが、官邸の官房長官室で管理されている官房機密費です。私は、旧官邸ですが、官邸で勤務した経験がありますが、正直、官房機密費については知る機会がほとんどありませんでした。ただ、うわさ話に出てくるように、官房長官室に金庫があったことは自分の目で見ました。もしかしたら、同様の金庫が自民党本部四階の幹事長室にあるのかもしれません。
 無責任なことを言うなとお叱りを受けるかもしれませんが、しかし、長年政権を担当している自民党が、官邸では官房機密費を、党本部では政策活動費という名の党の機密費を使って政治を行ってきたと考えることは、合理的な推論ではないかと思っています。
 そこで、政党の機密費の評価ですが、官房機密費についても国民から様々な批判がありますが、それでも、国の機密費については、その必要性を認める意見もあります。しかし、国民は、政党が機密費を持つこと、ましてや制度的にこれを承認することを許してくれるでしょうか。
 そこで、様々な工夫もなされています。維新案の特定支出もその一つで、秘匿と公開の間でいろいろ苦労されたことがうかがえる案になっていると思います。この案では、十年間秘匿し、十年後に総務大臣か都道府県の選管がインターネット公開することになっています。
 御承知のとおり、国の外交文書は三十年後公開となっていますが、国と政党では全く事情が異なります。国は永続的な組織ですから、担当者が替わったり政権交代があっても、三十年後にも国はあり、また、万一、三十年後にも公開が適当でないものは、非公開にすることができます。しかし、政党は、十年後どうなっているか不確かであるばかりでなく、立場も変わります。野党だったものが与党になったり、敵対して攻撃し合っていた同士が友党になっているかもしれません。
 十年後に機械的に公開されてしまう領収書を政党が残すことは、極めてリスクの高いことではないでしょうか。公開されると騒ぎになるかもしれず、また、それを恐れて見え透いた工作をすれば、やはり公開された時点で騒ぎになるでしょう。
 結局、政党が機密費を持つことは、国民の理解を得るのが難しいばかりか、むしろ政治の安定を損なうことになるのではないでしょうか。機密費は公開すれば存在しなくなりますから、完全公開にするのがよいのではないかと考えています。
 最後に、政治資金規正法の特徴について、一点だけ申し上げさせていただきます。
 今回の政治資金規正法改正問題を通じて岸田首相及び自民党の関係者から最もしばしば耳にする言葉は、政治活動の自由です。しかし、国民は、政治活動の自由が政治資金改革に当たって最も大切なことだと考えているでしょうか。
 例えば、日本の選挙法では、選挙運動期間が極端に短く、べからず選挙と言われるように、運動は世界で最も不自由と言われる細かなルールで縛られています。しかし、選挙に関して、政治からは、最近検挙された政党を除いて、政治活動の自由という言葉は聞こえてきません。政治資金については政治活動の自由を言い、選挙では沈黙する政治の態度からは、金をできるだけ自由に集め、できるだけ少ししか使いたくないという政治の御都合主義が見えてきます。
 私は、政治資金制度を含む政治制度の研究者として確信を持って申し上げますが、日本の政治資金規正法の最大の特徴の一つは、政治活動の自由を余りにも強調した制度になっているということです。その具体的特徴の一つは、政治資金規正法にはいろいろなルールが書かれているものの、罰則以外にそのルールを守らせる仕組みがないことです。罰則のみということは、検察以外に監視、監督する機関がないということです。
 これに対して、例えば道路交通法は、車両や歩行者にルールを守らせるために、公安委員会や警察の権限や任務を詳しく規定しています。他にも、社会のルールを定めるあらゆる法律には、必ずそのルールを守らせるための工夫が盛り込まれています。
 政治資金規正法にそのような工夫がないのは、自民党だけとは申しません、与野党併せて政治が、政治活動の自由を大義名分にしてきたからです。
 政治資金のルールを守らせる最も効果的な方法は、最近各国でもなされているように、監視のための第三者機関を設置することです。第三者機関を設置すれば、政治資金の公正化と透明化を飛躍的に進めることができます。
 例えば、立憲、国民案では百五十万円超の不記載を罰金刑にしていますが、そういうのは反則金の青切符にするのがいいと思います。青切符は無過失ですから、金額の少ない不記載にもどんどん切ることができます。メディアは議員ごとの青切符の枚数を報道するでしょう。
 その他、立入検査、改善勧告、収支報告書の訂正命令、助成金の減額支給、政治団体としての資格停止など、第三者機関ができることは幾らでもあります。第三者機関は、各党案でも附則で様々な形で触れられていますが、独立性のある、行政権限のある機関として設置すれば政治資金改革の切り札となり得るものですので、是非実現していただきたいと思います。
 以上であります。御清聴ありがとうございました。(拍手)

発言情報

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発言者: 成田憲彦

speaker_id: 11013

日付: 2024-05-27

院: 衆議院

会議名: 政治改革に関する特別委員会