小倉範之の発言 (国土交通委員会)

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○参考人(小倉範之君) 全国建設労働組合総連合、全建総連で書記次長を務めております小倉と申します。
 本日は、このような貴重な機会をいただきまして、誠にありがとうございます。
 私どもは、建設技能者、一人親方、事業主などを組織している団体であります。四十七都道府県にある五十三の加盟組合で構成をされ、全国で約六十一万人の組合員が加入をしている産業別の労働組合であります。
 組合員の主な従事先は大きく三つに分類されます。一つは、個人の施主から直に仕事を請け負う町場と呼ばれる現場、もう一つは、ビル、マンション建築や公共土木工事など、ゼネコンなどが元請となっている大規模現場、もう一つは、住宅企業が元請となる現場でありまして、職種は建築大工を始め、配管、電気、とび、内装など、建設業に従事をする方々が幅広く加入をしております。
 今般の建設業法等の改正につきましては、技能者の処遇改善、そして建設業の将来を支える担い手確保や育成に資するものであり、持続可能な建設業の実現に向けて不可欠である、そのように認識をしているところであります。
 こうしたことから、本日は法改正に賛成の立場で意見を申し述べさせていただきます。
 初めに、建設技能労働者をめぐる状況について、基幹統計などに基づいて若干説明をさせていただきます。
 総務省の労働力調査によりますと、建設業の就業者数のピークは一九九七年の六百八十五万人でありましたが、二〇二三年には四百八十三万人と三〇%減少いたしました。技能労働者は一九九七年は四百五十五万人でありましたが、二〇二三年は三百四万人となり、建設業就業者の減少率より高い三七%も減少をしております。
 関連をするところでは、二〇二〇年の国勢調査の抽出詳細集計結果において、二〇一五年調査と比較をして、左官は一八・七%、大工は一五・八%、型枠大工と土木従事者は一一・二%、鉄筋作業従事者は一〇・九%減となり、他の職種を含めて軒並み減少するという結果になっております。
 特に新築住宅やリフォームなどを担う大工については、一九八〇年の九十三・七万人から二〇二〇年には二十九・八万人と、三分の一の規模まで大幅に減少をするなど深刻な状況となっております。平均年齢を見ましても、建設業平均は二〇〇〇年の四十四・五歳から二〇二〇年は四十九・一歳と四・六歳上昇というふうになっておりますが、大工は建設業平均を二・六歳上回る四十七・一歳から五十四・二歳と七・一歳も上昇し、著しい高齢化が進んでおります。
 賃金に関してですが、公共工事設計労務単価は十二年連続で引き上げられ、二〇一二年との比較では七五・三%上昇しましたけれども、建設業の生産労働者の賃金推移では二〇二一年の平均年収は四百十七万円で、同調査の二〇一二年との比較では約一六%の上昇にとどまっております。
 労働時間でありますが、毎月勤労統計調査によりますと、二〇二三年の産業別年間実労働時間は建設業は千九百七十二時間と、全産業平均の千六百三十六時間と比較をして二〇%多く、三百時間以上も長くなっております。企業規模三十人以上を対象とした就労条件総合調査では、建設業における完全週休二日制の導入割合は四一%でありまして、全産業平均の五三%より一二%も低い水準になっております。
 また、新規学卒者の就職状況でありますが、学校基本調査によりますと、二〇二三年の高校、大学等の建設業への就職者は三十九万人で、二〇二一年比で三万人、一〇%減となっております。新規学卒者の職業紹介状況及び新規学卒者の離職状況によりますと、高校の新規学卒者による製造業の求人に対する就職率は五一%、建設業は一四%と低水準になっております。つまり、製造業は求人を出して二社に一社は就職をしてもらえるわけですが、建設業は七社に一社しか決まらないという極めて今厳しい状況になっているということであります。同じく、高校の新規学卒者の三年後の離職率は、製造業は二七%、建設業は四二%でありますので、離職率は製造業の一・五倍ということになります。
 今申し上げました各種統計結果につきましては、この間の施策などにより一部改善傾向は見られるものもありますが、全体としては厳しい状況が続いているということになります。
 なお、建設業における雇用管理現状把握実態調査の従業員調査では、今後建設業で働き続けるために企業に求めることでは、週休二日制の推進が三二・五%と最も多く、次いで、仕事が年間を通じてあることが二七・三%、仕事の内容に対応した賃金が一八・六%となっております。
 こうした中、今回の建設業法の改正案におきましては、労働者の処遇改善、四月から適用された建設業への時間外労働の上限規制、資材価格高騰などに適切に対応するために、適正な請負代金、工期が確保された見積り、請負契約などが規定されました。労働者の処遇改善を建設業者に努力義務化し、中央建設業審議会が労務費の基準として標準労務費を作成、勧告できるようにするほか、著しく低い労務費、著しく短い工期による見積りや見積り依頼の禁止、原価割れ契約の禁止を受発注者の双方に導入することで適切な労務費などの確保や賃金の行き渡りを担保するというふうにしております。
 公共、民間工事のいずれにも適用され、下請契約も含めて対象となり、新しいルールが導入をされることになります。工事請負契約を規制する建設業法の中で、国が勧告をする標準労務費を著しく下回る見積り、契約を禁止し、適切な労務費などを確保、賃金行き渡りの徹底などについて、公共工事だけでなく民間工事を含めてルール化が図られることについては、賃金原資となる労務費の削減によるダンピングを防止をし、適切な現場従事者の賃金単価を確保するために有効な方策であるというふうに認識をしております。
 また、新たな条文として、公正な評価に基づく適正な賃金の支払、労働者の適切な処遇の確保等の労働者の賃金支払、処遇確保が明記をされました。発注者保護から制定をされた建設業法におきまして労働者の賃金支払、処遇確保等が明文化されたことは、建設業法の体系の中で労働政策、社会政策などの実現を図り、建設工事の適正な施工、建設業の健全な発展を目指す具体的な施策として高く評価できるものと考えております。
 そして、労働者が有する知識、技能その他の能力についての公正な評価については、建設業共通の制度インフラである、二〇一九年から官民一体となって取り組んでおります建設キャリアアップシステム、CCUSの更なる活用に向けた具体的な方向性も示されたものと理解をしているところであります。
 CCUSにつきましては、二〇二四年四月現在で技能者登録数は百四十二万人、事業者登録数は二十六万社と着実に前進をし、建設技能者の能力評価基準につきましても四十二分野で策定をされ、今後様々な施策を推進する上での基盤が相当程度整備をされたものと認識をしているところであります。
 一方、建設業法等の改正が行われた場合であっても、実効性が確保されなければ十分な効果は得られないと考えております。著しく低い労務費の基準となる標準労務費の作成については、早期に相当程度の工種、職種を対象とする必要があり、労務単価の水準につきましては、働き方改革関連法の対応を含め、週休二日を基準として、現場従事者の処遇改善が十分に図ることができる金額設定が必要であります。
 著しく低い労務費等による契約禁止の実効性確保については、重層下請構造となっている建設業の元請、下請関係では受注側である下請企業は取引関係上非常に弱い立場に置かれていることを踏まえ、下請現場従事者に不利益やしわ寄せがされないよう特段の配慮が必要であります。
 そして、一番重要な事項は、標準労務費が確保され、それが賃金原資として適切な賃金水準が現場従事者の賃金としてしっかり行き渡る、機能する仕組みづくりであります。そのために改正案では、労働者の処遇確保について、国が建設業者の取組状況を調査、公表、中建審に報告をするということにされておりますので、特に適正な賃金が個々の現場従事者に対してしっかりと支払われているかどうかの調査、公表等の徹底が極めて重要であります。
 既に公共工事におきましては入契法、品確法等で担い手確保、処遇改善の取組が進められており、今回の入契法改正案ではその取組を更に加速化、牽引する内容であると認識をしておりますが、国だけではなく地方自治体においても取組の周知、強化が必要であります。
 今回の改正により、民間工事を含めた建設工事の請負契約における新しいルール化が図られ、標準労務費、適正な工期等が現場施工を担う下請現場従事者まで確保されることは、現場従事者の賃金単価の引上げ、処遇改善、担い手確保、育成、働き方改革対応に必要な施策として極めて画期的なことであり、実効性と迅速性が極めて重要なポイントであると認識をしております。
 特に、建設Gメンの体制につきましては七十二人から百三十五人と倍増されましたが、一方で、法律公布後一年六か月を超えない範囲で全て施行するとしていることに加え、建設業の産業規模を踏まえますと多少心もとない感じもしているところであります。このため、適切な効果的な調査、指導、勧告などを実施するためには、来年度以降更なる拡充が求められるのではないか、そのように思っている次第であります。
 また、建設業法等の改正は五年前にも行われており、様々な成果があったと承知をしておりますが、今回は前回と同等以上となる改正であり、建設業が新たなフェーズに移行すると受け止めているところであります。こうしたことから、より実効性を高めていくためには、五年前の法改正時を超える徹底的な周知が必要であります。
 加えて、若年技能者を始めとした担い手確保においては、処遇改善を図るだけでは必ずしも十分ではなく、建設業への就業の入口部分である教育機関との連携やその意識改革、建設業の魅力を伝えるためのキャリア教育の充実を図るとともに、就業後においては、定着率向上を図るため、資格取得支援や職業訓練の実施など、就業前と就業後の切れ目のない体系的な取組の強化をすべきと考えております。
 こうした様々な取組を展開し、丁寧なフォローアップをしていただいた上で適切な効果が得られないようであれば、五年後の見直し規定に基づき、見直しの際は必要に応じて何らかの規制措置の導入についても選択肢としてしなければならないのではないか、そのように思っているところであります。
 基幹産業である建設業において建設技能者の減少に歯止めが掛からなければ、社会資本の維持管理、更新のみならず、頻発化、激甚化している自然災害の復旧や復興も困難となり、国民生活に甚大な影響を及ぼすことが懸念されます。他産業との人材獲得競争はより一層激化をしており、屋外作業が基本の建設業において、他産業を上回る処遇の実現はまさに待ったなしであります。また、状況が改善されなければ、建設分野における外国人労働者の確保にも悪影響を及ぼしかねない、そのように憂慮をしているところであります。
 今回の法改正を契機として、魅力ある建設産業を実現をするために、私どもとしましても、引き続き先生方の御支援を賜りながら、国土交通省や業界団体とも連携を密に、組織の総力を挙げて取り組んでまいりたい、そのように考えているところであります。
 最後に、改正法案の早期成立、施行を期待するとともに、未来の建設業のためにありとあらゆる施策を総動員していただくことをお願いを申し上げまして、発言を終わらせていただきます。
 ありがとうございました。

発言情報

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発言者: 小倉範之

speaker_id: 22161

日付: 2024-06-04

院: 参議院

会議名: 国土交通委員会