馬場利彦の発言 (農林水産委員会)

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○参考人(馬場利彦君) おはようございます。JA全中で専務を務めております馬場と申します。本日は、貴重な機会をいただき、誠にありがとうございます。
 お手元に資料をお配りしております。食料・農業・農村基本法改正についてということで、私の名前が入ったもので、横組みのものですが、時間も限られておりますので、早速この資料に基づき意見を述べさせていただきます。
 資料一ページを御覧ください。
 JAグループは、食料安全保障の強化を最重点課題として、食料・農業・農村基本法の改正を強く求めてまいりました。その背景にある情勢認識としては、食と農を取り巻く五つのリスクがあるというものであります。
 一つ目は、食料自給率、長きにわたって低迷しており、食料を多くの輸入に頼り続けております。
 二つ目は、生産基盤の弱体化でございます。農業生産基盤の弱体化ということで、農家の減少あるいは高齢化、農地の減少が進んでおります。
 三つ目は、自然災害の多発ということで、異常気象が常態化しており、日本もあるいは世界も農業への影響が拡大しておるところであります。
 四つ目は、国際化の進展です。TPP11や日米貿易協定など国際化は急速に進んでおります。一方、日本の経済的地位の低下等もあり、買い負けも懸念される状況であります。
 五つ目は、世界的な人口増加と更なる食料争奪あるいは食料不足が懸念されます。これに新型コロナウイルスやウクライナ情勢も加わり、国民に安定して食料を供給できなくなるリスクが非常に高まっております。
 こうした危機感の下、JAグループは、農政の憲法たる食料・農業・農村基本法の見直しを、食料安全保障の強化を最重点課題として訴えてまいりました。
 資料二ページを御覧ください。
 生産現場の農業者の声を届くべく、令和四年から節目ごとに三度にわたる組織討議を行い、政策提案を取りまとめ、政府に対して提案をしてまいりました。特に、ここにありますように、五つ、食料安全保障の強化と国産への切替え、再生産に配慮した適正な価格形成の実現、多様な農業者の位置付けと農地の適正利用、四つ目に経営安定対策の強化、さらに、五番目にJAなど関係団体の役割強化、この五つの点が、まさに農業所得の増大、農業生産の振興、地域の活性化を実現していく上で重要な点と考えており、特に反映を求めてきたところでございます。
 三ページを御覧ください。
 では、実際の政策提案とその背景について説明をさせていただきます。三ページの表は、左側にJAグループのこれまでの政策提案のポイントを抜粋しております。右側に基本法改正法案における記載内容を整理したものであります。時間の関係上、先ほどの五つのポイントに絞って説明をさせていただきます。
 まずは、食料安全保障の強化に向けて、現行法には不測時の措置しかなかったものを踏まえて、平時における食料安全保障を基本法の目的として明確に位置付けること、その状況を的確に定期的に評価し、施策に反映することなどを訴えてまいりました。その背景には、既に述べたとおり、食と農を取り巻くリスクが急速に高まったことを踏まえたものであります。
 この点について、基本法の改正法案の目的には食料安全保障が明確に位置付けられました。また、食料自給率等の目標も、その向上、改善を図るよう定めることに加え、少なくとも年に一回、目標の達成状況を調査、公表することが明記されました。
 資料四ページは時間の関係でちょっと省略させていただきます。
 五ページまで飛んでいただきまして、適正な価格形成についてであります。
 生産資材の価格が、飼料、肥料、燃油を始め、ここ数年で大きく急騰、高止まりをしております。急激に進む円安の動向等によってはまたじわりと高まることも想定されて、先行きが非常に不安、不透明でございます。一方で、世界的な物価高騰の中でも、国産農畜産物は取り残されており、適正な価格形成が進んでおらず、農業者の所得が急激に減少しております。国の様々な対策もあり、何とか営農は継続できておりますが、このままでは多くの地域で営農が継続できるかどうかという危機的な状況に立ち入っております。
 こうした中で、農業の再生産に配慮された適正な価格形成を位置付けることと併せて、その仕組みの具体化、さらに、事業者、消費者についても、食料システムを持続可能にする関係者として一定の責務、努力を負うよう提言をしてまいりました。
 改正基本法では、消費者において、食料の持続的な供給に資する物の選択に努めるということが新たに明記されるなど、生産者のみならず、消費者もまた事業者も、それぞれの役割、努力を果たすとされており、持続可能な農業の実現に向けて重要なことだというふうに考えております。
 続いて、六ページを御覧ください。
 多様な農業者の位置付け、役割であります。地域計画に位置付けられた多様な農業者を位置付けることや、農業サービス事業体の育成、確保を提言してまいりました。
 現行の基本法では、効率的かつ安定的な経営体である担い手を育成を重視し、それ以外の農業者の位置付けは不十分なものでありました。農地の受け手となる担い手の育成、確保は重要であることは言うまでもありませんが、生産現場では多様な農業者が共存することで地域の農業、農村が営まれております。農業者の急減により、担い手も農地を引き受け切れないケースも増えております。水路や農道の維持など地域のインフラを良好に保つ上でも、多様な農業者が役割を発揮しているのが現状であります。
 今回、望ましい農業構造として多様な農業者が位置付けられたことは、実態を捉えた重要な転換だと考えております。
 また、経営安定対策においても、農業生産資材価格の著しい変動、に及ぼす影響を緩和するために必要な施策を講じるものというふうに新たに明記されました。幅広い生産資材価格が高騰し、適正な価格形成が追い付いていないこの状況において大変重要な内容であり、厳しい状況に置かれている生産現場からすれば心強い内容であります。
 続いて、七ページの環境負荷低減やスマート農業、八ページの輸出や知財、知的財産、九ページの防災・減災や家畜伝染病、病害虫の対応、さらには十ページの農村の活性化については時間の関係上省略させていただきます。
 資料十一ページを御覧ください。
 JAなど関係団体についても、食料、農業、農村に関する団体の活動が基本理念の実現に重要な役割を果たすことということを新たに位置付けられ、相互の連携も促進するとされました。
 以上のように、現在審議されております食料・農業・農村基本法の改正案はJAグループがこれまで提案を行ってきた内容をかなりの部分反映をいただいているものというふうに考えており、その内容を評価いたしております。
 今後の課題としては、改正される基本法に基づき、新たな基本計画等を通じていかにして施策を具体化していくかであります。三点ほどそのポイントを、考えていることをお話をさせていただきたいと思います。
 資料十二ページでございます。
 一点目は、食料安全保障の確保に向けた基本政策の確立であります。
 基本法は理念法であり、その理念を実現するためには、必要な施策の具体化と万全な予算の確保が不可欠であります。
 ここにありますとおり、一九九九年の現行基本法の成立から現在まで農水省の予算の推移を見ますと、国全体の予算規模が拡大する中で、残念ながら右肩下がりの状況です。
 今後は、食と農に関するリスクが高まる中で、食料安全保障の確立に向けて必要な予算を、政策を具体化するかとともに、いかにして安定した予算額を確保するかが農業者が先を見通して営農する上で極めて重要であります。
 資料十三ページを御覧ください。
 二点目は、次期基本計画の実効性の確保であります。
 食料自給率を始め食料安全保障の確保に向けて、適切な目標設定と達成に必要な施策の着実な実行が重要というふうに考えております。
 基本法では、少なくとも年一回は目標の達成状況を調査、公表するものとされております。目標達成の状況を基に施策を不断に検証するとともに、必要に応じて機動的に施策を見直すことが必要であります。
 既に岸田総理の国会答弁においても、調査結果を踏まえ機動的にその改善を図る旨明言をいただきました。是非ともその方向で取り組み、次期基本計画の実効性を高めることが重要だと考えております。
 資料十四ページを御覧ください。
 三点目は、適正な価格形成と国民理解醸成、行動変容であります。
 国産農畜産物の価格はまさに農業者にとってみれば賃金であり所得であり、生産現場の危機的な状況を踏まえれば、適正な価格形成の実現に向けて速やかに法制化を図ることが必要であります。
 国産農畜産物においては、適正な価格形成を進めると需要が国産から輸入に流れるのではないかというような御意見もございますが、お金を出せばいつでも食料を輸入できるという環境ではなくなりつつある中で、価格を上げれば需要は減るというデフレマインドから一歩前に進むのは今しかないと考えております。
 政府の適正な価格形成に関する協議会も行われており、その中で、今後の検討方向として、適正な価格形成を新たな商習慣としてサプライチェーン全体で定着させることや、需給と品質を基本としつつ、合理的な費用が考慮される仕組みの法制化を視野に検討する旨記載されてございます。早期にこの適正な価格形成の具体化を図ることが重要だと考えております。
 一方で、食料システムの関係者、何よりも国民の理解を得ることが極めて重要です。
 残念ながら、そこにもありますが、割高でも国産を選ぶ方の割合減少しています。産地や生産者を意識して農林水産物・食品を選ぶ国民の割合や、環境に配慮した農畜産物、農林水産物・食品を選ぶ国民の割合も減少しております。
 政府が目指す、三十年余り続いたコストカット経済から所得増と成長の好循環による新たな経済へ移行するということはもちろんでありますが、改正基本法を踏まえて適正な価格形成に向けた理解の醸成、さらには、国産農畜産物を選択する行動変容につながる施策を抜本的に拡充することが必要だというふうに考えております。
 資料十五ページでございます。
 もちろん、JAグループとしても改正基本法の理念を踏まえて、その実現に向けてしっかりと取り組んでまいる所存であります。
 農業者の所得増大に向けて、販売力の強化や低コスト生産技術の普及、さらに、新規就農者の支援などはもちろん、農業者の高齢化や減少が進む中で、農作業の受託、あるいはスマート農業の導入なども増えております。また、環境負荷低減に関する社会の関心が高まる中で、三月には環境負荷に関する環境調和型農業に関する取組方針を定めたところでございます。
 十六ページを御覧ください。
 単純に環境負荷を低減すれば、生産、所得が確保できなければ取組は継続できません。また、消費者に対しても、安定供給ができなければ、食料安全保障の確保にもつながりません。
 JAグループとしても、責任を持って農業の持続性を確保する観点から、農業者の所得確保、増大を、食料安全保障を確保しつつ、自然環境への負荷の低減と適応を図る農業、これを環境調和型農業とし、位置付け、取り組んでいくこととしております。
 最後に、資料十七ページを御覧ください。
 国民理解の醸成と行動変容に向けたJAグループの取組です。食料安全保障のリスクが高まる中で、私たちの国で消費する食べ物はできるだけこの国で生産するという国消国産をJAグループ独自のキーメッセージを掲げて、JAグループ一体となった運動に取り組んでまいりました。
 地域では地産地消を基本とし、日本全体では国消国産に取り組むと、それが結果としてSDGsの達成にも貢献していくということで、昨年から取組を進めておりますけれども、今後とも、引き続き取組を継続して、国産の農畜産物の価値を知っていただき、また、それが持続可能な農業と社会につながることを発信してまいります。
 以上をもって、私からの意見陳述とさせていただきます。
 ありがとうございました。

発言情報

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発言者: 馬場利彦

speaker_id: 20786

日付: 2024-05-14

院: 参議院

会議名: 農林水産委員会