川内潤の発言 (厚生労働委員会)
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○参考人(川内潤君) 皆さん、初めまして。NPO法人となりのかいごというところで代表をしております川内潤といいます。
今日は、本当に貴重な機会をいただいて、私の声を聞いていただくと分かると思うんですけど、すごく緊張していますが、何とか皆さんにいろんな思いを届けていきたいと思っております。是非よろしくお願いします。
今日のテーマは、本質的な仕事と介護の両立なんです。仕事と介護の両立が本質的な形というのはどういうものかということを、ちょっと高邁ながら御提案できると有り難いと思っています。そこに必要なのは、家族介護、家族を介護するということによるマインドセットではないかというふうにうちの法人は考えています。
では、私の自己紹介から行きたいと思います。
幾つか福祉とか介護とかの資格を持ち、次のページですね、自己紹介のページです、持ちながら、今仕事をしています。厚労省の幾つか検討委員にも入らせていただいています。実家が介護の会社やっているんです。だから、私、ずっと父と母を目指してとかということは全く思っていませんでした。高校生のときにちょっと器械体操で大きめのけがをして車椅子に座っていたことがあって、やっぱり自分も介護をやってみようと思って大学行きました。四年間、介護保険の研究してみたんですけど、やっぱりお金持ちになりたいなと思って外資のコンサル会社に一時期所属していたんですが、やっぱり直接人を支える仕事がしたいと思って、寝たきりの方をお風呂に入れてさしあげたり、認知症の方と日々会話をしたり、老人ホームでみとりのケアをしたりとかという介護職をやっていました。
それやっていると、一生懸命家族のことを介護しているんだけど、つい声が大きくなるとか、つい手が出てしまうとかということをたくさん目の当たりにしました。嫌というほど見ました。これは、加害されている方は何も悪くないと思いました、正直言って。いや、これだけ追い込まれたらそれはやらざるを得ないだろうなと思ったときに、もっともっともっと早いところで支援を届けなければ、きっとこれはずっとずっとずっと繰り返されると思ったので、もっと早いところ、つまり、今まさに働いている人たちのところにこちらから出かけていって個別の相談を受けたり、次のページですね、個別の相談を受けたり介護のセミナーをしたり、そして、そこで得られたものを書籍、ラジオで発信するというのがうちの法人の今の仕事となっています。
介護相談でいろんな誤解に出会いました。私、今、年間に大体七百件ぐらいの個別の介護相談、御家族からの相談を受けています。一人五十分ずつお時間使うんですけど、あれっということたくさん出会いました。年七百件の家族介護相談で出会った両立支援の誤解ということです。これ、企業の方もこういう誤解をされているんだろうなと思っています、人事労務の方がですね。
誤解の一つ目です。申出がなければ、従業者の方が言ってこなきゃ、それはニーズがないんでしょうと判断している。ここはもう皆さん御存じのとおりと思うんですけど、これはいわゆる隠れ介護という状況であって、ぎりぎりまでその状況を抱え込んで、言っていないだけの状態ですね。土日で一生懸命介護しているという感じです。
二つ目の誤解です。休暇、休業の取得率を向上を目指そうとするんです。良くないです、良くないです。体制づくりのためにと、申請があったところで、体制づくりのためなんです、この休暇はと説明しても、いや、もう、いつも介護している妹が倒れちゃって、とにかく自分が行かなきゃいけないので、もうどうにもならないんですよと言っている状況で幾ら説明をしても、その人は直接の介護に使うでしょうという状況が日々起きています。
三つ目。できる限り従業者の申出を実現することが両立支援でしょう。いや、違います。休暇、休業の延伸、実家での無期限のテレワークは離職を後押しするのでおやめになられた方がいいと正直思っています。
四つ目。家族が直接介護することを親孝行だと多くの方が思っているかもしれませんが、我々支援者が最初に習うことは、クールヘッド・バット・ウオームハートとかというんですが、頭は常に冷静であり、心は温かくいましょうねなんですが、対家族に対してこのクールヘッドを維持することは相当難しいのではないでしょうか。我々介護職であっても、自分の家族の介護はするなと、私は学校で習いました。本当に難しいことだと思っています。
で、大事なのは、家族介護のマインドセットを前提にしなければ、ありとあらゆる支援策をああでもない、こうでもないとやったとしても、残念ながら離職を後押ししている現場があるんだということを是非知っておいていただきたいということでした。
次のページです。介護離職理由調査で分かったことです。これは厚労省の老健局事業で分かったことです。
介護離職者の傾向の中で、一つ目、ケアマネジャーや地域包括支援センターに相談できている人の割合が高いんです。離職者の割合ですよ。離職していない人の割合じゃないです、離職した人の割合です。自主的に介護に関する情報収集を行っている人の割合が高い。三つ目、職場から両立支援の情報を受けている。
あれっ、今まで仮定としては、こういうことをすることで離職防止になるんじゃないかと思っていたんだが、これだけでは片手落ちだということなんです。個別周知、意向確認、早期情報提供とともに、やっぱりマインドセットが必要なんじゃないだろうかということですね。
家族で介護をするべきというこのマインドセットがなければやっぱり離職は止められないんではないかということで、私が日々やっているマインドセット、世の中でのセミナーってどういうふうにやっていますかということを、ちょっと事例を挙げていきたいと思うというのが次です。
仕事と介護をてんびんに掛けないというページに行きます。
多くの方が仕事と介護をこうやっててんびんに掛けちゃうんですね。何か、仕事を取ったら親不孝者なんですかね。介護を取るんだったら、もう自分のキャリアは諦めるべきなんでしょうか。私は全くそう思いません。仕事と介護は絶対両立ができます。多分、私、累積すると三千とか四千件ぐらいの相談を受けていると思うんですけど、一件として、辞めた方が親孝行になりますよ、いい介護になりますよというケースがないんです。恐らく、これからも出会わないんじゃないかと思っています。その方が、仕事と介護を両立していた方が、仕事を継続していた方が親にとっても穏やかで継続性のある体制がつくれるから、だから辞めちゃいけないんですというふうに説明をしています。
次です。休業制度の活用のイメージです。
介護を、ちょっと乱暴ですけど、四つのフェーズに分けてみました。フェーズ一で初期体制を構築し、フェーズ二で体制を強化し、そしてそれが安定運用されるフェーズ三、で、残念ながら最後は必ずみとりが迎えられていくというフェーズの四です。
仕事と介護の両立といったときに、このフェーズの一の初期体制に至らないまま、ここでどばっと休暇、休業、ないしはそれを取る前に辞めるという状況でお辞めになる方が多かったりします。で、それが何が悪いって結構言われるんです、セミナーでこういうこと言うと。いや、一応、私も人の支援者なので、それが高齢者の方のためになるんだったら、それも人生の選択肢のうちの一つでしょう。でも、フェーズの四のこのみとりのときまで御家族の関係が残っていないことが高齢者の方々にとってどれだけつらいことか。
老人ホームで働いて、みとりのケアをやっていました。ええ、そろそろ、あと一時間ぐらいです、お越しになられますか、連絡します。いいんです、亡くなってから連絡下さいということが一件、二件じゃない。でも、このケースはそれだけつらい介護があったということを是非御承知おきください。頑張って頑張って介護した結果、そういうことがあるんだということです。
で、この全体像を把握したときに、休んでいただきたい期間、少し長めに書いています。赤字で示しましたが、これぐらいで、ピンポイントで済むんですというお話でした、ちょっと長めに書いていますけど。これ以上どうして必要だろうかというふうに正直思っています。
ただ、ポイントは、支える側ですね、働いていらっしゃる方々の不安解消なのか、本当に本人にとって望ましいケアを届けるのかをやる側が見極める余裕とか距離感がなければ、やっぱりどばっと休むでしょう。又は、親が老いていくのを直視したら、それは不安になるでしょう。だからもっと近くにいてあげないとと思うでしょう。でも、それがさっき言ったような悲しい状況を生むんです。だとすると、やっぱり介護で長期休業は、やる側にとっても当然ですけど、やられる側、やられる側というか支えられる側にとってもマイナスではないかというお話でした。
次のページです。家族介護の効果的な関わりというのをちょっと整理してみました。
効果的な関わり、上ですね、は、家族介護を受け入れる心構えを持っておくことであり、相談先を確保することであり、さっきお示しした全体像を把握することですが、多くの方が非効果的な関わりをイメージしています。
歩行、入浴、排せつの介護方法、認知症を進行させないための声掛け、介護保険制度の詳細を調べる。認知症を進行させないための声掛けを、私これ普通にできるようになるまで三年掛かりました。その方の記憶の状況に合わせて、霧島昇さんやフランク永井さんの歌が普通に歌えるようになるまで鍛え続けるわけですが、それは一般の方々にはなかなか難しいのではないでしょうかということです。
効果的な理由、下の段ですね、事前準備ができます。短時間で済むので仕事と両立ができます。そして、一番大事なこと、優しくできる余裕も持てるということです。家族という間柄は最も感情がストレートに向き合う関係性という定義をしたときに、優しくするには余裕が必要ではないですかということですね。私はどうしても母にどなっちゃうんです、どうしましょう。いや、接触の頻度を下げませんかという御提案をしているということです。
非効果的な理由の方に行きます。習得に時間と労力すごく掛かります。先ほどお示ししたとおりですね。事前準備、難しいです。親が認知症になるのか脳梗塞になるのか転倒骨折するのか心筋梗塞起こすのか、心疾患ですね、分からないということです。だから、変化に弱い体制にどうしてもなっちゃう。家族のこれだけ頭数が少ない状況の中で支えるというと、なかなか大変だということです。家族だからこそ強いメンタル負荷掛かるということは、我々専門職も同じだというふうにお話ししたとおりで、元気だったときの父、母を知っているがゆえに、そうでない姿を見てつらくなるのは当たり前だと思います。
私は、義理の父ががんの末期で寝たきりになったときに、おむつ交換ができませんでした。びっくりしました、こんなこと起きるんだなって。全身に力が入ってできなくなるということです。
大事なのは、家族の役割を担うこと、この左側の御家族の役割担うこと。専門職の役割についつい手を出さないことができさえすれば、両立は無理なくできませんかというお話です。
次のページです。必要以上に費用が掛かってしまった事例というのをお示ししています。
これはどういうことかというと、いや、だってそうやって人に頼んだら何か青天井にお金掛かるんじゃないですかと言われるので、本当にそうかどうかを証明したいと思います。
まずは、家族で抱え込みましたAさんですね。お母さんも嫌がるし、まあ自分でやってみよう、頑張ってやってみよう。息子さん来るからお母さんは安心するんです。交通費節約するためにテレワーク始めます。平日も息子が来るので、だから何でも息子に聞くんですね、マイナンバー何ちゃらという何か封筒が届いた、うわっ、分かんないからあんたお願いと言って、頭を使う機会を失うわけです。だから、何でも聞いてくるからテレワーク集中できないんですね。会議中にも乱入されます。そうすると、お母さん、もうデイサービス行ったらいいんじゃないと言っても、なかなかお母さんデイサービス行ってくれなかったりします。そうすると、息子さんは、昼夜問わずずっとその仕事と介護と、これを両立というんでしょうかね、まあ、でも睡眠時間削られてしまって、結局、息子さんばたんと倒れちゃって、急遽入れる老人ホームしか選べなかったというのがAさんなんですけど。
全く同じ状況だったBさんは、最初から、お母さんにあれっと思ったときから包括支援センターに行ったんです、地域の高齢者の何でも相談所に行ったんですね。行ったというか、最初電話したんですけどね。そうしたら、包括支援センターの職員がちょこちょこ訪問するようになって、お母さんお財布なくしたということがあったら、包括支援センターが訪問して、いや、お母さん、お掃除お手伝いさせてもらえないですか、なくし物減るんですよ、そうしたら安心できませんかという御提案をして、で、じゃ、むげに断れず、ヘルパーさんお願いしようとか。そうすると、お母さん、ヘルパーさんと何か世間話するのが楽しかったので、じゃ、デイサービスお誘いしてみようという、で、デイサービスへ行ってみたと。そんなこんなして、だんだんだんだん介護度が進んでいったときに公立の老人ホームを申請して、順番が回ってきたから老人ホームに入居しましたというのがBさんなんですけど。
AさんとBさん、どっちのお母さんがいい表情をしているでしょうかということですね。そして、頑張ったのは間違いなくAさんです。でも、Aさんのお母さんは、息子さんがいきなり倒れて、いきなり老人ホームに入居させられているわけです。きっといい表情はされていないでしょうということです。
次のページです。
大事だったのは、早くから地域包括支援センターに相談をして連携ができているかどうか、たったこれだけのことです。たったこれだけなんですが、今なかなかここが、さっき言ったその家族でやるべきというマインドセットが、今の段階ではマインドがあるから、そのマインドがセットされていないから、だからこういう状況がずっと繰り返されているというふうに認識しています。
で、次のページですね。人に話すと大きく書いていますけど。
私、御家族の介護において一番大事なことは、上手におむつ交換する方法でも認知症の方に丁寧にお声掛けする方法でもないと思っています。それは二の次、三の次です。そうじゃないです。人にその状況を話せているかどうかです。人に話ができていれば、それは不安や悩みが整理できるように私たちの心理はできているし、人に話ができている方というのは職場でも地域でもいろんな支援を結果として集めている方が多いということです。だから、人に話ができているかどうかが家族介護において一番重要なことだというふうにお伝えをしています。
最後ですね。家族介護を通して豊かな生活につなげるということです。ここを目指すことが本当の両立支援ではないでしょうかという御提案です。介護はただの苦労ではないということです。私たちに生きるその学びをいただけるものではないか、ちょっと何か高邁な言い方で恐縮ですけど、そう思っているんです。
個別相談をしていると、大事なお父様、お母様をみとった後の方からの御相談もたくさんいただくようになりました。それはとても重要、何かグリーフケアとかというんですけど、でも、これ両立支援において非常に重要で、みとった後のそのショックが強過ぎてなかなか職場に復帰ができなく、介護が終わった後にうつになる方もいらっしゃるぐらいなので、非常に大事にしています。
そのみとりの後の相談でこんなコメントいただいています。
父が無理をして親の役目をしていることに気付きましたと言ってくれているんですね。本当のお父さんの姿が見えたときに、ああ、父って無理やり父だったんですねということを分かったりされるそうなんです。
母が自分に何を望んでいるか分かった気がしますということですね。ついつい、認知症になられて非常に厳しく母親から叱責されている中でも、でも、今の母と昔の母とを比べたときに、本当の母はどっちなんだろうかとか、そして、今、亡くなったとき、今、母は上から何を言ってくれるんだろうかみたいなことを一緒に議論したりしたときにこんなコメントが出ました。
老後の不安が大分下がりましたというのは、老後というのは、ある意味、その社会的責任を一度下ろして自由に生きられる時間というふうに勝手に定義をさせていただくと、それは、何か、いろんな方の介護をすることで、ごめんなさい、家族の介護に向き合うことで大分不安が下がったんだということです。
自分もいろんな人に助けられたんで、やっぱりボランティアやってみようと思ったんですということをおっしゃるような方もいました。ここまで行ってやっと両立支援じゃないかなというふうに思っています。
これをやるには、企業が先回りしてプッシュ型の支援をしなければ、従業者が困ってから支援をしたんではこういかないのです。マインドセットに行く前にその人は会社から辞めてしまうんです。そのときに、やっぱり我々専門職のような者が出張っていって個別の相談を受けていくということが支援として必要だと思うんです。だから、制度だけじゃなく、こういったソフトの支援も是非必要だと思っています。
以上です。御清聴いただいてありがとうございました。