原田尚美の発言 (外交・安全保障に関する調査会)
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○参考人(原田尚美君) ありがとうございます。
今日は、気候変動が海洋法秩序に及ぼす影響への対策と取組の在り方ということで、私からは、サブタイトルとして、「北極・南極・日本周辺の視点から」ということで御紹介をさせていただきます。
前半、サイエンスのエビデンスに関するプレゼンテーション、これ研究者の立場で御紹介させていただき、後半に戦略について幾つか提案させていただきますけれども、そちらの方は、内閣府の総合海洋政策本部参与会議、現在参与を拝命しておりますので、その参与としての立場で発言をさせていただけたらと思っております。
では、お手元の資料、最初のページを見ていただきまして、下の方、「北極海・南大洋の海氷は減っている」というタイトルの図になります。
こちらは、一九七九年から、下、横軸ちょっと途切れていますが、二〇二〇年ぐらいまでの衛星観測の結果の、北極とそれから南極周辺、南大洋の海氷の分布をグラフ化したものであります。太い線が北極です。そして、青い線が南極ということになります。
皆さん御覧になってお分かりのように、北極はもう観測当初から右肩下がりでどんどん海氷が減っているという現実がございます。一方で、南極の方は、数年程度の周期性を持った変動はありますけれども、長期的に増えている減っている、こういった傾向がない。つまり、地球温暖化に対して南極は余り応答していないのではないかというのがこれまでの見解でありました。
ところが、こちらのグラフの右端、御覧になっていただきたいんですが、青い線ですね、二〇一五年、一六年ぐらい以降、急激に南大洋周辺の海氷も減っております。これ、回復していないというのが現状でして、いよいよ温暖化の波が南極周辺にも押し寄せているかということで、研究者たちは懸念を抱いております。
めくっていただきまして、上の図になります。こちら、左側の図が世界の海面水位上昇の将来予測、右側は南極氷床、南極大陸の地図、絵になっております。
左側のまずはグラフなんですけれども、こちら、二酸化炭素の排出シナリオベースに幾つかの線が描かれております。
これぐらい、例えばRCP八・五という赤い点線がございますけれども、これ、今現在と同じような化石燃料の使い方でいった場合に海水準これぐらい上がりますよということが示されていて、縦軸のゼロから五というのはメートル単位です。全球の海面水位がメートル単位でこれだけ上がりますよということを示したグラフになっています。
二一〇〇年のところを見ていただきたいんですけれども、どの排出シナリオベースでも大体数十センチから一メートルは上昇するというふうにされております。今現在、日本周辺、年間三・五ミリ程度ずつ海水準上がっているというのが現状です。これが、温暖化が加速していきますと、数十センチあるいはメートル単位といった形で大きく海水位が上がっていくということになります。
現在、熱膨張といいまして、海洋が温暖化することで膨張する形で海水位上がっているというのが大部分でありますけれども、いよいよこのフェーズが大陸氷床の融解のフェーズに移ってくるかということになります。そうすると、これ急激に上昇してくる可能性がありまして、この海面水位上昇の問題というのは、ツバルのような南の島の問題だけではなく、世界の大都市、東京、大阪、名古屋含めて、全て海抜ゼロメートルの沿岸に位置しておりますので、我々大都市圏の問題でもあるということになります。
右側の南極周辺、一体、じゃ、この大陸のどの辺で氷床が解け始めているかということを色で表しています。色が、赤茶色の色が強いほど南極の解けている部分を表しています。これ、真ん中にちょっと青い線が引いてありますけれども、この青い線の右側がいわゆる東南極と呼ばれているところで、左側が西南極というふうに呼んでいるところであります。
我が国の昭和基地、東南極に位置しておりまして、その下にトッテン氷河というところがあります。実は、東南極、余り温暖化の応答を受けていない、そんなエリアだったんですけれども、昨今の日本の南極観測隊の観測から、どうやらこのトッテン氷河周辺が特に集中的に東南極周辺では大陸氷床融解しそうだということが分かってきました。
先ほど前ページでお見せした海氷の分布、右肩下がりで下がり続けていると、ここ数年ですね、紹介いたしましたけれども、この海氷がなくなってしまいますと、ちょうど大陸氷床の栓をするような形で海氷って実は存在しているんですが、それがなくなると、ちょうどシャンパンのコルク栓を抜くように、後背部にあります大陸の氷床の氷がより海に流れやすくなってしまう、そんな状況があります。
このトッテン氷河(四メートル)と書かれていますが、この点線の範囲、トッテン氷河と呼ばれているところなんですけれども、たったこれだけの面積全部が海に流れ出してしまった場合、四メートルの全球の海水位を上げる、それほどのポテンシャルがあるということを表しています。
このトッテン氷河と同じだけのポテンシャル、西南極の氷床量全部を解かしても同じぐらいということで、いかにその東南極の氷床に存在している氷床の量が大きいか、そして危機的な状況がそろそろ東南極にも始まっているかということを表しております。
それから、その下ですね、視点を日本周辺に移動させます。
こちら日本周辺の海洋熱波の発生と、それからブリの漁獲のグラフを持ってまいりました。
このグラフ、黒い線と赤い線があります。黒い線はこの北海道沖の海水温を表しておりまして、横軸は八五年から二〇一五年までということになっております。
大変変動が激しいわけなんですけれども、二〇一〇年以降を御覧ください。ずっと海面水温十八・五から十九度を推移したまま。つまり、高い水温がずっと維持されているんですね、ここ数年。こういった水温の上昇が毎年発生するようになったタイミングでどうもブリの漁獲高が増えているということで、この両者には実は統計的な関連があるということで、海洋研究開発機構の研究者らが報告をしております。
一枚めくっていただきます。
ということで、以上、御紹介してまいりました気候変動、これが海洋法秩序に及ぼす影響とそれから対応について、プレゼンテーションを進めてまいります。
まず、最初に紹介した北極海の海氷が減少していくということで、実はこの北極海に埋蔵されているとされるエネルギー、天然ガス等ですね、それから鉱物資源、さらには生物資源、こういった資源へのアクセスが容易になります。これへの対応ですけれども、エネルギー等資源の安全保障の確保と、それからこういった資源を探査したり、あるいは取ってきたりするためのイノベーションへの注力、これを継続的に行っていく必要があろうかと思います。
そして、こういったイノベーションへの注力というのは、同時に、カーボンニュートラルを強く意識した再生可能エネルギー、それからレアアース、これを深海から入手する技術の開発、そういった技術革新にも結び付いてまいります。
それから、二つ目ですね、南極等の氷床、こちらが海洋へ流れ出しますと、海面水位の上昇、これまでとは桁違いに起こる可能性があります。これへの対応としましては、大都市それから国境離島、この水没に対する対応が大変重要になってまいります。
それから、三点目ですね、水産資源の分布、こちら、全体的に極域へ現在移動しているとされています。こういった移動ですとかあるいは分布の変化、例えば海洋熱波によるブリの漁獲の上昇、逆にサケは捕れなくなってきております。こういった魚種の入替えですとか、あるいはこういった水産資源を日本以外の国々が公の海で確保してしまうといったことの増加、それから現場海洋をしっかりと状況把握していくということ、これが重要になってきておりまして、こういったことへの対応というのは食料安全保障リスクへの対応ということで重要になってくるわけです。
ページ下へ行っていただきまして、こういった対応について、七つの重点戦略といったものを提案させていただきます。
まずは、エネルギー等資源の安全保障の確保と継続的なイノベーションへの注力に関して。
例えば、例を挙げておりますが、自律型無人探査機、こういったものを始めとする技術革新、そしてこれらの迅速な社会実装、これが大変重要になってくるかなと思っております。こういったことの促進によりまして、生産性の向上、海洋での活動の省人力化、それから洋上風力発電等の巨大構造物の保守管理にも対応していくものかと思います。
それから、二つ目ですね、洋上風力発電の排他的経済水域展開に向けた制度整備の推進。これに関して、先進国の責務として、二〇五〇年カーボンニュートラルの達成に結び付くということになります。
それから、三つ目の戦略ですけれども、南鳥島及び周辺海域の開発、これの推進です。こちらは、レアアース生産の社会実装支援のための調査を強化する、こういったことが必要になってまいります。
そして、四つ目、北極政策の更なる推進です。今現在建造中の最新鋭の観測設備を有する北極域研究船みらいⅡ、これを国際プラットフォームとして運用しながら海洋環境調査を確実に実施し、北極航路それから北極域の資源開発に貢献していくものというふうになります。
めくっていただいて、重点戦略五つ目、六つ目、七つ目です。
まず、大都市それから国境離島の水没への対応ということで、管轄海域の保全のための国境離島の状況把握、これが大変重要になってまいります。排他的経済水域のエリアを確保する重要な拠点として、それから地形照合システムの整備などを行い、こういった国境離島等での経済活動、投資を促進していくということが重要になってまいります。
また、食料安全保障リスクへの対応ですけれども、海洋状況把握、それから情報の利活用、これを是非推進する必要があります。こういった推進によって、船舶観測、衛星観測、人工知能などの活用によるデータ解析手法の高度化、それから多様な現場海洋の情報を集約、共有するということですね。そして、こういったデータベース、産業界を巻き込みながら利活用していくということが重要ですし、こういったデータベースは、さらに、シーレーン沿岸国、同志国、同盟国、こういった国々との連携、こういった国々への支援といったことにも結び付いてまいります。
それから、最後七つ目の戦略、これ一番重要なんですけれども、以上御紹介した六つの重点戦略全てに関わってくることですが、人材育成です。海洋に携わる人材育成、これ本当に重要なことになってまいります。
で、その下ですけれども、まとめになります。
ここで提案させていただきました七つの重点戦略、人材育成、AUV等の技術革新、洋上風力発電によるカーボンニュートラル達成、レアアース開発、北極政策、国境離島対策、海洋状況把握、この推進、こちら実は第四期、現在走っている第四期海洋基本計画、この基本計画の中で特に重点的に打ち出していくべき戦略と位置付けられているものであります。これを推進していくということが重要であります。こういった推進は、我が国の安全保障、経済安全保障、そして食料安全保障の強化、経済成長への貢献、温暖化など喫緊の世界的な社会課題の解決、社会実装、産業化、国際展開の観点から国益に資するものであるというふうに言えます。
また、現在走っている第四期海洋基本計画の二つの主柱、総合的な海洋の安全保障及び持続可能な海洋の構築、これらを通じた我が国の海洋立国の実現に結び付くものと思われます。
私からの発表は以上です。
御清聴ありがとうございました。