熊谷亮丸の発言 (予算委員会公聴会)

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○熊谷公述人 おはようございます。大和総研副理事長の熊谷亮丸と申します。本日は、お招きいただきまして、心より光栄に存じます。
 御審議の参考にさせていただきたく、令和六年度の予算案につきまして、賛成の立場から意見を申し述べたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。
 それでは、お手元の資料で、まず一ページ目を御覧いただきたいと思いますが、本日は、ここにございます三つのお話をさせていただきます。
 まず一点目は日本経済の現状と展望ということでございますけれども、四ページ目を御覧ください。ページの一番上のところにございますが、今後の日本経済は、二四年度が〇・八%成長、二五年度が一・三%成長ということで、緩やかな景気拡大が続くという見方をしております。
 四ページ目でございますが、二三年に景気が回復をした背景ということで申し上げますと、コロナ等の、こういった特殊要因が解消したということがあります。左端がインバウンド消費、そして乗用車の生産、実質サービス消費でございますけれども、コロナの解消ですとか、乗用車については半導体不足の解消等によって、かなり高めの経済成長となりました。
 五ページ目を御覧ください。この五ページ、六ページで主なポイントをお示ししておりますので、詳細は後ほど御覧いただきたいと思いますが、まず、一番上のところで、賃上げについては四%台に乗せてくる可能性というのが生じている、そして、物価は二%程度で安定をする、また、後ほど申し上げるように、慢性的な人手不足ということで、余剰労働力というものが足下で非常に低水準であるということがあります。
 経済の下支え、押し上げ要因ということでいえば、自動車の挽回生産、これが現時点で三十三万台程度、〇・九兆円程度、今年の夏ぐらいまで挽回生産が続くことが見込まれます。インバウンドについても、二行目のところにございますが、これから消費額がかなり増えてまいります。また、サービス消費も、かなりコロナで抑えられてきたものが、これから二兆円程度の回復余地がございます。さらには、家計の金融資産は二百三十六兆円程度増加をしている。グローバルに見れば、シリコンサイクルも回復の方向であるということです。
 六ページ目でございますが、政府の経済対策、これは、所得減税が実質所得を一%近く押し上げる。また、日銀は四月にはマイナス金利を解除いたしますけれども、その後も極めて緩和的な金融環境が続きます。他方で、リスクとしては、そこにございますように、専ら海外経済のリスク。後で中国について言及いたしますが、これについては一定の留意が必要であるというところです。
 七ページ目を御覧いただくと、私どもが推計をしている今年度の春闘の賃上げ率は三・八%。これは保守的な数字で、恐らくここから上振れする可能性というものがある。
 八ページは、中国のリスクでございます。
 左のグラフが資本係数と申しまして、注の一のところにある資本ストック割るGDPということで、これが相当上振れをしているということは、今、中国の設備は二千八百四十兆円程度過剰になっている可能性があります。
 右のグラフはかなり専門的なグラフでございますけれども、縦軸が労働係数、労働投入割るGDP、横軸が資本係数、資本ストック割るGDPで、いずれも、値が小さくなって原点に近づくほど労働とか資本の効率がよくなって、遠ざかるほど効率が悪くなる。
 グラフの中で、左上から右下に何本も細い線が引いてありますけれども、この一本の線上だとマクロ的な中国の技術レベルが一定で、これが左下に行くほど技術が進歩するということでございますが、赤い線の中国を見ていただくと、ここ十年余り、一本の線の上で動いていますので、要は、自転車操業的に、外国資本を呼び込んで設備を増やすことによって経済成長をしてきたんだけれども、技術は進歩をしていないということ、その中で設備が二千八百四十兆円の過剰を生んでいるという状態であります。
 九ページ以降で、インフレの動向と日銀の金融政策でございますけれども、まず、十ページに世界経済の長期サイクルをお示しをいたしましたが、この長期のサイクルは二〇二〇年で底入れをして、グローバルに見ればインフレ的な方向へと入ってきております。
 十一ページ、こちらは我が国の物価について定性的なことをお示ししておりますけれども、輸入インフレ、労働需給の逼迫、経済の正常化、過剰貯蓄、そして価格転嫁等々によって、かなりデフレから脱する要因というものが増えている。
 十二ページでお示しをしているのは、我が国の物価を二種類に分けて、価格改定頻度の高いものと低いもの。御注目いただきたいのはブルーの線の価格改定頻度の低い粘着価格でございますけれども、これは九〇年代の頭からがんとして上がらなかったわけですが、この粘着的な価格が今、三%程度のところまで上がってきているという状態です。
 十三ページの左のグラフでございますが、IMFが作成をしているデフレリスク指数というものを私どもが応用して日本のデフレリスクを見たものでございますが、これが下がるほどデフレリスクが小さい。直近は〇・二三ということでございまして、アメリカと同じぐらいの水準で、かなり日本のデフレリスクは後退しているという認識です。
 十四ページは、非常に大きな問題となっております実質賃金の低迷でございますけれども、オレンジ色の線が、実質賃金に対して二四半期程度先行する先行指数を私どもが作成したわけでございますが、先行きの実質賃金は、私どもの見立てでは、早ければ今年の七―九月期にもプラスの方向に転換する可能性があるのではないか。
 そうした中で、十五ページでございますが、日本銀行の金融政策は、上半分のところにございますように、イールドカーブコントロールによって十三兆円程度GDPを押し上げました。ただ、下半分のところにあるような債券市場の機能低下、生産性の低迷、財政規律の弛緩という、これらの問題があるわけでございますので、恐らくは、四月にはマイナス金利をゼロ金利に戻していく可能性が高い。
 他方で、十六ページは、金利が、短期金利、長期金利が一%上昇したときの影響ということですが、一番上のところにあるように、短期金利上昇の悪影響は長期金利よりも大きいということがあります。こういったことを受けて、日本銀行は、ゼロ金利に復帰した後も極めて緩和的な金融政策を続けるという見方です。
 御参考までに、十七ページで、一番上のところに書いてございますが、歴史を振り返ると、利上げの順番はアメリカ、欧州、日本の順で、そして、日本が最後に利上げをすると、日本は景気後退に陥るということでございますので、恐らく日銀は利上げについてはかなり慎重なスタンスを続けるのではないか。
 その中で、十八ページでございますが、今までは左側のゆでガエル構造であったものが、これから右側に移行する。左端のところを見ていただくと、お金が余って、経常黒字になって、円高になりデフレになり金利が低いという、こういった状況でございましたけれども、これからは、高齢化で貯蓄が取り崩され、経常黒字が減少をして、円安、そしてインフレ若しくはスタグフレーションのリスクが出るわけでございますから、こうした状況の中で、一番上に書いてございますが、財政規律を維持するということが極めて肝要であるという考え方です。
 十九ページ以降で、今後の政策対応でございますが、二十ページ、二十一ページは日本政府の方針。後ほど御覧いただきたいと思いますが。二十二ページが、私なりの解釈でございますけれども、まず給付金でホップ、そして減税でステップ、中長期でジャンプということで、日本経済の体質を改善をして、縮小均衡型、コストダウン型の経済から、成長志向型の経済へと移行する。
 二十三ページで、左の一番が所得の低い方、右の十番が所得の高い方ですけれども、そして、緑で書いてある線が、その負担がどれぐらい増えているか、オレンジ色の線が、どれぐらい支援をしているかということで、御覧いただくと、一番左端の所得が低い方について言えば、相当支援が超過をしている。右端の所得が高い方に関して言えば負担の方が大きくて、その間の方々はおおむね均衡しているということですので、低所得者世帯を中心に幅広い世帯の負担を軽減しているということだと思います。
 より長い課題として申し上げると、しっかりと設備投資を出すこと、そして賃金を上げること、さらには社会保障の改革を行うことが課題であると考えておるところでございまして、二十四ページが、まず設備の話でございます。
 上のところに三つ書いてございますが、日本の設備は三つの問題を抱えていて、まず、量が足りない。これは二百兆円以上恐らく不足をしていて、これを挽回すればGDPは一割ぐらい上がってくる。二点目として、質が低い。これによってGDPが一割失われている。そして、生産性が低い分野に偏在していること。これによって二割ぐらいが失われている。やはり設備を出していく余地が大きい。
 具体的には、真ん中の左側のところでございますが、非製造業の無形固定資本だとか、それから製造業の情報通信機器などの、資本の限界生産性の高いところでしっかりと設備投資を増やす必要がある。また、このページの一番下のところにございますけれども、今五兆円ぐらい年間行っている省人化投資をもし年間十六兆円行ったとすれば、十年後の就業者の減少分を相殺することが可能である。
 設備について今申し上げた数字をざっと確認をさせていただくと、二十五ページでございますが、あるべき量と比べれば二百兆円以上不足している可能性がある。右側の囲みのところに式が書いてありますが、最終的には、これによって一二・五%程度GDPが失われている可能性がございます。
 二十六ページは、二つ目の問題点の質の低下と低生産性分野に偏在していることでございますが、左のグラフの各国の資本の生産性を見ると、日本は黄色い線で極めて低い。右のグラフの右端から二番目のところを見ていただくと、まず、二の資本の質の低下、これはビンテージが延びて老朽化をしているということですが、これによる下押しが一〇%程度。それから三の、生産性が低いところに設備が張りついていることによって一八%程度という、これぐらいの下押しが想定されるということです。
 二十七ページ、省人化投資でございますけれども、赤いところに書いてあるように、現在五兆円行っておりますが、これをこれからもし十六兆円に増やしたとすれば、人手不足を賄うことが可能になる。また、ケースの三は、産業構造が変わって介護の人などが増えたときですけれども、これも三十四兆円程度によってある程度賄うことが可能だと。
 二十八ページは、その上で、賃上げを起点にして、賃金と設備の好循環を回すことがポイントであるということ。
 まず、右端のステップの一のところで、今、人手不足、二十年前には余剰労働力が二百八十万人ございましたけれども、現状は三十万人程度であるということですから、まずしっかりと賃上げを行う。次に、上のステップ二でございますが、これによって資本と労働の相対価格が変化することによって設備投資が増える。そして、左半分の資本というところで、ステップ三でございますけれども、例えば資本ストックが、資本装備率が一%上がると生産性は〇・四%上がります。また、労働の質が上がる。例えば、パートタイム比率が五%低下することによって潜在成長率は一・六%上がりますので、結果、労働生産性が上昇をして、ステップ四のところの実質賃金の上昇へとつなげていく。
 こういう形で、賃上げを起点として設備を増やして、生産性を上げて実質賃金を上げるということ、これをしっかりとやっていくことが肝要であるということであります。
 二十九ページは余剰労働力のデータですので、ここは後ほど御覧いただくとして、三十ページの左のグラフでございますけれども、資本と労働の相対価格を見ていて、九〇年代までは、設備投資をした方が有利なので、皆、設備投資をしたわけですけれども、二〇〇〇年代に入って、バブル崩壊で賃金が上がらなくなって、結果、設備はある程度増えたけれども人への分配はなくなった。足下で今賃金が上がっているので、この賃上げをてこにして、そこから設備投資、生産性上昇、実質賃金の増加の好循環というものをしっかりと回していかなくてはいけないのではないか。
 三十一ページ、私もメンバーを務めさせていただいております全世代型社会保障構築会議でございますけれども、この論点を、これを工程表を作って、今粛々と実行していくという方向であります。
 今回の予算でも支援金が盛り込まれておりますが、私は、この支援金を含む、広く薄く国民が子育てを支える仕組みについては、基本的には支持をしているという立場であります。
 そして、三十二ページでございますが、今申し上げたような全世代型社会保障改革等によって将来不安が解消すれば、そこから消費の押し上げが期待される。左のグラフを見ていただきますと、二十代、三十代が将来不安からどんどんお金を使わなくなって、これが日本の経済を下押しをしている。右のグラフで、これからもし将来不安がなくなって消費性向が戻るようであれば、七兆円から十兆円程度の消費の押し上げ効果というものが期待されます。
 今日は、三つの点について申し上げました。
 一点目として、日本経済は幾つかの要因があって巡航速度での緩やかな景気拡大が続きますが、ただ、海外経済の下振れリスクには細心の注意が必要である。
 二点目として、日本は、やはりグローバルな流れの中で、徐々にデフレを脱する方向に来ていますので、その中で日本銀行は、恐らく四月に向けて、マイナス金利をゼロ金利に戻して、ただ、その後の利上げについてはかなり慎重な、緩和的なスタンスを続けるのではないか。
 三点目として、今回の政策対応は短期のものと中長期のものがある程度バランスよく盛り込まれているということでございまして、他方で、これからの課題としては、やはり設備が足りないので、そこをしっかりと出していくこと、それから、賃上げを起点にして、そこから生産性を上げて、さらに実質賃金を上げるような、賃上げを起点にした好循環というものを起こすということ、さらには、全世代型社会保障改革という、やはり国民の将来不安をしっかりとなくしていくような対応が必要ではないかということでございます。
 私の方からは、御説明は以上でございます。御清聴ありがとうございました。(拍手)

発言情報

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発言者: 熊谷亮丸

speaker_id: 14410

日付: 2024-02-29

院: 衆議院

会議名: 予算委員会公聴会