曽徳深の発言 (法務委員会)
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○参考人(曽徳深君) 皆さん、こんにちは。外国人として国会で意見を述べるチャンスを与えていただきまして、ありがとうございます。
実は、今お二方の発言を聞いて、私は非常に自分が幼稚だったなということを感じます。私は今日訴えたいのは、永住許可に関する部分だけなんです。だけど、皆さんの話を伺っていると、いや、実は、多くの外国人をどうやって受け入れてこの日本の社会をもっと豊かに発展させるかという制度づくりのことを話しています。それについて全く今まで知らなかったということを恥じています。
空気が見えないんですけど、私たちは見えない空気感じません。それでも息をしています。法律も見えません。だけど、法律は我々人間が社会をつくっていく上において欠かせないものです。空気みたいなものです。それで、実は、空気が汚染されると我々は初めて、あっ、自分の命が脅かされるなということを感じます。僕は今、この入管法の改正は、まさに何かおかしな空気になっているなというふうに今日のお話を聞いて感じています。
私の経験だけで物を、実は勉強をしていません、していませんけど、自分の経験だけで私の意見を述べさせていただきます。皆さんにお届けした資料は全部で五つあるんですけど、それはお読みになっていただければ幸いなんですけど、その中で僕が特に言いたいことを、幾つかこの資料を見ながら話したいと思います。
まず、入管法が変わるよということを僕が知ったのは五月十二日でした。本当にそのときに入管法が変わるんだということを知ったんですね。だから、どうやって変わるかということは知らなかった。見たら、すごい大変なことになっていた。だけど、先ほど鳥井さんが説明したようなところがメインの部分であって、永住資格を取り消すのはほんの一部だったんですけど、僕が一番注目したのはこの永住取消しの部分なんです。
私は八十四年永住しています、日本に。私の父は一九一九年に日本へ来ています。ですから、もううちの家族は百五年、日本にいます。その経験で話します。それで、確かに、入管法によって、いっときひどい目に遭わされたこともあります。最近はそういうことはございません。だから鈍感になっていたんです、この法律について。それはすごく今反省しています。
一ページ目の入管法改正案に関する声明文というのは、十二日にその話を伺ってからみんなで作った声明文です。その中の一ページ目の一番下の段落を読み上げます。
日本と中国の交流は長い歴史があります。近代では、日本の開港後、この横浜に多くの中国人が渡来し、以来百七十年余にわたり、この地に生活の基盤を置いてきました。横浜中華街の今日の発展は、日本人と来日した中国人が力を合わせた結晶です。現在、日本で生まれ、日本語しか分からず、日本にのみ生活基盤を有する二世から六世の永住者も多く、全てが日本市民とともに善良なる市民として地域社会の発展に貢献しています。
そして、次のページをめくってください。
今回の入管法改正案による新たな在留資格取消し拡大制度の導入は、日本政府が目指す共生社会の実現に逆行するばかりか、歴史的な背景により日本に居住するに至った在日中国人の永住者や、また生活上の様々な事情に余儀なく日本に居住するに至った在日外国人の永住者、さらにはその家族まで対象とし、納税不履行や軽微な刑事罰等によって簡単に永住資格を取り消そうとすることは、善良なる市民に深刻かつ憂慮すべき問題を惹起するものであります。ましてや、国又は公共団体の職員が入管へ通報できる制度まで創設するというのは、余りにも過度な取締りと言えます。最後のところで、この度の日本政府の入管法改定案は、永住者の生活、人権を脅かす重大事案と認識し、是正を強く求めます。
この声明を書いたときは是正だけ求めたんです。
次のページをめくってください。これは、内閣総理大臣と法務大臣宛てに送った陳情書です。陳情書をめくって、陳情書の一番最後のところを読み上げます。最後のページを読み上げます。
五、以上、私どもは、永住権取消し事由の拡大に反対するものであり、本改正案のうち、第二十二条の四第一項第八号及び第九号並びにこれに付随する諸条項の削除を強く求める。
これが、今日、私が来た目的でございます。
なぜこれを強く求めるのかというと、次に資料の三をめくってください。これは出入国在留管理庁が出したもので、永住許可に関するガイドラインというのがあるんです。
ここで、法律上の要件として、一、素行が善良であること。法律を遵守し日常生活においても住民として社会的に非難されることのない生活を営んでいること。二、独立の生計を営むに足りる資産又は技能を有すること。日常生活において公共の負担にならず、その有する資産又は技能等から見て将来において安定した生活が見込まれること。三、その者の永住が日本国の利益に合すると認められること。アとして、原則として引き続き十年以上本邦に在留していること。ただし、この期間のうち、就労資格(在留資格「技能実習」及び「特定技能一号」を除く。)又は居住資格をもって引き続き五年以上在留していることを要する。イ、罰金刑や懲役刑などを受けていないこと。公的な義務、納税、公的年金及び公的医療保険の保険料の納付並びに出入国管理及び難民認定法に定める届出等の義務を適正に履行していること。ウとしては、現に有する在留者資格について、出入国管理及び難民認定法施行規則別表第二に規定されている最長の在留期間をもって在留していること。エは、公衆衛生上の観点から有害になるおそれがないと。
これだけ厳しい条件を付けて、それも十年掛けて実はその人の歴史を細かく調べてやっているわけですよね。これだけ厳しい条件で出した永住権に対して、今度の改定は、いとも簡単に軽微なことで取り消そうというのがどうも納得できません。
それから、ページをめくっていただきたいんですけど、実は、僕は入管法について本当に不案内だったので、本屋、書店に行って「はじめての入管法」という本を手に入れまして、そこでちょっと勉強しました。この本を作った方は、要するに入管の業務を担当した入管局長とかの執筆なさったもので、ある意味では政府側のことをよく知っている方のことなんですね。
それで、そこの在留資格の取消しというところをちょっと見てほしいと思うんです。
現行法の在留資格の取消しは、アンダーラインで引いてあるところ、在留資格の取消しの対象行為は、大きく分けて次の四つになります。ア、虚偽の申請などにより上陸又は在留などの許可を受けた場合。イ、一定期間(三か月又は六か月以上)現に有している在留資格に該当する活動を行っていない場合。ウ、中長期在留者で居住地に係る届出義務に違反した場合。エ、難民又は補完的な保護対象者の認定を受け、偽りのその他の不正の手段により在留資格を取得した場合と。
こういうことが元々取消しの事由なんですね。
今回出されてきたものは、納税していませんよ、入管の提示義務をしていませんよとか懲罰がどうのこうのというのは、全くこれとは違う異質の法律、いわゆる取消しの条件ですよね。これもすごい侵害だと思います。
それじゃ、ちょっとページまためくってほしいんですけど、政府全体としての出入国在留管理って何なのかというと、またアンダーライン引いていますけど、二番目のアンダーラインのところをちょっと読み上げます。
ここに言う閣議において決定された基本方針に相当するのが、外国人受入れ環境の整備に関する業務の基本方針について、平成三十年七月二十四日閣議決定となります。この閣議決定に基づいて同年に設置された外国人材の受入れ・共生に関する関係閣僚会議が累次の外国人材の受入れ、共生に関する総合的な対応策を決定しています。この総合的な対応策は、外国人材を適正に受け入れ、共生社会の実現を図ることにより、日本人と外国人が安心して安全に暮らせる社会の実現に寄与するという目的を達成するため、外国人材の受入れ、共生において目指すべき方向性を示すものですと、こう書いてあります。
それから次に、ページまためくってください。
二〇二三年の改訂ロードマップで次のようになっていますと。一、目指すべき外国人との共生社会のビジョン、三つのビジョンがあります。ア、安全、安心な社会。これからの日本社会を共につくる一員として外国人が包摂され、全ての人が安全に安心して暮らすことができる社会。多様性に富んだ活力のある社会。様々な背景を持つ外国人を、全ての人が社会に参加し、能力を最大限に発揮できる、多様性に富んだ活力のある社会。ウ、個人の尊厳と人権を尊重した社会。外国人を含め、全ての人が互いに個人の尊厳と人権を尊重し、差別や偏見なく暮らすことができる社会と。
こういうふうに、政府自身もこういうことをおっしゃっているんですよね。一方で、こういうことを言いながら、今度のこの法律を改定することによって、全く逆のことをやっていると私は認識しています。
それで、私はもう、戦前生まれですから、終戦、終わったときから永住権を与えられています。だから、どうやって苦労して永住権を得たという、そういう苦労が実はない。ないんですけど、最近に来た人たちがどうやって苦労して永住権を取ったかということをインタビューしてみました。それが次のページです。
入管法改定に関する聞き取りメモとして、一、ZY氏。永住資格取得は二〇二〇年。五年の在留後、二年間帰国、その後、二〇〇八年に再来日し、新たなスタート。二〇一七年に在日十年となったので永住申請をしようとしたが、大腸潰瘍の病気入院のため、収入不安定の理由を受け付けてもらえなかった。申請手続は行政書士に依頼、申請理由書、添付書類など書類は十幾つで、再来日した二〇〇八年から足掛け十三年掛かった。両親を扶養していると永住申請ができないということだったので扶養を外した。この両親は国にいる両親です。永住資格取得の回答は半年後。永住者に対して厳しい扱いをするなら、他国の人たちが日本に来るだろうかと、この人は率直にこういう感想を述べています。
それから次に、二番、中華街、中華料理店Kに勤務するコック。二〇〇四年、コックとして来日、Kに勤務。二〇一四年に永住資格を取る。二〇一七年に子供が来日、当時十一歳、地元の元街小学校、港中学、今は日本の高校に在学中。親が永住であるので子供も永住申請したところ、二回目の申請でも五年の定住許可しか出なかった。
ちょっと補足説明しますと、中華街の周りにある学校が、元街小学校、港中学、吉田中学、南吉田小学校とあるんですけど、実は、元街小学校にいる中国籍の子供は一五%、港中学が二〇%、吉田中学に至っては五〇%、そして南吉田小学校は、外国人の数は六〇%以上に増えている。もうそれも中国人だけではない。そういう形で、親と一緒に来た子供たちは、日本の教育のために一生懸命勉強しているんですよね。
ちなみに、私は三月まで横浜山手中華学校の理事長をしていますけど、そこの学校は中国と日本国籍の子供がいて、五五%が日本国籍なんです。それで、その人たちは、日本の学校へ行くと言葉の関係で十分な教育を受けられないので、うちの学校へ来ることによって、我々は日本の義務教育も導入していますから、その教育を受けて日本の高校を受けています。例えば元街小学校については、運動会なんかやるときには、アナウンスは中国語、日本語、あと韓国語も使って、そういう地元の、地場の地方自治体は、みんなそういう努力をやっています。
さて、次に、三、中華街、中華料理店Kの経営者のことを話します。
日本人の母は、日中戦争の前に日本への中国人留学生と結婚して中国に渡った。私はその母とともに、内モンゴルから、日本と中国が国交正常化した後、一九七五年に里帰りで来日。そのとき日本籍を確認して、中国に帰らずに母と日本に残った。中華街でいろいろな仕事をし、食料品販売、中華料理店を経営するまで事業を拡大した。中華料理店を開業するとき、従業員が長く勤務できる仕組みをつくり、家族で日本に長期定住する受入れ体制をつくった。まず、父親が単身で来日し、自身が職場や日本に慣れた頃、学校が夏休みなど長期休暇中に家族を旅行で日本に招き、日本に対する抵抗感をなくし、家族が来日すると、日本で高等教育を受けたメンバーで構成されたサポートチームが学校入学の手続や保護者に代わっての学校との折衝などを行っています。
これだけ努力して、何とかして日本で定着して、そのコックさんも長くその店に勤められるような体制づくりをやっているところがある。
四、MX氏。この人は建て売り住宅販売をやっている人ですけど、永住資格があることで銀行融資を受けている。在留カード不携帯、交通事故などで簡単に永住資格がなくなることになれば、融資を引き揚げられるリスクが発生するだけでなく、永住資格がそのような不安定な資格であることで信用が失われ、新たな融資は受けられなくおそれがあるという懸念を示しています。
それから五番目、XC氏。店舗Xを開業した創業者である私の父は、一九五〇年代に、中華街の風呂屋で外国人登録証不携帯で警察に一日勾留された、こういう経験があります。
それから、ZD氏。一九六五年に兄弟で結婚式を挙げました、大々的に、中華街の同發というお店で。町じゅうの人が集まりました。婚姻届をすぐに出さずにいたら、なぜ出さないのかと、後日、警察官が家まで来た。そこまで個人の私生活を監視することがあるのかと思っています。
あの頃は外国人登録法です。したがって、この入管法も、そういう政治的意図で使えば、使える法律だと私は認識しています。
七番、CA氏。一九八〇年、これはもう国交正常化した後です。私たちは国交正常化前ですから、まあ日本の政府からしたら要監視する相手だと思ってそういうひどいことをやったんですけど、国交正常化後にも、一九八〇年に、婚約者を送って家から十五メートルのところで警察官に外国人登録証の提示を求められ、不携帯が分かって、家まで取りに行ってこいと言われたということがあります。
私から、八、私の見た横浜中華街。横浜中華街の中華料理店は、戦後は主に家族労働に頼って経営していた。父親が鍋を振り、男の子は厨房で雑用と皿洗い、母親、娘はホールで接客。一九六〇年代後半から、街の発展に伴い店舗の規模も大きくなり、香港、台湾からの招聘コックが厨房チーフや主要スタッフとなり、日本人の若者が料理を学びながら厨房を支えた。香港のコックはほとんど単身で来日、台湾からのコックは、夫婦で来て、落ち着くと家族を呼び寄せた。当時、日本の給与は香港、台湾に比べはるかに良く、出稼ぎのメリットが大きかった。今日、香港、台湾の料理人の給与は日本を超え、日本への出稼ぎにメリットがなく、ほとんどの店から姿を消しつつある。代わりに、中国の経済が遅れている地域から日本に働き場を求めて来日、彼らはいずれも家族を呼び寄せて日本に定住する考えが強い。今後、今、横浜中華街料理店を支えているのは、新たに来日する中国人と日本人、そして東南アジア人である。今回の入管法改定は、外国人を歓迎しないメッセージを発するため、今後の人材確保に大きな影響が出る。中華料理のメッカとしての横浜中華街の存続に関わる大きな問題です。
ちょっと時間オーバーしたんですけど、ちょっと一言だけ付け加えたいと思います。
僕は、実は学校の教育に関わっているので、藤原和博さんという、リクルートから民間校長に変わった人が言ったことの言葉をちょっと引用して、最後に締めたいと思います。学校の校長のやれることは何かといったら、学生に学習習慣を付けることと生活習慣を付ける、そして最大のことは、自尊心を持たせるということです。
今、外国人を日本に呼び寄せてやったときに、やっぱり似たようなことなんですよね。生活習慣違うんです。だけど、この生活習慣を教えると同時に、学ぶ意欲も起こさせる。その中で一番大事なのは、ああ、私は日本に来てよかったな、俺はまだ日本で役に立つなという、そういう自尊心を持たせることが本当に日本にとっていいことなんじゃないですか。ただいっときの労働力として、使い終わったらもう帰りなさいじゃなくて、これからの人口減少で出生率だって上がらない、移民をやるんだったらどうするかということを本当に真剣に考えて、こういうちぐはぐな法律を作らない方が僕はいいと思います。
以上でございます。ありがとうございます。