2024-04-12
参議院
高橋はるみ
政府開発援助等及び沖縄・北方問題に関する特別委員会
高橋はるみの発言 (政府開発援助等及び沖縄・北方問題に関する特別委員会)
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○高橋はるみ君 それでは次に、第二班について御報告をいたします。
当班は、令和五年七月三十日から八月五日までの七日間、カンボジア王国及びラオス人民民主共和国に派遣されました。
派遣議員は、松山政司議員、森屋隆議員、宮崎勝議員、そして団長を務めました私、高橋はるみの四名でございます。
カンボジア、ラオスは、両国共に一九六〇年代から日本が開発協力している国であり、歴史的に見ても極めて親日的な国として、いわゆるODA成功案件が数多く実施されてまいりました。両国の紙幣には日本のODAにより建設された橋が印刷されており、カンボジアの紙幣に至っては日の丸まで描かれております。外国国旗を自国紙幣にデザインする国はほかにはないのではとカンボジア大使がおっしゃっていましたが、日本に対する感謝と信頼の表れと感じた次第です。
信頼という点では、今回、各視察先へ御同行いただいた大使館やJICAの職員の方々が現地関係者と非常に良好な関係を築いておられたことは大変印象的でありました。現場における日頃の努力の積み重ねによって我が国への信頼が成り立っていることに改めて気付かされたところであります。
一方、現地では、中国のプレゼンス拡大の勢いを肌で感ずることとなりました。中国が大型のインフラ中心の目立つ支援を圧倒的な資金量、スピード感を持って実施している中、我々としては日本にしかなし得ない支援を考えていく必要があると改めて認識をいたしました。
以下、それぞれの国における案件視察、意見交換等を通じて得られた所見を中心に御報告いたします。
まず、対カンボジアODAに関する所見を申し上げます。
カンボジアでは、上下水道分野における支援案件として、浄水場を二か所視察いたしました。そのうち、首都プノンペンのプンプレック浄水場は、日本がマスタープラン策定から支援に入り、プノンペンの奇跡とまで言われた案件です。
三十年以上の長きにわたり良好な関係が継続できている背景には、浄水場を造って終わりではなく、水道事業運営や財政管理のノウハウなど、日本の持てる技術を余すところなく伝授するという支援の姿勢があります。意見交換をしたプノンペン水道公社総裁の言葉からは、日本の支援とともに歩んできた結果としての水道事業運営に対する自信と信念が感じられました。こうした二人三脚の支援の在り方は、開発協力が将来への投資である旨を体現しており、まさにODAのあるべき姿と言えます。
現在は、上水道に加えて下水処理施設の整備を新たに日本のODAにて進めておりますが、上水道における成功を下水道においても実現できるよう、今後更に力を入れていくことを期待します。
次に、保健医療分野における支援案件として、カンボジア周産期医療の中核病院である国立母子保健センターを視察いたしました。一九九五年の開院以来、約三十年にわたり、ハード、ソフト両面で日本が支援しており、その結果は、乳幼児・妊産婦死亡率、予防接種率など、開発目標の指標の改善に表れています。
センター長からは、感染症専門診療科の設置、女性総合診療科の設置など、意欲的な提案がなされ、カンボジアの医療水準向上に対する意気込みを感じたところです。こうした点も、多方面での人材開発をバランスよく支援してきた日本の支援の成果と言えます。
他方、国内最先端と言われる当センターでも医療機器、資材が十分とは言い難く、例えば病院の待合室にはエアコンがないなど、病院としての環境には改善の余地があると思いました。病棟設備や医療機器の改修、更新など、ハード面での支援も引き続き必要とされていることを指摘いたします。
続いて、対ラオスODAに関する所見を申し上げます。
ラオスにおいては、農業分野、エネルギー分野、保健医療分野における支援の現状を視察するとともに、計画投資大臣、保健大臣、教育スポーツ大臣と意見交換をいたしました。
農業分野では、ビエンチャン郊外のタゴン地区のかんがい施設を視察いたしました。そこでは、ラオス側から追加支援として水路の補修という具体的な要望を伺いましたが、さほど大きな水路でもなく、のり面舗装であれば自分たちでも対応できるのではないかなと思われる状況でした。
視察後、意見交換を行ったJICA海外協力隊員の方々からは、協力姿勢として、魚を与えるのではなく魚の釣り方を教えることを旨としているとの話がありましたが、形として存在するものばかりではなく、人材育成を通じて引き継がれ、将来にわたって使える技術を教えることこそが本来あるべき支援の姿です。基本に立ち返り、信頼関係に名を借りた依存に陥らないよう、お互いがパートナーであることを常に意識しながら自立を見据えた支援を実施していくことが重要であるとの思いを強くいたしました。
エネルギー分野については、ラオス国内の水力発電所第一号であるナムグム第一水力発電所を視察いたしました。水資源の豊富なラオスでは水力発電をメインとする電源開発が進められてきましたが、以前から環境問題が指摘されているとともに、二〇一八年には民間企業が建設をしたダムが決壊するという事故もありました。
昨年六月に改定されたODA大綱においては環境と開発の両立、維持が開発協力の実施原則として示されておりますが、水力発電開発の限界が見えてきた今、電源多角化のためにも、風力や太陽光といった再生可能エネルギー分野での支援に比重を移すことも検討すべきです。こうした支援は、民間投資の促進、低炭素技術等の普及など、双方にとってメリット享受の機会になり得るほか、アジア・ゼロエミッション共同体構想の推進にも資することとなり、まさに開発協力の効果的、戦略的な活用につながります。
保健医療分野に関しては、ブンフェン保健大臣と意見交換を行うとともに、首都ビエンチャンの中核医療施設であるセタティラート病院及びビエンチャン郊外のパサン小病院を視察いたしました。
保健大臣からは、ラオスの医療提供体制の実効性を高めるために、地方における一次医療を充実させる取組、特に母子保健の改善に向けた取組の話をお伺いしました。
カンボジア同様、病院内にはエアコンはなく、病院食の提供もないなど、医療提供体制について改善の余地は残るものの、それぞれの病院の視察、利用者や地域住民の声を通じて、医療サービスやアクセスは我が国の支援により着実に良くなっていっていることが確認できました。
なお、全てのラオス国民に質の高い医療をという保健大臣の思いを実現するためには保険制度の充実が不可欠でありますが、国民の間には、医療提供体制が十分でなく、保険加入のメリットが感じられないとの声もあると伺いました。保険制度の充実に向け、またユニバーサル・ヘルス・カバレッジ達成に向けて、医療提供体制の拡充について引き続きの支援が望まれます。
次に、カンボジア、ラオス両国に共通する課題について申し上げます。
冒頭申し上げましたとおり、両国では中国が圧倒的な資金量を背景にスピーディーな支援を行っています。翻って、我が国のODA予算は近年横ばい、手続等に時間も掛かり、中国の勢いに押されぎみであります。
一方で、相手国の財務状況を顧みない中国の支援と違い、我が国の支援はその質の高さ等から高い信頼と評価を得ておりました。
ODA大綱で包摂性、持続可能性、強靱性を伴う質の高い成長を実現することが求められている中、日本にしかなし得ない支援として、例えば法制度整備に力を入れていくべきと考えます。我が国には、アジア諸国における法令の起草、法曹人材の育成等への支援実績があります。日本もかつては欧米諸国から法制度を学んでまいりました。こうした経験や、アジア諸国と類似した法文化であることは支援する際の強みとなります。我が国に優位性のある分野として進めていくべき分野であると考えます。
また、環境分野、再生可能エネルギー分野も日本の技術力を生かせる分野です。特に、再生可能エネルギー分野においては、様々な主体と連携することによる官民資金のシナジー効果が期待されます。民間企業等との共創、オファー型協力といったキーワードに沿った開発協力を進めることで、我が国の経済成長にもつながることが期待されます。
最後に、JICA海外協力隊について申し上げます。今回の調査では、隊員の方々と意見交換する機会を多く得ました。使命感を持って活躍されている隊員の皆様の情熱に驚かされる一方、隊員の中には、帰国後の生活等に対する不安を抱える方もいらっしゃいました。協力隊の経験は、本人のみならず、社会にとっても大きな財産となります。JICA及び外務省におかれては、協力隊員の就職支援等について更なる充実をお願いを申し上げます。
また、他国のボランティア職員との連携の必要性についても申し上げます。開発協力は外交手段であり、各国が国益に鑑みて実施するものですが、同地域で活動している各国の協力隊が知見、経験を共有することで、それぞれが持つノウハウや人的、物的資源を有効活用することが可能となります。中国はボランティアを実施しておりませんが、韓国の海外協力隊、KOICAとの連携強化により効果的な協力支援が実現できると思われます。
結びに、今回の派遣に当たっては、視察先の関係者を始め、外務省、JICAなど多くの方々に多大なる御協力と御尽力をいただきました。改めて心より感謝を申し上げ、第二班報告といたします。ありがとうございました。