中澤宏樹の発言 (経済産業委員会)
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○参考人(中澤宏樹君) 株式会社やまなしハイドロジェンカンパニーの中澤です。
本日は、このような貴重な機会をいただきましたことに心から感謝申し上げます。
私からは、国内で本法案に規定される低炭素水素を実際に製造し販売している事業者の立場から、これまでの石油や天然ガスと同じように海外に頼るのではなくて、国内でグリーン水素の取組が確実に進んでいる実態を、弊社のこれまでの取組や今後の役割、発展を中心にお話しさせていただきます。
それでは、三ページ目をお願いいたします。
まず、弊社について説明させていただきます。
やまなしハイドロジェンカンパニー、通称YHCは、山梨県と東レ、東京電力ホールディングスの三者で二〇二二年二月に設立した会社でございます。山梨県企業局は、四ページにも記載のとおり、一九五七年の水力発電事業に始まりまして、クリーンエネルギー事業に取り組んできました。二〇一六年からは、東レ、東京電力ホールディングスなどと共同で、新エネルギー・産業技術開発機構、NEDOの水素社会構築技術開発事業の再委託を受けまして、山梨県甲府市米倉山におきまして、水を電気分解し水素ガスを製造する、いわゆるパワー・ツー・ガス・システムの開発及び実証を行ってまいりました。
この実証の成果を事業化するためにYHCを設立しまして、二〇二二年の八月からは、P2Gシステムによるグリーン水素の販売も開始しております。出資割合は、山梨県企業局が五〇%、東レ、東電がそれぞれ二五%となっております。
YHCは、国内初のP2G専業の会社として、産業分野におけるカーボンニュートラル、特に電化が難しい産業領域におけるエネルギー転換を目標に、現在、新たな技術開発や国内外へのシステム導入に取り組んでいるところでございます。
五ページ目をお願いいたします。
山梨県甲府市米倉山の状況について御説明いたします。
この写真は、米倉山電力貯蔵技術研究サイトの全景となります。当サイトは、周辺に十一メガワットの太陽光発電が設置されまして、その内側にP2Gシステムを始めとする実証設備が設置されております。研究サイトの隣接して左側には、昨年三月に竣工しました次世代エネルギーシステム研究開発ビレッジと名付けました研究開発拠点がございまして、燃料電池の性能評価を行いますFC―Cubicを始めとする九つの企業、団体が入居しておりまして、ここ米倉山に、研究開発から普及啓発までの一連の機能が集積しております。
六ページをお願いいたします。
我が国の最終エネルギーの消費の状況でございます。
我が国におけるエネルギー最終消費に占める電力の割合は、先ほども竹内先生からおっしゃりましたように三割程度にすぎません。残りの七割を占めるこの化石燃料、熱需要をいかに脱炭素化させるかが重要となります。二〇五〇年カーボンニュートラルの実現に向けては、省エネルギーの取組と再生可能エネルギーの活用を徹底的に追求した、化石燃料への依存度を低減させることが不可欠でございます。
七ページをお願いします。
これからの燃料は、採掘するのではなくて技術開発で製造する時代を迎えます。今までは、輸入した化石燃料、天然ガスとか石油、石炭を利用することでCO2を排出していました。これからは、再生可能エネルギーからつくられた電気を最大限活用して、このP2Gシステムによりグリーン水素を製造し、ボイラーやバーナーで燃料として使用することがCO2の排出を防ぐことと目指します。
続きまして、私たちが開発したやまなしモデルP2Gシステムの特徴などについて御説明します。
八ページをお願いいたします。
やまなしモデルP2Gシステムでは、水を電気分解して発生した酸素と水素のうち、水素のみを透過させる性質を持つ電解質膜を使用します固体高分子型、PEM型と呼ばれる水電解装置により水素を製造します。
このPEM型では、ろ過した水道水、純水のみを原料とすることから生成される水素が高品質であること、薬品類を一切扱わないために安全で安心、メンテナンスが容易であること、東レが開発した高効率な電解質膜を用いており、従来の膜を利用したシステムと比較しまして同じ電力量で二倍の水素を製造することができます。さらに、太陽光や風力といった再エネの電力変動に対する応答性が極めて迅速でありますので、気象条件により刻々と変動する再生可能エネルギーを最も効率よく利用することができるなどの特徴がございます。
このような特徴から、地域における再生可能エネルギー発電の最大化に貢献するシステムであり、かつ、このP2Gシステムを大規模工場の一角あるいは近傍に設置しまして、工場に水素を供給しつつ、その周辺地域にも水素を波及させる再エネ水素生産型モデルと位置付けることができます。グリーン水素と再エネ電力の活用を組み合わせ、より完全な形で地域の脱炭素化を図ることが可能となります。
次に、YHCの役割について説明いたします。
十ページをお願いいたします。
今後、我が国においては、現在御審議されています水素社会推進法案に基づきまして、カーボンニュートラルの実現に向けた具体的な施策が講じられていくものと思います。大規模かつ効率的な水素等のサプライチェーンの構築に向けましては、国では、大規模発電利用型、多産業集積型、地域再エネ生産型の三つのイメージを例示しております。私たちが取り組んでいるやまなしモデルP2Gシステムは、まさに地域再エネ生産型を担い得るものと考えております。
輸入水素の活用を前提とする他のイメージ例と並行して地域再エネ生産型の供給拠点を全国各地にバランスよく整備していくことにより、我が国全体として着実な水素利用が図られていくものと考えております。
次に、十一ページ目をお願いします。
済みません、ページが書いていなくて申し訳ございません。米倉山における水素製造設備について説明いたします。
この米倉山のP2G実証棟では、国とNEDOからの御支援の下、一・五メガワットの水電解装置を核とするP2Gシステムを開発いたしました。本システムは、一時間に三百六十立方メートル、約三十キログラムのグリーン水素の製造が可能でありまして、二〇二一年六月から稼働を開始しています。この実証システムで製造した水素は、一旦水素吸蔵合金に貯蔵して、県内外の工場等へトレーラーなどで輸送し、利用いただいておりまして、これまで三年近くにわたり、グリーン水素の製造から貯蔵、輸送、利用までを一貫したサプライチェーンの社会実証に取り組んでいるところでございます。
このPEM型の水電解装置で約三年間グリーン水素を製造し続けている企業は世界中でも数例しかなくて、日本では弊社だけでありまして、このノウハウ、知見の積み重ねこそが我々の大きな強みでございます。
十二ページ目をお願いいたします。
この社会実証の一環としまして、御利用いただく水素がグリーンであることを証明するため、山梨県知事名義による証書を発行する取組でございます。現状では公的な認証制度がないことから、山梨県独自の取組としまして行っているもので、現在、東京都お台場のビッグサイトに設置されました燃料電池に供給している水素は、この証書をお付けしております。水素を利用していただく方々に対してグリーンであることを可視化して提供することによりまして、グリーン水素によるエネルギー転換への関心を高めていきたいというふうに考えております。
次に、十三ページ目をお願いします。
水素社会の実現に向け現在進行中の主なプロジェクトをまとめたものでございます。
一番目はシステムの大容量化を目指す取組です。現在十メガワット級の大規模モデルの開発を進めておりまして、将来的には百メガワットクラスの実現につなげていきたいというふうに考えております。このプロジェクトでは、まず、山梨県北杜市にあるサントリー白州工場、ここに十六メガワットのP2Gシステムの導入を進めておりまして、二〇二五年度の稼働を予定しております。工場の隣接地にP2Gシステムを設置しまして、製造した水素はパイプラインで工場へ送られまして水素ボイラーの熱源として活用されます。これが稼働すれば、国内最大規模の水電解システムとなる見込みでございます。
もう一つは、福島県田村市で、新設される工業団地内の半導体用ガラス工場へ十四・八メガワットのシステムを導入しまして、石英ガラス製造用のバーナーの燃料としてグリーン水素と酸素を供給いたします。また、余剰分の水素につきましては、周辺地域へ輸送しまして、福島県内や周辺地域における水素利用にも取り組むこととしております。二〇二六年度の稼働を目指しております。
二番目はコンパクトモデルの開発です。五百キロワットの水電解装置と稼働に必要なシステム一式をコンテナに収容することで小規模パッケージモデルを構築しまして、独立した小規模の需要に対応できるように取り組んでおります。この五百キロワットのコンパクトモデルは、既に大成建設の子会社、大成ユーレック川越工場に設置しまして試運転を開始しております。五月中、遅くとも六月から本格稼働を始める予定です。製造されるグリーン水素は、コンクリートの養生用の熱源として利用します。
さらに、東京都から発注を受けまして、大田区京浜島の都有地に、米倉山と同規模の一・五メガワットのシステムを導入することが決定しておりまして、二〇二五年度中の稼働を目指して事業を進めているところでございます。
三番目が海外事業です。インド及びインドネシアにおける国際実証事業としまして、実証前調査に取り組んでおります。インドにつきましては、スズキ自動車の現地法人であるマルチ・スズキの自動車工場におきまして、塗装工程での熱源としてのシステム導入に向け、詳細調査を行っております。
また、インドネシアにつきましては、国営石油会社のプルタミナ社と連携しまして、地熱発電を活用したグリーン水素とグリーンアンモニアの製造実証に向け、詳細調査を行っております。十二月のAZECの際には、この協定を行わせていただきました。
十四ページをお願いいたします。
再エネ発電の導入促進に向け、我々のシステムがいかに効果を発揮できるかの説明でございます。現在、再エネ発電の導入は、供給力に対して電力需要が不足することによります再エネの出力制限が問題になっています。右のグラフを見ていただきますとおり、二〇二三年度では東電を除く電力会社九社で出力制限が行われて、需要の増加なくしては、これ以上の再エネ発電の導入には黄色信号がともる状況にあります。また、左のグラフのとおり、電力卸売市場もほぼゼロ円の時間帯が増加しておりまして、再エネの投資意欲の低下にもつながっています。
P2Gによる水素製造は、新たな電力需要を創出するとともに、この価格が安い時間帯に着目して水素を製造することでより安価な水素製造が可能になります。また、電力変動に瞬時に対応できるという特徴を生かしてデマンドレスポンス的な運用をすることによりまして、再生可能エネルギーの導入拡大を図っていく上で課題となっております電力系統の安定化などの課題解決にも寄与できるというふうに考えております。
十六ページ目をお願いいたします。
地域における水素普及モデルの考察でございます。
水素を普及させていくには、水素を利用する需要家がどれぐらいいるかということが課題となります。この左が、日本地図を色分けしたとおり、これは市町村単位なんですけれども、都市部のみならず、各地に大規模な熱の需要家が存在しています。この方々がいかに脱炭素化に取り組んでいくのかがカーボンニュートラルの鍵を握ると思われます。全国に大規模需要家が点在していることから、この需要家の隣接地にシステムを設置して周辺の小規模な需要家へ水素を配送するというハブ・アンド・スポークモデル、これの汎用性は極めて高いというふうに考えます。このモデルでグリーン水素の輸送コストを最小化して水素利用を拡大していくことで、全国の脱炭素化や産業振興に寄与できるものと考えております。
最後に十八ページ目をお願いいたします。
水素社会推進法への期待でございます。
グリーン水素を国内で製造する事業者にとって、技術開発等でコストダウンを図っても、どうしても、国内でグリーン水素を製造するということは、化石燃料に比べまして価格競争力がどうしても劣ってきます。普及に向けては価格がネックになります。本法案は、まさしくこの価格差を支援し、二〇五〇年までの脱炭素化へのレールを引いて事業者や地域の背中を押す、水素社会到来を強力に推し進める願ってもない法律だと思っております。
山梨県及びYHCでは、本法案の審議など、国における政策動向を注視しながら、速やかに価格差支援制度等の公募にエントリーできるように、現在、水素需要家となるパートナーの募集を行っております。水素を利用する需要家の方々としましては、本法案で低炭素水素の価格に対する不安は払拭できましても、水素を利用するための多額の設備投資と準備が必要でありまして、経営判断を要する案件となります。このため、私どもには、ある程度の時間が欲しいという声も寄せられております。
ファーストムーバーを御支援いただくという大変有り難い法律案ですけれども、この事業計画の認定の受付期間につきましては、より質の高い事業の提案を行うために十分な期間を確保していただきたいというふうに考えております。
本法案を先駆けとしまして、今後、化石燃料を使用する際のカーボンプライシング等の制度が整備、導入されまして、水素社会実現に向けた持続可能な水素エコシステムが確立されていくと、このことがカーボンニュートラルの実現に不可欠というふうに考えております。YHCは、本法案が目指す水素社会の実現に向けまして、全力で取り組んでまいります。
私からは以上です。御清聴ありがとうございました。