境田正樹の発言 (内閣委員会)
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○境田参考人 境田でございます。
本日は、このような貴重な機会をいただき誠にありがとうございます。
今回、重要経済安保情報の保護活用に関する法律案ということについての審議が行われていますけれども、これの法案の検討のための有識者会議の委員を務めておりまして、一年間、合計十回にわたり、そこの検討に加わらせていただきました。その一年間、この作業に加わる中で感じてきたことを少しお話しさせていただきたいと存じます。
この法案は、特定秘密保護法から、それのもう少し範囲を拡大する、こういうふうなことで立案されているわけですけれども、その特定秘密保護法が作られた十年前から大きく環境が変わったな、立法事実が変わったなというのを痛感しております。私は法律事務所に勤めておりまして、いろいろな企業とか、国立研究開発法人とか大学の、経営者の方々と話をしていますけれども、危機感がこの十年間で半端なく高まっているということです。
まず、二〇一六年には、ダボスで行われた世界経済フォーラムの年次会議で、第四次産業革命、産業革命というのは、教科書で、昔、一六〇〇年代に行われたというのは覚えていましたけれども、今は第四次産業革命なんだということが周知されたわけです。この中では、ロボット工学とかAI、ブロックチェーン、ナノテクノロジー、バイオテクノロジー、半導体、量子技術、インターネット、3Dプリンター、仮想技術、拡張技術など、様々な先端ハイテクノロジーが社会、産業、教育、経済、全てを変えるんだ、こういうふうなことが提唱されたわけです。
日本政府も、翌年にはソサエティー五・〇という、サイバー空間とフィジカル空間を高度に融合させたシステムにより、経済社会と社会的課題の解決を両立する人間中心の社会を提唱したわけです。
さらに、ここから拍車をかけたのが、皆さん御案内のとおり、チャットGPTなどの生成AIの技術ですね。二〇二二年十一月に米国のオープンAI社がチャットGPTを提唱して、生成AI時代が到来したわけです。これが今、この第四次産業革命とか言われるものをはるかに加速させる革命をもたらすというふうに私は認識しております。
特に、主要企業の時価総額、これは三月二十二日時点のものですけれども、日本のトヨタは六十三兆円、断トツで、次に三菱UFJグループが十九・七兆円、東京エレクトロンが十九兆円、キーエンスが十七兆円、そういう時価総額ですけれども、例えば、アメリカのマイクロソフト社は四百七十七兆円ですね、それから、アップルは三百九十九兆円、エヌビディアは三百四十兆円。特に、チャットGPTができてから、この各社、百兆円ずつ時価総額が上がっているんです。
これはどういうことかというと、この先端デジタル技術、生成AIなどと、ビッグデータ、あと情報プラットフォームを掌握すれば、産業競争力と経済的利益を独占するということだと思うんです。その気になれば、他国政府とか他国の企業にとって潜在的なチョークポイントを多数握ることが可能だということだと思っています。
つまりは、武力を伴わずに他国を実質的に支配下に置く、コントロールする可能性があるということに我々は留意しなければいけない。江戸時代末期に黒船が来て、我々は大砲を、我々というか我々の先祖は、アメリカの艦船を見て、大砲を見て驚いたわけですが、その大砲というような有形物ではなくて、もっと様々な脅威が日本国とか若しくは日本の企業に迫っているということです。
他方、そういった企業を味方につける必要もあって、御案内のとおり、ロシアによるウクライナ侵攻の際には、スペースX社、あのイーロン・マスクさんがウクライナに提供したスターリンクインターネットサービス、これを契約していたことによって、即時の侵攻を免れ、侵攻というか制圧を免れたということもあるわけです。
なので、こういった企業とうまくつき合うかということも重要であると同時に、そこにリスクを感じるということも必要で、ゆえに、米国は中国のファーウェイを規制し、中国はグーグルやメタなどのSNSの大手を規制しているわけですね。そういったことに留意が必要だということです。
こういった日本における重要技術の保護と活用のためには、同盟国と同志国との緊密な連携が必要であるし、官民の情報共有、連携の推進が重要だということです。
ソサエティー五・〇、生成AI時代には、国を守る安全保障のための政策と産業競争政策、この守りと攻めを一体的に検討するということが必要だと思っています。
次に、私はいろいろ政策に関わることがあるんですが、こういったセキュリティークリアランスほか経済安全保障戦略に加えて、生成AI・デジタル戦略、半導体・量子戦略、カーボンニュートラル戦略のような重要な政策などにもちょっと関わらせていただいておりますが、その四つも、実は相互に相関関係があるんですよね。生成AIで大規模データを解析しようとすると物すごく電力を食うわけです。そこのエネルギーの省エネ化を図らなければいけないし、そのための半導体を開発しなきゃいけないんです。
そういうふうに、こういった各政策に相互の深い相関関係があるということを考えなきゃいけなくて、そのときの共通検討事項としては、世界における経済マーケットシェア、産業競争力を日本全体でどうやって強めていくか、攻めをどうやって確立するかということ、それから、逆に守りで、セキュリティー対策とかレジリエンシー体制を確立するということも重要です。と同時に、そういう中で戦略的自律性とか戦略的不可欠性を獲得していくということも重要であるし、ウクライナ侵攻とか台湾有事リスクなど様々な地政学的リスクとか、米中の覇権争いのリスクとか、エネルギー供給リスクとか、様々なリスクを洗い出した上で政策を立案しなければいけない。
さらに、生成AI等ハイテク技術が政治、社会、経済、教育をどう変えていくのかをイメージしながら、そのための支援と規制をしていく。そのためには、各国の政策や最新技術情報の収集とか、解析とか、研究開発テーマの立案とか、国政全般を見渡した戦略立案、産学官の連携のマネジメントが必要であると思っています。ここで難しいのは、やはり、各省は基本縦割りで、自分の省で担ぐとなるとどうしてもそこにそごが出ることがあるので、ここは先生方の政治主導というのが非常に重要であるというふうに痛感をしております。しかも、これはかなり難易度が極めて高いので、ある程度の失敗は許されると思っていて、トライ・アンド・エラーというPDCAサイクルをいかに回すかということが重要なんだと思っております。
それで、最後に、今回のセキュリティークリアランス制度に関する有識者会議の中で、少し外れるかもしれませんが、一番感じたことを申し上げさせていただきます。
今回、先生方御存じのとおり、取り扱う情報の中では、トップシークレット、シークレット、これは特定秘密保護、その下の機微度がやや下がるコンフィデンシャルが重要経済安保情報保護活用法、これの対象になったということでございますが、実は、産業界が一番期待していたのは、その下のCUIという、コントロールド・アンクラシファイド・インフォメーションという、ここに関する何らかのガイドラインとかを作ってほしいというのが、実は産業界の一番の希望でございました。
ここは、ただ、今回はコンフィデンシャルを中心にということで法案が進んでいるわけですけれども、産業界からすると、今申し上げたような様々なサイバーリスクとか、それから、例えば米国の輸出管理法、EARの規制があれば、中国がそれに対抗する中国輸出管理法の規制を講じる。それぞれ守っているとどっちかから制裁を受けたりとかするという、企業の経営者からするといろいろなところから矢が飛んでくる。そのときに、ガバナンスをしっかりするためには、施設クリアランス、組織クリアランス、人のクリアランスをしっかりしなきゃいけないわけですね。それが、人のクリアランスというのは、企業というのは、職業安定法の考え方という部分もあってなかなか人の管理ができないんです。
アメリカの場合は、ここのところが、CUIというものに対して政府がきちんとそこの情報を決めて、これに対してSP800―171という規制で人的なクリアランスもするという制度があるんです。ここを日本で、政府でもつくってほしいというのが、実は産業界の大きな課題というか希望だったんですね。今回これはかなえられなかったわけでありますが、やはり、本当の産業界のニーズというのを酌んだ法制度というものを、法制度なのか、ガイドラインなのかもしれませんが、ここに対応していただくということが非常に重要なのかなというふうに考えております。
以上でございます。ありがとうございました。(拍手)