西村いつきの発言 (農林水産委員会)

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○西村参考人 おはようございます。
 本日は、このような機会を与えていただきましたこと、心より御礼申し上げます。
 NPO法人兵庫農漁村社会研究所の西村でございます。三月末まで兵庫県職員として有機農業の推進をしてまいりました。
 取組には、天皇杯を受賞したおおや高原有機野菜部会の育成や、コウノトリ野生復帰事業の要となるコウノトリ育む農法の技術確立と普及があります。
 二〇〇五年に命名したコウノトリ育む農法は、二〇〇二年から技術確立に着手し、現在、六百ヘクタール以上の面積を有する産地になりました。全国はもちろんのこと、海外にも販路を拡大しています。
 二〇〇九年には兵庫県環境創造型農業推進計画を策定し、二〇二〇年には有機農業の面積を千ヘクタールにするという目標を達成しました。この間、兵庫県有機農業ネットワーク会議を創設し、様々な形態の有機農業者や消費者団体、関係機関と連携して有機農業の啓発事業を実施いたしました。
 目標達成のために、県内十二か所で有機農業教室を開講し、有機農業の理解者を育て、エシカル消費を創出し、慣行農家からの転換者や新規就農者を育て、各地に有機農業の輪を拡大させました。さらに、有機農業指導員認定制度を創設し、指導者を養成し、更なる学びの場の拡大を図るとともに、地道な教育活動を展開しました。
 このような取組を基に、有機農業の推進について、現場のお話をさせていただきたいと思います。
 まず初めに、風土に根差した有機農業技術の確立のために、公的試験研究の充実が必要です。
 論点の有機農業と食料安定供給には、有機農業は難易度が高く、労力がかかり、収量も減るとありますが、これは有機農業に対するステレオタイプの思い込みです。風土に合った技術を確立すれば、慣行と遜色のない収量と品質を確保することができます。
 おおや高原有機野菜部会やコウノトリ育む農法では、風土に合った技術確立を、農業技術センターや農業改良普及センターなどの公的指導研究機関が支援をしてきました。
 フランスでは有機農業の研究者が国の機関だけでも三千人以上おり、自然科学と社会科学の両面から技術確立や制度設計をしています。日本でも、有機農業の生産安定を図るために、普及組織や研究機関が有機農業の技術確立を優先に行うようにすべきですし、そのための予算が必要です。私は、現職時代、自腹で調査研究や研さんをしながら、有機農業の技術確立をしてまいりました。
 次に、指導者の養成です。
 日本は有機農業の指導者が少なく、とりわけ普及センターに有機農業を指導できる人材はほとんどいません。そのため、公的機関による無料の指導が難しい状況です。有機農業を無料で学べるようにするためにも指導者の確保が必要ですし、指導者の養成には研修制度の充実が不可欠です。
 韓国では、有機農業の推進のために、まず、指導者の養成に着手しています。
 三番目に、学びの場づくりです。
 有機農業者には利他的な価値観が必要です。もうけるために有機農業をするのではなく、地域環境や次世代の命を守る使命を持って有機農業を実践する人材を育てなければ、有機農業の拡大は難しいと思います。有機農業への転換には価値観の変容が必要だからです。
 有機農業教室では、有機農業研究の第一人者である神戸大学名誉教授保田茂先生に講師をしていただき、有機農業の理念、日本の有機農業の成り立ちや歴史、社会的公正をただす視点、食と農の関係を講義いただいています。そして、天地有機という大自然の法則を農業技術に置き換える農法ならば、化学肥料や農薬を必要としない農業生産ができることを、講義や実習を通して御教示いただいています。
 受講生も、学びの中から、よい土がよい食べ物を作り、よい食べ物がよい人をつくり、よい人がよい社会をつくるということを会得して、有機農業者やエシカル消費者が誕生しています。
 池畑先生にも応援いただいておりますように、毎年多くの受講生が巣立ち、有機農業の裾野が広がっています。
 学びの成果の一つとして、山口先生も応援いただいていますように、学校給食の有機化に取り組む生産組織や、有機農業によって地域振興をしようとする市民活動家も誕生しています。
 日本では、有機農業を学びたいと思っても、農業高校や大学で有機農業を学ぶことがほぼできません。有機農業を学ぶコースがある農業大学校は四県程度です。有機農業を指導する指導教員の確保も課題です。
 国立韓国農業大学は、授業料、兵役が免除で、自身の経営計画が卒論になります。経営開始に必要な資金は国が貸与します。有機農業は必須教科になっています。
 海外では、有機農業は安全な食料供給だけではなく、環境を保全する公益役割があると国民から認知されており、有機農業者への所得補償も充実し、様々なサービスが無料で受けられます。例えば、有機認証制度の認証経費も政府からの補助で、実質、農家負担はありません。アメリカやEUでは、普及員による農業指導は有料ですが、有機農業の指導は無料で受けられます。
 しかし、日本では有機農業者への優遇政策は少なく、有機農業を学ぶのにお金がかかります。我々が実施している有機農業教室も、公的支援がないため、授業料で運営しています。有機農業の推進には学びの場が不可欠です。海外のような無償化のための政策が望まれます。
 四つ目に、エシカル消費者の育成です。
 有機農業教室には、消費者も多く受講しています。自分の食べ方が農業や環境を守ることを学び、エシカルな消費者になって有機農産物を買い支えたり、農地を借りて農業を実践する人もいます。
 ロシアにはダーチャという菜園つき別荘があり、一区画六百平米ほどの土地を国から借りて小屋を建てて、野菜や果樹を作り、家族の食料を確保します。三千四百万世帯の八割がダーチャを利用し、ロシアのジャガイモの生産量の九二%を賄っています。
 フランスでは、農薬使用にライセンスが必要なので、ライセンスを持たない家庭菜園や市民農園では、農薬使用はほぼ皆無です。
 日本でも、農薬取締法を見直し、都市部では市民農園、農村部では家庭菜園の有機化を進め、安全な食料の確保と自給率の向上を目指してはいかがでしょうか。
 自然の摂理に基づいた有機農業は、生産経費も少なく、環境に負荷を与えることなく、安全でおいしい農産物を生産することができます。とりわけ、生産性を重視しない家庭菜園には最適だと思います。
 五番目に、価格政策、所得政策です。
 農業の衰退の背景には、自分が作ったものに自分で正当な価格がつけられないという現状があります。
 コウノトリ育む農法のお米は、生産費や労賃が回収できる価格を設定し、消費者や流通業者に御理解いただく努力を重ねて、再生産できる価格決定によって経営安定を図りました。
 とりわけ、兵庫県北部のような条件不利地域では、旧来の農政のような選択的規模拡大は難しく、生産性向上も思うように進みません。小規模な条件不利地にあって、おおや高原有機野菜部会やコウノトリ育む農法では、自然の摂理に基づく有機農業を取り入れ、消費者の理解を得ながら生産費所得補償方式で価格を決定して、経営安定を図ってまいりました。
 EUに倣い、小規模農家の所得維持を図らなければ、日本の農村の崩壊は目に見えて明らかです。
 中山間の条件不利地域では、兼業農家や年金生活者が、農地のみならず水路や農道を守り、農業を営みながら地域環境を維持しています。農業の持つ多面的機能を評価して、地域環境の番人でもある農業者の生活を支える政策が求められます。
 価格政策と生産振興政策は車の両輪だと思います。
 私の実家は酪農家ですが、低い乳価と高騰する餌代のために、生産すればするほど赤字が発生して、借金が雪だるま式に増えて、やむなく昨年廃業しました。国が進める規模拡大路線で頑張ってきた酪農家ほど借金がかさみ、廃業すらままならない悲惨な状況です。農業者が幾ら努力しても、価格政策を抜きにして農業振興は難しいと感じています。
 私は、県職員になり、今の給料を農業で稼ごうと思ったらどんなに大変か知っているので、農業者の役に立ちたい一心で仕事に邁進してまいりました。
 旧基本法は農業者視点に立った目的が掲げられ、現行基本法は国民全体の視点が重視されました。新たな基本法では、国際的視点や次世代の幸せを加味する視点が求められると思います。
 有機農業は、地球温暖化防止、生物多様性保全、自給率向上、地域活性化、若い担い手の確保など、様々な農政課題を解決する手段となります。
 ムーンショットという言葉を御存じのように、ケネディ大統領は一九六一年にアポロ計画を発表して、一九六〇年代のうちに人類を月に立たせると宣言しました。誰もがその実現を疑ったと思います。しかし、彼は、綿密かつ大胆な実施計画を実践し、一九六九年に人類を月に立たせました。
 みどりの食料システム戦略において、有機農業面積を百万ヘクタールにするという目標が示されました。次はムーンショットを成功させるために綿密かつ大胆な戦略と実行が必要だと思います。
 私は、有機農業推進という明確な推進目標を掲げ、その目標を達成しようと現場で試行錯誤してまいりました。その中から、本日、必要と思われる一から五についてお話をさせていただきました。是非、現場の声を政策に反映させていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。(拍手)

発言情報

speech_id: 121305007X00720240404_008

発言者: 西村いつき

speaker_id: 2555

日付: 2024-04-04

院: 衆議院

会議名: 農林水産委員会