中嶋秀樹の発言 (本会議)
⚠️ コピーしたテキストを転載する際は、転載元URL(kokkai-data.com)および原典URL(kokkai.ndl.go.jp)を必ず残してください。発言内容の改変・出典削除は禁止です。
詳細は利用規約をご確認ください。
○中嶋秀樹君 日本維新の会・教育無償化を実現する会の中嶋秀樹です。
私は、地方自治法の一部を改正する法律案について、賛成の立場から討論いたします。(拍手)
コロナ禍は、三年以上の長きにわたり、国民生活に多大な影響を与えたのみならず、国と地方の関係についても様々な課題を浮き彫りにしました。
関西を中心に数多くの自治体の首長を擁する我々から見た問題の一つは、国と地方の責任と権限が曖昧なケースが見られた点です。一例として、新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づき休業要請を出す場合、休業要請の権限と補償、その前提となる緊急事態宣言発出の権限とが国と地方で分かれているため、権限の行使をめぐって一部の自治体で混乱を引き起こしました。
原則的には、国と地方の権限と役割を明確に整理した上で、初動は地方が柔軟に対応し、一方で、全国的な対応が必要と判断された事項については、国が権限を明示的に持つべきです。
同様に問題となったのが、有事モード法制の不在です。一例として、新型インフルエンザ等対策措置法三十一条に基づく医療等の実施の要請、指示が、結論的には個人の医療関係者を対象としており、適用の場面が極めて限定されていました。我々は、非常時に分散している医療資源を適切な形で再配置できない点を問題視し、病院等医療機関も対象となるよう求めてきました。結果として、平時に用いられる感染症法十六条は改正されたものの、ウイルスの毒性が高い場合など緊急時に用いられるとされる特措法三十一条はいまだに対応が行われていません。
緊急事態に係る規律を平時から整備しておかなければ、かえって国民の権利や自由がなし崩し的に制限されることも、我々がコロナ禍で学んだ苦い経験の一つです。有事を法の支配下に押しとどめる観点から、民主的統制の下、平時と有事を切り替えることのできる複線的な統治システムの必要性は明らかです。
総務大臣は五月十四日の総務委員会で、本改正案について、個別法で想定されていない事態において国には果たすべき役割があって、これを責任を持って果たす必要があると述べ、有事法制の必要性、また責任明確化の必要性を明らかにしています。我が会派としても、個別法では対応が困難な事態における国の責任を明確にする観点から、本改正案の意義が認められると考えます。
一方、我が国の緊急事態対応は個別法中心であることにも、十分留意しなければなりません。
第三十三次地方制度調査会の答申が議論の俎上に上がってから、一部において、補充的指示権は、欧米で広まっているオールハザードアプローチと絡めて論じられてきました。これは、自然災害や武力攻撃、情報流出等まで、あらゆる危機を対象とする危機管理の在り方です。個別法による対応では、直近に発生したハザードに対応した体制整備が中心となるところ、多様化する危機に対しては後追いとなる弱点があり、対策としてこの考え方が重要であることは言をまちません。
一方で、我が国には災害対策基本法や感染症法など、歴史に裏打ちされた個別法が定められており、各自治体はこれらを基礎として対応計画を立案し、準備に努めてきました。非常事態において、対策を現場で行うのは自治体であり、そのための権限や財源、人的資源等が必要です。周辺の自治体や国との連携方法の検討や、行動計画の策定も必要です。個別法へ反映してこそ、自治体は危機に向けての準備を計画的に行うことができることとなります。
補充的指示権行使後の個別法見直し義務について、第三十三次地方制度調査会の答申に記載はあるものの、本改正案で条文化はされていませんでした。よって、我が会派は、補充的指示権の行使後に各大臣はその旨及び内容を国会に報告するものとする修正案を提出いたしました。修正案によって課された国会報告の義務により、補充的指示権行使の意義や効果、反省点や、個別法の改正すべき点などの議論が国会において行われ、結果として個別法へ反映されることが期待されます。
しかしながら、補充的指示権を設けることによって、全ての危機に対して万全に対応できるというわけではありません。指示権はその名のとおり補充的なものであり、必要と判断された責任や権限を現場に近い知事に移譲しておくべきことは、強調して余りあるものです。
そもそも、補充的指示権の発動時に必ず国の指示が貫徹されるなどということはあり得ません。あくまでも対策を行うのは現場を持つ各自治体です。自治体にリソースがなければ、補充的指示権を行使したところで空回りに陥ります。補充的指示権が有効に機能するかは、平時から国と地方との間で図られているコミュニケーションの密度次第であると、国は肝に銘じなければなりません。
また、平時と有事を民主的統制の下に切り替え、例外状態を法秩序につなぎ止める方法に関しても、重大、生命等の保護といった要件では権限の濫用に対する歯止めが弱いという声も、いまだに存在感を放っています。
加えて、過去に例のない事態への明確な解決策は、すぐに見つかりはしません。このような事態に対して国が必ず最善策を用意でき、どのような問題でも解決できると考えるのは、余りにもナイーブです。これらへの対処こそ、現場に近い主体が情報収集し、各々が日本全国で試行錯誤し、結果を比較検討し、切磋琢磨しなければなりません。そのためには、指示命令系統を単に一元化するだけではなく、日本全国に複線的な意思決定の手段を用意することも必要です。
国と地方の関係は、分権改革により上下主従から対等、協力に変わったとされていますが、改正に次ぐ改正によって条文数が膨れ上がった地方自治法、特別法人事業譲与税など様々な財源の再分配の制度、個別法で定められる計画の責務とそれにひもづく補助金など、いまだに国が地方の一挙手一投足を監督しております。確かに、これらは地方に安心をもたらし、また、権限や責任の曖昧さも、国と地方のあうんの呼吸で顕在化していなかったかもしれません。しかし、コロナ禍は、我々の喉元にこの問題をいや応なく突きつけました。
社会保障や公教育といった我が国のシステムは、平成初期までに一定水準の整備がなされてきました。今後は国民個々人のニーズに対応した政策に取り組むべきであり、全国一律の対応を求めるのは適切ではありません。また、二十一世紀において、大都市は国全体の成長のエンジンであり、都市の成長が国の経済成長に直結することになります。地方の首長の役割は、国全体にとっても、かつてなく重要なものとなっています。
本改正案によって、不測の事態に対する権限が一定程度整理され、危機対応に資することは明らかであり、多様化する危機対応のために必要な制度と言えます。しかし、そこにあぐらをかかず、地方が自らの責任の下で創意工夫できる、難問を先送りせず決定できる統治機構を実現すべきです。これこそが、未知の事態への対応を盤石とするのみならず、日本を覆う閉塞感すら打破する力となります。そのことを改めて申し述べるとともに、国に対しては更なる分権への努力を求め、討論といたします。
御清聴ありがとうございました。(拍手)