塩澤英之の発言 (外交・安全保障に関する調査会)

⚠️ コピーしたテキストを転載する際は、転載元URL(kokkai-data.com)および原典URL(kokkai.ndl.go.jp)を必ず残してください。発言内容の改変・出典削除は禁止です。 詳細は利用規約をご確認ください。

○参考人(塩澤英之君) 笹川平和財団の塩澤と申します。よろしくお願いします。
 今日は、私は国際法の専門ではないんですけれども、太平洋島嶼国にずっと関わっていまして、今回はこのテーマに合わせて、その切り口から意見陳述をさせていただきたいと思います。
 まず、今回の内容ですけれども、そこに書いたように、ポイントから、最初に今回の話のポイント、そして太平洋島嶼国の多様性、地域枠組み、海面上昇が太平洋島嶼国に与える影響、あと国際法協会、国連国際法委員会、ILA及びILCによる基線維持に関する見解、あと基線確保の不確実性に対する太平洋島嶼国の対応、太平洋島嶼国の立ち位置、あと補足として地域機関の技術支援、データ化、あとは太平洋島嶼地域の海域に関する法執行協力、あと気候変動の無垢な被害者としての太平洋島嶼国側の意識、あと基線の不確実性がもたらす安全保障上の懸念、最後に我が国との連携協力の可能性、必要となる外交的取組について説明していきます。
 まず、三ページ、四ページ目ですけれども、まずポイントとして、まあ結論みたいなものですけれども、まず最初に、海面上昇は太平洋島嶼国にとって存亡の危機であると、そういう部分があります。現実的に、領土が減少したり消失したり、海域が減少してしまうということがあり得ると。それは、住民の安全にも関わるものであり、食料確保に関しても問題がある、そして国家経済に対する脅威でもあるということです。もう一つは、国連海洋法条約、UNCLOSにおける基線確保の不確実性の問題。三つ目が、外国の行為者が海洋権益の曖昧さを悪用する可能性があるんじゃないかというところ。で、最後に、四つ目として、我が国、国際法に従った自国海域の確実な保全の実現への協力という部分になります。
 その下の地図ですけれども、幾つか、太平洋島嶼国といっても一様に語ることができなくて、いろんな見方をしなければいけない部分があります。
 その①の部分としては多様性ですね。旧宗主国という国がありまして、アメリカ、オーストラリア、ニュージーランド、イギリスなど、あと一部フランスですけれども、そのため、現在独立した国であっても、そういう旧宗主国との関係が、法律上も、法律上じゃなくて、国内法などの基本の部分で関係してきたりします。
 また、右側のその地図を合わせると、サブリージョナルというんですけれども、小地域というんですね、の分け方があり、ミクロネシア地域、メラネシア地域、ポリネシア地域という見方、分け方もあります。
 めくっていただいて、次の部分ですけれども、太平洋島嶼国、十四か国ありますが、大きな違いがそれぞれあって、まず、人口が一万人前後のところもあれば、九十万人のようなフィジーのようなところもあり、あとパプアニューギニアのように九百万人を超えるような国もあります。人口規模が違うということで、国家予算ですね、国家予算の規模が全然違っていて、例えば一万人前後の国だと国家予算が年間百億円から二百億円とか、そういう規模だったりします。そうすると、そういう国にとってはインフラ整備などに関する大規模な資金というのは到底用意できず、造った後も維持管理の費用が調達できないという、そういう限界があります。あとは、地形としては、低環礁国と言われるマーシャル、ツバル、キリバスなど、標高が二メートル前後とか、そういう国があります。あと、経済的には、民間部門の強い国、フィジーやパプアニューギニアなどあり、一方で、政府支出にGDPが依存しているツバル、ナウル、キリバス、マーシャルなどがあります。
 一方で、共通点としては漁業、漁業といってもEEZの中の入漁料を外国の漁業国に売ることによって得られる収入なんですけれども、その入漁料収入が主要収入源の一つとなっています。あと、近年は越境犯罪の問題がかなりクローズアップされています。麻薬や人身売買などです。あとは、全体として共通しているのは、気候変動が彼らにとっての安全保障上の最大の脅威であるというところです。
 また、EEZを考えると、キリバス、ミクロネシア連邦、パプアニューギニアなど非常に大きな海域があり、十四か国で世界のEEZの約二〇%を占めると言われています。
 次に、下のものですけれども、今度は地域秩序の枠組みになりますけれども、まず一番上にある、一番として書いているのが地域秩序基盤、戦後秩序ですね、というもので、北半球はアメリカ系、そのミクロネシア、パラオ、マーシャルという国々ですね、はアメリカ自由連合国としてアメリカ系の社会となっています。南半球は英連邦系という違いがあります。
 伝統的安全保障で考えた場合、北半球のアメリカの自由連合国三国に関しては、コンパクトという協定、条約に基づいてアメリカが安全保障上の責務と権限を有していると。この地域全体で見て軍があるのは幾つあるかというと、パプアニューギニア、フィジー、トンガの三国だけで、しかも、これは防衛というよりも国内の治安維持、あとは国際貢献などのための軍と見ることができます。
 あとは、EEZの中の取締りなんですけれども、これは法執行、警察権になるので各国が権限を持っています。各国の海上警察、国家警察の海事部門などが対応していて、一方で、その旧宗主国と言われるアメリカ、オーストラリア、ニュージーランド、フランスなどが地域協力を進めて、行っています。
 次のページですけれども、あとは、先ほども少し出てきましたけれども、太平洋諸島フォーラムという地域枠組みがあります。それは、地域政策枠組みで、小さな国々が国際社会にどうやって統一、一致した声を届けるかという、それが大きな目的としてあるんですけれども、現在は十四か国プラス、オーストラリア、ニュージーランド、そしてフランス領の二地域が加盟しています。閣僚会議や首脳会議などで構成されています。ただ、ポイントとしては、その加盟国の主権だとか外交権を超えない組織であるので、例えばPIF事務局というところが国の意思を超えた発言や行動はしないというのが基本的な枠組みとなっています。
 さらに、多くの地域機関がありまして、我々、CROP機関、我々じゃなくて、CROP機関と呼ばれているんですけれども、PIFを事務局として漁業、科学技術、環境、開発、観光、その他いろんなものがありますけれども、九機関があります。
 その下の写真は、僕、二週間前にツバルに行ったんですけれども、ツバルの写真です。これは平常時の写真なので水面は低いんですけれども、キングタイドと言われる、二月とか三月に大潮ですかね、になると一メートル、二メートル水面が上がるので、水没する地域があるということです。
 次めくると、次、海面上昇が太平洋島嶼国に与える影響なんですけれども、その気候変動に関する政府間パネル11のものでは、そういうふうに継続的な海面上昇が想定されるという話になっています。
 これに対してどういう実際の動きが、影響があるかというと、現実的な変化として、住民の安全、食料確保、国の存亡に関する危機感につながる部分があります。
 高潮とか、先ほど述べました大潮時の浸水被害が増加している。僕、二十年島嶼国に関わっていて、マーシャルという国に六年間住んだことがあるんですけれども、二十年前はそんなに大潮になっても浸水被害ってなかったんですね。それが今は毎年二月、三月が大潮があって、あと九月、十月頃に大潮があるんですけれども、毎回、道路が水没するとか、近隣の庭、家の庭が水没するということが起こるようになっています。
 あと、そういうことが起こっていくと、今度は領土の減少も考えられるし、そうすると住民の安全、生活、食料の危機につながると。あとは、ひどい場合にはその領土消失、その低環礁国、ツバル、キリバス、マーシャルなどはそういう危機があると。そうすると、もう国の要件を失ってしまう可能性があります。
 あとは、法的にその基線、海上境界が維持されない場合、どういうことが起こるかというと、群島要件が解除されて、群島基線というのがあるんですけれども、それが不適用になってEEZが減少していくと。また、領海も減少してしまうので、国としてのその安全保障の防衛エリアが変わっていく。あと、EEZが公海に変わってしまうということで、軍事ではないんです、安全保障ではないんですけれども、今はその違法漁船などを取り締まるということでEEZの中で各国、沿岸国の警察が監視をするんですけれども、そういうところに穴がどんどんできていくということになります。
 次に、その下の部分なんですけれども、ILAとILC、国際法協会と国連国際法委員会の見解なんですけれども、一番下ですかね、法的安定性、安全性、確実性、予測可能性を維持するために、海面上昇による沿岸の変化にかかわらず、既存の境界画定を維持すべきであるという立場を支持しています。
 次のページになりますけれども、これもそのままですね、とにかく基線は維持できるという立場の話をしています。あと、法的オプションとしてあるのが、条約の解釈やその規定の適用に関する締約国間の合意、又は条約の解釈に関する締約国の合意を確立する条約の適用におけるその後の実務のいずれかによって現在のUNCLOSを解釈すると、変更しないでそのまま使っていくという考え方です。
 そういう基線確保の不確実性に対する太平洋島嶼国側の対応なんですけれども、地域としては、太平洋諸島フォーラムが、首脳の合意を得て、その気候変動による海面上昇に直面する海域の保全に関する宣言を出しました。これは、国連に寄託した基線の永続宣言であって、既に日本を含む百か国以上が支持しているものです。これは、先週、太平洋諸島フォーラムの法務部に行きまして、そういう話をちゃんと確認してきました。
 あとは、地域全体としては二〇五〇年戦略というのがあり、去年の十一月に実施計画というものを合意、エンドースしました。これは、直接海面上昇の話には関わらないんですけれども、とにかく彼らが海洋の管理者として地域を維持していくんだという、そういう矜持を示したものです。
 二つ目として、太平洋共同体という組織があり、そこではもう科学技術の支援をしているんですけれども、海上境界画定のための技術協力、データ化などを進めています。
 国レベルに戻っていくとどうなるかというと、その宣言は宣言としてあるんですけれども、今度は各国が海上境界の画定だとか、国内の法制化だとか、あと国連への寄託を急ぐというところになっています。とにかく、寄託されれば変更はしないという立場なので、とにかく寄託していくというところですね。その過程として、隣国との境界交渉地域が、四十八件あったところ、現状で三十六件合意しているというところです。ただ、公海とのその境界部分に関しては五か所が未画定な状況です。
 改めて、その二〇二一年宣言のポイントなんですが、そこに書いてあるとおりで、とにかく、ちゃんと宣言したことによってもうこれは固定される、我々はもう絶対変えないという、そういう立場です。補足としては、その下の図になりますね、太平洋共同体というところがオーストラリア、アメリカ、あとはEU、あっ、オーストラリア、ニュージーランド、EUなどの支援を受けてデータ化を進めています。これが各国の海上境界画定に、何というか、促進しているという立場、ことになります。
 めくって、次、十五ページ目、なりますけれども、太平洋島嶼地域の海域に関する法執行協力というものです。
 これは安全保障で、安全保障に入れていいのか難しいんですけれども、まず一番目がEEZ内のIUU漁業、違法、無報告、無規制漁業対策という部分で、中心になっているのはフォーラム漁業機関、漁業局って、漁業機関ですね、エージェンシーです、になります。そこでは漁船の位置情報などを集約していまして、それを基に合同監視活動を行っていると。アメリカ、オーストラリア、ニュージーランドの海軍、あとは空軍も入るときがあります。で、アメリカのコーストガードなどですね。あと、そのFFA、そのフォーラム漁業機関の加盟国である太平洋島嶼国の海軍、あとは海上警察が合同で地域監視をするというプログラムがあります。あとは、日本も海上保安庁のモバイルコーポレーションチームがまさに今マーシャルに、我々派遣をお願いして現地に行っていただいていて、今週現地で技術協力を行うことになっています。我々も、日本財団、あと笹川平和財団で協力をしています。
 あと、二番目として、越境犯罪対策があります。これは、先ほどお伝えしたように、麻薬、人身売買などが対象になっていると。これ、日本もUNODCなどを通じて協力しています。全体的に、地域のこういう警察関係の部分に関しては、オーストラリア、ニュージーランドが伝統的に支援をしているところです。
 三番目の公海の資源管理に関しては、WCPFC、中西部太平洋、これまぐろ類が入ります、まぐろ類委員会がありまして、これは日本も加盟していまして、EEZだけじゃなくて、もう全体の海域の資源管理について協力する、交渉する場になっています。
 この中で、EEZの外側の公海に関する部分で、加盟国がWCPFCに巡視船を登録すれば、その巡視船が、その公海の中で漁船の立入検査が可能だという取決めがあります。つい先頃、中国の巡視船が何隻かこれに登録されました。そういうことがあります。
 補足として、最後の部分としては、太平洋島嶼国の立場になる、根底的な、根本的な立場なんですけれども、気候変動の無垢な被害者、イノセントビクティムと彼らは言うんですけれども、としての意識があります。太平洋島嶼国は、とにかく太平洋島嶼国は何もしていないのにこういう気候変動の影響を受けていると。一方で、日本などそういう、日本のほか、産業国は経済発展をしてということですね。加害者という言い方をして、直接は言わないんですけれども、そういう言い方、視点があります。
 一つは、ロス・アンド・ダメージという考え方があって、先ほど最初にお伝えしたように、国によっては財政規模が非常に少ない、低いので、沿岸部分を強化しようとしても予算が全然確保できないと。国際協力でやろうとすると、大規模なものは大体、円借款など、日本は円借款ですね、有償の支援になった場合、なることがあって、それはおかしいだろうと彼らは言っていまして、ローンではなくて無償で出してくれと。あと、プロセスが、例えば緑の気候基金などの場合でも提案してから三年、四年掛かることがあるので、もっと迅速に進めてほしいというのがあって、ロス・アンド・ダメージということをどんどん主張しています。
 あと、二番目として、これはまだ実現していないんですけれども、入漁料収入の損失への賠償についても彼らは言及しています。温水域が移動することによって、EEZ内で捕れていた魚が公海に移ってしまうと。そうすると、彼らは入漁料収入を得ている部分があるんですけれども、その入漁料収入が減ると。その損失分を、温水域の移動に関わった先進国に賠償金というのを出してくれという、そういう視点で話を彼らはしています。
 もう一つは、三番目、フィジーの例なんですけれども、沿岸域の村落の人々の半数以上が高台に移動する必要があるという話がありまして、ただ、聞いてみると、元々先住民の人たちは高台の方に住んでいたんですが、イギリスの植民地時代に彼らが統治しやすいように沿岸部に移住させたことがあるというんですね。なので、その人たちは、また元に戻すというわけではないんですけれども、もう一度高台に移動させなきゃいけないという話がありました。これは、今月、フィジーの首相府で話を聞いてきました。そういう話です。
 最後の二枚になりますけれども、基線の不確実性がもたらす安全保障上の懸念についてですけれども、まず根本的に地域秩序が揺らぐと、その太平洋島嶼国と旧宗主国が守ってきたそのエリアに穴がどんどんできてしまうという形になります。単純に考えて、内水域の部分が領海に変わって、領海が接続水域やEEZに変わり、EEZが公海に変わっていくという形になってしまうので、そういうことです。あとは、そうですね、EEZ自体は安全保障上の、ちょっと難しいんです、防衛の対象ではないんですけれども、漁業権益とかそういう部分で監視できているものができなくなるという部分があるので、穴ができてしまうと。
 あとは、こういう曖昧な状況を外国の行為者が地域秩序の変更を狙って利用する可能性があると。だから、UNCLOSによって基線の保全が認められないと主張して、実態に合わせた変更を主張すると。そして、あとは行動によって、なし崩し的に公海として行動して、実質的にEEZを縮小させるということがあるんじゃないかと考えられます。
 これに対して、我が国としての太平洋島嶼国などとの連携協力の可能性はどういうものがあるかということなんですけれども、国際法に従った自国海域の確実な保全の実現への協力という点でいえば次のことが挙げられるんじゃないかと思っています。
 一つは、これはフィジー側からも話はあったんですが、フィジーなど太平洋島嶼国と一緒に地域会議、国際会議を共同開催して機運を守るという、現在のものを守るという機運醸成を行うというところです。
 三月にマーシャルのハイネ大統領が来られたときに岸田総理とも会っていまして、そのときに、日本に対してグローバルサウスと先進国の間の橋渡し役を期待しているということがありましたので、そういう話にも合致するんじゃないかと思います。
 また、あと日本としては、その同じ危機感を有する、安全保障上の危機感ですね、を有するアメリカ、オーストラリア、ニュージーランド、その他の国と連携と協力を進めていけるんじゃないかと。ただ、進め方としては、PIFという枠組みから入るんじゃなくて、国と国とをつないでいって、その後にPIFという形がいいと思います。
 あとは、科学データを扱う太平洋共同体などとの技術協力。あとは、法務人材が限られている国が多いので、そういう国に対する司法外交とか、そういう部分での技術協力、専門家派遣があるかと思います。
 大事なのは、その海面上昇の影響が他者のものではなくて、日本も当事者であるというものを示しながらやることが重要じゃないかと思います。
 以上になります。ありがとうございました。

発言情報

speech_id: 121315362X00520240515_007

発言者: 塩澤英之

speaker_id: 24501

日付: 2024-05-15

院: 参議院

会議名: 外交・安全保障に関する調査会