原田禎夫の発言 (環境委員会)

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○参考人(原田禎夫君) 同志社大学の原田禎夫と申します。本日は、貴重な機会をいただき、ありがとうございます。
 私は、海や川のごみ問題、特にプラスチック汚染について、主に地方自治体の取組や、あるいは人々の意識、あるいは行動の変容がどのようにして実現するのかについて研究してまいりました。また、生まれ育ち、現在も住んでおります京都府の亀岡市において、NPOの一員として河川のごみを始め地域の環境問題に取り組んでいます。
 本日は、このような立場からこの資源循環高度化法案について御意見を申し上げたいと思っております。よろしくお願いいたします。
 お配りしておりますお手元の資料、表紙をめくっていただきまして二ページ目、焼却処理に依存した日本の廃棄物と書いてありますページを御覧ください。私も大学での講義、あるいはいろいろなところで講演する機会をいただいておりますが、その際にこちらの資料を御紹介しております。
 多くの国民の皆様は、日本はリサイクルの先進国だという認識をお持ちかと思います。しかし、例えばプラスチックに関して申し上げますと、左のグラフに示すとおり、リサイクル率は実は二五%程度にとどまっております。また、近年この比率は下がっているとはいえ、依然として海外でのリサイクルにも大きく頼っており、国内でのリサイクル率は一七、八%にとどまっております。多くのごみは、焼却熱を発電などに利用する、いわゆる熱回収が占めています。こうした状況はプラスチックごみだけではなく、家庭やあるいは事業所から出されて自治体が処理する廃棄物に関しても同様です。日本のリサイクル率は二〇%程度、実はOECD諸国の中でも最も低いグループと言ってよいかと思います。
 では、なぜこうした状況になったのでしょうか。
 高度成長期、各地でごみ戦争と言われたように、ごみが急増する一方でごみ処理が追い付かない、そういった中でごみを大きく減容化、体積を減らすことができる焼却処分が一定の効果があったことは否めない事実かと思います。ただ、ここで指摘しておきたいことは、この資料に書いております熱回収という言葉がサーマルリサイクルという言葉で表現され、あたかもリサイクルであるように国民の皆さんの間で誤解されてきたのではないかということです。
 もちろん、熱を有効に利用すること自体を否定するものではありませんが、海外でサーマルリサイクルと申し上げましてもけげんな顔をされます。実は、このサーマルリサイクルという言葉は和製英語なんですね。物質を循環して利用するわけではございませんので、英語ではリカバリー、日本語では回収というふうに申し上げるべきところです。近年では、政府でも熱回収あるいはエネルギー回収という表現に改められていることは委員の皆様も御承知のことかと思いますが、まだまだ世間ではサーマルリサイクルという語が使われています。
 本来の意味とは異なるこの和製英語が政策レベルでも用いられて、それが人々に往々にして大きな誤解を与えてしまうということは、これまでにもよく見られたことでもあります。しかし、気候変動あるいは廃棄物といった国際的な課題に取り組む際には、正確に言葉を用いること、これは国民の皆様に誤解を生まないためにも重要であると考えます。
 さて、もう一枚めくっていただきまして、次の資料を御覧ください。
 先ほど日本のプラスチックリサイクルは海外に大きく頼っていると述べましたが、その輸出先の昨年の上位十か国を示したのが左の表になります。また、右の表は二〇一〇年の推計値ですが、プラスチックごみの海洋流出の多い国上位十か国になります。輸出相手国の表の中で赤字で記している国、こちらは海洋流出の多い国上位十か国にも含まれる国です。また、二〇一七年以前は中国が最大の輸出相手国でもありました。よく海のプラスチックごみの大半は発展途上国から流出している、だから途上国での対策が重要なんだということをお聞きします。しかし一方で、こうした途上国は日本を含めた先進国のプラスチックごみを引き受けてくれている国でもあります。
 リサイクルを途上国に頼るというこの構図を改めない限り、途上国からの大量のプラスチックごみの流出は止めることができないのではないかと思います。その意味でも、リサイクルの高度化は喫緊の課題であると思います。単に廃棄物管理の手法あるいは高度なリサイクル技術を途上国に対して支援していく、これももちろん重要なんですけれども、自分の国で出たごみは自分の国で処理する、この当たり前のことを進めていく、それはリサイクル産業の育成にもつながっていきますし、また、車の両輪のように、廃棄物の発生抑制も確実に進めていくことが重要であると考えます。
 次の資料を御覧ください。
 現在、国際プラスチック条約の議論が進められていますが、それに関して興味深い調査がありました。WWF、世界自然保護基金が世界の三十四か国で実施したアンケートですが、特に日本の国民の意識が低いということが報道でも紹介されていました。例えば、不必要な使い捨てプラスチックの禁止を盛り込むことは重要だと思うかどうかという質問に、非常に重要、あるいは重要と答えた人の合計の割合は、三十四か国の平均は七五%に上るのに対して、日本では五四%にとどまっています。確かに、企業の皆様とお話をしていましても、日本ではプラスチックごみ問題に対する関心が低い、あるいは、先ほど加藤参考人のお話の中にもございましたが、リサイクル材を利用した商品が欧米と違ってなかなか消費者に受け入れられない、そういったお話をお聞きします。
 しかし一方で、本当に日本の消費者あるいは国民の意識は低いのだろうかということを思っております。例えば、多くの国民の皆様は、ペットボトルは使った後洗って、ラベルも剥がして、キャップも外してリサイクルに出されています。食品トレーも同様かと思います。ごみの分別に関しても、多くの自治体のこの分別の区分は世界でも最高レベルと言ってもよいのではないかと思います。
 しかし、こうした手法は、人々の善意やモラルあるいはマナーに大きく依存したものと言わざるを得ません。もしかしたら、意識の低さではなく、これ以上の手間、負担を消費者、国民に押し付けないでほしい、そういう負担感、拒否感の表れかもしれないと私自身は考えています。
 次のスライドを御覧ください。
 私の住む京都府亀岡市では、諸外国の例に倣って、二〇二一年よりプラスチック製のレジ袋の提供を条例により禁止し、現在、紙袋だけが有償で提供可能となっています。資料にお示ししたグラフは、亀岡市内のスーパーマーケットにおけるエコバッグ持参率、それからレジ袋の配布枚数の推移を示したものです。現在では、エコバッグの持参率は九八%を上回っています。また、ここには記していませんが、コンビニエンスストアでのエコバッグ持参率も九三%程度と、国の平均を大きく上回っています。
 この条例の背景には、プラスチックごみ、特にレジ袋が、市内随一の観光地でもある保津川、下流には京都の嵐山を抱えておりますが、この保津川の景色、景観を大きく損ない、地域の経済にも深刻なダメージを与えてきた、そういったことがございました。また、条例の制定に当たっては、当初は、商業者の皆さんだけではなく、市民の皆さんからも否定的な声、反発の声、たくさんございました。そうした中で、市役所の皆さんが中心になって、あるいは私たちNPOも一緒に、なぜレジ袋の禁止が必要なのか、また世界の動向はどうなっているのか、こういったことを丁寧に説明してまいりました。その結果、条例制定前に行いました市民アンケートでは、七〇%を超える市民の方が条例に賛成と答えてくださいました。また、自治会連合会始めとした様々な団体の皆様から市長と市議会議長宛てに、条例を早期に確実に制定、施行することを求める意見書が提出されました。
 海のごみ、海岸漂着ごみ対策のために制定されました海岸漂着物処理推進法では、国、地方公共団体、事業者に加えて、国民あるいは民間の団体等の多様な主体の相互の連携が掲げられました。この廃棄物問題とは何なのか、なぜリサイクルの高度化が必要なのか、あるいは世界の流れがどうなっているのか、こうしたことを正確に国民の皆さんにお伝えし、そして今回の法律がしっかりと成果を上げていくためには、行政や事業者の皆様はもちろん、地域団体、市民団体も含む多様なセクターとの連携が極めて重要なことと考えます。
 スライドとは別にお配りしました「水辺のごみ見っけ!」と表紙に書かれた二つ折りの資料を御覧ください。
 この調査は、全国の海や川のごみ問題に取り組む団体や河川管理者の皆様の御協力をいただいて行っているものです。コロナ禍もあって減少傾向にあった海や川に流出したペットボトルやレジ袋あるいは飲料カップ、こうしたごみが再び増加傾向にある可能性があり、危機感を抱いております。
 PETボトルリサイクル推進協議会のデータによりますと、日本国内のペットボトルの回収率は、最近ではずっと九〇%以上、あるいはリサイクル率も、中身に記載されていますように、八〇%以上保っていると紹介されています。ただ、逆に申し上げますと、国内で製造、販売されているペットボトル、最新のデータでは二百四十一億本という数字がございますが、このうち三十一億本はリサイクルされていない。これは、ごみとなって焼却されたり埋め立てられたり、あるいは環境中に流出しているということですが、私たちの二〇一七年の調査では、少なくとも四千万本が川から海へ流出している、そういう推計も行いました。この四千万本という量は、並べますと、沖縄県の那覇市から北海道の稚内市よりも更に遠くまで到達するような量になります。大量のペットボトルが製造、販売されているために、回収率が高いといっても、大量に環境中に流出しているのも残念ながら事実でございます。
 日本のペットボトルの回収率は、確かに世界的に見ても比較的高い数字にあることは事実です。ただ、ボトル・トゥー・ボトル、もう一度ペットボトルに戻す水平リサイクルに関しましては、最新のデータでも二九%にとどまっています。その原因の一つには、不純物が混じるなど、回収されたペットボトルの質の問題がございます。ペットボトルの散乱を防ぐことはもちろんですが、質の高いリサイクル原料を確保する、そういう意味でも、リサイクル技術を高度化するだけではなく、回収の質を上げる、例えばヨーロッパ諸国で導入されて大きな成果を上げているデポジット制度の導入、こうしたものも欠かせないのではないかと考えています。
 付け加えて、このペットボトルの回収率あるいはリサイクル率に関するデータは重量ベースで計算されているというふうに発表されています。残念ながら、この不純物始めとしていろいろ混ざり物がございますので、正確な実態が把握しづらいということも指摘したいと思います。デポジット制度を導入しているヨーロッパの各国では、重量ベース、もちろん本数ベースでも正確に回収率あるいはリサイクル率を算出することができています。今回の法律案の第三十八条では再資源化の実施の状況の報告が定められていますけれども、日本においても正確な数量が把握できるようにするためにも、ペットボトル、例に挙げておりますが、このデポジット制度のような、製造者が廃棄に至るまで責任を負う拡大生産者責任を社会の仕組みとしていくことが重要であると考えます。
 先ほどの資料の最後のページを御覧ください。
 プラスチックごみでも特に多くを占めるのが、容器包装類です。使用済みの容器包装について、どの主体がどの費用を負担しているのか、国立環境研究所の田崎先生が以前におまとめになったものを、本日は許可をいただいてお持ちしました。
 いわゆる3Rの中でも、優先順位はリデュース、リユース、リサイクルの順であり、どうしてもリサイクルできないものが最終的に処分されることになっています。現在の仕組みでは、製造者、メーカーにとっては、処分すなわち使い捨てが最も費用負担が少ない仕組みとなっています。これでは、メーカーに廃棄物の発生抑制のインセンティブが働かないのはもう当然のことです。
 あるスーパーマーケットの方にお話を伺いました。スーパーでは、販売した以上のペットボトルをお客様がリサイクルのためにお持ちになって、現場の大きな負担になっているということでした。コンビニエンスストアあるいは自動販売機では、ペットボトル入りの飲料というものは定価で販売されています。しかし、スーパーでは値引き販売がもう大前提となっている。にもかかわらず、売った以上のペットボトルがスーパーに返ってくる、その管理の費用も大きな負担になっているとおっしゃっていました。
 このスーパーマーケットの善意に頼った現在のリサイクルの仕組みもまた、限界を迎えつつあるのではないかと感じています。リサイクルの技術を高度化していくことはもちろん重要なことで、今回の法律によってこのリサイクルされる量あるいはリサイクル率も更に上がっていくものと期待しております。ただ、現在でも、多くの国民、消費者の皆さんは、リサイクルすればいいんじゃないかと考えていらっしゃるのではないかと感じる場面もあります。
 繰り返しになりますが、3Rの優先順位はリデュース、リユース、そして最後の手段がリサイクルです。リサイクル、もちろん大事なことではありますが、技術的な解決だけでは限界がございます。今回の法案を通して、そもそもごみを出さない社会をつくっていくためにも、廃棄物を根本から減らす経済的インセンティブが働くような制度設計、すなわち拡大生産者責任を更に充実させていく、これを国の強いリーダーシップの下で制度化していただきたいということも十分にお願いしたいと思っております。
 以上です。

発言情報

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発言者: 原田禎夫

speaker_id: 14337

日付: 2024-05-07

院: 参議院

会議名: 環境委員会