足立浩の発言 (国土交通委員会)
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○参考人(足立浩君) 建交労で中央副執行委員長を務める足立でございます。
初めに、参議院国土交通委員会において意見陳述の機会をいただいたことにお礼を申し上げます。
建交労は、四十七都道府県に組織のある全国組織で、正社員、パート、派遣など雇用形態を問わず、一人でも入れる労働組合であります。その業種は、建設、交通、運輸、自治体関連を始め、多くの産業、業種で働く労働者を組織し、労働組合運動を行っております。建交労に加入する運輸労働者の特徴は、中小零細企業が中心で多重下請構造の下で実運送を担う運転者が集まっていることであります。
まず、この度の法案につきまして、トラック運輸産業における一九九〇年の物流二法により三十年続いてきた規制緩和路線から規制強化に向けた一歩で、必要な法案として成立を求めるものであります。
しかしながら、これまでの規制緩和路線によって、運送事業への新規参入の拡大や運賃の自由化が招く激しい過当競争による運賃ダンピングが常態化し、中小零細企業では安全を担保することも困難なものとなっています。
この行き過ぎた規制緩和以降の弊害及びしわ寄せはトラック運転手の賃金、労働条件の劣悪化を招いて、全産業と比較しても労働時間は長く、賃金は低くなっています。さらには、過労死等の労災補償状況において、過重な仕事が原因で発生した脳・心臓疾患による過労死等として、二〇〇九年以降、道路貨物運送業の支給決定件数が十四年連続ワーストワンということを示しています。
今回の法改正では、荷主への規制や多重下請構造の是正の実効性の確保をいかに図るかが必要であると考えています。行き過ぎた規制緩和を正し、適正な運賃を収受するために規制、事業者数の適正化と、実運送を伴わずピンはねのみをなりわいとする貨物利用運送事業者への規制は喫緊の課題だというふうに考えております。
ここで、お手元に配付した資料を御覧いただきたく思います。トラック運輸産業で働く労働者の実態としまして、建交労の組織内及び未組織労働者を対象にした例年取り組んでいます春闘要求アンケート結果の推移であります。
一ページ目は、トラック運輸労働者の年収と生活実感を推移して二〇一四年以降を示しています。二〇二四年、直近では、全回答数のうち生活実感としてかなり苦しいとやや苦しいを合わせると七〇%となり、二〇一四年から毎年、かなり苦しいとやや苦しいの合計が七〇%前後を推移する状態が続いています。その生活実感を裏付けるように、年収の平均値においても四百二十・八万円となり、一四年以降の平均値でも四百万円前後に張り付いているということがお分かりいただけるというふうに思います。
二ページは、アンケート結果グラフの元データとなります。
また、三ページでは、年収前年比として三六・八%が減ったと答え、増えたの回答は一一・二%にとどまりました。年間の減収額では平均で四十一・九万円となり、次ページにありますとおり、三十万円以上の減収と答えた労働者が全回答者数の五割を占めています。
業務に関する設問では、五ページの居眠り運転の経験で、よくあると時々あると合わせて全回答者数の三九・五%。六ページの仕事中に交通事故を起こしそうになったことはでは、よくあると時々あるの合計が五二・二%となっています。
また、二日以上の運行に際しての、七ページの睡眠・休息場所については、主に車両ベッドと答えた運転者は全回答者の七九・二%に対し、主に宿泊施設と答えた運転者は一七%となり、八割近くの運転者が車両内ベッドでの休息を強いられている状態が続いています。
このほかのアンケート結果では、一月の平均休日数においては、八日から九日が四二・六%と最も多い回答になっていますが、五日以下との回答が一九・一%で、週に一度だけの休日という運転者が二割近くにも達しています。
また、社会保障制度においても、いまだに一〇%に及ぶ、国保や社会保険未加入といった状況となっており、過積載の状況においても、よくあると時々あるを合わせると一八・六%という運転者の実態であります。
建交労では、春闘アンケートと同時に運輸事業者に対するトラック運輸の取引動向に関するアンケートも取り組んでいます。全国の事業者の中から毎年一万二千社に郵送し、千社前後の企業から回答を得ています。
経営動向アンケートの結果と特徴と推移として九ページを御覧ください。
集計結果の特徴として、運賃問題につきましては、運賃が上がったと回答した企業は例年より一二ポイント増加した三七・六%で、運賃が下落が五ポイント下がって八・五%となりました。新型コロナウイルスの影響による運賃の下落などを克服するとともに、標準的運賃の成果がうかがえる状況が示されました。
一方、収益が悪化した事業者のその要因としましては、燃料費など運行コストの増加が最も多く、九二・一%となり、運賃下落も依然として八・三%となっています。また、経営の改善策として荷主に対し運賃引上げ交渉を行ったとの回答は七八・二%で、前年を一〇ポイント上回っています。
ドライバー不足については、設問には人手不足を感じると回答した企業は七五・八%になりました。その対応策として賃金、労働条件の改善を挙げた企業は五五・九%で、労働者数の現状に合わせた事業を行うの三〇・四%を大きく上回りました。このことは、引き続き賃金、労働条件の改善を図らなければ担い手の確保が困難であり、人手不足の現状を打開できないということを象徴的に表しているというふうに思います。
以上のことから見ても、賃金、労働条件の改善は、トラック運輸産業の健全な発展と経営改善において最も必要な課題であると読み取ることができると思います。
このような実態の下で、トラック運転者に対する働き方改革関連法における時間外労働の上限規制と改正改善基準告示の四月一日からの適用により物流の停滞が生じかねないとされることが、物流の二〇二四年問題と言われています。
私ども建交労では、二〇二四年問題の課題は、決して荷物が滞る問題ではなく、過労死等の防止の観点で進められた改善基準告示や時間外労働の上限規制を遵守すること、商慣習を抜本的に改革し、運賃を引き上げ、トラック運転者の賃金を大幅に引き上げることであるというふうに考えています。
とりわけ今回の法案では、一定規模以上の事業者を特定事業者として、中長期計画の作成や定期報告等を義務付けています。
しかし、物流事業者の九〇%を占める二百両以下の中小零細企業が努力義務の範囲であれば、大きな改善は見られないと思います。圧倒的多数の中小零細企業と悪質な事業者に対しても取り組むべき措置と義務化し、中長期計画の作成や定期報告等が必要であると考えます。この間の参入規制を始めとした規制緩和を行った国の物流政策の大きな過ちを繰り返すべきではないと思います。
また、元請事業者に対し、実運送事業者の名称等を記載した実運送体制管理簿の作成の義務化、荷主、トラック事業者、利用運送事業者に対する運送契約の締結等の書面による交付等の義務化は、多重下請構造を是正するためには必要なことだと思います。
しかしながら、管理簿には実運送事業者が受け取る運賃や利用運送事業者を含めた下請事業者が中間的に受け取る手数料は明記されません。荷主への規制と多重下請構造の是正の実効性の確保に向けては、実運送事業者が標準的な運賃など正当な対価を収受するための実運送体制管理簿であるならば、運賃や手数料も明らかにして多重下請構造を改善することが魅力あるトラック運輸産業につながるものだと思っています。荷主への規制と多重下請構造の是正の実効性の確保に向けた環境整備をお願いするものです。
最後に、物流事業者やトラック産業で働く労働者がその果たしている役割にふさわしい運賃や賃金の確保に向けて、建交労が掲げる課題として三点申し上げたいと思います。
一点目は、特定最低賃金の確立であります。
業種、職種別に不当な低賃金を許さず公正な競争条件を担保するための特定最賃ですが、トラック運輸産業で確立されているのは高知県のみであります。都道府県をまたぐ運転者には特に必要であるというふうに考えています。
二点目は、トラック運転者の労働時間等の管理についてです。建設キャリアアップシステムと同様のシステムの導入をされることを求めています。
トラック運転者においては、運送会社の就業履歴等を始め、資格や社会保険加入状況、特性、運転者指導や適性診断の履歴、荷待ち時間、待機時間等を含む乗務記録、積込み時間や休息期間等の総拘束時間を記録することは、運転者台帳との一体的管理を含めて、運行管理を効率的に行う上でも有効なシステムであるというふうに考えています。
三点目は、営業区域制の復活が必要であるというふうに考えています。
営業区域制は、トラックの発着地のいずれかが営業区域内でなければならないというものであります。現在のように、国土交通省告示にある一の運行百四十四時間以内であれば日本全国どこでもということがトラック運転者の長時間過密労働を生み出し、ひいては低賃金を招いているというふうに考えています。
この法案の議論を通じて、トラック運転者だけでなくて、トラック運輸産業で働く作業員や事務職員等も含めて、全ての業務に従事してその奮闘している多くの仲間に寄与するとともに、これからこの業界に入ってみたいと思えるような産業に向けて実効性のある法律となりますよう、引き続き御議論をよろしくお願いします。
以上、建交労の意見でございます。ありがとうございました。