東健二郎の発言 (総務委員会)

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○参考人(東健二郎君) 本日は、貴重な機会をいただきまして、ありがとうございます。一般社団法人コード・フォー・ジャパンの東と申します。
 資料、お手元に配付いただきまして、ちょっと大部でございますが、順を追って御説明させていただきますけれども、コード・フォー・ジャパンは、東日本大震災の際の活動を契機としまして、二〇一三年に設立されました非営利型の一般社団法人であります。いわゆるシビックテック、市民を始め多様な主体が連携し、テクノロジーを活用して地域課題解決を行う活動をしております。その際、行政は重要なプレーヤーでありまして、その機能強化あるいは職員の能力向上としてのDXの推進や住民参加型のデジタルプラットフォームの活用を進めているものです。
 また、もう一つ、滋賀県日野町で政策参与を務めさせていただいております。日野町は、人口二万人、職員の数は二百三十人ほどの小さな団体でありまして、古くは戦国武将蒲生氏郷の生まれた町ですとか、あるいは近江商人の一つであります近江日野商人の町としても知られておりますが、また、司馬遼太郎の「街道をゆく」においてもその町並みが記されているところであります。その日野町におきまして、二〇二一年度より地方公務員法における参与として、自治体DXへの対応と業務効率の改善を図ることを職務としております。
 以上のような経歴から、本日お話しいたしますのは、大小様々な自治体の現場の実情や自治体DXと呼ばれる言葉が捉えるべき事柄にも言及しながら、今般の地方自治法の改正を契機として議論が更に進むことを期待いたしまして、課題や可能性について私個人の立場として意見を述べさせていただきます。
 時間も限られておりますので、資料、お手数ですが、一番最後に意見のまとめを書いておりますので、一番最後、十七ページをお開きいただけますでしょうか。
 一番最後に意見陳述のまとめとして二つありますけれども、一つ目は、自治体DXをどのようなものとして考えるという観点であります。
 それは、私なりに考えますと、我が国が目指すデジタル社会の実現、発展を持続的に可能にするための仕組み、これはアーキテクチャーと言いますが、そういうふうに言えるかと思います。すなわち、それは地方分権改革で目指してきました自治体の自律性の確保、より言えば、そうした自律性を強めた領域における意思決定メカニズムに着目するというものであります。こうした意味から、今般の改正案は重要な意味を持つものであります。
 まず、それは、第十一章を新設しまして、情報システムの有効利用、あるいは自治体間や国と協力した最適化、あるいはセキュリティーの確保が地方自治において重要な要素であるということを明示したことであります。
 情報システムは、これまでから自治体において活用されてきており、行政サービスの大量処理や、あるいは高度化の要請に応じて順次整備されてきたものでありますが、したがいまして、役所の仕事の多くは様々な情報システムが規定しているものであります。その意味では、第二百四十四条の五第一項は、確認的な規定であることも確かでありますけれども、住民サービスの向上や行政組織の業務効率あるいは職員の負担軽減など、これらを含めた最適化といった、住民、行政組織双方の意味で重要な役割を持つ情報システムと、同条第二項に規定する、それを本来あるべき機能にあらしめるところのセキュリティーの確保が、実体としても自治体の根幹の一つであることを示していると言えると思います。
 そして、その第二項のサイバーセキュリティーの確保、あるいは個人情報の保護といった必要な措置の義務付けがされております。
 前項で政府部門がネットワーク上で相互接続され、今後もそれが進展することから、どこかに脆弱な状態をつくらないという意味で当然の措置でありますが、こうした措置は、自治体がそうした自ら主体的にセキュリティーのレベルを選び取ること、すなわち、自治体の根幹である要素は自ら決めるということが自律的な存在であります自治体に求められることであるということを明確にしたものであるということも理解できます。そして、情報システムの最適化、セキュリティーの確保といった取組に対する支援は、国の配慮責任として考えられるものであります。この配慮責任については後ほど少し触れたいと思います。
 二つ目は、次に、国と地方の役割分担に関することであります。
 この地方分権改革の取組は、いわゆる平成デモクラシーと呼ばれる統治機構改革と相まって整備されてきたものでありまして、そこに言葉として自治体DXが合流しているのが現在地であると理解しております。その中で、地方自治法でありますとか、その他個別法の在り方も含めた全体としての秩序がつくられてきているものだと思います。この点で、補充的な指示についても、国と地方の役割分担として、まず法によって地域における事務を自治体がつかさどり、国の関与と争訟の仕組み、言わば正反合で統合されてきたものの中で極めて例外的な事象での関与を認めるものとして理解しているものです。
 その上で、今般出されております修正案については、国会での平時の議論を含めたこうした法の運用をこれまで以上に蓄積しなければならないという意味として、修正案により国会への報告の定めが入ったことも大きなことだと思っております。
 もう一つの観点は、これまでの審議の中でも幾多に登場しておりますコミュニケーションに関することであります。なぜそれが重要なのかと考えた際に、地方自治法の具現化を成す主体として地域コミュニティーですとか、ここでは政府という言い方しますが、地方政府、中央政府、それぞれがどのようなコミュニケーションをするかという観点になろうかと思っております。
 先ほどの情報システムについても、あるいは関与の局面についてもそうですが、多機関が連携する局面を整序するものでありまして、調整と同時に相互理解がその根幹にあると思います。また、住民の暮らしを支える地域コミュニティーの維持、地域課題の解決には多様な主体が連携することにも多機関連携が既に数多く見られているところであります。
 ただし、これらを一挙に解決するような銀の弾丸はありません。調整と相互理解を粘り強く続けることそのものが重要であり、具体的には人や、あるいは機能としてのコーディネーターの振る舞いが重要であると考えます。今回の改正案、修正案においてそうしたコーディネーターを中心に考えてみたときに、これまでの諸制度との連携も含めて、これをうまく乗りこなす知恵といったようなものが各主体に求められるんではないかというふうに考えるものであります。
 そうした観点で、とりわけ第二百六十条の四十九第二項に規定されております市町村長による指定をどう見るかというのは一つ問題になるかと思います。
 指定地域共同活動団体が地域において重要な役割を果たすことを想定しているものでありますが、そもそも地域コミュニティーの活動や組織は多様であり、それを一律に捉え平準化につながるであるとか、指定をトリガーとして地域における各主体間の関係性が変化することへの懸念があると思います。これらについては、規定としては市町村長が指定するものになりますけれども、その指定には、そもそも地域コミュニティーへのリスペクトと言われるようなものが必要だと考えるものになります。
 以上がまとめでありますが、資料を前にお手数ですが戻っていただきまして、四ページにお戻りください。
 冒頭から申し上げましたデジタルトランスフォーメーションのポイントとして、よくデジタルツールを入れることに着目する議論がどうしても多いんですが、私が考えますのはそうではなく、いかに行政サービスを構築するかその手法をアップデートすること、資料右側ありますが、そして同時に重要なこととして、組織の在り方の変革、この両面から成るということを指摘したいと思います。
 次のページになります。
 そうしたときに、組織の在り方ということで考えた際に、これまでの地方分権改革とのつながりが見えてくるわけであります。これを、改革の方針が具体的な制度変革につながっていくプロセスという意味で、今後、土着化というふうに表現いたしますが、地方分権改革を始めとするいわゆる平成デモクラシーの文脈で、集権化と分権化のベクトルが相まっての土着化の過程で不整合が生じ、今般の役割分担の再調整が求められているというふうに理解しています。
 また、右側ですが、自治体DXという言葉が生まれてきた文脈も、地方分権改革以降進められてきました自律性を強めた自治体における意思決定メカニズム、これが現在自治体DXで言われている標準化でありますとかデータ連携等、本来は地方分権改革が言われてきた従前から取り組むべき事柄であったというふうに理解をしております。
 次のページになります。
 そうしたときに、組織の在り方あるいはコミュニケーションの話として、自治体DXをめぐって国と自治体がどうコミュニケーションを取ってきたか、それは地方分権改革における提案募集方式の中に見て取ることができます。
 左側でありますが、自治体DXという言葉が登場する前は、国は、自治事務だから地方の責任でやるべきという物言いをよくすることがありました。今もやや見れることでありますけれども、その際、とりわけ情報システムに関わる事柄で、国の配慮責任という考え方が示され、言わば地方分権の理念を具体化したり、あるいは硬直的な議論になることへの歯止めとして機能するようになっていきます。
 近年の提案の回答ぶりを見ますと、どのような事務であるべきかを考える、あるいは情報システムであれば最適化という考え方になりますが、そうした考え方に基づいて、国、地方がかみ合った議論になりつつあることを注目しております。
 ただし、解決策そのものが十分なのかはもちろんありますけれども、コミュニケーションが配慮責任という考え方が自治体DXの中に組み込まれているだろうということが重要であります。
 続いて、七ページであります。
 そうした今回の改正の中でも、自治体間で協力して情報システムの利用の最適を図るということが規定されておりますが、これまで自治体で取り組んできたことでありますと、例えばシステムの共同調達が挙げられます。
 私は、大阪府の調達に係る審査会の会長を務めておりますし、また同時に、府が共同調達した外部人材のアドバイザーとして府内の市町村を支援しておりますが、これをなぜ大阪府という都道府県が行うかということでありますが、それは市町村の体制の問題ということにとどまらず、大阪府自身にも資する取組だからということであります。ここでも配慮責任という言い方をするとすれば、情けは人のためならずではありませんけれども、責任を示すことは、その相手方との関係ではあくまで対等、平等であること、情報システムであれば全体最適という言い方になろうかと思いますが、双方にメリットがあるという点は改めて指摘したいと思います。
 続いて、八ページから十ページにかけてでありますが、組織の在り方としてお話を続けますと、日野町の取組として、新型コロナウイルスのワクチン集団接種の事務に関して調査研究を大学と共同で実施いたしました。これは対応の是非を検証するというよりも、今後も起こり得る不確実な状況に対して我々がいかに適応できるか、そのために、組織の在り方を考えるものとして十個の洞察と三つの提言をまとめたものであります。
 ポイントだけお話ししますと、お互い手探りの状況にならざるを得ない局面では、お互いに抱く不確実性、これは報告書では恐怖と言っておりますが、それを引き受け、柔軟な意思決定を行ったり、そのための平常時からの組織としての受容度を広げることの重要性が指摘できると思います。
 飛ばして、十一ページになりますけれども、そう考えたときに、現在進行します自治体DXの取組について、自治体職員がどのように受け止めているかということが注意深く見る必要があると思います。
 研究メンバーを務めました日本都市センターによる自治体職員向けのアンケート結果からは、DXの方針など総論はおおむね賛同を得られているものの、職位別に細かく見ますと、デジタル化あるいはDXの受け止めが異なる結果となっております。
 また、デジタル化を効率化の手段として用い、特に住民参加に対する意識が弱いということが気になります。これは、自治体DXの取組がスタートしまして数年になりますけれども、その土着化が想定しているところと異なる帰結になるのではないかということが現時点で推測されるところでありまして、対応が必要ではないかと考えているところであります。
 十二ページ、同時に、異なる土着化の帰結を生む可能性も指摘したいと思います。
 冒頭申し上げましたシビックテックは、圧倒的なスピード感と評価されました行政サービスの構築を自治体や国と連携するだけでなく、サービスの利用者であります市民自らが参加して改善する形を示しました。情報システムの規定の中にこうした運用を読み込み、変革していく自治体が現れてくることを期待するものであります。
 また、十三ページでありますが、コロナ禍を経てデジタルを活用した住民参加も進んでまいりました。デジタルプラットフォームの活用も、情報システムの規定から、単独であるというわけではなく、むしろ広域的あるいはテーマ共通で参加の仕組みを構築する視点が示唆されるのではないでしょうか。自治体は、ともすれば我先に、あるいは新しいものを独自に設置したがるものでありますが、住民参加の点ではそもそもどのような参加の仕組みが適切なのか、それを考える必要があろうかと思います。
 十四ページになります。
 こうしたことは、いわゆるデジタル社会における地方自治の構想としては、まとめますと、サービスを市民とともにつくり、自治体間で公開、共有する関係をつくる。その際に、国あるいは広域自治体が配慮責任を持って取り組むということが新たな土着化として構想できないかというものになります。
 最後、十五ページ、十六ページでありますが、日野町において取り組んでいるコミュニティーに関することであります。
 多くの自治体同様、自治会、町内会の皆さんと地域の在り方を考える場を持ち、一緒になって地域づくりをしています。また、地域において農村RMOの取組を進める動きが出ているほか、今後は地域における様々な主体と連携した重層的支援体制の整備にも取り組むこととしています。
 こうした動きを参与として拝見しているときに、よく日野町の堀江町長が話す言葉で印象的なものがあります。御紹介しますと、日野の町は、地域が先輩、役場が後輩です。これまで地域の先輩方の知恵として役場が生まれ、町民さんを守る取組を進めてきたという意識を持っている。地域における様々な課題が生じている中で、今後は地域において果たせる役場の出番が一層重要になる。そこにおいては地域へのリスペクトがなければならない。
 地域を支援する制度は、各省も用意をし、この度、自治法においても市町村が果たすべき出番をつくっていると言えます。しかし、ここまでお話ししたことと同様に、それぞれの主体に対するリスペクトを持ってコミュニケーションを取ることの重要性が自治法において更に明確になる、あるいはそのような運用を蓄積していく必要があるのではないかと考えるものであります。
 以上になります。御清聴ありがとうございました。

発言情報

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発言者: 東健二郎

speaker_id: 11214

日付: 2024-06-11

院: 参議院

会議名: 総務委員会