伊藤芳浩の発言 (国民生活・経済及び地方に関する調査会)

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○参考人(伊藤芳浩君)(手話通訳) 特別非営利活動法人インフォメーションギャップバスターの伊藤と申します。よろしくお願いいたします。(資料映写)
 私たちの団体は十四年前に設立いたしました。社会にある情報バリア、コミュニケーションバリアをなくすための様々な活動を進めてきております。
 本日は、三つのことについてお話をしたいと思います。一つ目は、聴覚障害者について、二つ目が、聴覚障害者にとってなくてはならない情報保障について、三つ目は、情報保障がなくて起こる各場面での情報格差についてお話をいたします。
 聴覚障害者は、聞こえない、聞こえにくいという直接的な障害だけではなく、見た目には分からない情報障害という二次的な障害も抱えています。これが非常に不便で困難な状況を生んでいます。この問題について詳しくお話をいたします。
 聴覚障害者の現状概観についてです。
 日本では、身体障害者手帳を持っている聴覚・言語障害者は約三十四万人。これは日本の人口の約〇・二八%になります。その中で、手話を使用している人の数は約八万から九万と言われています。
 その一方で、難聴者は日本の人口の約一〇%というデータもあります。先ほどの数字と比べて多い数字が出ています。この数字は難聴あるいは恐らく難聴だと思っている人の数です。
 ちなみに、身体障害者手帳の場合は両耳が共に七十デシベル以上という基準がありますが、これは、WHOが定義している難聴の基準、四十デシベル以上に比べますと厳しい基準となっています。このため、多くの方が福祉による支援が受けられていないという状況があります。
 また、家族、例えばCODA、コーダ、SODA、ソーダなどを含めると、かなりの人が聴覚障害に関わっている状況があります。CODAとは聞こえない親を持つ聞こえる子供のことです。そして、SODAとは聞こえない兄弟姉妹がいる聞こえる兄弟のことです。
 このような聴覚障害者は、情報に対するアクセス格差、すなわち情報バリアが存在します。そして、社会的立場が不利になるということになります。特に、手話使用者は加えて言語的なマイノリティーという立場がありますので、社会的立場がより不利になっています。言語的マイノリティーという言葉、聞き慣れないと思います。実は、日本手話は日本語とは違う文法体系を持つ別の言語ということなので、少数言語を使用する人たちという意味で言語的マイノリティーという言い方をしています。
 繰り返しになりますが、聴覚障害者がぶつかっているバリアは、聞こえないということよりも情報へのアクセスのバリアの方が大きいのです。それに加えて、コミュニケーションの取りづらさが情報格差を生む原因となっています。
 では、なぜコミュニケーションが取りづらいかというと、聴覚障害者は、手話、筆談、テキスト入力、音声、口話など、多様なコミュニケーション手段を使用しています。聴覚障害者のニーズは多岐にわたっています。それぞれのニーズに応じた対応が必要です。これがコミュニケーションを取りづらくする一因でもあります。
 また、周囲との言語の違いをカバーする通訳の確保、育成が課題となっています。そして、どのぐらい聞こえるのか、また必要とする補聴器や人工内耳などの聴覚補償機器が多様であります。ですから、それぞれのニーズに合ったサポートが必要になります。
 聞こえる人と聞こえない人では環境認識に違いがあります。聴覚障害者は視覚を主に使って環境を認識します。そのため、目に見える範囲で限られた情報しか得られず、情報の取捨選択の余地がありません。聞こえる人なら、音声を通して目に見えない情報を得て、かつ情報の取捨選択ができています。こういった情報格差は一生続きます。それが積み重なっていき、所得、健康、生活などの様々な不公正を、不公平を生み出しています。
 六ページに入ります。
 聴覚障害者に対する理解と支援、これがとても大切だと考えています。聴覚障害者は、自助だけでは解決困難で、周囲の皆さんの協力が不可欠です。本人が気が付かない情報の漏れを周囲が能動的に理解し、支援する姿勢が求められます。また、コミュニケーションは双方の歩み寄りを必要とします。そういった健康的な、失礼しました、建設的な対話がとても大切となっています。
 続いて、七ページです。
 聴覚障害に必要な支援として情報保障が挙げられます。
 八ページです。
 情報保障とは、全ての人が公平に情報を受け取れるようにすることです。聴覚障害者の場合は、手話通訳、文字通訳、そして要約筆記などの方法で実施しています。情報保障は、合理的配慮として、各企業、団体、そして機関などで提供されるべきサービスです。
 課題が二つあります。一つ目は、支援者、特に手話通訳の高齢化が課題です。二つ目は、報酬に地域差があります。そして、英語など他言語の音声通訳者との報酬の違いが大きくあります。
 続いて、九ページです。
 情報保障がカバーする情報格差についてです。
 十ページを御覧ください。
 労働、生活に必要な情報が公平に伝わらず、格差が生じています。
 参考までに、二〇二二年に国連障害者権利委員会から出された情報アクセスに関する勧告が三つありました。一つ目は、メディアに関して法的に拘束力のある情報アクセシビリティー確保のための基準策定、二つ目に、コミュニケーション手段の開発、推進のための予算の確保、そして三つ目に、日本手話の公用語化と手話通訳の訓練、確保があります。
 それを踏まえて、二つ要望がございます。一つ目に、公共調達の要件に情報アクセシビリティー対応を必須化してほしいということ、二つ目に、情報アクセシビリティー法のより実効的な施策を当事者団体と協議の上で推進していただきたいです。
 続いて、情報格差の具体的な内容についてお話しします。
 まずは、情報保障がカバーする情報格差についてです。
 高等教育機関における情報保障の現状についてです。
 多くの大学などに聴覚障害学生が在籍しており、情報保障としては主に三つの方法がなされています。一つ目に、ノートテークといって、聞こえない学生の隣に聞こえる方が座って講師の話の内容などをノートに書き写すという方法になります。そして二つ目、パソコンテーク、こちらも同様に、パソコンを使って話している内容をタイピングするという方法になります。そして三つ目は、手話通訳、こちらは一割から二割の学校で実施されているという状況になっています。
 聴覚障害学生は情報保障を合理的配慮として大学などに要望してはいるのですが、実現にはギャップがあります。いずれの手段も一〇〇%には達しておらず、改善の余地があります。
 次に、初等中等教育機関における情報保障の現状についてです。
 保護者からは、情報保障の不足が学びの上での情報量の格差を生んでいるために、学業成績への悪影響が懸念されるというお話を伺っております。また、本人のニーズ、例えば言語、コミュニケーション手段、聴力などに応じた情報保障に地域格差があり、地域の学校では学びづらいという現状があります。
 情報保障は地域によって大きな差があり、都道府県ごとに対応が分かれているという状況があります。地域の教育委員会が本人又は保護者からの要望に応じて情報保障について検討を進めているというケースが多いのですが、理解不足や財政的な理由などで十分になされておりません。小学校においては、手話通訳が一割、ノートテーク、字幕が二割しか付いておらず、不十分な状況となっています。
 また、教員の場合、特別支援教育の免許を有し、聴覚障害に関する知識を持っているという場合を除き、補聴器や人工内耳など補装具の、補装具など、また手話などのコミュニケーションに関する専門的な知識が不足しているために、実際に着任してから勉強を始めても間に合わなかったり、また、異動で教員が入れ替わったりするなどの理由で十分なサポートを提供できていないという状況があります。そのために、全教員に対して、聴覚障害の理解を深めるための教育課程を設ける必要があります。
 また、本人は、本来勉学に専念すべきところ、情報保障を求めるための心理的な負担が生じ、メンタルヘルスへの影響も起きています。こういった負担を生じさせないために、情報保障に詳しい方を各自治体にて登用するなどの対策が必要になります。教育分野を専門とするノートテーカー又は手話通訳などの育成や支援体制の強化も必要です。
 続いて、労働面の情報格差です。
 聴覚障害者の労働市場における位置としては、聞こえる人と比べて平均給与が六七%と低い状況となっています。また、ほかの障害と比べても低いことが分かっています。要因としては、仕事に必要な情報が入ってこない、周りの人とのコミュニケーションがうまくいかなくてリーダーシップを発揮するなどの活躍ができないことが挙げられます。
 また、キャリアアップの機会も不平等です。聴覚障害者の昇進経験割合は一六・一%と、他の障害者に比べて低くなっています。特に、肢体障害者の半分となっています。情報コミュニケーションのバリアがあることで、キャリアアップの機会が不平等になってしまいます。
 給料も低く、キャリアアップもできないということから、聴覚障害者の多くは転職を余儀なくされています。転職経験率は四〇・六%と高く、障害者全体の平均を上回っている状況となっています。理由としては、賃金、労働条件、職場の人間関係などが挙げられています。コミュニケーションが困難で情報が得られにくく、孤立しやすく、職場定着率が悪くなり、勤続年数が低いということにつながっています。
 続いて、二十ページです。
 こういった格差を超えるための取組として、三つ挙げられます。
 まず一つ目に、職場における合理的配慮の長期的支援です。設備的な支援は最初だけの対応でもよいのですが、手話通訳などの情報保障は永続的な支援が必要となります。障害者介助等助成金の対象期間は十年間となっており、延長が求められます。
 二つ目に、お互いの理解を促進するためのワークショップや音声認識アプリなどコミュニケーション支援ツールの導入支援が必要です。
 三つ目に、活躍の場を増やすためにも、教育と職業訓練における情報保障の支援が必要です。
 二十一ページ、災害時の情報格差についてお話しします。
 東日本大震災では、障害者の死亡率は全体の死亡率の約二倍となっていました。さらに、聴覚障害者においては約二・五倍と高い数字を記録しました。
 高い数字を記録した主な理由としては、避難情報の伝達が困難で、逃げ遅れる可能性が高かったことが挙げられます。また、避難できたとしても、避難所での情報伝達も音声アナウンスが主で、支援物資等の情報が得にくいという状況がありました。また、計画停電などの生活情報が十分に伝わらないという状況もありました。さらに、情報収集や家族や友人との連絡にも困難を伴い、心理的負担が増大していました。
 二十四ページです。
 最近起きた能登半島地震で、新たな課題として二つが挙げられています。
 一つ目に、災害に強い通信インフラの整備が必要です。電話リレーサービス又は遠隔手話通訳サービスは、いずれもインターネットを経由しており、通信インフラが命綱となっています。また、高齢者はICT活用が不得手な方もいらっしゃいますので、これをサポートする体制も必要です。
 二つ目に、避難所でのコミュニケーションのしづらさから、避難所へ行きたがらない聴覚障害者もいました。コミュニケーションのしづらさを解消するために、同じ聴覚障害者が一つの場所に集まり情報保障を十分にする、例えば手話通訳者が常駐するなどの福祉避難所の検討が必要です。
 これらを当事者とともに改善策を検討していく必要があります。
 続いて、生活面の情報格差についてです。二十六ページ。
 字幕放送は、NHKや民放キー局ではほぼ一〇〇%達成、ローカル局でも徐々に増えてきている状況です。地域や分野、それぞれで広がりを見せています。しかし、複数人が同時に会話を行う生放送番組などは目標の対象外となっており、この分野においても字幕付与を進めていく必要があります。
 また、手話放送においては、現状、全体的に横ばい状況であり、更なる普及と改善が必要です。字幕付きCMに関しては、二〇二二年四月から二〇二三年四月にかけて、一・二%から一六・九%に急増しています。大幅な改善は見られておりますが、更なる普及が必要となります。
 また、劇場の情報バリアフリーの状況については、ごく一部の劇場で字幕対応をしているのみという状況で、更なるバリアフリー化が必要です。
 また、美術館、博物館では、手話による解説やツアーなど、先進的な事例が幾つか見られています。また、コンサート分野での手話通訳の配置、交通機関での字幕対応、コンビニでもコミュニケーションボードの設置、また病院での手話通訳の配置など、ごく一部で先進的な事例が見られていますが、より一層の普及が必要となっています。
 以上で発表は終わらせていただきます。御清聴ありがとうございました。

発言情報

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発言者: 伊藤芳浩

speaker_id: 2443

日付: 2024-04-17

院: 参議院

会議名: 国民生活・経済及び地方に関する調査会