鬼木誠の発言 (本会議)

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○鬼木誠君 立憲民主党の鬼木誠です。
 立憲民主・社民会派を代表し、子ども・子育て支援法の一部を改正する法律案に反対の立場から討論を行います。
 現在、衆議院において、政治資金規正法改正に向けての議論がなぜか続いています。自民党の裏金問題が発覚をして以降、実に多くの時間を費やしこの問題を議論してきましたが、私たちが求めてきた全容解明はなされず、当事者である議員の皆さんは、弁明と説明の機会である政倫審への出席もなさろうとしません。その上、自民党から示された改正案は再発防止の実効性が全く担保をされておらず、改革を本気で行う気がないことは明白です。
 これまでの自民党の対応に一貫をしているのは、現状に対する責任、説明責任、将来への責任、そのことを全く果たそうとしない姿勢です。そのかたくなな態度により、多くの国民の信頼を失ったことは、直近の国政選挙や地方公共団体における選挙結果が明確に示しています。
 そして、この現状に対する責任、説明責任、将来への責任の放棄は、今国会に提出をされた多くの法案に通底をしており、本法律案にもそのことが顕著に表れています。
 本法律案の出発点となったこども未来戦略は、「少子化は、我が国が直面する、最大の危機である。」という記載から始まります。しかし、この最大の危機をもたらしたこれまでの三十年間の政策の失敗には一言も触れられていません。検証と反省を欠く戦略から真に有効な方針が生まれるはずがありません。
 少子化は失策の結果であり、まず認識しなければならないのは、これまでの施策では子供や若者、子育て世帯を取り巻く厳しい環境を改善することができなかったという事実です。その認識の欠落こそがここまで危機を増大させてきた元凶であり、本法律案の内容の希薄さの源だと考えています。
 そのこども未来戦略には、「若者・子育て世代の所得を伸ばさない限り、少子化を反転させることはできない」として、「政府として、若者・子育て世代の所得向上に全力で取り組む。」などの記載がなされています。
 しかし、その威勢の良さとは裏腹に、例えば構造的賃上げを確固たるものとするためとして掲げられている方策は枝葉末節なものでしかなく、極めて重要な課題である同一労働同一賃金や非正規の正規化については問題意識の記載にとどまり、具体的にどう進めるかは全く示されていません。
 同様に、戦略に散見される他省庁が所管する分野における踏み込みの浅さと具体の乏しさは、こども家庭庁創設の眼目である司令塔機能の不全を示しており、目指すべきこどもまんなか社会は遠く後景化していると言わざるを得ません。
 加えて、こども未来戦略が、戦略といいながら、何を目指し、何をなそうとしているのか、その肝腎の目標がはっきりしない点も大きな問題です。
 総理は少子化トレンドの反転を目指すとおっしゃいますが、何をもって少子化トレンドが反転されたと言えるのか、どうやってそれを検証するのか、具体的な説明はついにありませんでした。
 目標設定が曖昧な中で策定された加速化プランは、少子化対策としての効果があるのかどうか、政府として根拠も示せないような極めて中途半端な内容となっています。
 目玉政策の一つである児童手当の拡充は、所得制限の撤廃や高校生年代までの延長という点は評価をしますが、多子加算の拡充の額は悲しいほど不十分です。そもそも少子化の原因が未婚化や少母化にあることを踏まえるならば、一子目から支給額を増やすべきではないでしょうか。
 また、こども誰でも通園制度は、全ての子供の育ちを支援するという理念を制度内容が体現をしていません。何より圧倒的に保育士が不足をしていることや、依然として待機児童が解消されていない地域も多いことなどを踏まえると、全ての子供への質の高い保育サービスの提供につながるとはどうしても思えません。
 現場の不安や不信を置き去りにしたまま見切り発車しようとしていますが、受入れ体制の整備、強化、保育人材不足を解消するための継続的で安定的な保育士の処遇改善など、根本的な問題解決に向けた対策こそ優先すべきです。
 なお、本法律案には一切盛り込まれていませんが、教育費の負担軽減に関する対応にも問題があります。高等教育費の無償化は児童手当同様に多子世帯のみが対象という不十分なものでしかなく、学校給食の無償化は加速化プランには記載すらありません。総じて、子供の貧困に対する視点、具体的施策が希薄であり、このような不十分な子育て支援策で少子化が本当に解消できると考えているのか、政府の本気度を疑わざるを得ません。
 そして、本法律案最大の問題点は、子ども・子育て支援金制度です。
 政府は、医療保険制度を活用して国民、そして事業者から新たに徴収する支援金は実質的な負担が生じることはないという説明を繰り返していますが、国会での議論を通じて、この制度が増税批判を避けるために取りやすいところから取る制度にほかならないことや、実質的な負担が生じないという説明はまやかしであることが明らかになりました。
 医療保険制度を活用して支援金を徴収することについては、委員会で与党の委員からも、原理的な整合性が保てない、詭弁に近いと指摘されたように、医療保険制度の目的外使用にほかなりません。
 支援金と医療保険料は別物である、政府は説明されますが、確かに支援金率と医療保険料率と別に定めることになってはいるものの、実質上、支援金は医療保険料として徴収されることになります。給与明細等に医療保険料と分けて記載するかどうかも事業主の任意とされており、支援金が幾ら徴収されたのか、実際の負担額が分からない可能性が高い。その上、政府は、支援金の充当事業は、健康保険法等に基づく保険給付や事業と同様の趣旨のものであることから、医療保険料として徴収する制度設計は妥当と説明をしていますが、児童手当やこども誰でも通園制度が医療保険給付と同等の趣旨のものという説明はどう考えても無理筋であり、このような制度設計を容認することはできません。
 また、政府の言う実質的な負担が生じないことが成り立つのは、なされてもいない物価上昇を上回る継続的な全労働者の賃上げや、行ってもいない歳出削減効果という希望でしかないものを前提とし、歳出改革をしなかった場合の社会保険料と比べたときの話であり、ありもしない仮定の下での詭弁ともいうべき机上の空論にほかなりません。これで実質的に負担が生じないと喧伝するのは、極めて不適切です。
 支援金制度は現役世代に偏った社会保険料の負担増となり、子育て世代、若者世代の可処分所得は減ることになります。他方、企業には事業主負担が求められることになり、その結果、賃上げの抑制や非正規労働者の正規化の停滞にもつながりかねません。その危機感から、少子化促進策になりかねないという指摘もなされています。
 子ども・子育て政策実現のため安定的な財源確保は必要ですが、少子化対策に逆行しかねない極めて問題の多い支援金制度の創設は撤回すべきです。
 子供や若者、子育て世帯の幸せを目指し、必要な施策実施のための安定財源を確保するために、あらゆる選択肢を俎上にのせて議論し直し、国民に対し誠実に説明をし、協力を求めていく。今、政府が行うべきはそのことであり、岸田政権にそのおつもりがないのなら私たちがいつでも交代をさせていただく、その準備があることを申し上げ、討論を終わります。
 御清聴ありがとうございました。(拍手)

発言情報

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発言者: 鬼木誠

speaker_id: 19708

日付: 2024-06-05

院: 参議院

会議名: 本会議