法務委員会
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会
会議録情報#0
令和六年五月七日(火曜日)
午前十時開会
─────────────
委員の異動
四月二十五日
辞任 補欠選任
友納 理緒君 田中 昌史君
五月二日
辞任 補欠選任
山崎 正昭君 臼井 正一君
福島みずほ君 大椿ゆうこ君
五月七日
辞任 補欠選任
臼井 正一君 山崎 正昭君
大椿ゆうこ君 福島みずほ君
─────────────
出席者は左のとおり。
委員長 佐々木さやか君
理 事
古庄 玄知君
和田 政宗君
牧山ひろえ君
伊藤 孝江君
川合 孝典君
委 員
臼井 正一君
岡田 直樹君
北村 経夫君
山東 昭子君
田中 昌史君
森 まさこ君
山崎 正昭君
石川 大我君
大椿ゆうこ君
福島みずほ君
石川 博崇君
清水 貴之君
仁比 聡平君
鈴木 宗男君
事務局側
常任委員会専門
員 久保田正志君
参考人
東京大学大学院
法学政治学研究
科教授 沖野 眞已君
弁護士 熊谷信太郎君
東京都立大学教
授 木村 草太君
特定非営利活動
法人女のスペー
ス・おん代表理
事 山崎 菊乃君
白鴎大学教授 水野 紀子君
浜田・木村法律
事務所弁護士 浜田 真樹君
中央大学法学部
兼任講師
共同養育支援法
全国連絡会母の
会アドバイザー
兼共同責任者 鈴木 明子君
和光大学現代人
間学部心理教育
学科教授 熊上 崇君
─────────────
本日の会議に付した案件
○民法等の一部を改正する法律案(内閣提出、衆
議院送付)
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この発言だけを見る →午前十時開会
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委員の異動
四月二十五日
辞任 補欠選任
友納 理緒君 田中 昌史君
五月二日
辞任 補欠選任
山崎 正昭君 臼井 正一君
福島みずほ君 大椿ゆうこ君
五月七日
辞任 補欠選任
臼井 正一君 山崎 正昭君
大椿ゆうこ君 福島みずほ君
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出席者は左のとおり。
委員長 佐々木さやか君
理 事
古庄 玄知君
和田 政宗君
牧山ひろえ君
伊藤 孝江君
川合 孝典君
委 員
臼井 正一君
岡田 直樹君
北村 経夫君
山東 昭子君
田中 昌史君
森 まさこ君
山崎 正昭君
石川 大我君
大椿ゆうこ君
福島みずほ君
石川 博崇君
清水 貴之君
仁比 聡平君
鈴木 宗男君
事務局側
常任委員会専門
員 久保田正志君
参考人
東京大学大学院
法学政治学研究
科教授 沖野 眞已君
弁護士 熊谷信太郎君
東京都立大学教
授 木村 草太君
特定非営利活動
法人女のスペー
ス・おん代表理
事 山崎 菊乃君
白鴎大学教授 水野 紀子君
浜田・木村法律
事務所弁護士 浜田 真樹君
中央大学法学部
兼任講師
共同養育支援法
全国連絡会母の
会アドバイザー
兼共同責任者 鈴木 明子君
和光大学現代人
間学部心理教育
学科教授 熊上 崇君
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本日の会議に付した案件
○民法等の一部を改正する法律案(内閣提出、衆
議院送付)
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佐
佐々木さやか#1
○委員長(佐々木さやか君) ただいまから法務委員会を開会いたします。
委員の異動について御報告いたします。
昨日までに、友納理緒さん、山崎正昭さん及び福島みずほさんが委員を辞任され、その補欠として田中昌史さん、臼井正一さん及び大椿ゆうこさんが選任されました。
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この発言だけを見る →委員の異動について御報告いたします。
昨日までに、友納理緒さん、山崎正昭さん及び福島みずほさんが委員を辞任され、その補欠として田中昌史さん、臼井正一さん及び大椿ゆうこさんが選任されました。
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佐
佐々木さやか#2
○委員長(佐々木さやか君) 民法等の一部を改正する法律案を議題といたします。
本日は、本案の審査のため、八名の参考人から御意見を伺います。
午前に御出席いただいております参考人は、東京大学大学院法学政治学研究科教授沖野眞已さん、弁護士熊谷信太郎さん、東京都立大学教授木村草太さん及び特定非営利活動法人女のスペース・おん代表理事山崎菊乃さんでございます。
この際、参考人の皆様に一言御挨拶を申し上げます。
本日は、御多忙のところ御出席いただきまして、誠にありがとうございます。
皆様から忌憚のない御意見を賜りまして、今後の審査の参考にいたしたいと存じますので、よろしくお願いいたします。
次に、議事の進め方について申し上げます。
まず、沖野参考人、熊谷参考人、木村参考人、山崎参考人の順にお一人十五分以内で御意見をお述べいただき、その後、委員の質疑にお答えいただきたいと存じます。
また、御発言の際は、挙手をしていただき、その都度、委員長の許可を得ることとなっておりますので、御承知おきください。
なお、御発言は着席のままで結構でございます。
それでは、まず沖野参考人からお願いいたします。沖野参考人。
この発言だけを見る →本日は、本案の審査のため、八名の参考人から御意見を伺います。
午前に御出席いただいております参考人は、東京大学大学院法学政治学研究科教授沖野眞已さん、弁護士熊谷信太郎さん、東京都立大学教授木村草太さん及び特定非営利活動法人女のスペース・おん代表理事山崎菊乃さんでございます。
この際、参考人の皆様に一言御挨拶を申し上げます。
本日は、御多忙のところ御出席いただきまして、誠にありがとうございます。
皆様から忌憚のない御意見を賜りまして、今後の審査の参考にいたしたいと存じますので、よろしくお願いいたします。
次に、議事の進め方について申し上げます。
まず、沖野参考人、熊谷参考人、木村参考人、山崎参考人の順にお一人十五分以内で御意見をお述べいただき、その後、委員の質疑にお答えいただきたいと存じます。
また、御発言の際は、挙手をしていただき、その都度、委員長の許可を得ることとなっておりますので、御承知おきください。
なお、御発言は着席のままで結構でございます。
それでは、まず沖野参考人からお願いいたします。沖野参考人。
沖
沖野眞已#3
○参考人(沖野眞已君) ありがとうございます。
東京大学法学部法学政治学研究科で民法を担当しております沖野眞已でございます。
本日は、このように貴重な機会を与えてくださいまして、誠にありがとうございます。
提示されております本法律案につきましては、法務大臣の諮問を受けて設置されました法制審議会家族法制部会におきまして、約三年間にわたり様々な立場を踏まえて審議、検討が行われ、要綱案として取りまとめがされました。それが法制審議会総会における議論と承認を経て要綱となり、法務大臣への答申がされました。本法律案は、この答申を踏まえたものであると理解しております。
私は、この法制審議会家族法制部会の委員を務めさせていただいておりました。本日は、その経験を踏まえつつ、民法の一研究者としてお話をさせていただきたいと思います。
本法律案は、民法のみならず人事訴訟法、家事事件手続法を改正するものですが、専ら民法の改正についてお話をさせていただきます。
本改正法案と申しますが、それによる民法の改正は、子の養育の在り方の多様化等の社会の情勢に鑑み、離婚に伴う子の養育への影響を踏まえ、子の利益の確保の観点から離婚関連制度の見直しを図るものであり、一、親子関係に関する基本的な規律、二、親権、三、養育費、四、親子交流、五、養子縁組、六、財産分与に関する改正を柱といたします。
以下では、親子関係に関する基本的な規律と親権を中心にお話をし、養育費、親子交流について簡単に取り上げ、最後に民法の改正の意義について一言いたします。いささか大上段のお話をすることをお許しください。
本改正法案の中核の課題は、子の養育、特に離婚後の子の養育の法制度として基本法たる民法がどのような制度や枠組み、規律を用意すべきかというものです。
子は、出生と同時に民法を基礎とする民事法の世界におきまして権利能力を当然に付与され、一個の独立した人格として存在することになります。しかし、生まれてすぐはもちろん、一定の時期までは一人で立つことができない、保護や支援を要する存在です。そのため、子の心身の生育、そして社会的な生育をどのように図り、行っていくか、その制度が必要であり、民法は、法律上の親子関係を基礎として、子に対して親たる地位の者に子の養育のための責任を担わせ、必要な権限を与え、またその妨害に対してそれを排除するなどの権利を与えています。そのような総合的な地位を表すのが親権です。
昭和二十二年、一九四七年の民法改正前の明治民法は、このような親権は基本的に父が有するものとしていたところを、昭和二十二年改正により、婚姻夫婦にあっては父と母の双方が親権を有し、双方が共同でそれを行使すると定めました。父と母が共に親権者として子の養育を担うことがその任務の実現のために適切であるという判断を示すものと考えられます。
同時に、離婚後は親権者の一方のみが親権を有し、他方は親権を失うという仕組みを設けました。その理由は事実上の困難と言われたりしておりますけれども、必ずしもはっきりしておりません。
このような昭和二十二年民法の在り方につきましては、一、離婚に伴い当然に一方が親権者たる地位を失うという制度が適切なのか、また、二、親権を有しないことになる親が子供の養育に対する責務を負わないわけではなく、しかしその基礎付けが示されていないのではないか、さらに、三、婚姻中の共同での親権行使もそう定めるだけであって、親の間で意見が対立するような場合の解決方法が用意されていないのは法律として無責任ではないかといった問題があり、議論がされてきました。
本改正法案は、これらの問題に次のような形で解決を与えています。
第一は、親子関係に関する基本的な規律を明らかにしたことです。
父母は、親権の有無にかかわらず、子の養育に関して一定の責務を負っていると考えられますが、現行民法ではこの点が必ずしも明らかではなく、そのため、親権者でない親は子の養育に何ら責任を負わないかのような誤解がされることもあるという指摘もあります。
本改正法案は、親権の有無にかかわらない父母の責務等を明確化しています。具体的には八百十七条の十二ですけれども、一、子の心身の健全な発達を図るため、子の人格を尊重するとともに、子の年齢及び発達の程度に配慮して子を養育しなければならないこと、かつ、二、子が自己と同程度の生活を維持することができるよう扶養しなければならないこと、また、三、父母が子の利益のため、互いに人格を尊重し協力しなければならないことを明文化しています。
子の人格の尊重に関しましては、子の意思の尊重との関係が問題となり、かなりの議論がありました。しかし、人格の尊重において、その意思の尊重はむしろ当然のことです。これを例示することも考えられなくはありませんが、理論的な問題に加え、子の利益の確保の観点からの緊張関係や弊害も懸念されるため、意思の尊重は人格の尊重に当然含まれるという言わば当然の理解の下に法文が作成されており、適切なことであると考えます。
また、父母の間の相互の人格の尊重は、虐待が許されるものではないことや、それへの対応の基礎を民法そのものに明文で設ける意味をも有するものです。
第二は、離婚後の当然単独親権の見直しです。
父母の子の養育への関わり方、在り方は様々であり、昭和二十二年当時に比し、一層多様化しています。夫婦としての法律婚は解消するものの子の養育については協力して当たるという場合もありますが、現行法では離婚後も夫婦双方が共に親権者という立場で子の養育に関わる道は全く閉ざされています。父母の婚姻中はその双方が親権者となり親権を共同して行使することとされていますが、父母の離婚後は一切の例外なく必ずその一方のみを親権者と定めなければならないこととされているからです。
このような制度は、およそその余地がないという点において、父母の離婚後もその双方が子の養育に責任を持ち、子に関する重要な事項が父母双方の熟慮の上で決定されることを法制度として支えるということがされていない点で問題であると考えられます。改正法案が離婚後の父母双方を親権者とすることを可能とするとしているのは、このような考慮に基づくものであると理解しております。
これに対し、離婚後の父母双方を親権とすることに対しては、子に関する意思決定を適時に行うことができないおそれがあるのではないかとの懸念や、DVや虐待等がある事案において、父母の一方から他方に対する支配、被支配の関係が離婚後も継続するおそれがあるのではないかという懸念があります。
本改正法案では、父母が協議上の離婚をする場合には、父母の協議によって父母の双方又は一方を親権者と定め、裁判上の離婚の場合には、裁判所が父母の双方又は一方を親権者と定めるということを基本とした上で、裁判所が親権者を定める場合の考慮要素に関して、子の利益のため、父母と子との関係や父と母との関係その他一切の事情を考慮して判断しなければならないこととし、かつ、父母の双方を親権者と定めることにより子の利益を害すると認められるときは、必ず父母の一方を親権者と定めなければならないとなっています。
さらに、子の父母の双方を親権者と定めることにより子の利益を害すると認められるときについては、DVや虐待等がある事案を念頭に置いた例示列挙がされています。これらの規律は、こうした事案に対する懸念を踏まえ、それに対処できる規律としたものと言えます。
もっとも、協議上の離婚の場合に完全に父母に委ねてしまうという現行法を維持することには、父母の合意について子の利益の保護の観点からの適切性が確保されないという問題もあります。協議離婚の際に、DVなどを背景とする不適切な形での合意によって親権者の定めがされたという場合には、子にとって不利益となるおそれがあるからです。協議離婚の成立にチェックを掛けるという事前確認型の規律も考えられますが、そうしますと、速やかな離婚が困難になるなどの問題もあります。
そこで、改正法案では、事後の対応の手法を取り、家庭裁判所の手続による親権者の変更を可能とするとともに、家庭裁判所が変更が子の利益のために必要であるか否かを判断するに当たり、父母の協議の経過その他の事情を考慮すべきこととし、DV等の有無がその考慮要素の一つとして明示されています。
第三は、双方が親権を有し、それを共同で行使する場合の規律です。
改正法案では、親権の共同行使の場合の規律を設け、まず、監護又は教育に関する日常の行為をするときは一方の親権者が単独で行使できることを明らかにし、また、それに該当しない、したがって共同で親権を行うべき重要な事項について父母の意見対立がある場合には、家庭裁判所が父母の一方を当該事項についての親権の行使者と定めることができる手続が新設されています。また、日常の行為に当たらない重要な事項であっても、協議や家庭裁判所による手続を経ていたのでは子の利益を図ることのできない場合、これを子の利益のため急迫の事情があるときとして、単独での行使が認められる場合であることが明らかにされています。
このように親権の行使の規律が整備されることは、単独行使の認められる余地や範囲の規定を欠き、意見対立の調整手続を欠くという現行法の不備を補うとともに、父母の双方が親権者である場合に子に関する意思決定を適時に行えなくなるという懸念に対処するものと言えます。
続きまして、親子交流及び養育費について簡単に申し上げます。
まず、親子交流でございますが、親子交流については、親権の所在にかかわらず、子が父母の一方とのみ同居する場合に、別居親との交流は子の成長のために重要な意義を有するものですが、その一方で、親子の交流の実施が子の危害へつながる場合もあり得ることも否定できません。そのため、親子交流については、子や同居親の安全、安心を確保した上で、適切な形での親子交流を実現できるような仕組みを設けることが重要となります。
また、親子の交流は別居に伴うものであって、必ずしも離婚後に限定されません。むしろ、離婚前の婚姻中の別居においても重要となります。しかし、現行法はこの局面での規律を置いておりません。また、別居親と交流をしてきており、その中で祖父母等との親族と交流をしていたのだけれども、その別居親が死亡した場合に、それまでの祖父母等との交流を継続することが望まれるといった場合もあります。
改正法案は、これらについて規律を設け、また、それとともに、手続法関係になりますが、裁判手続過程において、家庭裁判所が事実の調査として親子交流の試行的実施を促すことができる旨の規律が設けられています。いずれにおきましても、子の利益の観点からの要件設定が明示された、適切な親子交流を実現できる仕組みの構築のための改正であると理解しております。
次に、養育費でございますが、これは子の養育を経済的に支えるものであり、その取決めや支払の確保が重要であることは異論がありません。問題は、それをいかに実現するかです。
本改正法案では、取決めがされないときへの対応として法定養育費の制度が設けられ、また、支払の確保への対応として、養育費債権につきまして一般先取特権を付与することで、他の一般の債権者に優先して弁済を受けられる地位、かつ債務名義を取得していなくても民事執行手続の申立てができるという地位が付与されています。
また、手続面では、裁判手続における収入等の情報の開示命令の仕組みや、また、民事執行手続におきまして、一回の申立てにより複数の手続を連続的に行うことができることとされ、債権者の負担を軽減する仕組みが設けられています。
最後に、民法の改正の意義について一言申し上げます。
民法の制度は社会における基本設計として非常に重要であると考えられますが、父母の離婚後の子の利益を確保するためには、民法等の民事基本法制を整備するだけで足りるわけではなく、その円滑な施行についても必要と思われる環境の整備を図ることが重要であり、何よりまた、子の利益の確保のためには、総合的に各種の支援等の取組を充実させることが重要です。
法制審議会家族法制部会において、民法等の改正内容を示す要綱案の取りまとめに加えて附帯決議がされ、総会でもこれが認められております。この附帯決議には、改正法の内容の適切な周知を求めること、各種支援についての充実した取組を求めること、家庭裁判所における適切な審理を期待すること、改正法の施行状況や各種支援等に関する情報発信を求めること、これらの事項の実現のため、関係府省庁等が子の利益の確保を目指して協力することなどが盛り込まれております。
民法等の改正の実現が重要であることはもちろんですが、それのみで目的を達成するものではないこと、環境整備や各種支援のための総合的な取組があってこそであることにつきましても改めて指摘させていただきます。
以上でございます。御清聴ありがとうございました。
この発言だけを見る →東京大学法学部法学政治学研究科で民法を担当しております沖野眞已でございます。
本日は、このように貴重な機会を与えてくださいまして、誠にありがとうございます。
提示されております本法律案につきましては、法務大臣の諮問を受けて設置されました法制審議会家族法制部会におきまして、約三年間にわたり様々な立場を踏まえて審議、検討が行われ、要綱案として取りまとめがされました。それが法制審議会総会における議論と承認を経て要綱となり、法務大臣への答申がされました。本法律案は、この答申を踏まえたものであると理解しております。
私は、この法制審議会家族法制部会の委員を務めさせていただいておりました。本日は、その経験を踏まえつつ、民法の一研究者としてお話をさせていただきたいと思います。
本法律案は、民法のみならず人事訴訟法、家事事件手続法を改正するものですが、専ら民法の改正についてお話をさせていただきます。
本改正法案と申しますが、それによる民法の改正は、子の養育の在り方の多様化等の社会の情勢に鑑み、離婚に伴う子の養育への影響を踏まえ、子の利益の確保の観点から離婚関連制度の見直しを図るものであり、一、親子関係に関する基本的な規律、二、親権、三、養育費、四、親子交流、五、養子縁組、六、財産分与に関する改正を柱といたします。
以下では、親子関係に関する基本的な規律と親権を中心にお話をし、養育費、親子交流について簡単に取り上げ、最後に民法の改正の意義について一言いたします。いささか大上段のお話をすることをお許しください。
本改正法案の中核の課題は、子の養育、特に離婚後の子の養育の法制度として基本法たる民法がどのような制度や枠組み、規律を用意すべきかというものです。
子は、出生と同時に民法を基礎とする民事法の世界におきまして権利能力を当然に付与され、一個の独立した人格として存在することになります。しかし、生まれてすぐはもちろん、一定の時期までは一人で立つことができない、保護や支援を要する存在です。そのため、子の心身の生育、そして社会的な生育をどのように図り、行っていくか、その制度が必要であり、民法は、法律上の親子関係を基礎として、子に対して親たる地位の者に子の養育のための責任を担わせ、必要な権限を与え、またその妨害に対してそれを排除するなどの権利を与えています。そのような総合的な地位を表すのが親権です。
昭和二十二年、一九四七年の民法改正前の明治民法は、このような親権は基本的に父が有するものとしていたところを、昭和二十二年改正により、婚姻夫婦にあっては父と母の双方が親権を有し、双方が共同でそれを行使すると定めました。父と母が共に親権者として子の養育を担うことがその任務の実現のために適切であるという判断を示すものと考えられます。
同時に、離婚後は親権者の一方のみが親権を有し、他方は親権を失うという仕組みを設けました。その理由は事実上の困難と言われたりしておりますけれども、必ずしもはっきりしておりません。
このような昭和二十二年民法の在り方につきましては、一、離婚に伴い当然に一方が親権者たる地位を失うという制度が適切なのか、また、二、親権を有しないことになる親が子供の養育に対する責務を負わないわけではなく、しかしその基礎付けが示されていないのではないか、さらに、三、婚姻中の共同での親権行使もそう定めるだけであって、親の間で意見が対立するような場合の解決方法が用意されていないのは法律として無責任ではないかといった問題があり、議論がされてきました。
本改正法案は、これらの問題に次のような形で解決を与えています。
第一は、親子関係に関する基本的な規律を明らかにしたことです。
父母は、親権の有無にかかわらず、子の養育に関して一定の責務を負っていると考えられますが、現行民法ではこの点が必ずしも明らかではなく、そのため、親権者でない親は子の養育に何ら責任を負わないかのような誤解がされることもあるという指摘もあります。
本改正法案は、親権の有無にかかわらない父母の責務等を明確化しています。具体的には八百十七条の十二ですけれども、一、子の心身の健全な発達を図るため、子の人格を尊重するとともに、子の年齢及び発達の程度に配慮して子を養育しなければならないこと、かつ、二、子が自己と同程度の生活を維持することができるよう扶養しなければならないこと、また、三、父母が子の利益のため、互いに人格を尊重し協力しなければならないことを明文化しています。
子の人格の尊重に関しましては、子の意思の尊重との関係が問題となり、かなりの議論がありました。しかし、人格の尊重において、その意思の尊重はむしろ当然のことです。これを例示することも考えられなくはありませんが、理論的な問題に加え、子の利益の確保の観点からの緊張関係や弊害も懸念されるため、意思の尊重は人格の尊重に当然含まれるという言わば当然の理解の下に法文が作成されており、適切なことであると考えます。
また、父母の間の相互の人格の尊重は、虐待が許されるものではないことや、それへの対応の基礎を民法そのものに明文で設ける意味をも有するものです。
第二は、離婚後の当然単独親権の見直しです。
父母の子の養育への関わり方、在り方は様々であり、昭和二十二年当時に比し、一層多様化しています。夫婦としての法律婚は解消するものの子の養育については協力して当たるという場合もありますが、現行法では離婚後も夫婦双方が共に親権者という立場で子の養育に関わる道は全く閉ざされています。父母の婚姻中はその双方が親権者となり親権を共同して行使することとされていますが、父母の離婚後は一切の例外なく必ずその一方のみを親権者と定めなければならないこととされているからです。
このような制度は、およそその余地がないという点において、父母の離婚後もその双方が子の養育に責任を持ち、子に関する重要な事項が父母双方の熟慮の上で決定されることを法制度として支えるということがされていない点で問題であると考えられます。改正法案が離婚後の父母双方を親権者とすることを可能とするとしているのは、このような考慮に基づくものであると理解しております。
これに対し、離婚後の父母双方を親権とすることに対しては、子に関する意思決定を適時に行うことができないおそれがあるのではないかとの懸念や、DVや虐待等がある事案において、父母の一方から他方に対する支配、被支配の関係が離婚後も継続するおそれがあるのではないかという懸念があります。
本改正法案では、父母が協議上の離婚をする場合には、父母の協議によって父母の双方又は一方を親権者と定め、裁判上の離婚の場合には、裁判所が父母の双方又は一方を親権者と定めるということを基本とした上で、裁判所が親権者を定める場合の考慮要素に関して、子の利益のため、父母と子との関係や父と母との関係その他一切の事情を考慮して判断しなければならないこととし、かつ、父母の双方を親権者と定めることにより子の利益を害すると認められるときは、必ず父母の一方を親権者と定めなければならないとなっています。
さらに、子の父母の双方を親権者と定めることにより子の利益を害すると認められるときについては、DVや虐待等がある事案を念頭に置いた例示列挙がされています。これらの規律は、こうした事案に対する懸念を踏まえ、それに対処できる規律としたものと言えます。
もっとも、協議上の離婚の場合に完全に父母に委ねてしまうという現行法を維持することには、父母の合意について子の利益の保護の観点からの適切性が確保されないという問題もあります。協議離婚の際に、DVなどを背景とする不適切な形での合意によって親権者の定めがされたという場合には、子にとって不利益となるおそれがあるからです。協議離婚の成立にチェックを掛けるという事前確認型の規律も考えられますが、そうしますと、速やかな離婚が困難になるなどの問題もあります。
そこで、改正法案では、事後の対応の手法を取り、家庭裁判所の手続による親権者の変更を可能とするとともに、家庭裁判所が変更が子の利益のために必要であるか否かを判断するに当たり、父母の協議の経過その他の事情を考慮すべきこととし、DV等の有無がその考慮要素の一つとして明示されています。
第三は、双方が親権を有し、それを共同で行使する場合の規律です。
改正法案では、親権の共同行使の場合の規律を設け、まず、監護又は教育に関する日常の行為をするときは一方の親権者が単独で行使できることを明らかにし、また、それに該当しない、したがって共同で親権を行うべき重要な事項について父母の意見対立がある場合には、家庭裁判所が父母の一方を当該事項についての親権の行使者と定めることができる手続が新設されています。また、日常の行為に当たらない重要な事項であっても、協議や家庭裁判所による手続を経ていたのでは子の利益を図ることのできない場合、これを子の利益のため急迫の事情があるときとして、単独での行使が認められる場合であることが明らかにされています。
このように親権の行使の規律が整備されることは、単独行使の認められる余地や範囲の規定を欠き、意見対立の調整手続を欠くという現行法の不備を補うとともに、父母の双方が親権者である場合に子に関する意思決定を適時に行えなくなるという懸念に対処するものと言えます。
続きまして、親子交流及び養育費について簡単に申し上げます。
まず、親子交流でございますが、親子交流については、親権の所在にかかわらず、子が父母の一方とのみ同居する場合に、別居親との交流は子の成長のために重要な意義を有するものですが、その一方で、親子の交流の実施が子の危害へつながる場合もあり得ることも否定できません。そのため、親子交流については、子や同居親の安全、安心を確保した上で、適切な形での親子交流を実現できるような仕組みを設けることが重要となります。
また、親子の交流は別居に伴うものであって、必ずしも離婚後に限定されません。むしろ、離婚前の婚姻中の別居においても重要となります。しかし、現行法はこの局面での規律を置いておりません。また、別居親と交流をしてきており、その中で祖父母等との親族と交流をしていたのだけれども、その別居親が死亡した場合に、それまでの祖父母等との交流を継続することが望まれるといった場合もあります。
改正法案は、これらについて規律を設け、また、それとともに、手続法関係になりますが、裁判手続過程において、家庭裁判所が事実の調査として親子交流の試行的実施を促すことができる旨の規律が設けられています。いずれにおきましても、子の利益の観点からの要件設定が明示された、適切な親子交流を実現できる仕組みの構築のための改正であると理解しております。
次に、養育費でございますが、これは子の養育を経済的に支えるものであり、その取決めや支払の確保が重要であることは異論がありません。問題は、それをいかに実現するかです。
本改正法案では、取決めがされないときへの対応として法定養育費の制度が設けられ、また、支払の確保への対応として、養育費債権につきまして一般先取特権を付与することで、他の一般の債権者に優先して弁済を受けられる地位、かつ債務名義を取得していなくても民事執行手続の申立てができるという地位が付与されています。
また、手続面では、裁判手続における収入等の情報の開示命令の仕組みや、また、民事執行手続におきまして、一回の申立てにより複数の手続を連続的に行うことができることとされ、債権者の負担を軽減する仕組みが設けられています。
最後に、民法の改正の意義について一言申し上げます。
民法の制度は社会における基本設計として非常に重要であると考えられますが、父母の離婚後の子の利益を確保するためには、民法等の民事基本法制を整備するだけで足りるわけではなく、その円滑な施行についても必要と思われる環境の整備を図ることが重要であり、何よりまた、子の利益の確保のためには、総合的に各種の支援等の取組を充実させることが重要です。
法制審議会家族法制部会において、民法等の改正内容を示す要綱案の取りまとめに加えて附帯決議がされ、総会でもこれが認められております。この附帯決議には、改正法の内容の適切な周知を求めること、各種支援についての充実した取組を求めること、家庭裁判所における適切な審理を期待すること、改正法の施行状況や各種支援等に関する情報発信を求めること、これらの事項の実現のため、関係府省庁等が子の利益の確保を目指して協力することなどが盛り込まれております。
民法等の改正の実現が重要であることはもちろんですが、それのみで目的を達成するものではないこと、環境整備や各種支援のための総合的な取組があってこそであることにつきましても改めて指摘させていただきます。
以上でございます。御清聴ありがとうございました。
佐
熊
熊谷信太郎#5
○参考人(熊谷信太郎君) 弁護士の熊谷でございます。
私は、昭和六十二年から東京で弁護士をしておりまして、来年で約四十年の実務経験ございますが、養育費に関しまして、今お話がありました法制審議会で答申が出るまでの間にどういう検討がなされたのか、その辺を振り返りながらお話をしたいと思っております。
資料、お手元資料の横のA4の養育費の不払解消に向けた検討についてという法務省民事局の資料を御覧いただけますでしょうか。左から右に向かって時系列に沿って説明をしておりますA4横の資料であります。
左側にあります法務大臣養育費勉強会、これが、当時の森法務大臣の御指示でこのような勉強会が立ち上がりまして、令和二年から、令和二年一月から令和二年五月まで、勉強会が七回にわたって行われました。ここでは、重要な論点整理、いろんな養育費の現状について認識するとともに、どういう対策が必要かといった論点整理を行いました。
御存じのとおり、先進国の中で我が国は、残念ながら養育費の支払が三〇%を切っているという非常に低い状況でございます。それに対してどう対応したらいいのかということで様々な論点整理を行いました。養育費の取決め率の低さをどう対応するのか、一旦取り決められたものについての支払確保をどうするのか、そもそもDV被害などで話合いすらできないような場合の養育費どうするのかといった様々な問題について検討をし、令和二年五月二十九日に取りまとめを行いました。
それに基づきまして、その真ん中にあります養育費不払い解消に向けた検討会議というものが大臣の指示で立ち上がりまして、私、これの議長をさせていただきましたが、ここでより具体的な政策についての提言を行うということで、令和二年十二月の二十四日に取りまとめを行い、大臣に提出をいたしました。そういった経緯を受けて法制審議会での御議論をいただいたという、こういった流れになってくるわけであります。
私は、今回の法案に関しまして基本的には賛成の、前向きの評価をしている立場の者でございます。今、沖野参考人からも御説明がありました、養育費についての取決めをした場合の履行の確保の問題、それから、それについては先取特権が付与されたわけですが、それ以外に取決めがない場合についての法定養育費の設定ということで、大きな前進ではあると思っております。
ただ、今回の法案に関しましても、更にもっとこうしてほしいという点についての意見を述べたいと思いますので、私が関与してきました養育費の問題に限りまして、今回の民法の改正についての意見を述べたいと思います。このような機会を与えていただきまして、本当に有り難く思っております。
まず、今後、先生方に是非御認識いただいて御議論いただきたいと思う点が五点ございます。
まず一点目は、養育費の取決め率の向上のためにはどうしたらいいのかということでございまして、養育費の取決めに関しまして、今回の法案では、協議離婚に関して公的な関与の手続を取ることは見送られています。これは今後の検討課題かと思います。
例えば、これ勉強会での議論でも出てきたんでありますが、離婚届を出すときに、そこに今、現行は養育費の欄というのがないんですね。養育費に関しての取決めをどうするという欄を設けておくと。そして、それについて、その記載を必要的なものとすると、その養育費の同意が離婚、協議離婚の要件という形になるわけですけれど、そこまで一足飛びにいかなくても、任意的なものとしてでもそういった記載欄を設けておくということは必要ではないだろうかと思いますし、それから、もちろん諸外国ではその養育費の合意があることが離婚、協議離婚の条件になっている国もあるというふうに聞いておりますので、これは将来的にはそういう方向を目指していただきたいなというふうに思うところであります。
ただ、DV被害の方などの御意見を聞くと、そういう養育費の支払合意を協議離婚の成立要件にしてしまうと、DV被害の方の場合にはもう離婚ができなくなってしまうということもあるようですので、そこの点に関してのDV被害の方に関する対策、DV被害の方が離婚するための対策ですね、それは別途必要、手当てが必要だろうと思いますけれども、子供のやはり養育費を確保するという大きな目的の上では、将来的には協議離婚の成立に養育費の合意を必要とするということも考えていいのではないかなというふうに思っております。
二点目は、離婚に関する支援体制の充実ということでありまして、これ、法律はできても、結局、支援体制が十分でないとうまくワークしないということでありまして、地方自治体の相談体制、民間の相談団体の支援、こういったものも必要でありますし、一番痛感しているのは、弁護士会がやっている法テラスというのがございますけれども、これはいろんな相談機関なんですけれども、法テラスの相談案件が非常に多くて、この離婚の、協議離婚をしている養育費の問題だとか、そういった離婚していく場合の子供の対応、こういったものへの支援が十分でない、必ずしも十分でない。一生懸命やっているんですけれども、費用も予算も人員も足りないということで、この法テラスへの支援を是非先生方に御議論いただきたい、御検討いただきたいというふうに思いますし。
それから、その養育費の算定表というのがございまして、我々法律家はその養育費の算定表を用いて養育費を、家庭裁判所での離婚だとか協議離婚の場合でもそれを使うんですが、これはやはり一般の方が見てもなかなか分かりづらいという批判がございます。ですので、一人親の方でも簡単に利用できる養育費算定表を作成をしたり、もっと言えば、自動計算ツールですね、そういうものをつくって、そこに条件さえ入れればもう養育費の額も出てくるというような自動計算ツールが望ましいのではないかなと思います。
残念ながら、我が国ではそういったことへの行政の支援が非常に受け身でありまして、もっと積極的に、例えば、これ勉強会で出てきたものとしましては、フィンランドなどではそういう行政サービスはプッシュ型で行っていると。つまり、あなた、どういうニーズがありますかということを行政の側からネット上で聞いてくるということですね。自分の条件を入力すれば、こういうものは要りませんか、養育費どうですかといったものを聞いてくるような、そういうような仕組みも御検討いただきたいテーマだなというふうに考えております。
三番目は、今回の改正で盛り込まれました先取特権、それから法定養育費についてですけれども、これ大変いいことで、私は非常にこれ喜ばしいと思っておりますが、留意していただきたい点としましては、これの金額ですね、法定養育費の金額、それから先取特権の被担保債権の範囲、これについては、法令に書き込まれてはおりませんで、法務省令で決めるということになっております。その法務省令で決める際に、子供の食費とか教育費など、子供の健やかな成長のために必要不可欠なものが、現実に必要な額が支払われるような配慮を是非お願いしたいと思っております。
法務省令で決めるということで、その金額が非常に低額になってしまうのではないかという懸念を、これ杞憂だといいんですけれども、若干持っておりまして、というのは、制度として法定養育費などは非常に補充的であるというような御説明がされることがあるものですから、そういう意味で、この点に関して現実的に生活できる金額を設定していただくように先生方からも是非御検討いただきたいなと思っております。
四番目が、養育費の不払率が、余りにもその不払の率が高いものですから、これを減少するための更なる措置としまして、悪質な不払者に対するペナルティー、ないしは支払っていく者に対するインセンティブというものを導入していただくことを御検討いただきたいと思っております。
この考え方は、悪質なと申し上げたのは、支払能力があるのにということです。養育費の不払というのは、本来的にはこれは不作為による子供への経済的虐待であるというふうに捉えることができると思います。そうであるなら、不作為によって子供に対して経済的な虐待を与えるようなケースに対してはペナルティーを与えるということも十分検討に値するのではないかというふうに思います。
諸外国の例では、氏名を公表する、不払者のですね、氏名を公表する、あるいは運転免許とかパスポートの資格を停止するというようなすごいことをやる国もあるわけです。
また、賃金を不払、賃金不払の場合には付加金制度というのがございますけれども、この付加金制度を養育費にも導入をするであるとか、あるいは遅延損害金を法定利息を上回る形で養育費については設定するとか、養育費債権に関して、もう諦めてしまう親も多いんですけれども、これを、消滅時効の期間を延長するとか、かなり思い切った踏み込んだ措置もとっていかないと、先進国で最低というような恥ずかしい状況を改善することがなかなか難しいんじゃないかというふうに考えております。一方で、つまり、これらは、養育費の不払を許さないぞという国としてのメッセージ、これを打ち出していっていただきたいというふうに思うわけであります。
一方で、支払った人へのインセンティブ、御褒美として、例えば養育費を支払った場合の控除ですね、控除制度、いろんな、扶養控除などありますけど、その控除制度の中に養育費の支払を位置付けていくということも一つの方法ではないだろうかと思っております。
そして、その不払解消への国の積極的な関与としまして、いわゆる代理強制徴収制度、お給料の源泉徴収などと同じように、養育費の給料からの天引きなどの法律的な強制徴収といったものも御検討いただければというふうに思います。これは将来的なものだと思いますけれども、そういった御検討をいただきたいと思います。
そして最後に、これは非常にハードル高いかもしれませんけれども、国による立替払制度の導入、これも是非御検討いただきたいところだと思います。
北欧諸国などでは現実にこれ導入されて、非常に支援対象も広く、期間も長期にわたっておりますし、韓国でも同様の制度が、少し規模は小さいですけれども、あるわけであります。これは要するに、DV被害その他もあるでしょうし、合意が残念ながらできないという場合に、今日の御飯、あしたの子供の御飯を確保するために国が立て替えてまず養育費を払って、それを債務者から、義務者から徴収していくという考え方であります。
これができれば非常に養育費不払に対してのその解消への大きな進歩になると思いますが、問題点ももちろんあるわけでありまして、立て替えた金額の回収をどういうふうにやるのか。サービサーを仮に使うにしても、サービサー法の改正で特定債権の範囲を変える必要ありますし、そういった問題がありますし、それから、養育費だけをそういうふうな特別扱いといいますか、ほかにもいろいろ犯罪被害者その他いる中でこういうものを導入していくということになりますと、やはりなぜ養育費を特別扱いするのかの国民のコンセンサスを得ながら進めていく必要があると思いますので、是非、あしたの日本を支える子供たちの生きる基盤になる制度として御検討いただければと思います。
私からのお話は以上でございます。御清聴ありがとうございました。
この発言だけを見る →私は、昭和六十二年から東京で弁護士をしておりまして、来年で約四十年の実務経験ございますが、養育費に関しまして、今お話がありました法制審議会で答申が出るまでの間にどういう検討がなされたのか、その辺を振り返りながらお話をしたいと思っております。
資料、お手元資料の横のA4の養育費の不払解消に向けた検討についてという法務省民事局の資料を御覧いただけますでしょうか。左から右に向かって時系列に沿って説明をしておりますA4横の資料であります。
左側にあります法務大臣養育費勉強会、これが、当時の森法務大臣の御指示でこのような勉強会が立ち上がりまして、令和二年から、令和二年一月から令和二年五月まで、勉強会が七回にわたって行われました。ここでは、重要な論点整理、いろんな養育費の現状について認識するとともに、どういう対策が必要かといった論点整理を行いました。
御存じのとおり、先進国の中で我が国は、残念ながら養育費の支払が三〇%を切っているという非常に低い状況でございます。それに対してどう対応したらいいのかということで様々な論点整理を行いました。養育費の取決め率の低さをどう対応するのか、一旦取り決められたものについての支払確保をどうするのか、そもそもDV被害などで話合いすらできないような場合の養育費どうするのかといった様々な問題について検討をし、令和二年五月二十九日に取りまとめを行いました。
それに基づきまして、その真ん中にあります養育費不払い解消に向けた検討会議というものが大臣の指示で立ち上がりまして、私、これの議長をさせていただきましたが、ここでより具体的な政策についての提言を行うということで、令和二年十二月の二十四日に取りまとめを行い、大臣に提出をいたしました。そういった経緯を受けて法制審議会での御議論をいただいたという、こういった流れになってくるわけであります。
私は、今回の法案に関しまして基本的には賛成の、前向きの評価をしている立場の者でございます。今、沖野参考人からも御説明がありました、養育費についての取決めをした場合の履行の確保の問題、それから、それについては先取特権が付与されたわけですが、それ以外に取決めがない場合についての法定養育費の設定ということで、大きな前進ではあると思っております。
ただ、今回の法案に関しましても、更にもっとこうしてほしいという点についての意見を述べたいと思いますので、私が関与してきました養育費の問題に限りまして、今回の民法の改正についての意見を述べたいと思います。このような機会を与えていただきまして、本当に有り難く思っております。
まず、今後、先生方に是非御認識いただいて御議論いただきたいと思う点が五点ございます。
まず一点目は、養育費の取決め率の向上のためにはどうしたらいいのかということでございまして、養育費の取決めに関しまして、今回の法案では、協議離婚に関して公的な関与の手続を取ることは見送られています。これは今後の検討課題かと思います。
例えば、これ勉強会での議論でも出てきたんでありますが、離婚届を出すときに、そこに今、現行は養育費の欄というのがないんですね。養育費に関しての取決めをどうするという欄を設けておくと。そして、それについて、その記載を必要的なものとすると、その養育費の同意が離婚、協議離婚の要件という形になるわけですけれど、そこまで一足飛びにいかなくても、任意的なものとしてでもそういった記載欄を設けておくということは必要ではないだろうかと思いますし、それから、もちろん諸外国ではその養育費の合意があることが離婚、協議離婚の条件になっている国もあるというふうに聞いておりますので、これは将来的にはそういう方向を目指していただきたいなというふうに思うところであります。
ただ、DV被害の方などの御意見を聞くと、そういう養育費の支払合意を協議離婚の成立要件にしてしまうと、DV被害の方の場合にはもう離婚ができなくなってしまうということもあるようですので、そこの点に関してのDV被害の方に関する対策、DV被害の方が離婚するための対策ですね、それは別途必要、手当てが必要だろうと思いますけれども、子供のやはり養育費を確保するという大きな目的の上では、将来的には協議離婚の成立に養育費の合意を必要とするということも考えていいのではないかなというふうに思っております。
二点目は、離婚に関する支援体制の充実ということでありまして、これ、法律はできても、結局、支援体制が十分でないとうまくワークしないということでありまして、地方自治体の相談体制、民間の相談団体の支援、こういったものも必要でありますし、一番痛感しているのは、弁護士会がやっている法テラスというのがございますけれども、これはいろんな相談機関なんですけれども、法テラスの相談案件が非常に多くて、この離婚の、協議離婚をしている養育費の問題だとか、そういった離婚していく場合の子供の対応、こういったものへの支援が十分でない、必ずしも十分でない。一生懸命やっているんですけれども、費用も予算も人員も足りないということで、この法テラスへの支援を是非先生方に御議論いただきたい、御検討いただきたいというふうに思いますし。
それから、その養育費の算定表というのがございまして、我々法律家はその養育費の算定表を用いて養育費を、家庭裁判所での離婚だとか協議離婚の場合でもそれを使うんですが、これはやはり一般の方が見てもなかなか分かりづらいという批判がございます。ですので、一人親の方でも簡単に利用できる養育費算定表を作成をしたり、もっと言えば、自動計算ツールですね、そういうものをつくって、そこに条件さえ入れればもう養育費の額も出てくるというような自動計算ツールが望ましいのではないかなと思います。
残念ながら、我が国ではそういったことへの行政の支援が非常に受け身でありまして、もっと積極的に、例えば、これ勉強会で出てきたものとしましては、フィンランドなどではそういう行政サービスはプッシュ型で行っていると。つまり、あなた、どういうニーズがありますかということを行政の側からネット上で聞いてくるということですね。自分の条件を入力すれば、こういうものは要りませんか、養育費どうですかといったものを聞いてくるような、そういうような仕組みも御検討いただきたいテーマだなというふうに考えております。
三番目は、今回の改正で盛り込まれました先取特権、それから法定養育費についてですけれども、これ大変いいことで、私は非常にこれ喜ばしいと思っておりますが、留意していただきたい点としましては、これの金額ですね、法定養育費の金額、それから先取特権の被担保債権の範囲、これについては、法令に書き込まれてはおりませんで、法務省令で決めるということになっております。その法務省令で決める際に、子供の食費とか教育費など、子供の健やかな成長のために必要不可欠なものが、現実に必要な額が支払われるような配慮を是非お願いしたいと思っております。
法務省令で決めるということで、その金額が非常に低額になってしまうのではないかという懸念を、これ杞憂だといいんですけれども、若干持っておりまして、というのは、制度として法定養育費などは非常に補充的であるというような御説明がされることがあるものですから、そういう意味で、この点に関して現実的に生活できる金額を設定していただくように先生方からも是非御検討いただきたいなと思っております。
四番目が、養育費の不払率が、余りにもその不払の率が高いものですから、これを減少するための更なる措置としまして、悪質な不払者に対するペナルティー、ないしは支払っていく者に対するインセンティブというものを導入していただくことを御検討いただきたいと思っております。
この考え方は、悪質なと申し上げたのは、支払能力があるのにということです。養育費の不払というのは、本来的にはこれは不作為による子供への経済的虐待であるというふうに捉えることができると思います。そうであるなら、不作為によって子供に対して経済的な虐待を与えるようなケースに対してはペナルティーを与えるということも十分検討に値するのではないかというふうに思います。
諸外国の例では、氏名を公表する、不払者のですね、氏名を公表する、あるいは運転免許とかパスポートの資格を停止するというようなすごいことをやる国もあるわけです。
また、賃金を不払、賃金不払の場合には付加金制度というのがございますけれども、この付加金制度を養育費にも導入をするであるとか、あるいは遅延損害金を法定利息を上回る形で養育費については設定するとか、養育費債権に関して、もう諦めてしまう親も多いんですけれども、これを、消滅時効の期間を延長するとか、かなり思い切った踏み込んだ措置もとっていかないと、先進国で最低というような恥ずかしい状況を改善することがなかなか難しいんじゃないかというふうに考えております。一方で、つまり、これらは、養育費の不払を許さないぞという国としてのメッセージ、これを打ち出していっていただきたいというふうに思うわけであります。
一方で、支払った人へのインセンティブ、御褒美として、例えば養育費を支払った場合の控除ですね、控除制度、いろんな、扶養控除などありますけど、その控除制度の中に養育費の支払を位置付けていくということも一つの方法ではないだろうかと思っております。
そして、その不払解消への国の積極的な関与としまして、いわゆる代理強制徴収制度、お給料の源泉徴収などと同じように、養育費の給料からの天引きなどの法律的な強制徴収といったものも御検討いただければというふうに思います。これは将来的なものだと思いますけれども、そういった御検討をいただきたいと思います。
そして最後に、これは非常にハードル高いかもしれませんけれども、国による立替払制度の導入、これも是非御検討いただきたいところだと思います。
北欧諸国などでは現実にこれ導入されて、非常に支援対象も広く、期間も長期にわたっておりますし、韓国でも同様の制度が、少し規模は小さいですけれども、あるわけであります。これは要するに、DV被害その他もあるでしょうし、合意が残念ながらできないという場合に、今日の御飯、あしたの子供の御飯を確保するために国が立て替えてまず養育費を払って、それを債務者から、義務者から徴収していくという考え方であります。
これができれば非常に養育費不払に対してのその解消への大きな進歩になると思いますが、問題点ももちろんあるわけでありまして、立て替えた金額の回収をどういうふうにやるのか。サービサーを仮に使うにしても、サービサー法の改正で特定債権の範囲を変える必要ありますし、そういった問題がありますし、それから、養育費だけをそういうふうな特別扱いといいますか、ほかにもいろいろ犯罪被害者その他いる中でこういうものを導入していくということになりますと、やはりなぜ養育費を特別扱いするのかの国民のコンセンサスを得ながら進めていく必要があると思いますので、是非、あしたの日本を支える子供たちの生きる基盤になる制度として御検討いただければと思います。
私からのお話は以上でございます。御清聴ありがとうございました。
佐
木
木村草太#7
○参考人(木村草太君) 私の専攻は憲法学です。私は、子供の権利と家庭内アビューズの被害者の権利の観点から共同親権の問題を研究しています。
現在審議中の民法改正案には非合意強制型の共同親権が含まれています。この点について意見を述べます。
共同親権の話をすると、別居親が子に会う会わないの話を始める人がいます。しかし、これから議論する親権とは、子供の医療や教育、引っ越しなどの決定権のことであり、面会交流とは別の制度です。面会交流と混同せずに話を聞いてください。
また、これまで説明されてきた離婚後共同親権のメリットは、父母が前向きに話し合える関係にある場合、つまり合意型共同親権のメリットです。非合意強制型のメリットではありません。合意型と非合意強制型は全く別の制度ですから、両者を分けて議論をしてください。
民法改正法案第八百十九条七項は、父母の一方あるいは双方が共同親権を拒否しても、裁判所が強制的に共同親権を命じ得る内容です。衆議院では、合意がある場合に限定する修正案が検討されました。しかし、衆議院多数派は非合意強制型が必要だと言って譲りませんでした。この法案には余りにも多くの問題があります。
第一に、父母の一方が共同親権に合意しない場合とは、現に父母に協力関係がなく、話合いができない関係です。こうした父母に共同親権を命じれば、子供の医療や教育の決定が停滞します。つまり、非合意強制型の共同親権は、子供から適時の決定を受ける権利を奪います。
第二に、法務省は、法案八百二十四条の二第一項によって、共同親権下でも日常行為、急迫の場合であれば父母がそれぞれ単独で親権を行使できるから適時の決定ができると説明してきました。しかし、この条文によれば、学校のプールや修学旅行、病院でのワクチン接種や手術の予約などの決定をいつでももう一方の父母がキャンセルできます。結果、いつまでも最終決定できない状態が生まれます。病院や学校は、どちらの要求を拒否しても損害賠償を請求される危険にさらされます。条文の狙いとは裏腹に、病院や学校がトラブル回避のため、日常行為についても一律に父母双方のサインを要求するようになる可能性もあるでしょう。
この問題は、日常行為、急迫の決定について優先する側を指定しない限り解決しません。ところが、この問題を指摘された法務省の回答は、こうすれば解決できるではありませんでした。驚くべきことに、その問題は婚姻中の父母について現行法の下でも生じ得ますと答えたのです。
私は、この回答を聞いたとき耳を疑いました。婚姻中にも問題が生じているなら婚姻中の問題を解決する手段をつくるべきです。離婚する人の中には、子供をめぐる決定への困難が離婚原因となっている人もいます。離婚をしてもなお同じ問題が継続するような、場合によってはより悪化するような制度をつくるのは言語道断です。
そもそも、婚姻は非合意で強制される関係ではありません。合意に基づく父母の強い信頼と協力があってこそ成立する関係です。原因は様々あれど、信頼や協力が失われた場合に離婚するのです。法務省は、婚姻中でも起こり得る問題だから離婚後にそれが継続してもいいと本気で考えているのでしょうか。
第三に、法務省は、法案八百十七条の十二第二項に父母の互いの人格尊重義務が定められているから、適時の決定を邪魔する共同親権の行使はできないと言い続けています。しかし、義務違反があったとき、誰が、どうやって、どのぐらいの時間で是正するのでしょうか。法務省は、相互尊重義務違反の場合、何時間、何日以内に是正されるのかを説明していません。その是正の際には弁護士に依頼するなど、経済的コストも大きな負担となることでしょう。子供の適時の決定を得る権利に興味がないと評価せざるを得ません。
実は、政府自身、過去に、安倍首相や山下法務大臣の国会答弁で、離婚後共同親権には子が適時適切な決定を得られなくなる危険があると指摘してきました。今回の法案の非合意強制型の共同親権には、政府自身が指摘してきた課題すらクリアできていないという問題があります。
第四に、法案八百十九条七項は、共同親権を強制した方が子供の利益になる場合とはどのような場合なのかを全く規定していません。適時適切な決定のための信頼、協力関係がある場合という文言すらありません。これでは、裁判所が法律から指針を得られるはずがありません。場合によっては、適時の決定が得られなくなるケースで共同親権を命じかねないでしょう。
法務省は、法制審議会で共同親権を強制すべき具体例が挙がったと主張しています。しかし、法制審議会で挙げられた具体例は、小粥太郎委員が示した別居親が子育てに無関心である場合と、佐野みゆき幹事が示した同居親に親権行使に支障を来すほどの精神疾患がある場合だけです。
無関心親に共同親権を持たせる小粥ケースが、なぜ子供の利益になるのでしょうか。日々子育てに奮闘しているであろう一方の親に、無関心親との調整という著しい負担を課すことになるだけです。また、親権行使に支障を来すほどの病がある佐野ケースなら、もう一方の親の単独親権とするのが適切でしょう。さらに、佐野幹事の発言の中には、今回の参議院法務委員会でも話題となった精神疾患の方への差別が表れているようにも感じます。
法制審議会の非合意強制型の共同親権の議論は極めて粗雑です。もう一度、離婚家庭の現実を適切に理解している専門家を交えて審議会をやり直すべきでしょう。
理論的に考えても、同居親に親権を奪うほどの問題がなく、かつ話合いは無理と判断して共同親権を拒否している場合に別居親との話合いを強制することは、問題のない同居親に無意味にストレスを与え、子供のために使えるはずの時間と気力を奪う結果になるはずです。
第五に、法務省は、DV、虐待ケースは除外する条文になっていると言い続けています。しかし、法案八百十九条七項の条文は、将来のDV、虐待のおそれがある場合を除外するだけです。過去にDV、虐待があったことが明白で、被害者がその事実に恐怖を感じ、あるいは許せないという気持ちで共同親権に合意しない場合でも、もう止まった、反省していると認定されれば共同親権になり得る内容です。
実際、同じような内容を持つアメリカのニューヨーク州には、父が十五歳だった母に不同意性交の罪を働いた事案で、母側が拒否しているのに、もう反省しているという理由で共同親権を命じた例があります。
今回の法案の条文でも、夫婦間の殺人未遂や子供への性虐待があり、それを理由に共同親権を拒否している場合ですら、裁判所が反省や加害行為の停止を認めれば共同親権を命じ得る内容です。そうしたくないなら、はっきりと、過去にDV、虐待があった場合は被害者の同意がない限り絶対に共同親権にしてはいけないと書くべきでしょう。
相手の反省を受け入れるかどうかを判断できるのは被害者だけです。その人が話合いや共同行為の相手として安心できるかを判断できるのも、その人だけです。しかし、今回の法案では、被害者が自分の意思で共同親権を拒否できないのです。だから、被害者たちは恐怖を感じているのです。
DV、虐待をめぐっては、家庭内のことで証拠の確保が困難であること、当人が多大な苦痛を感じていても第三者の理解を得られにくいことなどから、DV、虐待の認定そのものが困難であるという深刻な問題もあります。今回の法案は、DV、虐待を軽視し、被害者を置き去りにするものです。
以上が、非合意強制型の共同親権を廃案にすべき理由です。
そのほかにも、今回の法案には、DVや虐待を主張すること自体が相互の人格尊重義務違反として扱われる危険、被害者やその代理人、支援者への嫌がらせや濫訴への対策がないこと、家裁のリソース不足に対する具体的改善策の不在など、たくさんの問題があります。
今回の民法改正法案には、子供たち自身を含む家庭内アビューズの被害者から、この条文では安心できない、再び加害者との関係を強制されるという不安と恐怖の声が上がり続けてきました。被害者の方を安心させるのは簡単です。合意型の共同親権に限定すればよいのです。共同親権のメリットとされてきたものも、それで実現できます。
しかし、被害者の声は切り捨てられ続けてきました。法制審議会では、DV保護法を専門とする戒能民江委員が、この要綱では被害者を守れないという理由で反対しました。しかし、DV保護を専門としていない委員の多数決で要綱は押し切られました。
衆議院では、DV被害の当事者が、この法案が可決されれば再び加害者と対峙しなければならず、場合によっては共同親権を強制されるという恐怖を涙声で訴えました。衆議院はこの方が安心を得られるよう努力したでしょうか。そうは思えません。
なぜ、恐怖を訴える声が届かないのでしょうか。法務省や衆議院多数派は、DV被害の訴えを極端な被害妄想と見て、その主張をまた始まったと嘲笑しているように見えます。
そもそも、法務省は、父母が共に関わるべきだ、どんな親でも子の利益のために行動できると強調し続けてきました。父母の関わりは良いものと留保なく断言する裏側には、シングルの子育てはまともではないという蔑みの感情すら見て取れます。
被害者の訴えを退け続ける態度もシングル家庭への差別に由来しているのではないでしょうか。シングルでも一生懸命、子供を幸せにしようと努力している親たちがいます。加害的な親と離れて、やっと安心できる生活を手に入れた離婚家庭の子供たちもいます。シングル家庭への差別をやめ、彼ら、彼女らの声に耳を傾けるべきです。
声を切り捨てられているのは日本の被害者だけではありません。
イギリスのブリストル大学のヘスター教授も次のように指摘します。離婚後の親子コンタクトを推奨する専門家たちは、DVを解決済みの問題、既に過去のものと見て、DV被害をまるで違う惑星のもののように扱っていると。
アメリカのジョージ・ワシントン大学のマイヤー教授は、アメリカの裁判所で、子供が別居親との関わりを拒否する場合、別居親の加害行為ではなく同居親の悪口を疑うべきだという理論が蔓延しているという統計研究を発表しています。マイヤー教授は、アメリカ家族法学でDV、虐待が周縁部に追いやられている、アビューズの問題を中心に置かなくてはならないとも指摘しています。
ドイツやフランスでは、DV、虐待があっても、特別な手続を取って裁判所が認めない限り共同親権です。ヨーロッパのDVの専門家や支援者からは、DV事案を除去できるような法改正の必要が指摘され続けていますが、立法は対応しません。
オーストラリアでは、薬物依存の父親から逃れようと子連れで転居した母親が無断転居を責められ、共同親権を命じられた事案があります。オーストラリアの家族法の専門家の間では、性虐待の過去を持つ親と子供とのコンタクトをどうやって実現すべきかが検討すべき論点として扱われていました。オーストラリア法にも、被害者の声を軽視してきたという批判があります。
欧米では共同親権が主流というスローガンばかりが独り歩きしていますが、どの国でもDV被害者の声はかき消され、あるいは虐待の被害者の声はかき消され、その支援者は嘲笑されているのです。日本の家族法の教科書でも、DV、虐待の問題が中心に置かれているとは到底言えません。日本の民法学、家族法学が、どこまで欧米の、そして日本の被害者たちの声に向き合ってきたでしょうか。
このように検討してみると、なぜ日本の現行法はそんなにまともなのかという疑問が浮かぶのではないでしょうか。その答えは、憲法二十四条と、それによる戦後家族法の大改正にあります。
日本の法律家の中には、欧米に比べ日本の法律は遅れていると考える人が多くいます。例えば、同性婚の問題に関わっている人は、日本の取組は余りに遅いと感じているでしょう。そうした分野があるのは事実です。
しかし、男女平等の親権法の実現はヨーロッパのよりも長い歴史を持っています。フランスやドイツでは、父権に基づく男性優位の制度が二十世紀後半まで続きました。これに対し、日本は、新憲法を制定した一九四〇年代に、憲法二十四条の男女平等の理念に基づく親権法を実現しました。婚姻中の共同親権を導入し、離婚後は女性であっても子供の親権を持てるようにしたのです。
日本の新しい憲法、民法が重視したのは、共同行為は合意がない限り強制できないという当事者の意思を尊重する姿勢です。民法の旧規定の下では、戸主の同意がないと婚姻ができず、父母や夫になる男性が女性に婚姻を強要することもありました。新憲法はこれを反省し、両者の合意のみで婚姻の成立を認め、また、婚姻の効果を合意なしに強制することを禁じました。
憲法二十四条は、合意なしに強制してはいけない婚姻の効果があることを前提としています。合意なしに強制してはいけない婚姻の効果の範囲をどう理解すべきか。その中に、子供の医療や教育についての話合いの義務付けが入っていないのか。政府は真面目に検討すべきです。
この点、政府は、同性婚訴訟の書面で、憲法二十四条に言う婚姻とは共同で子育てをする関係なのだと言い続けています。子供の共同親権を婚姻の中核的効果と考えていることは明らかです。これを前提にすると、合意もなしに共同の子育てを強制することは憲法二十四条の理念に反しています。
戦後の民法改正をリードした我妻栄先生は、父母が離婚するときは子を監護すべき温床が破れると言っています。父母が共につくる温床は、父母の真摯な合意によってのみつくられるのです。
我妻先生は、ある最高裁判決について、夫婦の力関係の差が現にあることを強調した上で、夫婦を形式的に平等に扱えば、その争いはとかく力の強い夫の勝利となり、夫婦の平等は実現されないと批判しました。もちろん、夫は常に強く、妻が常に弱いということはなく、逆のケースもあるでしょう。しかし、協力関係が築けない背景に、力関係の大きな格差があることは少なくありません。そして、その格差は、当事者の一緒にいることのつらさとしてしか表現できないこともしばしばあるのです。
我妻先生は、形式論や理想論だけでなく、それがどんな現実をもたらすのかを含めて、豊かな想像力を持って家族法を考えました。先人は、子供の利益と男女の実質的平等への深い洞察の上で現在の民法を作り上げました。私たちがなすべきは、憲法の当事者の合意の尊重の理念と、戦後民法を作り上げた先人の遺産を受け継ぐことです。大事な遺産を台なしにすることではありません。
参議院議員の皆様は、被害者の声を無視して、差別し嘲笑する側に付くのか、子供が適時に決定を得られる権利と被害者が安心できる環境を得られる権利を守る側に付くのか、重大な岐路に立っています。是非このことを自覚して法案の審議に臨んでください。
終わります。
この発言だけを見る →現在審議中の民法改正案には非合意強制型の共同親権が含まれています。この点について意見を述べます。
共同親権の話をすると、別居親が子に会う会わないの話を始める人がいます。しかし、これから議論する親権とは、子供の医療や教育、引っ越しなどの決定権のことであり、面会交流とは別の制度です。面会交流と混同せずに話を聞いてください。
また、これまで説明されてきた離婚後共同親権のメリットは、父母が前向きに話し合える関係にある場合、つまり合意型共同親権のメリットです。非合意強制型のメリットではありません。合意型と非合意強制型は全く別の制度ですから、両者を分けて議論をしてください。
民法改正法案第八百十九条七項は、父母の一方あるいは双方が共同親権を拒否しても、裁判所が強制的に共同親権を命じ得る内容です。衆議院では、合意がある場合に限定する修正案が検討されました。しかし、衆議院多数派は非合意強制型が必要だと言って譲りませんでした。この法案には余りにも多くの問題があります。
第一に、父母の一方が共同親権に合意しない場合とは、現に父母に協力関係がなく、話合いができない関係です。こうした父母に共同親権を命じれば、子供の医療や教育の決定が停滞します。つまり、非合意強制型の共同親権は、子供から適時の決定を受ける権利を奪います。
第二に、法務省は、法案八百二十四条の二第一項によって、共同親権下でも日常行為、急迫の場合であれば父母がそれぞれ単独で親権を行使できるから適時の決定ができると説明してきました。しかし、この条文によれば、学校のプールや修学旅行、病院でのワクチン接種や手術の予約などの決定をいつでももう一方の父母がキャンセルできます。結果、いつまでも最終決定できない状態が生まれます。病院や学校は、どちらの要求を拒否しても損害賠償を請求される危険にさらされます。条文の狙いとは裏腹に、病院や学校がトラブル回避のため、日常行為についても一律に父母双方のサインを要求するようになる可能性もあるでしょう。
この問題は、日常行為、急迫の決定について優先する側を指定しない限り解決しません。ところが、この問題を指摘された法務省の回答は、こうすれば解決できるではありませんでした。驚くべきことに、その問題は婚姻中の父母について現行法の下でも生じ得ますと答えたのです。
私は、この回答を聞いたとき耳を疑いました。婚姻中にも問題が生じているなら婚姻中の問題を解決する手段をつくるべきです。離婚する人の中には、子供をめぐる決定への困難が離婚原因となっている人もいます。離婚をしてもなお同じ問題が継続するような、場合によってはより悪化するような制度をつくるのは言語道断です。
そもそも、婚姻は非合意で強制される関係ではありません。合意に基づく父母の強い信頼と協力があってこそ成立する関係です。原因は様々あれど、信頼や協力が失われた場合に離婚するのです。法務省は、婚姻中でも起こり得る問題だから離婚後にそれが継続してもいいと本気で考えているのでしょうか。
第三に、法務省は、法案八百十七条の十二第二項に父母の互いの人格尊重義務が定められているから、適時の決定を邪魔する共同親権の行使はできないと言い続けています。しかし、義務違反があったとき、誰が、どうやって、どのぐらいの時間で是正するのでしょうか。法務省は、相互尊重義務違反の場合、何時間、何日以内に是正されるのかを説明していません。その是正の際には弁護士に依頼するなど、経済的コストも大きな負担となることでしょう。子供の適時の決定を得る権利に興味がないと評価せざるを得ません。
実は、政府自身、過去に、安倍首相や山下法務大臣の国会答弁で、離婚後共同親権には子が適時適切な決定を得られなくなる危険があると指摘してきました。今回の法案の非合意強制型の共同親権には、政府自身が指摘してきた課題すらクリアできていないという問題があります。
第四に、法案八百十九条七項は、共同親権を強制した方が子供の利益になる場合とはどのような場合なのかを全く規定していません。適時適切な決定のための信頼、協力関係がある場合という文言すらありません。これでは、裁判所が法律から指針を得られるはずがありません。場合によっては、適時の決定が得られなくなるケースで共同親権を命じかねないでしょう。
法務省は、法制審議会で共同親権を強制すべき具体例が挙がったと主張しています。しかし、法制審議会で挙げられた具体例は、小粥太郎委員が示した別居親が子育てに無関心である場合と、佐野みゆき幹事が示した同居親に親権行使に支障を来すほどの精神疾患がある場合だけです。
無関心親に共同親権を持たせる小粥ケースが、なぜ子供の利益になるのでしょうか。日々子育てに奮闘しているであろう一方の親に、無関心親との調整という著しい負担を課すことになるだけです。また、親権行使に支障を来すほどの病がある佐野ケースなら、もう一方の親の単独親権とするのが適切でしょう。さらに、佐野幹事の発言の中には、今回の参議院法務委員会でも話題となった精神疾患の方への差別が表れているようにも感じます。
法制審議会の非合意強制型の共同親権の議論は極めて粗雑です。もう一度、離婚家庭の現実を適切に理解している専門家を交えて審議会をやり直すべきでしょう。
理論的に考えても、同居親に親権を奪うほどの問題がなく、かつ話合いは無理と判断して共同親権を拒否している場合に別居親との話合いを強制することは、問題のない同居親に無意味にストレスを与え、子供のために使えるはずの時間と気力を奪う結果になるはずです。
第五に、法務省は、DV、虐待ケースは除外する条文になっていると言い続けています。しかし、法案八百十九条七項の条文は、将来のDV、虐待のおそれがある場合を除外するだけです。過去にDV、虐待があったことが明白で、被害者がその事実に恐怖を感じ、あるいは許せないという気持ちで共同親権に合意しない場合でも、もう止まった、反省していると認定されれば共同親権になり得る内容です。
実際、同じような内容を持つアメリカのニューヨーク州には、父が十五歳だった母に不同意性交の罪を働いた事案で、母側が拒否しているのに、もう反省しているという理由で共同親権を命じた例があります。
今回の法案の条文でも、夫婦間の殺人未遂や子供への性虐待があり、それを理由に共同親権を拒否している場合ですら、裁判所が反省や加害行為の停止を認めれば共同親権を命じ得る内容です。そうしたくないなら、はっきりと、過去にDV、虐待があった場合は被害者の同意がない限り絶対に共同親権にしてはいけないと書くべきでしょう。
相手の反省を受け入れるかどうかを判断できるのは被害者だけです。その人が話合いや共同行為の相手として安心できるかを判断できるのも、その人だけです。しかし、今回の法案では、被害者が自分の意思で共同親権を拒否できないのです。だから、被害者たちは恐怖を感じているのです。
DV、虐待をめぐっては、家庭内のことで証拠の確保が困難であること、当人が多大な苦痛を感じていても第三者の理解を得られにくいことなどから、DV、虐待の認定そのものが困難であるという深刻な問題もあります。今回の法案は、DV、虐待を軽視し、被害者を置き去りにするものです。
以上が、非合意強制型の共同親権を廃案にすべき理由です。
そのほかにも、今回の法案には、DVや虐待を主張すること自体が相互の人格尊重義務違反として扱われる危険、被害者やその代理人、支援者への嫌がらせや濫訴への対策がないこと、家裁のリソース不足に対する具体的改善策の不在など、たくさんの問題があります。
今回の民法改正法案には、子供たち自身を含む家庭内アビューズの被害者から、この条文では安心できない、再び加害者との関係を強制されるという不安と恐怖の声が上がり続けてきました。被害者の方を安心させるのは簡単です。合意型の共同親権に限定すればよいのです。共同親権のメリットとされてきたものも、それで実現できます。
しかし、被害者の声は切り捨てられ続けてきました。法制審議会では、DV保護法を専門とする戒能民江委員が、この要綱では被害者を守れないという理由で反対しました。しかし、DV保護を専門としていない委員の多数決で要綱は押し切られました。
衆議院では、DV被害の当事者が、この法案が可決されれば再び加害者と対峙しなければならず、場合によっては共同親権を強制されるという恐怖を涙声で訴えました。衆議院はこの方が安心を得られるよう努力したでしょうか。そうは思えません。
なぜ、恐怖を訴える声が届かないのでしょうか。法務省や衆議院多数派は、DV被害の訴えを極端な被害妄想と見て、その主張をまた始まったと嘲笑しているように見えます。
そもそも、法務省は、父母が共に関わるべきだ、どんな親でも子の利益のために行動できると強調し続けてきました。父母の関わりは良いものと留保なく断言する裏側には、シングルの子育てはまともではないという蔑みの感情すら見て取れます。
被害者の訴えを退け続ける態度もシングル家庭への差別に由来しているのではないでしょうか。シングルでも一生懸命、子供を幸せにしようと努力している親たちがいます。加害的な親と離れて、やっと安心できる生活を手に入れた離婚家庭の子供たちもいます。シングル家庭への差別をやめ、彼ら、彼女らの声に耳を傾けるべきです。
声を切り捨てられているのは日本の被害者だけではありません。
イギリスのブリストル大学のヘスター教授も次のように指摘します。離婚後の親子コンタクトを推奨する専門家たちは、DVを解決済みの問題、既に過去のものと見て、DV被害をまるで違う惑星のもののように扱っていると。
アメリカのジョージ・ワシントン大学のマイヤー教授は、アメリカの裁判所で、子供が別居親との関わりを拒否する場合、別居親の加害行為ではなく同居親の悪口を疑うべきだという理論が蔓延しているという統計研究を発表しています。マイヤー教授は、アメリカ家族法学でDV、虐待が周縁部に追いやられている、アビューズの問題を中心に置かなくてはならないとも指摘しています。
ドイツやフランスでは、DV、虐待があっても、特別な手続を取って裁判所が認めない限り共同親権です。ヨーロッパのDVの専門家や支援者からは、DV事案を除去できるような法改正の必要が指摘され続けていますが、立法は対応しません。
オーストラリアでは、薬物依存の父親から逃れようと子連れで転居した母親が無断転居を責められ、共同親権を命じられた事案があります。オーストラリアの家族法の専門家の間では、性虐待の過去を持つ親と子供とのコンタクトをどうやって実現すべきかが検討すべき論点として扱われていました。オーストラリア法にも、被害者の声を軽視してきたという批判があります。
欧米では共同親権が主流というスローガンばかりが独り歩きしていますが、どの国でもDV被害者の声はかき消され、あるいは虐待の被害者の声はかき消され、その支援者は嘲笑されているのです。日本の家族法の教科書でも、DV、虐待の問題が中心に置かれているとは到底言えません。日本の民法学、家族法学が、どこまで欧米の、そして日本の被害者たちの声に向き合ってきたでしょうか。
このように検討してみると、なぜ日本の現行法はそんなにまともなのかという疑問が浮かぶのではないでしょうか。その答えは、憲法二十四条と、それによる戦後家族法の大改正にあります。
日本の法律家の中には、欧米に比べ日本の法律は遅れていると考える人が多くいます。例えば、同性婚の問題に関わっている人は、日本の取組は余りに遅いと感じているでしょう。そうした分野があるのは事実です。
しかし、男女平等の親権法の実現はヨーロッパのよりも長い歴史を持っています。フランスやドイツでは、父権に基づく男性優位の制度が二十世紀後半まで続きました。これに対し、日本は、新憲法を制定した一九四〇年代に、憲法二十四条の男女平等の理念に基づく親権法を実現しました。婚姻中の共同親権を導入し、離婚後は女性であっても子供の親権を持てるようにしたのです。
日本の新しい憲法、民法が重視したのは、共同行為は合意がない限り強制できないという当事者の意思を尊重する姿勢です。民法の旧規定の下では、戸主の同意がないと婚姻ができず、父母や夫になる男性が女性に婚姻を強要することもありました。新憲法はこれを反省し、両者の合意のみで婚姻の成立を認め、また、婚姻の効果を合意なしに強制することを禁じました。
憲法二十四条は、合意なしに強制してはいけない婚姻の効果があることを前提としています。合意なしに強制してはいけない婚姻の効果の範囲をどう理解すべきか。その中に、子供の医療や教育についての話合いの義務付けが入っていないのか。政府は真面目に検討すべきです。
この点、政府は、同性婚訴訟の書面で、憲法二十四条に言う婚姻とは共同で子育てをする関係なのだと言い続けています。子供の共同親権を婚姻の中核的効果と考えていることは明らかです。これを前提にすると、合意もなしに共同の子育てを強制することは憲法二十四条の理念に反しています。
戦後の民法改正をリードした我妻栄先生は、父母が離婚するときは子を監護すべき温床が破れると言っています。父母が共につくる温床は、父母の真摯な合意によってのみつくられるのです。
我妻先生は、ある最高裁判決について、夫婦の力関係の差が現にあることを強調した上で、夫婦を形式的に平等に扱えば、その争いはとかく力の強い夫の勝利となり、夫婦の平等は実現されないと批判しました。もちろん、夫は常に強く、妻が常に弱いということはなく、逆のケースもあるでしょう。しかし、協力関係が築けない背景に、力関係の大きな格差があることは少なくありません。そして、その格差は、当事者の一緒にいることのつらさとしてしか表現できないこともしばしばあるのです。
我妻先生は、形式論や理想論だけでなく、それがどんな現実をもたらすのかを含めて、豊かな想像力を持って家族法を考えました。先人は、子供の利益と男女の実質的平等への深い洞察の上で現在の民法を作り上げました。私たちがなすべきは、憲法の当事者の合意の尊重の理念と、戦後民法を作り上げた先人の遺産を受け継ぐことです。大事な遺産を台なしにすることではありません。
参議院議員の皆様は、被害者の声を無視して、差別し嘲笑する側に付くのか、子供が適時に決定を得られる権利と被害者が安心できる環境を得られる権利を守る側に付くのか、重大な岐路に立っています。是非このことを自覚して法案の審議に臨んでください。
終わります。
佐
山
山崎菊乃#9
○参考人(山崎菊乃君) 山崎菊乃です。
本日は、私のお話を聞いていただける機会をいただき、本当にありがとうございます。
私は、DV防止法が施行される前の一九九七年に、三人の子供とともにシェルターに避難した経験があります。その後、二十年以上、DV被害者支援現場でシェルター活動や自立支援活動を行っております。現在、全国女性シェルターネットの共同代表であり、ふだんは北海道でシェルターの運営をしています。
まず、私の被害者としての体験談をお話しさせていただきます。
大学時代に知り合い、対等に付き合っていたはずの夫は、結婚式の日から変わり始めました。私の行動が自分の思いどおりでないと機嫌が悪くなるようになったのです。私の実家に対しては非常に攻撃的になりました。私の両親が遊びに来ると不機嫌になりました。初めてのお産は里帰り出産でした。自宅に帰るとき、実家の母がお米を十キロ私に持たせてくれました。これに対し、夫は、俺をばかにしていると実家に米を送り返した上、新生児のそばで寝ている私の顔を殴りました。掛け布団が鼻血で真っ赤になりました。翌日、私は夫に、暴力を振るうのであれば離婚すると言いました。すると、彼は、土下座をして涙を流し、離婚するくらいなら死んだ方がいいなどと言うので、私は、これほど反省しているならと離婚を思いとどまりました。
しかし、一度暴力を振るわれてしまうと夫婦の関係が全く変わるのです。夫の顔色を見て、怒らせないようにと振る舞う癖が私に付いてしまいました。彼が暴力を振るうのは自分のせいと感じ、努力しましたが、何をしても収まることはありませんでした。人格を否定され、人間扱いされないような言動が絶えずある生活は身体的暴力よりつらく、私はいつも落ち込んでいました。子供たちもいつもぴりぴりしていました。
多くの人はDV被害者になぜ逃げないのと言いますが、これまで生活してきた全てを捨てて、将来的な保証も住む場所もない未知の世界に人は簡単には飛び込んでいけません。
ところが、ある日、どなり、馬乗りになって私の首を絞める夫に向かって、長女が泣き叫びながら、父さんやめてと包丁を持って向かっていったのです。子供たちのためにと思っていた私の我慢が子供たちを大きく傷つけていたことを思い知らされ、避難するしかないと決断し、DV防止法がまだない中、民間団体が運営しているシェルターに避難しました。
先日、私は勇気を出して、当時中学三年生だった娘に包丁を持ち出したことを覚えているか聞きました。娘は、はっきり覚えている、いつもカッターを持っていて、何かあったらお母さんを助けようと思っていた、朝は泣きながら登校していたと話してくれました。何十年もたっていたんですが、ショックでした。
お手元の資料一、二〇二二年にシングルマザーサポート団体全国協議会が行ったアンケート調査の結果、一ページを御覧ください。離婚を決断した理由で一番多いのが、子供に良くない影響があったというものです。次のページ、その子供への悪影響とは何か。具体的な内容では、夫婦が対立、口論したり、自分がばかにされている様子をこれ以上子供に見せたくないが最多です。司法統計で性格の不一致とされてきた中身がこれらです。
大きな決断をして避難した先に一体何があるのか。シングルマザーの平均年収は二百万円ぐらいと言われています。ダブルワーク、トリプルワークをして、自分の健康を顧みずに働いているお母さんがたくさんいます。子供に一日三食食べさせても、自分は二食で我慢している人もたくさんいます。私も、三人の子供を抱えて生活に困窮し、生活保護を受給しました。このような大変な生活を強いられるのに逃げざるを得ないことを、どうか皆様に御理解していただきたいと思います。
日本社会のDV被害に対する認識はまだまだ薄く、暴力から逃れることも難しく、相談機関からさえ理解のない対応を受け続けています。この状況を改善することなく共同親権にすることは、逃げることしか許されない日本の被害者が更に逃げられなくなることが目に見えています。
配付資料二、ここがおかしい日本の被害者支援を見ていただくと現状が分かっていただけると思いますが、DV被害者が相談や支援を求めたときにどんな対応があるのかを時系列的に挙げてみたいと思います。
まず、一番初めの相談は、実家や友達が多いのですが、そのくらい我慢しなさい、子供がいるんだから離婚なんかしちゃ駄目といった反応は全く珍しくありません。身近な人から否定されたことで、逃げられない、DV被害を受けた自覚が持てない状況になっているわけです。
そして次、勇気を出して相談機関に行くと、あざがないから、殴られていないからDVじゃないですよね、身体的暴力に比べると大したことないよねと言われるのは本当にあるあるです。日本のDV法では、DVを身体的暴力だけではないとしています。しかし、日本中で、身体的暴力以外はDVじゃないとする運用が残念ながら行われてきました。
相談の次は一時保護になります。シェルターに避難することです。
全国の都道府県に公営のシェルターがあり、DV被害者を保護することになっていますが、資料の三を見ていただくと、婦人相談所、今は女性相談支援センターとなっていますけれども、なかなか一時保護してくれないというのが全国共通の悩みです。身体的暴力がないからシェルターは入れない、集団生活ができなければ無理、たばこ、お酒、携帯使用は駄目、こうしたチェックに合格して初めてシェルターに入れます。DV被害者一時保護は十分に機能しているものではないということも知っていただきたいと思います。
その次のハードルは生活保護受給です。着のみ着のままで避難した方も多く、生活保護を希望することは少なくないです。しかし、同居中に受けた精神的DVの後遺症であるPTSDなどが理解されず就労を強要される、扶養照会で加害者である配偶者に照会されてしまった例もあります。
そのような中、心ある行政担当者と民間の支援者とで力を合わせてやっとの思いで被害者の安全を守ってきました。民間の支援者は、手弁当で、持ち出しで、全国で何千、何万件と支援してきました。DV被害については私たちが専門家です。共同親権が導入されたら何が起こるのか知っているのは当事者と私たちです。
共同親権が導入されたら何が起こるのか、懸念をしていることをお話しします。
二〇〇一年にDV防止法ができるまでは、家庭の中の暴力は社会に容認されていました。DV防止法は、私たち当事者がこのままでは殺されてしまうと議員の皆様に実情を訴え、議員立法で制定された法律です。共同親権制度は、私たちDV被害者が命懸けで勝ち取ったDV防止法を無力化するものです。この法律が成立してしまったら現場はどうなるのでしょうか。
まず、たくさんある事例なんですけれども、加害者の行動の予測についてお話しします。
加害者の中には、加害者意識は全くなく、自分を被害者だと心から思っていて、自分の下から逃げ出したパートナーに対する報復感情を強く抱く人が多いことを皆さんに知っていただきたいです。彼らはこう考えます。自分は何も悪いことをしていないのに、妻が子供を連れて出ていってしまった。自分に逆らわなかった妻がなぜ出ていったのか本当に理解できない。支援者や弁護士が唆したのではないか。自分こそ妻からの精神的暴力を受けた被害者だ。これではメンツが立たない。絶対に妻の思いどおりにはさせない。自分をこんな目に遭わせた妻に報復してやる。たとえ離婚しても、共同親権を取って妻の思いどおりにならないことを思い知らせてやると考える人も多くいると思います。この法案は加害者に加勢する法律です。
次に、現場の最大な懸念をお話しします。
被害者を支援したら、加害者からの大量の訴訟が起こされ、敗訴するかもしれません。急迫な事情という条文は、婚姻中の共同親権にも適用される規定だからです。被害者の相談に乗って、それはDVですね、避難する必要がありますと言ったら、加害者の共同親権行為の侵害だという損害賠償の訴訟が相談員や支援団体をターゲットに起こされるかもしれない。被害者の一時保護を都道府県が決定したら、同様の訴訟が都道府県、市町村に起こされるかもしれない。訴訟対応で支援機関はストップするだろうし、訴訟というリスクを負ってまで行政は被害者を支援してくれるでしょうか。賠償金の支払を命じる判決が出たら、地方自治体はそれでも被害者を守り続けるでしょうか。発言力の小さい被害者が我慢を強いられるのは目に見えています。
法案では、双方の合意で親権が決まらない場合、裁判所が親権者を決める際に、DVや虐待がある場合は単独親権と決めるとありますが、DVや虐待の証明をどのようにしたらよいのでしょうか。
今年四月一日に改正DV防止法が施行され、精神的暴力、性的暴力も接近禁止命令の対象となりました。内閣府のパンフレットでは次のようなことをDVですと広報しています。資料四になります。
大声でどなる、誰のおかげで生活できるんだなどと言う、実家や友人との付き合いを制限したり、電話や手紙を細かくチェックしたりする、何を言っても無視して口を利かない、大切にしているものを壊したり捨てたりする、土下座を強要する、悪評をネットに流して攻撃すると告げる、キャッシュカードや通帳を取り上げると告げるということが挙げられています。こういうことが本当によく相談されます。精神的、性的DVは、DV関係では必ず起きています。
内閣府が精神的DVと見ているものを被害者が主張しただけで単独親権になるのでしょうか。相手が争ってきたら、どのような証拠で立証しなければならないのでしょうか。例えば、長時間の説教、通帳取上げということを家裁がどのように認定するというのでしょうか。
以上、当事者支援現場からの様々な懸念をお話しさせていただきました。これから考えられるのは、もしもこの法案が成立したとしても、施行までの二年間で必要な制度が整うとはとても考えられません。国会におかれましては、拙速な判断をしないように切にお願いしたいと思います。
最後に、被害当事者からのメールを御紹介します。
衆議院通過してしまいましたね。何でそんなに共同親権にしたいんでしょう。既に離婚している父母も申請すれば共同親権にできるとの一文を見ました。きっと私の元夫は申請してくるでしょう。政治家はようやく立ち直りかけた私たちにまた闘えと言うのですね。平穏を手に入れたと思っていたたくさんの被害者たちをまた崖から突き落とすのですね。私のように、身体的暴力の証拠は残っていなく、既に何年も経過している者は、どうすれば被害者だと認めてくれるんですかね。非常に落胆しています。
私と娘と息子は、元夫と一緒にいる間は常にびくびくと機嫌をうかがいながら生活し、逃げてからは、これまでの生活のほぼ全てを捨て生きていかなければならない現実を受け入れることに必死で、心身のバランスを崩しました。長い時間を掛けて、それでもまだ全員が回復したとは言えないまでも、日々笑って過ごせるようになった一因に、私が親権を持っているからがあるのは間違いありません。
どうか本当に子供が幸せになる道を見極めてください。子供が心から愛され、守られて、穏やかに安心して暮らすために法律を使ってください。ほかの国がどうかとは関係ありません。解決しなければならない日本の家族の問題は決してそこではないことに本当は皆さん気付いているのではないでしょうか。問題のすり替えで命を脅かさないでください。
以上が、うちに来た被害者からのメールです。
これで終わらせていただきます。ありがとうございました。
この発言だけを見る →本日は、私のお話を聞いていただける機会をいただき、本当にありがとうございます。
私は、DV防止法が施行される前の一九九七年に、三人の子供とともにシェルターに避難した経験があります。その後、二十年以上、DV被害者支援現場でシェルター活動や自立支援活動を行っております。現在、全国女性シェルターネットの共同代表であり、ふだんは北海道でシェルターの運営をしています。
まず、私の被害者としての体験談をお話しさせていただきます。
大学時代に知り合い、対等に付き合っていたはずの夫は、結婚式の日から変わり始めました。私の行動が自分の思いどおりでないと機嫌が悪くなるようになったのです。私の実家に対しては非常に攻撃的になりました。私の両親が遊びに来ると不機嫌になりました。初めてのお産は里帰り出産でした。自宅に帰るとき、実家の母がお米を十キロ私に持たせてくれました。これに対し、夫は、俺をばかにしていると実家に米を送り返した上、新生児のそばで寝ている私の顔を殴りました。掛け布団が鼻血で真っ赤になりました。翌日、私は夫に、暴力を振るうのであれば離婚すると言いました。すると、彼は、土下座をして涙を流し、離婚するくらいなら死んだ方がいいなどと言うので、私は、これほど反省しているならと離婚を思いとどまりました。
しかし、一度暴力を振るわれてしまうと夫婦の関係が全く変わるのです。夫の顔色を見て、怒らせないようにと振る舞う癖が私に付いてしまいました。彼が暴力を振るうのは自分のせいと感じ、努力しましたが、何をしても収まることはありませんでした。人格を否定され、人間扱いされないような言動が絶えずある生活は身体的暴力よりつらく、私はいつも落ち込んでいました。子供たちもいつもぴりぴりしていました。
多くの人はDV被害者になぜ逃げないのと言いますが、これまで生活してきた全てを捨てて、将来的な保証も住む場所もない未知の世界に人は簡単には飛び込んでいけません。
ところが、ある日、どなり、馬乗りになって私の首を絞める夫に向かって、長女が泣き叫びながら、父さんやめてと包丁を持って向かっていったのです。子供たちのためにと思っていた私の我慢が子供たちを大きく傷つけていたことを思い知らされ、避難するしかないと決断し、DV防止法がまだない中、民間団体が運営しているシェルターに避難しました。
先日、私は勇気を出して、当時中学三年生だった娘に包丁を持ち出したことを覚えているか聞きました。娘は、はっきり覚えている、いつもカッターを持っていて、何かあったらお母さんを助けようと思っていた、朝は泣きながら登校していたと話してくれました。何十年もたっていたんですが、ショックでした。
お手元の資料一、二〇二二年にシングルマザーサポート団体全国協議会が行ったアンケート調査の結果、一ページを御覧ください。離婚を決断した理由で一番多いのが、子供に良くない影響があったというものです。次のページ、その子供への悪影響とは何か。具体的な内容では、夫婦が対立、口論したり、自分がばかにされている様子をこれ以上子供に見せたくないが最多です。司法統計で性格の不一致とされてきた中身がこれらです。
大きな決断をして避難した先に一体何があるのか。シングルマザーの平均年収は二百万円ぐらいと言われています。ダブルワーク、トリプルワークをして、自分の健康を顧みずに働いているお母さんがたくさんいます。子供に一日三食食べさせても、自分は二食で我慢している人もたくさんいます。私も、三人の子供を抱えて生活に困窮し、生活保護を受給しました。このような大変な生活を強いられるのに逃げざるを得ないことを、どうか皆様に御理解していただきたいと思います。
日本社会のDV被害に対する認識はまだまだ薄く、暴力から逃れることも難しく、相談機関からさえ理解のない対応を受け続けています。この状況を改善することなく共同親権にすることは、逃げることしか許されない日本の被害者が更に逃げられなくなることが目に見えています。
配付資料二、ここがおかしい日本の被害者支援を見ていただくと現状が分かっていただけると思いますが、DV被害者が相談や支援を求めたときにどんな対応があるのかを時系列的に挙げてみたいと思います。
まず、一番初めの相談は、実家や友達が多いのですが、そのくらい我慢しなさい、子供がいるんだから離婚なんかしちゃ駄目といった反応は全く珍しくありません。身近な人から否定されたことで、逃げられない、DV被害を受けた自覚が持てない状況になっているわけです。
そして次、勇気を出して相談機関に行くと、あざがないから、殴られていないからDVじゃないですよね、身体的暴力に比べると大したことないよねと言われるのは本当にあるあるです。日本のDV法では、DVを身体的暴力だけではないとしています。しかし、日本中で、身体的暴力以外はDVじゃないとする運用が残念ながら行われてきました。
相談の次は一時保護になります。シェルターに避難することです。
全国の都道府県に公営のシェルターがあり、DV被害者を保護することになっていますが、資料の三を見ていただくと、婦人相談所、今は女性相談支援センターとなっていますけれども、なかなか一時保護してくれないというのが全国共通の悩みです。身体的暴力がないからシェルターは入れない、集団生活ができなければ無理、たばこ、お酒、携帯使用は駄目、こうしたチェックに合格して初めてシェルターに入れます。DV被害者一時保護は十分に機能しているものではないということも知っていただきたいと思います。
その次のハードルは生活保護受給です。着のみ着のままで避難した方も多く、生活保護を希望することは少なくないです。しかし、同居中に受けた精神的DVの後遺症であるPTSDなどが理解されず就労を強要される、扶養照会で加害者である配偶者に照会されてしまった例もあります。
そのような中、心ある行政担当者と民間の支援者とで力を合わせてやっとの思いで被害者の安全を守ってきました。民間の支援者は、手弁当で、持ち出しで、全国で何千、何万件と支援してきました。DV被害については私たちが専門家です。共同親権が導入されたら何が起こるのか知っているのは当事者と私たちです。
共同親権が導入されたら何が起こるのか、懸念をしていることをお話しします。
二〇〇一年にDV防止法ができるまでは、家庭の中の暴力は社会に容認されていました。DV防止法は、私たち当事者がこのままでは殺されてしまうと議員の皆様に実情を訴え、議員立法で制定された法律です。共同親権制度は、私たちDV被害者が命懸けで勝ち取ったDV防止法を無力化するものです。この法律が成立してしまったら現場はどうなるのでしょうか。
まず、たくさんある事例なんですけれども、加害者の行動の予測についてお話しします。
加害者の中には、加害者意識は全くなく、自分を被害者だと心から思っていて、自分の下から逃げ出したパートナーに対する報復感情を強く抱く人が多いことを皆さんに知っていただきたいです。彼らはこう考えます。自分は何も悪いことをしていないのに、妻が子供を連れて出ていってしまった。自分に逆らわなかった妻がなぜ出ていったのか本当に理解できない。支援者や弁護士が唆したのではないか。自分こそ妻からの精神的暴力を受けた被害者だ。これではメンツが立たない。絶対に妻の思いどおりにはさせない。自分をこんな目に遭わせた妻に報復してやる。たとえ離婚しても、共同親権を取って妻の思いどおりにならないことを思い知らせてやると考える人も多くいると思います。この法案は加害者に加勢する法律です。
次に、現場の最大な懸念をお話しします。
被害者を支援したら、加害者からの大量の訴訟が起こされ、敗訴するかもしれません。急迫な事情という条文は、婚姻中の共同親権にも適用される規定だからです。被害者の相談に乗って、それはDVですね、避難する必要がありますと言ったら、加害者の共同親権行為の侵害だという損害賠償の訴訟が相談員や支援団体をターゲットに起こされるかもしれない。被害者の一時保護を都道府県が決定したら、同様の訴訟が都道府県、市町村に起こされるかもしれない。訴訟対応で支援機関はストップするだろうし、訴訟というリスクを負ってまで行政は被害者を支援してくれるでしょうか。賠償金の支払を命じる判決が出たら、地方自治体はそれでも被害者を守り続けるでしょうか。発言力の小さい被害者が我慢を強いられるのは目に見えています。
法案では、双方の合意で親権が決まらない場合、裁判所が親権者を決める際に、DVや虐待がある場合は単独親権と決めるとありますが、DVや虐待の証明をどのようにしたらよいのでしょうか。
今年四月一日に改正DV防止法が施行され、精神的暴力、性的暴力も接近禁止命令の対象となりました。内閣府のパンフレットでは次のようなことをDVですと広報しています。資料四になります。
大声でどなる、誰のおかげで生活できるんだなどと言う、実家や友人との付き合いを制限したり、電話や手紙を細かくチェックしたりする、何を言っても無視して口を利かない、大切にしているものを壊したり捨てたりする、土下座を強要する、悪評をネットに流して攻撃すると告げる、キャッシュカードや通帳を取り上げると告げるということが挙げられています。こういうことが本当によく相談されます。精神的、性的DVは、DV関係では必ず起きています。
内閣府が精神的DVと見ているものを被害者が主張しただけで単独親権になるのでしょうか。相手が争ってきたら、どのような証拠で立証しなければならないのでしょうか。例えば、長時間の説教、通帳取上げということを家裁がどのように認定するというのでしょうか。
以上、当事者支援現場からの様々な懸念をお話しさせていただきました。これから考えられるのは、もしもこの法案が成立したとしても、施行までの二年間で必要な制度が整うとはとても考えられません。国会におかれましては、拙速な判断をしないように切にお願いしたいと思います。
最後に、被害当事者からのメールを御紹介します。
衆議院通過してしまいましたね。何でそんなに共同親権にしたいんでしょう。既に離婚している父母も申請すれば共同親権にできるとの一文を見ました。きっと私の元夫は申請してくるでしょう。政治家はようやく立ち直りかけた私たちにまた闘えと言うのですね。平穏を手に入れたと思っていたたくさんの被害者たちをまた崖から突き落とすのですね。私のように、身体的暴力の証拠は残っていなく、既に何年も経過している者は、どうすれば被害者だと認めてくれるんですかね。非常に落胆しています。
私と娘と息子は、元夫と一緒にいる間は常にびくびくと機嫌をうかがいながら生活し、逃げてからは、これまでの生活のほぼ全てを捨て生きていかなければならない現実を受け入れることに必死で、心身のバランスを崩しました。長い時間を掛けて、それでもまだ全員が回復したとは言えないまでも、日々笑って過ごせるようになった一因に、私が親権を持っているからがあるのは間違いありません。
どうか本当に子供が幸せになる道を見極めてください。子供が心から愛され、守られて、穏やかに安心して暮らすために法律を使ってください。ほかの国がどうかとは関係ありません。解決しなければならない日本の家族の問題は決してそこではないことに本当は皆さん気付いているのではないでしょうか。問題のすり替えで命を脅かさないでください。
以上が、うちに来た被害者からのメールです。
これで終わらせていただきます。ありがとうございました。
佐
佐々木さやか#10
○委員長(佐々木さやか君) ありがとうございました。
以上で参考人の御意見の陳述は終わりました。
これより参考人に対する質疑を行います。
なお、質疑及び答弁は着席のままで結構でございます。
質疑のある方は順次御発言願います。
この発言だけを見る →以上で参考人の御意見の陳述は終わりました。
これより参考人に対する質疑を行います。
なお、質疑及び答弁は着席のままで結構でございます。
質疑のある方は順次御発言願います。
古
古庄玄知#11
○古庄玄知君 参考人の皆様、御苦労さまでした。自民党の古庄玄知と申します。
私、昭和六十年から大分で弁護士活動をしております。今回、参議院というこういう席をいただきまして、質問させてもらうことになりました。
それで、時間が限られていますので、まず四名の、四人の方に質問をしたいと思います。同じ質問です。で、済みません、時間があるので、二分以内に何とか回答いただければと思います。
まず、本件は、共同親権、これを導入するかどうかということが一番大きな問題点ですけれども、この本法案が通った場合、離婚した夫婦間の争いは減ると思うのか、増えると思うのか、また、そういうふうに考える根拠についてお答えください。
それと、仮に増えるというふうに考えた方、増えても共同親権は導入すべきだというのか、やめるべきだというのか、また、その理由についてもお答えください。
済みません、沖野先生からよろしくお願いします。
この発言だけを見る →私、昭和六十年から大分で弁護士活動をしております。今回、参議院というこういう席をいただきまして、質問させてもらうことになりました。
それで、時間が限られていますので、まず四名の、四人の方に質問をしたいと思います。同じ質問です。で、済みません、時間があるので、二分以内に何とか回答いただければと思います。
まず、本件は、共同親権、これを導入するかどうかということが一番大きな問題点ですけれども、この本法案が通った場合、離婚した夫婦間の争いは減ると思うのか、増えると思うのか、また、そういうふうに考える根拠についてお答えください。
それと、仮に増えるというふうに考えた方、増えても共同親権は導入すべきだというのか、やめるべきだというのか、また、その理由についてもお答えください。
済みません、沖野先生からよろしくお願いします。
沖
沖野眞已#12
○参考人(沖野眞已君) 御質問ありがとうございます。
今回の法案によって紛争が増えるかどうかということについては、様々な局面がありますので直ちには言えないと思います。むしろ、子供の利益のためにどういうことが可能になるかという点から考えるべきではないかと思いますし、それから、紛争が増えること自体を悪いことだと評価するのかというと、そうではない、今まで泣き寝入りであったものが法的な解決の道を与えられるという面もございますので、そのような評価も十分あり得ると考えております。
以上です。ヤジ
この発言だけを見る →今回の法案によって紛争が増えるかどうかということについては、様々な局面がありますので直ちには言えないと思います。むしろ、子供の利益のためにどういうことが可能になるかという点から考えるべきではないかと思いますし、それから、紛争が増えること自体を悪いことだと評価するのかというと、そうではない、今まで泣き寝入りであったものが法的な解決の道を与えられるという面もございますので、そのような評価も十分あり得ると考えております。
以上です。ヤジ
佐
古
沖
沖野眞已#15
○参考人(沖野眞已君) 大変失礼しました。
ありがとうございます。
数値がどうなるかどうかは確かに分からないけれども、法案全体として導入には十分意味があるというふうに考えております。
以上です。
この発言だけを見る →ありがとうございます。
数値がどうなるかどうかは確かに分からないけれども、法案全体として導入には十分意味があるというふうに考えております。
以上です。
熊
熊谷信太郎#16
○参考人(熊谷信太郎君) 私も、増えるかどうかは何とも言い難いと思うんですが、今回の法案自体は共同親権について選択制というふうに理解しておりますので、単独も選択できるというふうに考えますので、そういう意味で、法案全体としてはこれは問題ないのではないかというふうに、導入すべきではないかというふうに考えております。
以上です。
この発言だけを見る →以上です。
木
木村草太#17
○参考人(木村草太君) これは増えるに決まっているというふうに考えてよろしいかと思います。
先ほど山崎参考人の御意見にもありましたけれども、今、単独親権しか選択肢がないわけですけれども、共同親権に強制的にできるという内容を入れれば、強制的に共同親権にしてほしいという申立てが、これまでなかったタイプの申立てがありますので、行われるようになるので、それは増えるに決まっているというふうに言ってよろしいかと思います。
また、数値的な問題ですが、本日の資料二十二ページ、付録二に付けてきたんですけれども、例えばフランスやアメリカの例を見てみますと、フランス、アメリカ、両方とも共同親権導入国で、共同親権の問題だけではないので単純に比較はできないんですが、例えば、日本は、令和四年中に全国の裁判所が受理した子の監護関係の受理数が二万件だそうですけれども、日本の人口の約半分のフランスでは、二〇二二年の父母の別離後の未成年に関する申立てが十七万件、アメリカのニューヨーク州では、人口の二千万人ということで日本のおよそ六分の一ですけれども、案件十四万件を家裁が扱っているというふうな数値もありますので、共同親権にして紛争が減るということはまずないだろうと。また、諸外国の数値を見てもかなりの数の紛争が裁判所で争われるのではないかというふうに考えるのが自然ではないかと思います。
また、紛争は増えるというふうになりますけれども、もちろん父母が合意した場合に、一緒にやっていこうというときに裁判所の調整を求めるということはあり得るかもしれませんが、強制型の共同親権で、無理やり、シングルで子育てをされている方々に、裁判所に引きずり出して時間や労力を奪う、経済力も奪うということは、これは非常にまずいことですので、強制型の共同親権、これはやめるべき、共同親権の要件には必ず父母の合意を要求するとすべきだと思います。
以上です。
この発言だけを見る →先ほど山崎参考人の御意見にもありましたけれども、今、単独親権しか選択肢がないわけですけれども、共同親権に強制的にできるという内容を入れれば、強制的に共同親権にしてほしいという申立てが、これまでなかったタイプの申立てがありますので、行われるようになるので、それは増えるに決まっているというふうに言ってよろしいかと思います。
また、数値的な問題ですが、本日の資料二十二ページ、付録二に付けてきたんですけれども、例えばフランスやアメリカの例を見てみますと、フランス、アメリカ、両方とも共同親権導入国で、共同親権の問題だけではないので単純に比較はできないんですが、例えば、日本は、令和四年中に全国の裁判所が受理した子の監護関係の受理数が二万件だそうですけれども、日本の人口の約半分のフランスでは、二〇二二年の父母の別離後の未成年に関する申立てが十七万件、アメリカのニューヨーク州では、人口の二千万人ということで日本のおよそ六分の一ですけれども、案件十四万件を家裁が扱っているというふうな数値もありますので、共同親権にして紛争が減るということはまずないだろうと。また、諸外国の数値を見てもかなりの数の紛争が裁判所で争われるのではないかというふうに考えるのが自然ではないかと思います。
また、紛争は増えるというふうになりますけれども、もちろん父母が合意した場合に、一緒にやっていこうというときに裁判所の調整を求めるということはあり得るかもしれませんが、強制型の共同親権で、無理やり、シングルで子育てをされている方々に、裁判所に引きずり出して時間や労力を奪う、経済力も奪うということは、これは非常にまずいことですので、強制型の共同親権、これはやめるべき、共同親権の要件には必ず父母の合意を要求するとすべきだと思います。
以上です。
山
山崎菊乃#18
○参考人(山崎菊乃君) ありがとうございます。
増えると思います、私も。たくさん、今、日本の離婚ってほとんど協議離婚なんですけれども、先ほど資料でお話ししました、資料、お手元の資料一ですよね、性格の不一致で離婚する内容が、自分がばかにされている様子をこれ以上子供に見せたくないからというのが多いんですね。これはつまりどういうことかというと、夫婦の間がもう対等ではない、ばかにする側とばかにされる側がいるということなんですね。
それは協議離婚のときに何をもたらすかというと、力の強い方の要求に応じざるを得なくなってくる。そして、自分が不本意で共同親権になってしまった場合に、後からいろいろな元配偶者から要求が来たときに、こんなはずじゃなかったと思って親権変更などの申立てをしても、もう大変なことになってしまうということで、紛争は多くなると思います。
私は、この法案は廃案にするべきだと思っています。
この発言だけを見る →増えると思います、私も。たくさん、今、日本の離婚ってほとんど協議離婚なんですけれども、先ほど資料でお話ししました、資料、お手元の資料一ですよね、性格の不一致で離婚する内容が、自分がばかにされている様子をこれ以上子供に見せたくないからというのが多いんですね。これはつまりどういうことかというと、夫婦の間がもう対等ではない、ばかにする側とばかにされる側がいるということなんですね。
それは協議離婚のときに何をもたらすかというと、力の強い方の要求に応じざるを得なくなってくる。そして、自分が不本意で共同親権になってしまった場合に、後からいろいろな元配偶者から要求が来たときに、こんなはずじゃなかったと思って親権変更などの申立てをしても、もう大変なことになってしまうということで、紛争は多くなると思います。
私は、この法案は廃案にするべきだと思っています。
古
沖
沖野眞已#20
○参考人(沖野眞已君) まず、共同親権が入ることによって申立てが増えるという話ですけれども、現在でも単独親権を争う場合には申し立てるということになりますので、当然そうなるということにはならないだろうというふうに思いますのと、それから、例えば、虐待などの問題について裁判所が介入が非常に低いのが問題であるというふうにも言われているわけでございまして、裁判所における申立てが増えるということが当然悪い状況になるということではないということでございます。
補足させていただきます。ありがとうございました。
この発言だけを見る →補足させていただきます。ありがとうございました。
古
古庄玄知#21
○古庄玄知君 じゃ、熊谷先生にお聞きしたいんですけれども、先生も長いこと弁護士されていますので実務の状況は分かっていると思うんですけれども、今回の法案で、争いが発生した場合には裁判所に決めてもらうという立て付けが多いんですけれども、今の裁判所、体制的に十分整っていて、その本来果たすべき役割を十二分に果たせるような体制になっているかどうか、この点について弁護士の立場で率直に御意見いただきたいんですけど。
この発言だけを見る →熊
熊谷信太郎#22
○参考人(熊谷信太郎君) 共同親権の話だけではなくて、養育費も含めて、全般の家庭裁判所の関与の仕方がどうなのかということと理解してよろしいですかね。
裁判所ももちろん限られた人員、組織、予算の中でやっている、一生懸命やっているわけですが、やはり、例えば養育費に関して言えば、申立てをしてからの手続が煩雑過ぎる。これ、弁護士付けないととても無理だというケースがやはり多いですよね。シングルマザーとかファーザーが簡単な手続、ワンストップでできるような工夫がもっと必要だろうと思います。例えば、昼間でなければもちろん開いていないわけですよね。だけれども、そういった養育費の問題などに、家庭の問題に関しては夜間でも受け付けるとか休日でも受け付けるとか、そういった工夫もやはり必要になってくるだろうと思いますし。
それから、設備面での非常にプアな設備という印象を弁護士としては受けるわけですよね。IT系のいろんな機器も足りませんし、それから、ウェブ会議も、最近、民事事件、一般民事事件では多く行われていますけれども、家事ではなかなかそういうことできないということもありますので、人員面、組織面、設備面、いろんな面でやや不足が目立つかなと。特に劣化が激しい分野ではないだろうかというふうに感じるのが、大変失礼ながら率直なところです。
この発言だけを見る →裁判所ももちろん限られた人員、組織、予算の中でやっている、一生懸命やっているわけですが、やはり、例えば養育費に関して言えば、申立てをしてからの手続が煩雑過ぎる。これ、弁護士付けないととても無理だというケースがやはり多いですよね。シングルマザーとかファーザーが簡単な手続、ワンストップでできるような工夫がもっと必要だろうと思います。例えば、昼間でなければもちろん開いていないわけですよね。だけれども、そういった養育費の問題などに、家庭の問題に関しては夜間でも受け付けるとか休日でも受け付けるとか、そういった工夫もやはり必要になってくるだろうと思いますし。
それから、設備面での非常にプアな設備という印象を弁護士としては受けるわけですよね。IT系のいろんな機器も足りませんし、それから、ウェブ会議も、最近、民事事件、一般民事事件では多く行われていますけれども、家事ではなかなかそういうことできないということもありますので、人員面、組織面、設備面、いろんな面でやや不足が目立つかなと。特に劣化が激しい分野ではないだろうかというふうに感じるのが、大変失礼ながら率直なところです。
古
古庄玄知#23
○古庄玄知君 ありがとうございました。
恐らく、実務担当している弁護士はみんな同じような感覚を持っていて、何でもかんでも裁判所に決めてくれ、決めてくれと言っても時間が掛かり過ぎる、また、弁護士を付けないと無理だと、手続がややこしくて、法的な判断も難しくて。そうすると、弁護士をまず探さなければならない、弁護士を探しても弁護士費用を払わなければならない。また、裁判所に行って、長いこと調停委員だ、調査官だという人たちと対応してようやく結論が出ると。家庭裁判所の裁判官も少ないと。時間が掛かると。
私なんかも、やっぱり、相談に来る方は、まずどのくらい掛かりますかと聞いて、いや、このくらい掛かりますと言ったら、はあって、そこでため息を漏らして、じゃ、お金はどのくらい掛かりますかと聞かれて、このくらい掛かりますと言うと、えっ、そんなに掛かるんですかと。二度そういうふうなため息を漏らして、そういう人はもう二度と弁護士事務所の訪問しないという、それが実態であるというふうに私は思っていますので、裁判所に頼むから裁判所が適切に判断してくれるんだ、してくれるんだというのは、その現場を知らない、机上の上の、机の上だけしか知らない人の発想ではないかなというふうに私は個人的には思っております。
それで、済みません、熊谷先生、続きまして、先ほど養育費の話で相当御尽力されたということなんですけれども、やっぱりこれも同じように、やっぱり払ってくれない人に対しては法的な手続を取らなければならないと。そうすると、先ほど言ったのと同じような問題が出て、ああ、そんなに時間と金が掛かるんならもういいかと。例えば、二百万しか収入のない人が最後まで行ったときに、百万近い着手金から報酬から全部入れて弁護士に払うということになると、年収の半分を払って弁護士頼むかというと、頼まないんですよね。
そうすると、もう諦めるというのが多くて、その辺りもかなり大きな問題となっていますので、そういうふうな債務名義に基づいて強制執行するとかせぬとかというよりも、そもそもそういう払わなければペナルティーがあるんだと。同じような検討もされたというふうに先生言われていましたけれども、そういうふうに、やっぱり子供というのは国全体で育てていくというそういう考えに立てば、刑罰を科すとか何らかのペナルティーを科すという考え方もいいのかなという感じはするんですけれども、まあ同じことになるかも分かりませんけど、先生のお考えをもう一度聞かせていただければと思います。
この発言だけを見る →恐らく、実務担当している弁護士はみんな同じような感覚を持っていて、何でもかんでも裁判所に決めてくれ、決めてくれと言っても時間が掛かり過ぎる、また、弁護士を付けないと無理だと、手続がややこしくて、法的な判断も難しくて。そうすると、弁護士をまず探さなければならない、弁護士を探しても弁護士費用を払わなければならない。また、裁判所に行って、長いこと調停委員だ、調査官だという人たちと対応してようやく結論が出ると。家庭裁判所の裁判官も少ないと。時間が掛かると。
私なんかも、やっぱり、相談に来る方は、まずどのくらい掛かりますかと聞いて、いや、このくらい掛かりますと言ったら、はあって、そこでため息を漏らして、じゃ、お金はどのくらい掛かりますかと聞かれて、このくらい掛かりますと言うと、えっ、そんなに掛かるんですかと。二度そういうふうなため息を漏らして、そういう人はもう二度と弁護士事務所の訪問しないという、それが実態であるというふうに私は思っていますので、裁判所に頼むから裁判所が適切に判断してくれるんだ、してくれるんだというのは、その現場を知らない、机上の上の、机の上だけしか知らない人の発想ではないかなというふうに私は個人的には思っております。
それで、済みません、熊谷先生、続きまして、先ほど養育費の話で相当御尽力されたということなんですけれども、やっぱりこれも同じように、やっぱり払ってくれない人に対しては法的な手続を取らなければならないと。そうすると、先ほど言ったのと同じような問題が出て、ああ、そんなに時間と金が掛かるんならもういいかと。例えば、二百万しか収入のない人が最後まで行ったときに、百万近い着手金から報酬から全部入れて弁護士に払うということになると、年収の半分を払って弁護士頼むかというと、頼まないんですよね。
そうすると、もう諦めるというのが多くて、その辺りもかなり大きな問題となっていますので、そういうふうな債務名義に基づいて強制執行するとかせぬとかというよりも、そもそもそういう払わなければペナルティーがあるんだと。同じような検討もされたというふうに先生言われていましたけれども、そういうふうに、やっぱり子供というのは国全体で育てていくというそういう考えに立てば、刑罰を科すとか何らかのペナルティーを科すという考え方もいいのかなという感じはするんですけれども、まあ同じことになるかも分かりませんけど、先生のお考えをもう一度聞かせていただければと思います。
熊
熊谷信太郎#24
○参考人(熊谷信太郎君) 今先生おっしゃるとおり、そういう今の制度を前提にすると絵に描いた餅的なところがやっぱり発生してきてしまっていますので、そこを何とかしなきゃならないという問題意識で勉強会その他やったわけでありますが、先ほど申し上げたとおり、養育費、子供のこの養育費の問題というのは、支払わないということは子供に対する不作為による経済的虐待に当たるんだということをしっかりと共通認識として持つべきだと思うんですね。
その上で、そうであるならば、例えば養育費に関して、今先生おっしゃっているようなペナルティーを設ける、あるいはインセンティブを設ける、それから国が立替払をしていくとか、そういう制度を導入することが養育費を特別扱いしているという御批判も時々聞くんですけれども、特別扱いしていい話だと思うんですね、これは。
そういう子供に対する経済的虐待をしているようなケースはやはり救わなければならないわけですし、例えば、ほかにもひどい目に遭っている、犯罪被害でひどい目に遭っている人いるじゃないかというような御批判もあるわけですけれども、それとこれとはちょっと違っていまして、将来の日本を支えていく基盤になる子供、これの生活費、教育費、そういったものなわけですから、そこをきちんと確保しないで将来の日本はないのではないかというふうに思いますので、特別扱いだから余り踏み込んだことはすべきでないという議論ではなくて、まさに特別扱いをしていい話なんだというふうなことを共有をしていただければなというふうに考えております。
この発言だけを見る →その上で、そうであるならば、例えば養育費に関して、今先生おっしゃっているようなペナルティーを設ける、あるいはインセンティブを設ける、それから国が立替払をしていくとか、そういう制度を導入することが養育費を特別扱いしているという御批判も時々聞くんですけれども、特別扱いしていい話だと思うんですね、これは。
そういう子供に対する経済的虐待をしているようなケースはやはり救わなければならないわけですし、例えば、ほかにもひどい目に遭っている、犯罪被害でひどい目に遭っている人いるじゃないかというような御批判もあるわけですけれども、それとこれとはちょっと違っていまして、将来の日本を支えていく基盤になる子供、これの生活費、教育費、そういったものなわけですから、そこをきちんと確保しないで将来の日本はないのではないかというふうに思いますので、特別扱いだから余り踏み込んだことはすべきでないという議論ではなくて、まさに特別扱いをしていい話なんだというふうなことを共有をしていただければなというふうに考えております。
古
古庄玄知#25
○古庄玄知君 ありがとうございます。
済みません、沖野先生にお尋ねしたいんですけれども、先生は法制審議会の委員をされていたということですけれども、先ほど私が熊谷先生に質問したように、裁判所に持ち込んだら時間が掛かる、それから費用が掛かる、そういうマイナス面というか、そういうのについては法制審議会のときに議論に出たんでしょうか。
この発言だけを見る →済みません、沖野先生にお尋ねしたいんですけれども、先生は法制審議会の委員をされていたということですけれども、先ほど私が熊谷先生に質問したように、裁判所に持ち込んだら時間が掛かる、それから費用が掛かる、そういうマイナス面というか、そういうのについては法制審議会のときに議論に出たんでしょうか。
沖
沖野眞已#26
○参考人(沖野眞已君) 御質問ありがとうございます。
家庭裁判所あるいは裁判所に委ねることで十分なのかという点はまさに議論がございました。
結論としてですけれども、一つは、では放置していいのかという問題もございます。先ほど、先生の下に相談に行かれた方は二つのため息をついて、そして全く諦められたんでしょうか、それでいいんでしょうかという問題があります。家庭裁判所以外に一体より適切な機関があるのかという問題がございます。
そして、家庭裁判所がその任を果たせるための土壌づくりというのは非常に重要ですので、適切な審理とその体制を整えるということが大変大事だと考えております。
もちろん、それ以外の相談体制ですとか情報提供ですとか、そういったことが重要であるということは附帯決議にも表れているところでございます。
以上です。
この発言だけを見る →家庭裁判所あるいは裁判所に委ねることで十分なのかという点はまさに議論がございました。
結論としてですけれども、一つは、では放置していいのかという問題もございます。先ほど、先生の下に相談に行かれた方は二つのため息をついて、そして全く諦められたんでしょうか、それでいいんでしょうかという問題があります。家庭裁判所以外に一体より適切な機関があるのかという問題がございます。
そして、家庭裁判所がその任を果たせるための土壌づくりというのは非常に重要ですので、適切な審理とその体制を整えるということが大変大事だと考えております。
もちろん、それ以外の相談体制ですとか情報提供ですとか、そういったことが重要であるということは附帯決議にも表れているところでございます。
以上です。
古
古庄玄知#27
○古庄玄知君 済みません、最後の質問。
いや、私の質問は、そういう法制審議会のときに、時間が掛かる、お金が掛かるというのが議題に上がったかどうかというのを質問したいんです。
この発言だけを見る →いや、私の質問は、そういう法制審議会のときに、時間が掛かる、お金が掛かるというのが議題に上がったかどうかというのを質問したいんです。
佐
沖