小沢雅仁の発言 (本会議)

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○小沢雅仁君 立憲民主・社民の小沢雅仁です。
 会派を代表して、ただいま議題となりました地方自治法改正案に反対の立場で討論を行います。
 反対の理由の第一は、大規模な災害、感染症のまん延など国民の安全に重大な影響を及ぼす事態であれば個別法に規定がなくても国が自治体に必要な対策を指示できるようにする、いわゆる補充的指示権などの特例は、想定できない事態をあえて想定したものであり、特例を規定するような法案の根拠となるべき立法事実がないことです。
 今回の改正案、法改正で補充的な指示権をつくり、国と自治体間で情報交換や情報流通する制度をつくったところで、ダイヤモンド・プリンセス号問題はどのように打開できたのか、全国一斉休校要請は法的根拠があればうまくいったのか。アベノマスクや、四日間連続で三十七・五度以上でなければ検査もできなかったことや、地方を無視し国の準備もできていなかったワクチン接種百万回の大号令も同様です。これらの事実関係の綿密な検証がない限り、今回の法改正はあり得ません。
 既存の災害法制が分権的な立て付けになっていて、それだから機能不全を起こしてコロナ対策がうまくいかなかったのではなく、既に十分集権的な要素があったにもかかわらず、それを上手に使いこなすことができなかった。あたかも法制の立て付けが悪いからそこに問題があるのだと落とし込んでいるのが今回の自治法改正案の最大の問題点です。
 反対の第二の理由は、いわゆる補充的指示権などの特例は、二〇〇〇年の地方分権改革一括法に基づき積み上げられてきた、国と自治体との関係を上下主従から対等協力に改めた地方分権改革の成果を無にして分権への流れを逆行させ、憲法九十二条の保障する地方自治の本旨に反することです。
 六月十一日の参考人質疑において、早稲田大学政治経済学術院の小原隆治教授は、新設第十四章の補充的な指示権は、国が自治体に対して余計なおせっかいをする、その道を開くものだという認識を示し、地方自治法第一条で国と地方公共団体との基本的な関係を確立し、地方公共団体の健全な発達を保障することを目的としながら、新十四章で地方自治の本旨を否定する、つまり地方自治法自体が地方自治法を自己否定しているということに当たる懸念を強く持ち、端的に申して新設の第十四章は要らないと思っているとの見解を述べられました。
 反対の第三の理由は、指示権発動の要件が極めて曖昧な上に、発動の手続は閣議決定のみとなっており、事前の自治体との協議、調整の義務はなく、意見徴収も努力義務にとどまり、国会の関与もないなど、濫用が懸念され、自治体への国の不当な介入を誘発するおそれが高く、将来どんどん拡大解釈されるおそれがあることです。
 全国知事会を始めとする多くの関係団体から、拡大された国の指示権行使の際には事前に関係自治体と十分な協議、調整を行うことが求められていました。しかし、改正案には、事前協議、調整を義務とする規定はどこにも存在しません。あるのは、国が地方自治体から資料や意見を提出するよう求められる努力義務規定だけです。これでは、全国知事会を始めとする地方からの要求に真正面から答えたものでないことは明らかです。
 地方自治体の首長が地方分権への逆行や恣意的運用への懸念や反対の声が続々と上げられていること、さらには、地方議会が補充的指示権を含む本改正案の審議について慎重審議を求める意見が日に日に可決されています。
 松本大臣、さらには賛成される議員の皆さん、こうした地方の声を無視して法改正をしてよいのでしょうか。改めて立ち止まっていただくことを強く求めたいと思います。
 また、松本総務大臣が事前の国会の関与を認めない理由として説明しているのは、地方制度調査会では、事前協議をしていると緊急事態に対して機動性に欠いた対応しかできないので、国会の関与は要らなくて閣議決定でいいのだという議論であったと答弁されました。
 しかし、小原教授が今回の制度改正につながる地方制度調査会の一年分の議事録を全て点検したところ、機動性に欠けるという言葉が出てきたのは、山本委員長と田中行政課長が、機動性に欠けるという議論だったよね、はい、そうでしたねというやり取りのみで、公式記録上は機動性に欠けるから国会の関与は要らないんだとの議論はなかったのに、機動性に欠ける議論があったのだということで、国会の関与を弱めることは、国会の最高機関としての権限を損ないかねない重大な問題であると指摘されました。松本総務大臣はこの指摘にどう答えますか。
 反対の第四の理由は、本来、大規模災害や感染症への対処においては自治体と国が連携、協力することこそが大事であるにもかかわらず、補充的指示権、調整に関する指示、応援の指示のいずれも国が常に正しいとの前提で国の一方的指示に従う義務を自治体に課すものであり、自治体側の主体性や自発性をも損ない、現場の的確な判断や対処を妨げかねないことです。
 地方制度調査会の専門小委員会では、非平時として、自然災害、感染症、武力攻撃の三類型が議論されていました。想定していない事態とはどういう事態なのかをただしたところ、特定の事態を排除しないとしながら、武力攻撃事態では必要な規定を設けているから補充的指示権は想定していないとする一方で、大規模災害や感染症では、想定していない事態に対処するため補充的指示権が必要だとしているのも大きな矛盾です。武力攻撃事態対処法制で想定していない事態に対応できるというのであれば、大規模災害や感染症について必要な個別法改正で対応できるはずです。
 補充的指示権の要件や範囲も不明確で、おそれがあるなどの判断は全て各大臣に一任されています。事前の自治体との協議、調整の義務はなく、意見聴取も努力義務にとどまっており、実効性が担保されておりません。事前報告や事前承認など国会の関与もないなど、閣議決定のみで発動可能となっています。時の内閣の恣意的な判断で自治体に指示を行う余地を残すものであり、濫用が懸念されます。
 改めて申し上げます。
 二〇〇〇年の地方分権改革一括法により、国と地方は上下主従から対等協力の関係となり、機関委任事務制度も廃止されました。自治体に対する国の関与の原則も法定化され、必要な最小限度のものとするとともに、自治体の自主性及び自立性に配慮しなければならないとされました。違法な事務処理をした等の場合、是正の指示ができるのは法定受託事務のみで、自治事務については是正の要求までしかできないとされ、個別法に基づく指示も、あくまでも極めて抑制的に例外的なものとして可能としているにすぎません。
 今回の補充的指示権などの特例によって、国は自治体の自治事務の処理に対し、個別法の根拠規定なしに、違法等でなく緊急でない場合でも指示権の行使が可能になります。このことは、地方分権改革の成果を無にして上下主従への時代へと分権の流れを逆行させるとともに、憲法の保障する地方自治の本旨に反する問題です。
 立憲民主党は、今回の改正に対し憂慮する首長や有識者、関係労働組合、また立憲民主党自治体議員ネットワークや政令指定都市政策連絡会等との連携を強化し、最低限、指示権行使を極めて限定的にするため、国の地方への関与の原則の維持、自治体との事前協議、調整の義務化、国会の関与と事後検証の義務化という三点を柱にした修正を与党に求めましたが、全く受け入れられませんでした。
 憲法にある地方自治の本旨は、自治体は地域の運営に対して自己決定権を有しており、国が必要な範囲を超えて介入してはならないという原理があります。住民に身近な行政はできるだけ自治体に委ねること、防災、公衆衛生など、まさに住民に身近な行政は自治体の役割であり、これは自治体の矜持です。
 地方分権推進決議から三十年余、地方分権一括法から四半世紀となりますが、国からの地方への税財源の移譲を含め分権改革は道半ばです。立憲民主党は、真の地方自治の確立を目指し、地方分権、地域主権改革の推進に全力で取り組む決意を申し上げまして、政府案に断固反対の討論を終わります。(拍手)

発言情報

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発言者: 小沢雅仁

speaker_id: 17023

日付: 2024-06-19

院: 参議院

会議名: 本会議