福井裕輝の発言 (内閣委員会)
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○参考人(福井裕輝君) 福井と申します。精神科医の福井と申します。
精神科医でもいろいろあるんですけれども、司法精神医学といって、法律と医学との境界のような分野で長年医者としてやっております。
本日、そうですね、主として、医者側からの観点、それから治療を含めたですね、あとは社会復帰支援というようなことについてお話をさせていただきたいと思います。
ここに簡単に、何か分からないということもあるので経歴が載っていますけれども、これ長々と読んでも余り意味がないと思うので、御参考に目を通していただければと思います。
職歴ですけれども、法務省ないし厚生労働省の機関で、司法精神医学研究部というようなところで純粋な研究職というのをやっていました。その後、独立して現在に至っているという状況です。
ここに簡単に活動の流れというふうに書いてありますけれども、これ全部をどうこうしようというわけではなくて、司法精神医学の中にもいろいろあって、私が携わっているのは、性犯罪加害者、それからストーカーの加害者、あとクレプトマニアといって、窃盗症というふうにもいいますけれども、窃盗がやめられないというような人々ですね、そういった人々の研究あるいは治療というようなことを行って現在に至っています。
ここにホームページというのを掲載させていただきましたけれども、しばしば、加害者治療というようなことを言うと、その前にもっと被害者のカウンセリングとか、そういう被害者支援が大事じゃないかというような指摘を受けて、それはもっともな話でして、私も元々は被害者の治療を一生懸命やっていたという時期があるんですけれども、そういう誤解を生まないためにあえて挙げておきますけれども、理念は、被害者を生まないために加害者に対して治療等を行う、それによって犯罪を防ごうというような意図で現在まで行ってきています。
この後、医学的な概念とか、そういうことをごく簡単にお伝えしたいと思います。
子供に対する関心がある者は、小児性愛障害というきちっとした医学診断名が存在しています。
次お願いします。
小児性愛は何なのかということですけれども、狭い意味ですね、狭義の、ペドフィリアといいますけれども、については、十二歳未満を対象としたものというのが医学の定義上です。ただ、それだけでは臨床上も、様々な子供に対する防止とか、そういうことができないということで、エフェボフィリアという概念がありますけれども、思春期、十八歳未満の子供に対してのそういう性的嗜好がある者についても同様に、医学的には同様に扱い、同様に治療したらいいということが世界的なコンセンサスとなっています。
下に参りたいと思いますけれども、小児性愛障害でも大きく二つの種類があります。
純粋型というのは、先天的に子供に興味はあって、成人してもずっと子供にしか、変わらない、まあ端的に言うと死ぬまでずうっとその嗜好が変わらない者ですね。LGBTQという概念がありますけれども、それとおおむねというか、基本的に同じと考えていただいていいと思います。何か、それを治療とか更生によってそういった子供に対する関心を変えようと思っても、変わるということは望むことはできないというふうに思ってもらった方がいいと思います。
あとは、非純粋型といって、非純粋ということが意味しているのは、成人にも興味があるんだけれども、様々な二次的要因、ストレスであるとかパートナーとの問題であるとかというようなところから子供にも関心を持つようになるというようなケースですね。教職員その他のこういった職業の方について言うのであれば、元来子供に対しての関心はなくても、接触を繰り返しているうちにだんだんと子供に魅力を感じたりという、性的関心を持つようになるというようなこともこういった非純粋型の方に含まれるということになります。
次に参りたいと思います。
統計なんですけれども、様々な基準があって、統計の取り方によって値が上下するんですけれども、場合によっては二〇%とかという値も出ますけれども、おおむね五%、人口の五%小児性愛が存在するというのが、これも世界的なコンセンサスです。男性の加害者が非常に多いですね、八〇%、女性が二〇%ということです。被害者については同数程度。つまり、男性が男性に加害を加えるというような状況も多数あるために、被害としては同数程度になるということです。
下に書いてありますけれども、小児性愛の八割は子供に接近するというふうに言われています。
次に参ります。
それは様々、教職員、塾講師、あとは児童養護施設内での性的虐待、あとは、震災等が起きるとボランティア活動というふうに称してその震災の場に行って、例えばごろ寝のような状況で子供にわいせつ行為をするというようなこともよく起きているというのが私の臨床上の経験です。このような形で多くが子供に接近するということですね。
教職員の一割は小児性愛だというふうに書いてありますけれども、これまでの臨床の印象ですけれども、要は、人口の五%が子供に関心があるんだけれども、それがゆえにこういった仕事を選ぶわけですね。なので、我々のところに来ている患者でも、そのほとんどがいろんな子供に接する仕事を転々として、で、いよいよ事件化してとか、あと三度目とか、そのような形で来ます。なので、この一割というのは大げさでも何でもなくて、場合によっては二割とかいてもおかしくはないんではないかというのが私の印象です。
次に参ります。
これは、賛成、反対、いろいろ議論が出るところだと思いますけれども、海外でのアベルスクリーニングというものです。アメリカの州によっては用いている、全てではないですけれども、用いているもので、要は、教員を採用する前に小児性愛の嗜好があるのかないのかということを調べるテストですね。これは本人がうそついたら分からないんじゃないかということをよく指摘されるんですけれども、言ってみると、うそ発見器とかですね、あとは、こう、うそ発見器のようなものを付けつつ、体の生体情報といいますけれども、そういうものを測ったり、あるいは、整合性が合わない回答をした場合にはどんどんどんどん問題が増えていくというような形でその者が性的嗜好があるのかないのかということを調べて、そこで陽性というか、その小児性愛の傾向があるとなったら採用しないというようなことを行っているところもあるということで、一応御紹介しておきたいなと。
ただ、これについては、賛成、反対があるというふうに申し上げましたけれども、一番中心となるところは、性的嗜好と加害行動に至るところには一線引く必要があるんではないかということですね。つまり、子供に対する関心があっても、一生そういった具体的な加害行動はせずに老いていく小児性愛者という者が多数いて、そういう者を採用時点から排除するというか、そういうことは何か様々な問題があるんではないかというようなことは言われています。
ただ、私の臨床的な印象でいえば、日本においてもこういったことはやってもいいんではないかと。当然、テストを作る上では慎重に作る必要がありますけれども、子供を守るという意味においてはこういうものがあってもいいんではないかというのは思っています。ただ、これは、法律どうこうということは十分に検討した上ではない、あくまで私の印象のようなものですね。
次に参りたいと思います。
少し、地方自治体の教育委員会等から依頼を受けて、教職員に対してスクリーニングをしたいということでやったことがあるので、簡単に紹介しておきました。まあ中身は読んでいただければいいと思います。
シナリオ問題とか、認知のゆがみというものがあると言われていて、そういうものをチェックする、あるいは性加害ですね、そこに至るトリガーのようなものをチェックするというようなことですね、それらを全部やっていただいた上で、カットオフ値から、まあ二十五点以上であれば御相談くださいといって、我々の機関に治療につながってもらうというような試みを行っています。
これについては、先ほどのアベルスクリーニングとは違って、あくまで本人が自主的にこちらに治療に相談に来ると。で、その情報については、教育委員会ないし県とかそのほかのところには情報は流さない、あくまで守秘義務の範囲内をきっちり守った上で治療等を行うというようなことでやっています。それらによって、我々の機関で治療を受けているという者もそれなりの数おります。
次に参りたいと思います。
再犯防止のためにどういうふうにやっていったらいいのかということについて若干意見を申し上げたいですけれども、これ、昨年のイギリスの政府が出した統計ですね。
イギリス版DBS、ちなみに、先ほど内田先生もおっしゃっていましたが、これ、DBSというのは性犯罪に限らないので、いろんな様々な罪種が混じっているデータですけれども、成人の再犯率、二四・二から二四%、未成年で三四・一から三一・一%、全体で二四・七から二四・三というふうになっています。この統計の結論としては、効果が見られているというような記載がなされているんですけれども、そこまで少なくとも劇的に減っているとか、そういうことは期待できないんではないかというふうにこの数値などを見ると思っています。
次に参りたいと思います。
というようなことで、よく日本版DBSについてどう考えるかというようなことを質問等されることがあるんですけれども、ほとんどか、要はこれ、単独ではほとんどか全く効果がないんではないかというのが私の印象です。
イギリスにおいても、このDBSだけをやっているわけではなくて、様々な治療とか社会復帰支援をしているということですね。ここにつらつらつらと書いてありますけれども、イギリスの治療というと、刑務所内でもちろんやりますけれども、社会内での治療、あとは、インターネット関連の例えば児童ポルノの所持とかそういったものに関わる者を対象とした治療のプログラムとか、そういうことの実践。
それから、次に参りたいと思いますけれども、社会復帰支援策として、CoSAというふうに書いてありますけれども、地域のボランティアが主導となって支援をすると。あとはMAPPAというのがありますけれども、これ警察、保護観察、刑務所、その他、社会福祉というのは医療も含めてですね、そういったものが協力をしながらリスク評価とか管理計画を策定して進めていくという仕組みですとか、あとはIOMというのがありますけれども、加害者の生活の各側面、住宅を用意するとか職業訓練して就労を支援するとか、あと本人の健康を助けるとか、そういったような包括的なサポートをしていると。
つまり、イギリス、もちろんDBSというのは十年以上前からやっていますけれども、それより前からこういった加害者治療、それから社会復帰支援というものがあって、そこにDBSというものが乗っかってきたというようなふうに私は捉えています。なので、日本においてはまだまだこの辺が足りないというふうに思っています。
少し日本の状況をお伝えしたいと思います。
次に、治療とは何なのかということをお伝えしたいと思いますけれども、海外においては治療のアルゴリズムは基本的にでき上がっています。左から軽度、中度、重度というふうになっていますけれども、まず併存障害というと、例えば、何にしろ、統合失調症、うつ病、あるいは発達障害とかですね、知的障害とか、パーソナリティー障害と、何か別の診断が付くような病気があるんであればそれを治療しなさいということですね。
そのほかに性犯罪加害者に対する治療としては、認知行動療法というカウンセリングの一種と、あとは、下はSSRIとかあるいはMPA、CPAと書いてありますけれども、薬物療法ですね。その中でも、特にホルモン療法と呼ばれる治療ですね。簡単に言うと、男性ホルモンを抑制して性欲を下げる、ないし全くないところまで持っていくというようなことによって犯罪を防ごうということです。
次に参りたいと思います。余り時間がないので、早めにまとめたいと思いますけれども。
ところが、余りこれは世間に知られていないというところがあるんですけれども、日本においては性犯罪者の治療というのは医療として認められていません。厚生労働省が保険医療の対象としていないということですね。なので、仮に小児性愛者が、自分は子供に性的関心があって刑務所に何度も出たり入ったりしていると、治してほしいといってどこかクリニック、病院を受診しても、治療の対象ではないといって門前払いを食らうというのが日本の現状ということです。
なので、下の表のところにバツというふうに書いてありますけれども、この認知行動療法ないし薬物療法というのは日本では医療として行えないというような状況です。我々のところでは自費という形でやらせていただいています。
もうあと一、二分で終わらせます。済みません。
そのようなことで、世界に四十年遅れているというようなことをずっと言っているんですけれども、この包括的な支援策ということを少し言っておきたいと思います。
というのも、ほかの先生方もおっしゃっていますけれども、この本制度を起点にしてというようなことを言われているので、今後必要となるものはこういうものではないかというようなふうに思います。
まず、何かあったら、その者がどれだけリスクがあるのか、それは治療で何とかなるものか、あるいはそれで駄目ならば刑務所で何らかの更生をするのか、どういった支援が必要なのかというようなことを決めていくということですね。先ほども申し上げたような社会復帰支援、職業教育ですとか就職支援とか、あと住宅、健康などの生活のサポートと。必要であれば医学的治療を行い、その後、一旦終わったとしても定期的に治療の効果の評価を行い、あとは様々なボランティアというようなもののサポートを受けながら社会で生きやすくすることが再犯を防ぐというふうに思います。
次に参ります。
あとは一言だけ言っておきたいと思いますけれども、日本ではなかなか省庁間の連携ができていないというイメージがあって、我々民間も協力できるところはやっていきます。そのようなことで、MAPPAという話をしましたけれども、いろんな省庁が情報共有して連携するような体制、これも一つの法案が必要になってくると思いますけれども、そういうようなものが要るんではないかというふうに思います。
最後に、性犯罪者というと、何か変質者とか気持ちが悪いとかというようなことで、とにかく隔離しようということが国民全般の意識でもあると思うんですけれども、実際会うと、ごくごく普通の人たちであると。ただ、何かのきっかけで性加害行為をしてしまい、本人も悩みながらもやっぱり繰り返すというような状況がある。周りにたくさんいるんだというようなことを前提に社会の制度設計とかそういったことをしていくことが必要なんではないかというふうに思います。
済みません、時間超過しまして。
以上です。