熊谷信太郎の発言 (法務委員会)

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○参考人(熊谷信太郎君) 弁護士の熊谷でございます。
 私は、昭和六十二年から東京で弁護士をしておりまして、来年で約四十年の実務経験ございますが、養育費に関しまして、今お話がありました法制審議会で答申が出るまでの間にどういう検討がなされたのか、その辺を振り返りながらお話をしたいと思っております。
 資料、お手元資料の横のA4の養育費の不払解消に向けた検討についてという法務省民事局の資料を御覧いただけますでしょうか。左から右に向かって時系列に沿って説明をしておりますA4横の資料であります。
 左側にあります法務大臣養育費勉強会、これが、当時の森法務大臣の御指示でこのような勉強会が立ち上がりまして、令和二年から、令和二年一月から令和二年五月まで、勉強会が七回にわたって行われました。ここでは、重要な論点整理、いろんな養育費の現状について認識するとともに、どういう対策が必要かといった論点整理を行いました。
 御存じのとおり、先進国の中で我が国は、残念ながら養育費の支払が三〇%を切っているという非常に低い状況でございます。それに対してどう対応したらいいのかということで様々な論点整理を行いました。養育費の取決め率の低さをどう対応するのか、一旦取り決められたものについての支払確保をどうするのか、そもそもDV被害などで話合いすらできないような場合の養育費どうするのかといった様々な問題について検討をし、令和二年五月二十九日に取りまとめを行いました。
 それに基づきまして、その真ん中にあります養育費不払い解消に向けた検討会議というものが大臣の指示で立ち上がりまして、私、これの議長をさせていただきましたが、ここでより具体的な政策についての提言を行うということで、令和二年十二月の二十四日に取りまとめを行い、大臣に提出をいたしました。そういった経緯を受けて法制審議会での御議論をいただいたという、こういった流れになってくるわけであります。
 私は、今回の法案に関しまして基本的には賛成の、前向きの評価をしている立場の者でございます。今、沖野参考人からも御説明がありました、養育費についての取決めをした場合の履行の確保の問題、それから、それについては先取特権が付与されたわけですが、それ以外に取決めがない場合についての法定養育費の設定ということで、大きな前進ではあると思っております。
 ただ、今回の法案に関しましても、更にもっとこうしてほしいという点についての意見を述べたいと思いますので、私が関与してきました養育費の問題に限りまして、今回の民法の改正についての意見を述べたいと思います。このような機会を与えていただきまして、本当に有り難く思っております。
 まず、今後、先生方に是非御認識いただいて御議論いただきたいと思う点が五点ございます。
 まず一点目は、養育費の取決め率の向上のためにはどうしたらいいのかということでございまして、養育費の取決めに関しまして、今回の法案では、協議離婚に関して公的な関与の手続を取ることは見送られています。これは今後の検討課題かと思います。
 例えば、これ勉強会での議論でも出てきたんでありますが、離婚届を出すときに、そこに今、現行は養育費の欄というのがないんですね。養育費に関しての取決めをどうするという欄を設けておくと。そして、それについて、その記載を必要的なものとすると、その養育費の同意が離婚、協議離婚の要件という形になるわけですけれど、そこまで一足飛びにいかなくても、任意的なものとしてでもそういった記載欄を設けておくということは必要ではないだろうかと思いますし、それから、もちろん諸外国ではその養育費の合意があることが離婚、協議離婚の条件になっている国もあるというふうに聞いておりますので、これは将来的にはそういう方向を目指していただきたいなというふうに思うところであります。
 ただ、DV被害の方などの御意見を聞くと、そういう養育費の支払合意を協議離婚の成立要件にしてしまうと、DV被害の方の場合にはもう離婚ができなくなってしまうということもあるようですので、そこの点に関してのDV被害の方に関する対策、DV被害の方が離婚するための対策ですね、それは別途必要、手当てが必要だろうと思いますけれども、子供のやはり養育費を確保するという大きな目的の上では、将来的には協議離婚の成立に養育費の合意を必要とするということも考えていいのではないかなというふうに思っております。
 二点目は、離婚に関する支援体制の充実ということでありまして、これ、法律はできても、結局、支援体制が十分でないとうまくワークしないということでありまして、地方自治体の相談体制、民間の相談団体の支援、こういったものも必要でありますし、一番痛感しているのは、弁護士会がやっている法テラスというのがございますけれども、これはいろんな相談機関なんですけれども、法テラスの相談案件が非常に多くて、この離婚の、協議離婚をしている養育費の問題だとか、そういった離婚していく場合の子供の対応、こういったものへの支援が十分でない、必ずしも十分でない。一生懸命やっているんですけれども、費用も予算も人員も足りないということで、この法テラスへの支援を是非先生方に御議論いただきたい、御検討いただきたいというふうに思いますし。
 それから、その養育費の算定表というのがございまして、我々法律家はその養育費の算定表を用いて養育費を、家庭裁判所での離婚だとか協議離婚の場合でもそれを使うんですが、これはやはり一般の方が見てもなかなか分かりづらいという批判がございます。ですので、一人親の方でも簡単に利用できる養育費算定表を作成をしたり、もっと言えば、自動計算ツールですね、そういうものをつくって、そこに条件さえ入れればもう養育費の額も出てくるというような自動計算ツールが望ましいのではないかなと思います。
 残念ながら、我が国ではそういったことへの行政の支援が非常に受け身でありまして、もっと積極的に、例えば、これ勉強会で出てきたものとしましては、フィンランドなどではそういう行政サービスはプッシュ型で行っていると。つまり、あなた、どういうニーズがありますかということを行政の側からネット上で聞いてくるということですね。自分の条件を入力すれば、こういうものは要りませんか、養育費どうですかといったものを聞いてくるような、そういうような仕組みも御検討いただきたいテーマだなというふうに考えております。
 三番目は、今回の改正で盛り込まれました先取特権、それから法定養育費についてですけれども、これ大変いいことで、私は非常にこれ喜ばしいと思っておりますが、留意していただきたい点としましては、これの金額ですね、法定養育費の金額、それから先取特権の被担保債権の範囲、これについては、法令に書き込まれてはおりませんで、法務省令で決めるということになっております。その法務省令で決める際に、子供の食費とか教育費など、子供の健やかな成長のために必要不可欠なものが、現実に必要な額が支払われるような配慮を是非お願いしたいと思っております。
 法務省令で決めるということで、その金額が非常に低額になってしまうのではないかという懸念を、これ杞憂だといいんですけれども、若干持っておりまして、というのは、制度として法定養育費などは非常に補充的であるというような御説明がされることがあるものですから、そういう意味で、この点に関して現実的に生活できる金額を設定していただくように先生方からも是非御検討いただきたいなと思っております。
 四番目が、養育費の不払率が、余りにもその不払の率が高いものですから、これを減少するための更なる措置としまして、悪質な不払者に対するペナルティー、ないしは支払っていく者に対するインセンティブというものを導入していただくことを御検討いただきたいと思っております。
 この考え方は、悪質なと申し上げたのは、支払能力があるのにということです。養育費の不払というのは、本来的にはこれは不作為による子供への経済的虐待であるというふうに捉えることができると思います。そうであるなら、不作為によって子供に対して経済的な虐待を与えるようなケースに対してはペナルティーを与えるということも十分検討に値するのではないかというふうに思います。
 諸外国の例では、氏名を公表する、不払者のですね、氏名を公表する、あるいは運転免許とかパスポートの資格を停止するというようなすごいことをやる国もあるわけです。
 また、賃金を不払、賃金不払の場合には付加金制度というのがございますけれども、この付加金制度を養育費にも導入をするであるとか、あるいは遅延損害金を法定利息を上回る形で養育費については設定するとか、養育費債権に関して、もう諦めてしまう親も多いんですけれども、これを、消滅時効の期間を延長するとか、かなり思い切った踏み込んだ措置もとっていかないと、先進国で最低というような恥ずかしい状況を改善することがなかなか難しいんじゃないかというふうに考えております。一方で、つまり、これらは、養育費の不払を許さないぞという国としてのメッセージ、これを打ち出していっていただきたいというふうに思うわけであります。
 一方で、支払った人へのインセンティブ、御褒美として、例えば養育費を支払った場合の控除ですね、控除制度、いろんな、扶養控除などありますけど、その控除制度の中に養育費の支払を位置付けていくということも一つの方法ではないだろうかと思っております。
 そして、その不払解消への国の積極的な関与としまして、いわゆる代理強制徴収制度、お給料の源泉徴収などと同じように、養育費の給料からの天引きなどの法律的な強制徴収といったものも御検討いただければというふうに思います。これは将来的なものだと思いますけれども、そういった御検討をいただきたいと思います。
 そして最後に、これは非常にハードル高いかもしれませんけれども、国による立替払制度の導入、これも是非御検討いただきたいところだと思います。
 北欧諸国などでは現実にこれ導入されて、非常に支援対象も広く、期間も長期にわたっておりますし、韓国でも同様の制度が、少し規模は小さいですけれども、あるわけであります。これは要するに、DV被害その他もあるでしょうし、合意が残念ながらできないという場合に、今日の御飯、あしたの子供の御飯を確保するために国が立て替えてまず養育費を払って、それを債務者から、義務者から徴収していくという考え方であります。
 これができれば非常に養育費不払に対してのその解消への大きな進歩になると思いますが、問題点ももちろんあるわけでありまして、立て替えた金額の回収をどういうふうにやるのか。サービサーを仮に使うにしても、サービサー法の改正で特定債権の範囲を変える必要ありますし、そういった問題がありますし、それから、養育費だけをそういうふうな特別扱いといいますか、ほかにもいろいろ犯罪被害者その他いる中でこういうものを導入していくということになりますと、やはりなぜ養育費を特別扱いするのかの国民のコンセンサスを得ながら進めていく必要があると思いますので、是非、あしたの日本を支える子供たちの生きる基盤になる制度として御検討いただければと思います。
 私からのお話は以上でございます。御清聴ありがとうございました。

発言情報

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発言者: 熊谷信太郎

speaker_id: 31485

日付: 2024-05-07

院: 参議院

会議名: 法務委員会