石田一喜の発言 (国民生活・経済及び地方に関する調査会)
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○参考人(石田一喜君) 今ほど御紹介あずかりました株式会社農林中金総合研究所の石田と申します。本日はよろしくお願いいたします。
着座にて御説明させていただきます。(資料映写)
私の方からは、産業の担い手確保というタイトルで、特に特定地域づくり事業に着目した御説明をしたいと思います。
一枚おめくりいただきまして、本日お話しする内容を大きく六つにまとめております。一つが、私の研究テーマでもある受援力という御説明をまずさせていただいた後に、今回着目する特定地域づくり事業協同組合をめぐる状況と、移住時に係るなりわいというものに係る状況、また、多業という最近着目されている考え方を述べた後、特定地域づくり事業をめぐる個人的な評価を説明したいと思います。最後六番目は、本事業の事例の御紹介でございます。よろしくお願いいたします。
まず、受援力の説明という前に、私の簡単な自己紹介したいと思います。私、石田は農業経済学という学問を専門領域としておりまして、特に農地の利用あるいは地域資源の利用というものに着目してきました。そうしますと、下の方に書いてあるんですが、農地関連法制度の研究もしておりますし、今、みどり戦略というところで、環境に優しい農業というものは何かというような議論もしております。
今回のテーマにつきましては、一番右下の、やはり農業、地方の人手不足というような課題に対してどのようなことができるのか、これを仕事づくりというふうにまとめまして調査研究を行っております。その中で、外国人労働力、かなり農村部にも増えてきておりますので、こういった方たちの働き方、暮らし方についても研究しているということでございます。
本日は、一番右下の地方農村部での仕事づくりの特定地域づくり事業協同組合制度との関わりについて述べさせていただきます。
こうした考えを持つときに私の方で考えているのが、五枚目のスライドでまとめております受援力というような考え方になっております。こちら、元々、災害ボランティアであったり除雪ボランティアの支援を受け入れる際にその力を十分発揮してもらうための受入先に求められる環境や知恵の総称を指す言葉なんですけれども、今、関係人口という後ほども御説明させていただくようなトレンドがある中で、地域課題解決と関係人口を結び付けるような発想も、デジタル田園都市の中でもよく見られる表現になっております。
こうしたときに農村側、地域側が何もしなくていいのかというと決してそんなことはなくて、やはり人を受け止めるために何らか対応しなければならないだろうというのが私の考えです。この受援力というような発想に基づいて、せっかく来てくれたのに何もすることがないとか、何したらいいか分からないを含むようなミスマッチであったり、来てから思うような自分の夢が実現できないというような課題が発生しないようにするためにどんな取組が必要かというものを考えております。
参考を下の方に書かせていただきましたけれども、農村部、人が足りない足りないというんですが、実際どのぐらい足りないんですか、どのぐらい雇用できますかというふうに聞いてみますと意外と分からなかったり、地域全体で何人必要なのかというのは、業界またぐと全く分からないということになっております。
もちろんハローワークがあるわけですけれども、そこでも明確化できないという課題もありますので、それを行って、その課題に対して何ができるのか、また、その課題に対していかに情報発信するのかというような様々な取組を含めて受援力向上というふうに名付けておりますので、特定地域づくり協同組合制度も、この流れに沿った一番の取組、非常に分かりやすい取組だろうということで私の方も研究を始めたというところでございます。
続けて、特定地域づくり事業協同組合をめぐる状況というスライドに進みたく思います。六枚目以降の御説明になります。
まず、七枚目でございます。
こちらの方は皆様既に御存じの内容が多いので大変恐縮なんですけれども、やはり本制度、あるいは今後の地域づくり、仕事づくりを考える際に欠かせないのが東京一極集中というところだと思います。
この東京一極集中の進展とその是正に関しましては、地方創生以降、特に着目というものは進んでおりまして、地方創生を始め国土形成計画でも、地方移住を含む田園回帰の考え方というのがはっきり明記されて、田園回帰元年と呼ばれた経緯もございました。また、農村政策におきましても、持続的低密度社会という名称の下、これを実現するためにどんな農村政策を取るべきかというような議論なされております。また、二二年十二月のデジタル田園都市国家構想の中でも、転入転出を均衡にするというような目標が改めて掲示されるとともに、第三次国土形成計画でもこの是正というものが目指されております。ですので、この考え方というのは非常に広まってもおりますし、取組もあるというふうに認識できます。
また、それと同時に、右の方で説明しておりますけれども、都市部住民の田園回帰への関心の高まりというのも近年非常に多く見られるということでございます。赤字で示しておりますけれども、二〇二二年のふるさと回帰支援センターの移住相談件数は二年連続で過去最多というふうになっておりまして、コロナ禍の影響もちろんあったとは思うんですけれども、それが落ち着いてからも移住というところが考えられております。
また、右下に関係人口という言葉を書いておりますけれども、移住よりも更に広い関わり方の関係人口が注目を集めておりまして、これが先ほども御説明したデジタル田園都市国家構想でも地域の社会課題解決や魅力向上に貢献する存在というふうに見られております。
この関係人口というところがどのようなものなのかまとめたのが八枚目のスライドになっております。八枚目のスライドを御覧いただきますと、関係人口と一口に申しましても様々あるということでございます。
一番下は特定の地域と関わりがないと答えた方でありまして、これが関係人口ではない方なんですが、七二・九%はこういう方になっております。ただ一方で、今、ふるさと納税で地方との関わりを持つであったりというのもありますので、訪問はしたことないんですが思い入れのある地域があるという関係人口が二・六%、また、定期的、継続的に関わる地域があって、かつ訪問しているという方も一八・四%ございます。こちら三大都市圏の方へのアンケートなんですけれども、二割ぐらいの方は何らか、第二のふるさとではないですけれども、特定の地域が思い浮かぶというような状況になっております。
かつ、右の方に応援者というような表現書いておりますけれども、このように、特定の地域が思い浮かぶ方というのはやはり移住というものも考えている方が多いというのが今回アンケートの結果から分かったことでございます。
応援する地域がある方としての応援者のうち四一・八%が移住したいなというふうに考えているような状況になっておりまして、そのうち、すぐに住みたいという方も六・六%存在しております。こうした方を応援できる仕組みというのは非常に大事だと思います。また、地方から都市部に出てきて、私もその一人なんですけれども、今後Uターンしたいなという方がやはり四一・三%おりまして、こうした方は、いずれ地方で働き暮らしていくということを希望していると思いますので、こういった方への着目も含めながら施策を考えていくべきだというふうに思っております。
続けて、九枚目のスライドが移住時に係るなりわいをめぐる状況についてでございます。
今ほど申したとおり、移住、地方で暮らすということの関心は非常に高くなっているんですが、十枚目のスライド見ていただきますとお分かりになるとおり、農村移住へは三つのハードルがあるということをこれまで言われてきました。その三つというのが、左に書いてあります住まい、なりわい、コミュニティーという内容なんですけれども、後ほど先生方からも御紹介がある、住まい、暮らすところがなかなか見付からない、コミュニティーといって、なかなか溶け込むことが難しいというものに並んで、なりわいという経済的な基盤の確保が難しいということが挙がっております。このうち、私の研究領域であるなりわいが非常に課題があるというふうに言われておりまして、二〇一七年以降のアンケートで一番問題があるというふうに指摘されているところでもございます。
簡単に申し上げますと、右上から、地方移住を妨げる要因として五割弱が仕事関連を回答しているというような状況でありますし、都市部から地方にUターンする方などを中心としていると思うんですが、移住先で専門性をなかなか生かすことができないというような指摘もございます。こちらについては、今ほど、転職なき移住ということで、テレワークなども含めた移住の在り方模索されておりますけれども、かつそこで解決できるところもあると思うんですが、やはり専門性を生かす賃金が高い職がないというところも一つ指摘されているところでございます。
また、一八年の田園回帰に関するアンケートでも、生活が維持できる仕事、収入があることが最重視事項であること、また、まち・ひと・しごと創生本部のアンケートでも、移住に当たって不足していた情報何ですかと聞くと、仕事、求職の情報ということで、なかなか地域外の方が仕事を見付けるということができにくい状況になっているということが分かります。
また、今回、新型コロナウイルス感染症の第六回目の調査、昨年度ありましたけれども、こちらについても、地方移住に当たっての懸念が仕事や収入が最多というような状況になっておりまして、ここ五年、ずっと仕事のところが課題になっているということでございます。
ただ、もちろん、十一枚目のスライドで見ていますとおり、これまで仕事に着目した取組などがなかったというわけでは決してございません。そもそも、左上に書いております、地方創生が仕事づくりから着手するというような方針を示しておりましたし、農業分野の政策である基本計画においても、地域資源を活用した所得と雇用機会の確保ということで、やはり仕事に着目しております。
ただ、なぜこれまでのアンケートで仕事がないないと言い続けてこられたのかというところを私なりに考えてみますと、十一枚目のスライドの右の方にまとめておりますとおり、なかなか働く人のニーズと合致してこなかったんだろうなというところを思っております。
大きく理由三つあるんですが、一つは、地方創生も始めとしまして、東京二十三区から本社機能を地方に移転するという発想が強く見られました。そうしますと、都会で働いていた働き方とは違う働き方をしたいなという方のニーズとは一致しないということになってしまいます。
農水省の方でも企業誘致を図って農村地域工業等導入促進法の改正を行いましたけれども、これもなかなか、元々住んでいる方が働くというところにも非常にプラスの結果がもたらせていて、移住者の仕事づくりにはなかなかつながってこなかったというところでございます。
また、もう一つ、農村では、移住してくる、都会から地方に来るという人に対して新規就農してほしいというような思いが非常に強くて、新規就農者施策ばっかりを用意してしまったというところも一つあると思います。もちろん農業に関心がある方は多いんですが、それ以外の方も非常に多くなっておりますので、その人が今後と考えますと、少し手薄だった部分があるというふうに思います。
また、本日のテーマである三点目は、地域事業者の人手不足への着目が希薄だったということでございます。今、農村部に行きますと、農業者の多くが、もう人がいない、人手がいないということを多くおっしゃります。ただ一方で、移住希望者は仕事がないという話をしますので、かなりミスマッチが起きているということでございます。もちろんこれには後ほど御説明するように理由があるんですけれども、地域事業者の人手不足と、こうやって地方に来てくれる方を結び付けるという発想がこれまで少し弱かったんではないかという中で、今回、特定地域づくり事業が大きく寄与しているというところを御説明したいと思います。
その前に、十二枚目のスライドが、多業、マルチワークの考え方でございます。まず、十三枚目のスライド見ていただきたいんですけれども、こちら、多業、マルチワークという言葉が最近よく聞かれるようになってきたということをまとめております。
これは、一つの仕事のみに従事するのではなく、同時に複数の仕事に関わる働き方ということで所得源が多数あるということも強みでありますし、半農半Xというような単語も非常に聞かれるようになってきております。各先生たちも、この多業というものを、かつては多く見られたんですが、現代的な復活ができないかということを言うんですが、それをどのようにやるのかというところが今地域側に求められている課題になっているということでございまして、特定地域づくり事業が一つのヒントになっているということでございます。
十四枚目、十五枚目は、参考のスライドですのでお手すきのときに見ていただきたいんですけれども、農村は、やはり人手不足とはいえ年間を通じた仕事が少ないというところがなかなか移住者の希望とは一致しなかったということを十四枚目のスライドでまとめておりますし、十五枚目も、一次産業、なかなか天候で仕事があったりなかったりというような特質性持っていますので、働く人にとって不安定な就労先なんではないかというふうに見られてしまうこともありました。それもあってなかなか人が集まらなかったんですが、安定的な仕事づくりというところをすれば、そのギャップが若干埋まるんではないかというような発想も持つことができます。
最後の残り時間は、私の特定地域づくり事業をめぐる個人的な評価というものを述べさせていただきます。
制度については既に周知と思いますので、私から詳しく御説明しませんけれども、十七枚目に特定地域づくり事業協同組合制度の概要をまとめております。地方回帰の土台としての雇用の場が必要という発想の下、赤字で示しております、地域の産業力を結集し、年間を通じた仕事として、給与水準も確保して安定した雇用を創出するというような狙いになっております。
ポイント三つありまして、一つは、本当であれば通年の雇用ができない事業者が組み合わせて地域の担い手不足に対応するということ、②でも書いておりますけれども、それによって安定した仕事、給与水準を確保して、移住希望者を含めて就業機会として提供すること、また三点目が、こうした方が定住していただくというような流れをつくる中で、地域づくり人材というふうに制度上は呼んでおりますけれども、こうした方を迎えて地域社会を維持、活性化していくというような狙いになっております。
十八枚目のスライドが、今回の制度の参考になったというふうに聞いております海士町の事例を掲載されております。
参照でございますけれども、春夏秋冬、それぞれ一時的に人手が必要になる仕事を組み合わせて一年間の仕事をつくるというような発想になっておりまして、働く人は、この中からちょっと長く働いてみたいなとか関心を持った産業に就職していくというインターンにも近いような発想を持っているという仕組みでございます。
十九枚目のところが、本制度のこれまでの実績をまとめております。
総務省のウェブサイトから掲載しておりますけれども、組合数九十組合できておりまして、いっときよりかなり増えたなという印象です。コロナ時期とバッティングしてしまってなかなか話合いの機会が持てないというような時期があったため、当初の数年間は組合数少なかったんですが、やはり急激に増えているというような状況でございます。また、検討中という市町村も非常に多くなっております。
これまでの実績見ますと、職員年齢が非常に若いという特徴があります。四百二十一人を採用しているんですが、六割が二十代から三十代というふうになっておりますし、移住状況を見ていただくと、派遣職員の七割が地域外から来ているという方になっております。このうち、市町村内に以前から居住という方も二五%ほどいるんですが、これは地域おこし協力隊が終わってそのまま地域に暮らしたいという人も含まれておりますので、これ自体決して悪いことではなくて、そういう方たちの働く場所にもなっているということでございます。
また、退職後の動向をまとめておりますけれども、退職というのも悪い部分ばかりではなくて、組合員の企業に直接雇用されるというような割合も増えております。この企業で働いてみたかったけど本当に働きたいという思いが確定されたというような意味含まれていますし、それ以外のところで雇用されたり自ら起業するという流れにもつながっていて、転居の割合二七%あるんですが、逆に申し上げると、七〇%くらいは地域に住み続けるというところにつながっております。このとき、私の専門である農業の分野に働く方、非常に多くなっておりまして、農業の派遣先七〇%ぐらいあります。ですので、農業分野としても、本仕組み、非常にいいというような印象でございます。
最後、印象を手短に述べさせていただきます。
特定地域づくりの仕組みができて、マルチワークという働き方に魅力感じている人、非常に多いなという印象があります。また、二点目で書いておりますとおり、この制度が移住決定の決め手となったという方も非常に多くいらっしゃいまして、仕事がないという悩みが解決されると、こんなに、じゃ移住してみようという人がいるんだというところを私自身も実感しております。また、独立就農や起業を考える方も、まず準備期間として組合で働くということもあって、一旦の受皿というふうな位置付けもあると思います。
また、続いて二十二枚目のスライド見ていただきたいんですが、こちら見てみますと、地域の事業者にとっては、地域における仕事づくりというものの選択肢の一つとして見られているというような印象もありますし、まず地域に来てみて暮らしてみるという地域インターン的な発想というものにも寄与しているというふうに思います。
非常にいい面ばかり述べてきましたけれども、もちろん対応すべき課題も多くなっております。
一つは、仕事の組合せと言葉で言うのは非常に簡単なんですが、意外とその調整は難しいということでございますし、二点目に書いておりますとおり、人手不足解決手段としての意義、限界があるということでございます。派遣という仕組みを使うんですが、一般の派遣とは違うという認識がないと、低賃金で使える人だというふうな認識になってしまうので、そうではないということをやはり理解しないといけないと思います。
また、最後、二十三枚目のスライドでございますけれども、組合の運営というものを考えてみると、今、交付金、非常に付いておりますけれども、これなしで組合の運営ができそうなところはまだまだ少ないというところでございますし、計画どおりにいけばうまくいったんですが、計画どおりいっていないというところも少なからず存在しているというふうに思います。
最後、三点目、四点目が今後の課題ですけれども、三点目は、組合で働くということは非常にメリットなんですが、ここで働くことに関してノウハウを付けてもらうというようなことが大事だと思います。派遣を通じたキャリアアップというところをどのように実現していくかということなんですが、やはりノウハウが付けば、その分賃金もアップできるし、受け入れる事業者にとっても非常にうれしいということになります。ですので、この仕組みでどのようにキャリアを付けていくかということが大事だと思います。
最後、四点目は、副業希望あるいは半農半Xの方はこの特定地域づくり事業になかなか対応し切れないということもありますので、この方たちを地域で受け止めるときにどうしていくかというところは、JAグループ含め地域の対応、別途必要だと思っております。
最後、二十四枚目以降は事例の紹介でございましたので、本日は割愛させていただきますけれども、非常に農業分野に特化しているJAの取組中心にまとめております。お時間あるときに見ていただければ幸いです。
私からの御報告、以上でございました。ありがとうございました。