中北浩爾の発言 (政治改革に関する特別委員会)

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○参考人(中北浩爾君) 中央大学法学部の中北でございます。
 本日は、本委員会にて発言する機会を賜りまして、心より感謝申し上げます。日本政治を研究してきた立場から、御推薦いただいた日本維新の会を含めて、いかなる会派にもそんたくせず、自由に意見を述べさせていただきたいと存じます。
 政治資金規正法の第二条には、基本理念として、政治資金が民主政治の健全な発展を希求して拠出される国民の浄財であると書かれています。そして、いやしくも国民の疑念を招くことのないようにと述べられております。派閥によるパーティー収入の収支報告書への不記載、いわゆる裏金化によって深刻な政治不信を生み出した自由民主党におかれましては、深く反省し、改革の先頭に立っていただきたいと存じます。
 政治と金の問題に対する国民の批判は非常に強く、メディア、あるいは部分的には国会でも、政治資金が浄財ではなく、さも汚いものであるかのような前提で議論がなされていることに、私は危惧の念を抱かざるを得ません。献金を行ったりパーティーに出席したりすることは、党員になったり選挙でボランティアを行ったりすることと同じく、国民の政治参加の有力な手段です。これらについて制限を加え過ぎることは、国民の政治参加を妨げかねません。
 政治資金制度改革には、守りの改革と攻めの改革の二つがあると考えます。守りの改革は、民主主義に打撃を与えない、汚職などを起こさないためのものです。それに対して、攻めの改革は、お金を使って民主主義を健全に発展させるためのものです。現在、日本では、投票率の低下など、有権者の政治離れが深刻です。こうした状況を打破するためには、個人献金を促進して、有権者が政治の観客から主権者へと意識を大きく変えていくことが必要です。有権者が身銭を切って応援する、言わば政党や政治家の推し活をするようになること、逆に言えば、政党や政治家が有権者に心から応援してもらえる存在になることが民主主義を活性化する上で大切です。
 多くの野党が企業・団体献金の廃止を求めていますが、データを見ると、企業・団体献金の総額は、政治資金規正法が改正され制限が強化されたことを受けて、一九九四年の五百七十七億円から二〇二二年には八十七億円まで大幅に減少しています。その分、パーティー収入は増えていますが、同じ期間に百四十一億円から百八十一億円に増加するにとどまっています。それでは個人献金が増えているのかというと、そうではなく、四百四億円から二百七十五億円に落ち込んでいます。
 結局、一九九四年の政治改革で導入された、現在、年間三百十五億円程度の政党交付金が、受取を拒否している共産党を除いて各政党の財政を支えています。自由民主党本部を例に取ると、国民政治協会を経由する企業・団体献金は、同じ時期、七十二億円から二十五億円に減少する一方、政党交付金が百六十億円と、現在、収入の三分の二近くを占めています。立憲民主党や維新は、更に政党交付金の依存度が高くなっています。
 そもそも、市民社会の中から生まれた政党が国家からの資金援助などに依存することになっていることを指して、政治学ではカルテル政党という概念が使われます。党員数が減少するなど、政党が市民社会との結び付きを希薄化させていることは、決して健全ではありません。こうした状況を背景に、ポピュリズムが台頭しているという主張が政治学ではなされています。ポピュリズムは反エリート主義と反多元主義を特徴としますが、普通の人々の擁護者として、既成政党に批判を加え、インターネットなどを通じて有権者から直接支持を調達するというスタイルを取ります。
 企業・団体献金や企業、団体によるパーティー券の購入を禁止することは、一定の理由があり、反対ではございませんが、それをただただ行うだけではカルテル政党化がますます進んでまいります。したがって、自民党の修正案の第十六条に検討課題として盛り込まれ、また立憲や維新が主張している、個人献金を促進するための税額控除率の拡大など、これらを実現していただきたいと思います。
 政治参加の観点から政治資金制度改革が論じられてこなかったため、匿名性の重要性が国民の間では理解されていません。個人献金を行う際、憲法第十九条の思想、信条の自由が侵されてはなりません。憲法第十五条、ここに秘密投票を保障しているということも同じ趣旨です。投票箱が透明ではないのと同じく、一定額までの献金やパーティー券の購入は、氏名、住所などが公表されないようにしなければなりません。最近、透明化が金科玉条のように語られますが、行き過ぎれば党費を支払っている党員の名簿を公開せよということになりかねず、とても危険です。
 また、金の掛からない政治を優先度の高い目標にすることも正しくありません。大学での研究もメディアでの取材も、お金がなければ優れた成果は上がりません。政治についても、国政報告を作成したり、有権者と接するために事務所と秘書を置いたり、政策の調査を行ったり、様々、民主主義を機能させる上では一定のコストが掛かります。もちろん、ワイズスペンディングは大切ですが、どのぐらい政治資金が必要なのか、つまびらかに明らかにし、議論してはいかがでございましょうか。皆様は、代議制民主主義の下での選良です。国会議員は、漠然とした国民感情におもねるのではなく、思うところを正々堂々と述べ、有権者と対話することが大切だと考えます。
 お金をうまく使えば、民主主義をより良くすることもできます。例えば女性の国会議員は、衆議院が一〇・九%、参議院で二三・一%、人口の半分が女性であることを考えると非常に少ないと言わざるを得ません。今月十二日に世界経済フォーラムが発表したジェンダーギャップ指数で、日本は百四十六か国中百十八位、そのうち政治分野は百十三位です。平成の政治改革の最大の問題は、ジェンダー平等の視点が全くなかったことであります。こうした状況を大きく変えるために、政党交付金の議員数割の半分を女性議員数割で配分してはいかがでございますでしょうか。
 以上、攻めの改革という発想が欠けているのではないかということを指摘させていただきましたが、攻めの改革に転じるためには、当面、守りの改革を徹底的に行わなければなりません。幾つかに絞って述べさせていただきます。
 第一に、今回の自民党の派閥のパーティー券の裏金化を受けて最も重要なのは、パーティーの全面禁止や公開基準額の引下げではなく、収支報告書に関する厳罰化です。リアリズムの立場に立つ自民党は、安全保障政策では核を含む抑止力を重視し、犯罪についても抑止効果を持つとして死刑制度を存続させてきました。しからば、今回の改革でもそうした姿勢を貫き、これ以上、政治と金の問題で国政が停滞しないよう、抑止力が十分働くような制度を構築していただければと存じます。
 そのための最大の手段が、会計責任者だけではなく議員自身も責任を負う連座制的な仕組みの導入です。公明党が提案し自民党案に取り入れられた確認書方式は、確認書を交付しなかった場合、若しくは確認をしないで確認書を交付した場合には、五十万円以下の罰金が科され、公民権停止の対象となるという内容です。しかし、衆議院本会議の採決の前の討論でも、立憲民主党の西村智奈美議員から、会計責任者の説明に間違いがあった、確認したが気付かなかったなどと、これまで同様、言い逃れの余地を残していると批判がなされております。参議院での審議を通じて是非こうした疑問を徹底的に払拭していただきたいと思います。
 収支報告書に関する厳罰化と並ぶ改革の第二のポイントは、政党から議員個人に支給される政策活動費です。安倍派がパーティー収入を裏金化したのは五年間で六億円ですが、自民党は直近五年間で約六十六億円の政策活動費を支出し、これが使途公表義務のない事実上の裏金化しています。報道によると、不記載を問われたある安倍派議員は政策活動費だと思ったと説明しています。そうである以上、政策活動費にメスを入れるのは当然です。五十万円超、項目別の記載という自民党案が、維新の尽力によって修正されたことは一定程度評価できます。
 しかし、この修正案はかなりずさんです。第十四条と第十五条は、政策活動費の毎年の上限金額を定める、十年後に年月を入れた明細書や領収書等を公開する、第三者機関を設置してその監査を受けるといったことを定めていますが、それ以外の具体的な内容は今後の検討課題とされています。釣った魚に餌をやらないは世の常です。なぜ細部を十分に詰めずに合意してしまったのか、残念でなりません。今からでも遅くありませんので、いつまでに結論を得るのか、期限だけでも法律に明記すべきです。
 政策活動費の具体的な内容については、少なくとも以下の内容を盛り込むべきだと考えます。一、毎年の上限額を、維新の当初の案のように、政党交付金の一%と五千万円を共に超えない範囲にすること、二、明細書や領収等の写しを第三者機関に毎年提出し、そこで十分な監査を行い、公開までに保管をすること、三、全面的な公開を原則とし、黒塗り範囲は必要最小限にとどめ、その基準を明確にすること、以上の三点です。
 使途が公表されない事実上の裏金としては、政党の政策活動費以外にも政府の官房機密費、これが年間十二億円あります。中国新聞によると、ある官房長官が国政選挙の候補者の選挙応援に行った際、陣中見舞いとして百万円を機密費から手渡したと証言をいたしました。国の事務又は事業を円滑かつ効果的に遂行するという目的から外れ、選挙での政党間の公正な競争を妨げる極めて不適切な支出です。政策活動費と同様に、事後の使途公開、第三者機関によるチェックなどの仕組みが必要ではないでしょうか。
 設置される予定の第三者機関の役割についても若干述べさせていただきます。
 一部で主張されるような立入検査を実施したり、違反行為に課徴金などの行政罰を科したりする強力な権限を持つ第三者機関の設置は必ずしも望ましくなく、当面、政策活動費の監査を中心に限定的な役割を果たすべきだと考えます。そもそも政党は党員が自主的に結成する自発的結社であり、法律にのっとった適切な政治資金の取扱いを自発的に行うべきです。各政党は自らチェックする仕組みを内部に構築して、それを有権者に説明すべきです。
 加えて、研究者の立場からお願いを述べさせていただきます。
 自民党案では官報又は都道府県の公報による収支報告書の要旨の公表義務が削除されているという指摘が、衆議院の政治改革特別委員会で共産党の塩川鉄也氏からなされています。収支報告書の公表期限の三年を超えて我々が調査を行う際は要旨に頼らざるを得ません。二〇〇七年の法改正で収支報告書をインターネットで公表する場合には要旨の公表義務がなくなり、都道府県選管の業務負担を軽減するという事情もあるようですが、是非この点改善をお願いしたいと思います。
 最後になりますが、参議院におかれましては、良識の府、熟議の府として、法案の修正を含め、徹底的に審議を行っていただきたいと思います。
 以上で私の意見陳述とさせていただきます。御清聴どうもありがとうございました。

発言情報

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発言者: 中北浩爾

speaker_id: 30854

日付: 2024-06-14

院: 参議院

会議名: 政治改革に関する特別委員会