上沼紫野の発言 (総務委員会)

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○上沼参考人 ただいま御紹介にあずかりました弁護士の上沼と申します。
 本日は、貴重な機会を頂戴いたしまして、ありがとうございます。
 私は、誹謗中傷等違法・有害情報対策に関するワーキンググループの副主査として、本改正の前提となる検討会に携わってまいりました。その立場から、本件に関し、少し意見を述べさせていただきたいと思います。お手元の資料に沿ってお話をさせていただこうと思います。
 まず、本検討の前提としてのSNS利用の現状についてお話をさせていただきます。
 皆様御承知のところだとは思いますが、インターネット以前については、意見表明の機会というものがマスメディアにしかなく、各人はそれぞれの小さな規模のグループの中でお話をするだけということになっていました。ところが、インターネット時代により、各ユーザーがそれぞれ意見を表明する機会を世界に対して持てるようになったということが一番のインターネット時代の特徴かと思っております。
 おめくりいただいて、次のSNS利用の現状のソーシャルメディア利用者数の推移及び予測のところを御覧ください。これを見ていただければ分かるとおり、ソーシャルメディアの利用者数というのは増加の傾向を示しており、これが減少するということは恐らくないというふうに思われます。
 それを前提に六ページを御覧いただくと、要するに、インターネット上の世界というものが相隣関係を模すことができるのではないかというふうに思われるわけです。法的紛争の典型例に相隣関係というお隣同士の紛争というものがあるわけですけれども、これは、人同士の接触があると一定の摩擦が生じ得るということを表しているものです。人が多くなり接触の機会が増えると、どうしても摩擦が避けられないということになります。
 おめくりください。七ページが、インターネット空間における人と人の関係を示した模式図になります。このように、インターネット上では人と人とが常にお隣同士という関係になっており、これはどうしても紛争というか摩擦が避けられない状況かというふうに思います。ここで白い丸で示されている部分というのが、いわゆるプラットフォームということを私としては示したものということになります。ここのプラットフォームごとに町というかコミュニティーを形成しており、プラットフォーム事業者がそれぞれの町をつくっているというようなものがインターネット上の社会というふうになると思います。
 これを前提に、本改正の背景について御説明いたします。八ページ目ですね。これは、私がリーガルアドバイザーを務めている総務省の受託事業であるインターネットの違法・有害情報相談センターの相談件数です。このとおり増加の傾向を示しており、これが減少するということは基本的にはございません。若干減少部分が見えるのは、コロナの対応により人との接触が若干増えたことによるものかと思っております。
 おめくりいただければと思います。このようにインターネット上の相談が増えているということに関し、被害者の救済手段として何があるのかということを示した図が九ページにあります。被害者の救済手段としては、過去の権利侵害に対する損害賠償と、今現在権利侵害の情報がネット上に載っていることについて、現在進行形で進行する権利侵害に対する削除という二つの救済手段がございます。
 このうちの過去の部分に関しては、二〇二二年の十月施行のプロバイダー責任制限法の発信者情報開示請求の手続の簡易化と申しましょうか、によってある程度の手当てがなされているところです。これに対し、削除については、プロバイダー責任制限法が制定されたときから特に手当てはされていなかったというものでございます。ところが、被害者にしてみれば、削除がされない限り現在進行形で侵害が継続するので、削除が極めて重要な手段であるということになります。
 それを前提に、十ページのお話になりますが、先ほどインターネットの社会についてお話をしたときに、それぞれのコミュニティーというか町をプラットフォーム事業者がつくっていると考えることができるのではないかというふうに申し上げました。
 プラットフォーム事業者がインターネット上の権利侵害情報に関してどのような関わりがあるかと申し上げますと、まず、権利侵害情報に関し条理上の削除義務を負うということが裁判例で言われております。また、自ら管理する場所の利用ルール、自らつくった町のルールを自らが決定できるということもあります。さらに、今のインターネットの世界では、ネット上、プラットフォーム上で発言ができるかできないかということで、意見表明の機会の場があるかどうかということが重要ですので、事実上のパブリックフォーラムとしての側面、そして、町ですので、いわゆる被害者と加害者の双方が混在するというのがプラットフォーム事業者の特性でございます。
 このような前提に基づき、今回の改正のポイントを、おめくりいただいた十一ページからお話をさせていただきます。
 改正のポイント、三つお話をさせていただきますが、まず一つ目が、被害者救済のための事業者による削除対応の迅速化というところです。先ほど申し上げたとおり、削除がされない限り被害が続くということですので、被害者から見て分かりやすく、迅速な削除のための体制整備というのが非常に重要です。
 具体的には、そもそも削除のための窓口が分からない、あるいは日本語で削除請求ができないなどということがないように、分かりやすい窓口と手続を整備していただきたい。そして、一旦削除請求をした後に、削除の対応がされているのかされていないのか不明であるということがないように、一定期間内での対応を要請したいというふうに思っています。この場合の期間の目安に関しては、過去の楽天チュッパチャプス事件などの裁判例及びアンケート結果などにより一週間程度が妥当ではないかとは考えておりますが、これは法律では十四日以内というような規定になっていると承知しております。
 そして、二つ目のポイントが、事業者による削除等の運用状況の透明化です。事業者が策定するルールは町づくりの基本であります。町に適用するルールはユーザーである住民にとって重要な関心事です。あらかじめ何が削除の対象になるかということは明らかになっているべきだというふうに考えます。
 そして、この部分に関して、十四ページですけれども、違法、有害情報に関しては、この四つの分類で検討することが多いわけですけれども、左半分は違法情報ですので、元々法律で禁止されている、あるいは権利侵害という情報です。そのうち右の部分は法律で決められていない情報ですので、どのような情報を削除するかしないかということは事業者自体が決定する必要があるということです。決定したものはあらかじめルールとして明示しておいてくださいということをお願いしたものが、この透明化ということになります。
 さらに、おめくりいただいて十五ページです。事業者による削除等の運用状況についても透明化を徹底していただきたいというふうに考えております。ユーザーが町の住民であることからすれば、事前にルールが明らかになっているだけではなく、一旦、自分が削除の対象、あるいはアカウントバン、そもそもサービスの提供が受けられないというような措置を受けた場合に、何が削除対象になったのか、あるいはならなかったのかということを知らせていただきたいというふうに思うわけです。そうでなければ何が起こったのかも分からず、安心して町には住めませんし、仮に行われた措置が不服であった場合であっても、それに対する不服申立てもできないということになります。そういう意味で、運用状況についての透明化というのも非常に重要なものだというふうに理解しております。
 最後に、これも重要な点ですが、一番最初に申し上げたとおり、インターネットにより意見表明の場というのが、各個人に対して機会が与えられるようになりました。これは非常にメリットだというふうに思っております。
 それが表現の自由として尊重されるべきことではありますが、その一方で被害者の救済というのも非常に重要なことであります。そのバランスをどういうふうに取っていくのかということを重要だというふうに考えておりますので、このバランスをどういうふうに検討するかという結果が今回の改正というふうになっており、基本的には、あらかじめ透明化していただく、そして迅速に行うべきことは対応していただくということを、町をつくったプラットフォーム事業者の方に自主的に取り組んでいただくということで、このバランスを取っていきたいなというふうに考えている次第です。
 私の方からは以上となります。(拍手)

発言情報

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発言者: 上沼紫野

speaker_id: 13466

日付: 2024-04-16

院: 衆議院

会議名: 総務委員会