川崎政司の発言 (憲法審査会)

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○法制局長(川崎政司君) 参議院法制局長の川崎でございます。
 私の方からは、お手元の配付資料によりまして、国民投票その他の憲法改正手続に関し、その法制度について概観した上で、憲法改正の国会による発議の流れと憲法改正国民投票の流れ、さらに、国民投票広報協議会と国民投票運動について説明をいたしますとともに、憲法改正国民投票法の改正の経緯と、憲法改正の発議、国民投票の実施に関する主な検討課題にも言及をさせていただきます。
 表紙をめくり、一ページを御覧ください。
 まず、憲法改正手続に関する現行の法制度について確認をしておきたいと思います。
 日本国憲法の改正の要件、手続については憲法九十六条で規定されているところですが、その具体的な手続については、平成十九年に日本国憲法の改正手続に関する法律が制定されております。
 この憲法改正手続法は、国民投票に関する手続を定める第二章から第五章までの規定と、第六章の憲法改正の発議のための国会法の改正規定とから成っておりましたが、第六章の改正が国会法に溶け込むことにより、残りの国民投票に関する規定についてはいわゆる憲法改正国民投票法などと呼ばれているところです。
 なお、国会法の規定を受け、衆議院では平成二十一年に、参議院では平成二十三年に憲法審査会規程が議決されております。
 二ページに参ります。
 御承知のとおり、憲法改正の手続は、大きく分けて、国会による発議と国民投票での国民の承認の手続から成ります。
 前者の発議については、憲法九十六条一項前段において、「この憲法の改正は、各議院の総議員の三分の二以上の賛成で、国会が、これを発議し、国民に提案して」と定めており、そのための手続等として、国会法が、一、憲法改正原案の発議や修正の賛成者数の要件、二、憲法改正原案の個別発議、三、憲法改正原案に関する両議院関係、四、両議院の可決による憲法改正の発議及び国民に対する提案、五、国民投票の期日の議決、六、憲法審査会の設置、七、国民投票広報協議会の設置などについて定めております。
 また、後者の国民の承認については、憲法九十六条一項前段で、「その承認を経なければならない。」と定めた上で、その後段において、「この承認には、特別の国民投票又は国会の定める選挙の際行はれる投票において、その過半数の賛成を必要とする。」としているほか、第二項において、「憲法改正について前項の承認を経たときは、天皇は、国民の名で、この憲法と一体を成すものとして、直ちにこれを公布する。」と定めております。
 そして、これを受け、憲法改正国民投票法において、国民投票による承認に関する手続等として、一、国会の議決した期日における国民投票の実施、二、国民投票の投票権年齢、三、国民投票広報協議会及び国民投票に関する周知、四、投票人名簿や投開票等、五、国民投票運動、六、国民投票の効果、七、国民投票無効の訴訟等、八、内閣総理大臣による公布に係る手続などについて定めております。
 次に、資料三ページを御覧ください。
 このような法制度の下での憲法改正の発議までの具体的な流れについて御説明をいたします。
 国会による憲法改正の発議については、両院は全く対等とされているところですが、先議、後議の関係により、順次両院において審議が行われます。
 まず、憲法改正原案の議院への発議等については二つの方法があり、右の枠の発議要件等のところでございますけれども、議員による発議と憲法審査会による提出が規定されております。議員による発議については、衆議院においては百人以上、参議院においては五十人以上の賛成者が必要とされております。
 また、発議に当たっては、内容において関連する事項ごとに区分して行うものとするとの定めがあり、これは憲法改正の発議や国民投票の単位にも関わってくるものでございます。
 憲法改正原案が発議、提出されますと、基本的には、本会議において趣旨説明が行われた後、憲法審査会に付託されることとなります。憲法審査会の審査については、会期中、閉会中を問わず開会可能とされているほか、公聴会の開催が義務付けられております。他方、一般に法案審査等に認められている審査会審査省略や中間報告制度については不適用とされています。
 なお、表の中ほどに記載しておりますけれども、両院の憲法審査会は必要に応じて合同審査会を開催することができ、合同審査会はそれぞれ憲法審査会に対し勧告することも認められております。
 憲法審査会においては修正動議の提出も可能であり、また、憲法審査会での議決は過半数により行われます。憲法審査会で過半数の賛成をもって憲法改正原案が可決されますと、本会議に報告され、審議されますが、本会議においては総議員の三分の二以上の賛成が必要となります。修正議決の場合も同様です。
 その後、後議の議院においても、基本的に、本会議において趣旨説明、憲法審査会への付託の後、憲法審査会で審査され、過半数の賛成で可決されますと、本会議での審議、採決となります。
 そして、後議の議院でも三分の二以上の賛成で可決された場合には、憲法改正を発議し、国民に提案したものとされ、両議院の議長が、憲法改正の発議をした旨と憲法改正案を官報に公示します。
 他方、後議の議院で三分の二以上の賛成で修正議決された場合には、先議の議院に回付され、先議の議院で不同意となったときに、その求めがあれば、両院協議会の開催となります。後議の議院で否決された場合も同様に、両院協議会が開催されます。
 両院協議会で出席委員の三分の二以上の賛成で成案が得られた場合には、その成案が両院の本会議に順次諮られ、総議員の三分の二以上の賛成でそれぞれ可決された場合には、憲法改正の発議、国民への提案となります。これに対して、両院協議会で成案が不成立の場合には憲法改正原案は廃案となります。
 次に、四ページに移り、国会の憲法改正発議後の国民投票までの流れについて御説明いたします。
 国民投票の期日は、国会が憲法改正の発議をした日から六十日以後百八十日以内において、国会の議決した期日に行うものとされております。そのため、国民投票の期日の議案を発議し、衆参両院で議決することが必要となりますが、この期日の議案の発議については議案の賛成者要件が適用され、衆議院に提出される場合は二十人以上、参議院に提出される場合は十人以上の賛成者が必要となります。
 なお、憲法九十六条では、特別の国民投票と国会の定める選挙の際行われる投票の二つが規定されていますが、憲法改正国民投票法では、特別の国民投票を念頭に置いた規定となっているところです。
 次に、国民投票に向けた広報や周知については、国会に設置する国民投票広報協議会が行うことになります。また、国民投票までに行われる国民投票運動については原則自由としつつ、組織的多数人買収などの禁止や国民投票期日前十四日間の広告放送の禁止が規定されています。国民投票広報協議会と国民投票運動については、この後改めて御説明いたします。
 国民投票については、十八歳以上の日本国民に投票権が認められており、憲法改正案ごとに一人一票となります。
 資料十六ページに投票用紙の様式を掲載していますが、賛成又は反対の文字を○で囲む投票方式とされております。
 なお、複数の憲法改正案について国民投票を行う場合には、いずれの憲法改正案に係る投票用紙であるかを表示しなければならないこととされております。
 投票の結果、有効投票総数の過半数の賛成があったときは、憲法改正案は国民により承認されたこととなり、憲法改正が成立し、天皇が公布することになります。
 次に、五ページで国民投票広報協議会の具体的な仕組みについて御説明いたします。
 まず、協議会の組織等ですけれども、設置期間については、憲法改正の発議後に国会に設置し、国民投票に関する手続が終了するまでの間存続するとされています。
 委員数については、憲法改正発議時の衆議院議員と参議院議員各十人となっており、同数の予備員も選任されます。
 委員の選任方法については、各議院における各会派の所属議員数の比率により、各会派に割り当て選任しますが、反対の表決を行った議員の所属会派から委員が選任されないこととなるときは、当該会派にも委員を割り当て選任するよう、できる限り配慮するものとされています。
 会長は委員の互選によるものとされ、協議会の議事については、定足数が衆議院議員、参議院議員の委員の各七人以上となっており、議事は出席委員の三分の二以上の特別多数で決定することとされています。
 次に、協議会の事務ですが、協議会は、一、国民投票公報の原稿の作成、二、投票所に掲示する憲法改正案の要旨の作成、三、広報協議会及び政党等による放送、新聞広告に関する事務、四、その他憲法改正案の広報に関する事務を行います。
 それぞれの事務については遵守事項が定められており、一、二、四の事務を行うに当たっては、憲法改正案、要旨等に関する説明の記載等について客観的かつ中立的に行うとともに、憲法改正案に対する賛成意見、反対意見の記載等について公正かつ平等に扱うものとされています。
 また、三の放送、新聞広告においては、憲法改正案、要旨等の広報を客観的かつ中立的に行うこと、放送に関しては、憲法改正案に対する賛成、反対の双方の政党等に対して、同一の時間数、同等の時間帯を与えるなど同等の利便を提供しなければならないこと、新聞広告に関しては、憲法改正案に対する賛成、反対の双方の政党等に対して、同一の寸法、回数を与えるなど同等の利便を提供しなければならないことなどが規定されています。
 このような協議会の庶務を担当する組織として協議会に事務局が置かれ、事務局長その他の職員は、協議会の会長が両議院の議長の同意及び両議院の議院運営委員会の承認を得て任免することになっております。
 続いて、六ページで国民投票運動についても改めて説明をいたします。
 まず、国民投票運動については、憲法改正案に対し賛成又は反対の投票をし又はしないよう勧誘する行為と定義をされております。
 この国民投票運動の規制の在り方については、法制定時の発議者から、国民投票運動は主権者である国民の政治的意思の表明そのものであるから、国民一人一人が萎縮することなく自由に国民投票運動を行い、自由闊達な意見を闘わせることが必要である、したがって、国民投票運動は原則自由とし、規制はあくまでも投票が公正に行われるための必要最小限のものとすべきである、との考え方が示されています。
 このような考え方の下で、国民投票運動に関する主な規制については、例えば主体による規制として、投票事務関係者や特定公務員の国民投票運動、公務員等や教育者の地位利用による国民投票運動を禁止する一方、公務員の政治的行為の制限の特例として、他の法令により禁止されている他の政治的行為を伴う場合を除き、国民投票運動と憲法改正に関する意見の表明を行うことができるものとされております。
 他方、方法等に関しては、投票期日前十四日間は、国民投票広報協議会が行う放送を除き、国民投票運動のためのラジオ、テレビ等による広告放送を禁止するほかは、特段の規制はありません。ただし、組織的な多数の投票人に対する買収、利益誘導のほか、公務員や中央選挙管理会の委員等による職権を濫用しての国民投票の自由の妨害が罰則をもって禁止されております。
 さらに、七ページで、憲法改正国民投票法の改正経緯を簡単に見ておきたいと思います。
 憲法改正国民投票法は、平成十九年に制定され、その後、平成二十六年と令和三年の二回ほど改正が行われております。すなわち、平成二十六年の改正では、平成十九年の制定時の三つの検討課題に対応するための整備が行われております。
 具体的には、一つ目の宿題が選挙権年齢等の十八歳への引下げについての検討であり、平成二十六年改正により国民投票権年齢が十八歳とされたほか、選挙権年齢、成年年齢等の引下げを検討することとされ、その後、これらについても公選法改正や民法改正により十八歳に引き下げられております。
 二つ目の宿題が、公務員の政治的行為に係る法整備についての検討であり、これについては、平成二十六年改正により、先ほど御説明したとおりの規定が置かれておりますが、なお、組織的勧誘運動等の企画などに対する規制の在り方について検討し、必要な措置を講ずるものとされました。
 三つ目の宿題は、国民投票の対象拡大についての検討ですが、これについては、平成二十六年改正でも憲法改正問題についての国民投票制度の意義、必要性について更に検討し、必要な措置を講ずるものとされました。
 次に、令和三年改正の内容ですが、これは平成二十八年の公選法の改正により、投票環境向上のための法整備が行われたことを受け、これと同様の法整備をすべく、投票人の名簿等の縦覧に代え閲覧制度の創設、共通投票所制度の創設、期日前投票の事由追加・投票時間の弾力化など、七つの項目に関する改正が行われております。
 最後に、八ページで、憲法改正の発議、国民投票の実施に関する主な検討課題について触れさせていただきます。
 大きく分けて、両議院による規程の整備が必要と考えられる事項と、令和三年改正時に検討課題とされた事項とがあります。
 まず、規程の整備の検討が必要と考えられる事項については、一つ目として、両院の憲法審査会による合同審査会に関する事項があります。既に御説明しましたとおり、両院の憲法審査会は協議して合同審査会を開くことができることとなっていますが、そのためには合同審査会の構成や運営等の詳細について両議院の議決により定める規程の整備が必要となります。
 また、二つ目として、憲法改正案の国民に対する広報に関する事項があります。国民投票広報協議会及び国民投票に係る広報に関し、両院議長協議決定に委任されている事項について、その整備が必要となるものです。両院議長協議決定は、両院の議長がそれぞれの院の議院運営委員会等に諮って定めることになります。
 具体的には、まず、国民投票広報協議会の運営、組織等のうち、運営等の詳細やその事務局の組織等に関する事項があります。
 次に、広報の実施に関する規程のうち、広報のための放送に関する事項として、一つ、国民投票広報協議会による憲法改正案の広報のための放送に関する事項、二つ、広告放送を行う政党等の国民投票広報協議会への届出に関する事項、三つ、政党等による無料広告放送に関する事項、四つ、政党等による無料広告放送のための無料録音、無料録画に関する事項、五つ、無料録音、無料録画とする額の範囲、六つ、広告放送をすることができる政党等がその一部をその指名する団体に行わせることに関する事項があります。
 また、広報のための新聞広告に関する事項として、一つ、国民投票広報協議会による憲法改正案の広報のための新聞広告に関する事項、二つ、新聞広告を行う政党等の国民投票広報協議会への届出に関する事項、三つ、政党等による無料新聞広告に関する事項、四つ、新聞広告をすることができる政党等がその一部をその指名する団体に行わせることに関する事項があります。
 他方、令和三年改正時に改正法の附則において検討課題とされた事項としては、次の二つの課題があります。
 その一つ目の課題が投票人の投票に係る環境を整備するための事項であり、具体的には、天災等の場合における開票立会人の選任に係る規定の整備、投票立会人の選任の要件の緩和でありますが、実際上、令和四年の公選法改正を踏まえ、FM放送設備による広報放送が加わっているところでございます。
 二つ目の課題が国民投票の公平及び公正を確保するための事項であり、インターネットの急速な発展・普及、SNSの利用の拡大など、憲法改正国民投票法制定後の環境の変化への対応等の問題です。具体的には、国民投票運動等のための広告放送及びインターネット等を利用する方法による有料広告の制限、国民投票運動等の資金に係る規制、国民投票に関するインターネット等の適正な利用の確保を図るための方策が検討対象とされています。なお、これらに関連し、国民投票広報協議会の充実強化についても議論されているところです。
 以上でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

発言情報

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発言者: 川崎政司

speaker_id: 5465

日付: 2024-06-12

院: 参議院

会議名: 憲法審査会