久谷一朗の発言 (資源エネルギー・持続可能社会に関する調査会)

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○参考人(久谷一朗君) 日本エネルギー経済研究所の久谷と申します。
 本日は、このような場でお話を差し上げる機会を頂戴しまして感謝しております。
 本日御説明する内容は私個人の見解でありまして、場合によっては研究所の見解とは異なる場合があるということを御承知おきください。
 資料は、まず一ページから参ります。
 日本の立ち位置の確認でございます。先ほど山本様から御説明ありましたとおり、日本が特に第一次石油危機、第二次石油危機以降どういったことをやってきたかということであります。先ほどもありましたとおり、省エネルギー、それからエネルギーミックスの多様化、それから中東依存の削減、こういったことをやってきました。ただ、そういった結果が必ずしも芳しくないというのが現状の日本かと思います。
 左側の五角形はそういった状況を示したものであります。中心にあるきれいな五角形、こちらが一九七三年の状態、赤いのが一番最近の状態というふうになります。
 どういうふうに変わってきたかというふうに申しますと、ちょっと青くしていますエネルギー効率、それから一次エネルギーの分散度、こちらは非常に円が大きくなっています。これは、努力の結果として効率が改善し、かつ多様なエネルギーを使うようになったということの成功例でございます。
 一方、そのほかはどうかといいますと、例えば自給率、一九七三年から二〇〇〇年代初頭にかけてどんどん改善しました。これは原子力それから再生可能エネルギーを使うことによって改善したんですけれども、東日本大震災の辺りに原発がほぼ止まってしまいましたので、その結果として悪化したということを示しています。それから、電源の分散化についても、原子力発電の復帰がままならないということで若干劣後しているという状況にございます。
 一方、最後の中東依存、どうかといいますと、七三年時点よりも更に悪化しているというのが現状でございます。現在の方が悪い状態になっています。
 これが現在の日本でございまして、非常に自給率がまだまだ低い、それから電源の分散化ではまだ若干の余地がある、それから中東依存についてはまだまだ改善しなければいけないということが立ち位置でございます。
 続いて、資料の二ページ目でございます。
 今あるリスクと将来のリスク、両方考えないといけないという視点でございます。
 まず申し上げたいのは、この地球温暖化問題、二〇五〇年に向けて炭素中立化を目指すということと、それからエネルギー安全保障問題、基本的には非常に親和性の高い方向性、措置でございます。左側に図示していますけれども、地球温暖化対策、何をやるかといいますと、省エネルギーをすると、それからゼロエミッションのエネルギー、具体的には再エネ、原子力を使うというふうになります。すなわち、こういったことが自給率の向上、それからエネルギーコストの引下げ、下がっていくというふうになりますので、まさに両者が相反するんではなくて双方に利益がある政策であるというふうに考えております。
 一方、その途中段階はどうなんだろうかということも十分に考える必要があるということかと思います。
 このエネルギーシステムのつくり替え、非常に長い時間が掛かります。過去の経緯見ましても、五年、十年では全く足りなくて、十年、二十年という非常に長い時間が掛かります。そうしますと、これから、今二〇二四年ですけれども、二〇五〇年にかけて、当然まだまだ化石燃料が使われていくというふうになります。
 ともすれば、二〇五〇年、炭素中立を目指して最大限に頑張っていこうということは威勢よく聞こえるんですけれども、じゃ、その途中はどうするんでしょうか。二〇三〇年、三五年、四〇年、この途中段階の化石燃料の安定供給をどうしましょうかというところがまだ十分に議論されていない、十分な道が見えないというふうに感じております。
 それから、これから様々な環境変化が起こります。これは外部の環境変化。直近ですと、ロシアの動き、それから、気になるのは中国の動き、それから、今年は米国の大統領選挙も気になります。こういった外部環境の変化、それから、エネルギーシステムをつくり替えることによって様々な安全保障のリスクも変わっていきます。そのことを踏まえながら対策をしていくべきだというふうに考えております。
 続いてが、スライドの三ページ目でございます。
 これは、過渡期のリスクにちょっとフォーカスをして書いてございます。申し上げたいのは、その十分な代替供給手段、これがあるからもう大丈夫だよというものがない限りは、今あるシステムを壊してはいけないということであります。
 右側に簡単なポンチ絵を描いているんですけれども、今現在から二〇五〇年に向けて、グレーのラインが化石燃料の需要を示しています。これはどんどん減っていきます。脱炭素をしますので化石燃料の需要は減っていくんですけれども、この減らすペースと合わせて化石燃料の供給能力を減らしていかないと危険になるということを示しています。この点線が、拙速な化石燃料供給能力の削減をやってしまった場合、ある時点から、能力が足りない、価格が上がる、あるいは供給すらできないという状況が起こり得ます。
 これは日本だけの問題ではございませんで、化石燃料供給は世界に依存していますので、世界できちんと化石燃料供給のキャパシティーを維持していかないと、途中段階で危険な目に遭うかもしれないということであります。これはまさに現在世界が経験している事象でございまして、この化石燃料供給能力の維持確保をきちんと考えないといけないということかと思います。
 左側に欧州の例を書いています。なぜ欧州が今般天然ガス供給危機に陥ったかということであります。
 一つ目は、まず集中であります。ロシアからの供給が、この戦争前は三九%ということで非常に高いシェアでした。これがまさに根本的な原因であったというふうに考えています。
 その次には、あの地域では、再生可能エネルギーをどんどん入れようということは強く強くやっていきました。その結果としまして、逆に、古い石炭火力、あるいは、国によっては原子力発電の能力を早急に減らしていくということを実際に行いました。その結果として、今回、天然ガス供給がなくなったにもかかわらず、代替のバックアップが十分にできなかったということもあったということであります。
 こうした事態が欧州で起こりまして、実際に彼らは、脱炭素は当然目指すんですけれども、その目標の修正、あるいはそのバックアップの維持、それからガスの関連の投資を増やすということをやっています。きちんとその途中段階の供給力を確保し続けないと危険な目に遭うということを端的に示しているということかと思います。
 続いて、スライドの四ページ目でございます。
 化石燃料供給のリスクであります。これは引き続きあるということをお示ししなければなりません。
 先ほど、冒頭、中東依存の話をしましたけれども、左側の棒グラフが、左から原油、LNG、一般炭についてどれぐらい輸入に依存しているかということを示しています。驚くべきことに、この原油が九五%が中東地域ということで、こういったことがあってはならないんですけれども、もし万が一ホルムズ海峡で何かあれば、この九五%の供給が止まってしまう可能性があるということを示しています。これは非常にリスキーな状態だと言わざるを得ないと思います。
 LNGと一般炭につきましては、この赤い部分が非常に小さいということが分かると思います。このアジア太平洋地域あるいは米国から輸入ができるということがありまして、石油に比べると分散が進んでいるということかと思います。
 それから、輸送経路のリスクも多くあります。現在ですと、公海で非常に活発な海賊行為が行われています。その結果として、日本の船も襲われるということが実際に起こっております。この地域がエネルギーの大動脈になっておりますので、このシーレーンの安全確保ということも引き続き極めて重要であるということであります。
 それからもう一点、この先、化石燃料の供給を確保していく上で、上流の投資、新しい資源の開発というものが必要になってくるんですけれども、従来、例えば天然ガスであれば、日本は極めて大きなバイヤーでした。世界最大のバイヤーでした。そのため、日本が買うというコミットがあることによって資源が開発できるという状況があったんですけれども、今状況が様変わりしております。
 特に、長期的に脱炭素を進める中で、より脱炭素目標が遠い中国あるいはインド、彼らは二〇六〇年、七〇年を設定していますけれども、こういった国はまだまだ長期契約で化石燃料を買っていくことができます。そのため、この先、新しい資源開発では、そういった中国、インド、あるいはほかの途上国、カーボンニュートラルのターゲットが遠い国のプレゼンスがどんどん高まっていくということかと思います。これがリスクになるのか、日本にとって阻害になるかまだ分かりませんけれども、この先、化石燃料開発におけるパワーバランスだんだん変わっていくんだというふうに考えております。
 それから次が、五番、六番、スライドの五番、六番が、化石燃料供給について若干近いところの話もしております。
 まずはLNGでございます。
 今、日本のエネルギー供給で極めて重要であるというのは間違いないと思います。図は私どもの試算を掲載しておりまして、左側が、今ある液化能力と需要のバランスを見ています。実線が需要でございまして、シナリオに応じて、多いケースが青、少ないケースがオレンジというふうになります。これに対しまして、現在ある世界のLNG供給能力はグレーのバーで示しています。今現在、世界各地で新たな追加投資がされていますので、その積み上げが期待できます。それが二〇三〇年のオレンジ色の薄いところで示しています。御覧になっていただきますと、このLNG供給能力ですね、恐らく二〇三〇年頃にかけては十分期待できるということかと思います。一方、その後、今見えている投資だけであると将来の需要には追い付かない可能性があるという分析結果でございます。
 この先、脱炭素を進める中で、世界中でこの天然ガス開発に対する逆風が吹くかもしれません。それを座視していいわけではなくて、いや、まだまだ化石燃料は使っているんだから投資が必要なんだというメッセージを発していかないと、日本のこの天然ガス供給も危うい可能性があるというふうに見ております。
 先月も米国が、非FTA国、日本も入っていますけれども、それ向けの輸出審査を一旦凍結するという発表を行いました。この先、これがどういった影響が出るか注視するのはあると思いますけれども、この米国、非常に期待が大きいんですけれども、国も場合によっては将来の供給を危うくする可能性があるというリスクがあります。
 続いて、石炭でございます。
 スライドの六ページ目なんですけれども、現在、日本がオーストラリアにどれぐらい依存しているかといいますと、石炭供給ですと七〇%ぐらいです。石炭の七〇%が豪州からやってきます。その豪州が今どういう状況かといいますと、連邦政府は現在労働党政権でございまして、非常に環境寄りの政権でございます。その結果としまして、国内で脱炭素化を進めようということで、セーフガードメカニズム、脱炭素を進めようという政策を強化しております。この政策は当然、国内の石炭産業、それからLNG産業にも影響してきます。その結果としまして、将来、このオーストラリア、日本が極めて頼りにしているLNG輸出、石炭輸出について何らかの影響が出るのではないかという懸念がございます。
 それから、インドネシアも日本にとって重要な相手国ですけれども、この国も国内の需要が非常に多くなっていますので、国内の石炭需要が多くなった場合には輸出はできないということが起こり得ます。実際に、二二年に一度、インドネシア政府は、これ以上は石炭は輸出できないということで一旦凍結をしました。
 そういったことが実際に起こり得ますので、日本の石炭供給はこの豪州、インドネシアといえども必ずしも万全ではないということを踏まえておくべきかというふうに思います。
 それから、続いてスライドの七番目でございます。国内供給網のリスクであります。
 今現在もあの能登半島の地震で多くの方が苦しんでいらっしゃいますけれども、このエネルギー供給網の自然災害による破断が頻発しているということかと思います。今回の震災でも非常に大きな被害が出ていますけれども、これを回復するのはなかなか容易ではないということかと思います。この先も、気象の影響か地震か分かりませんけれども、こういったものは常に発生し得るということなので、それに備えていくということが非常に重要になってきます。
 それからもう一点、国内供給網では、右側に示していますそのエネルギーインフラの経済性の低下という問題でございます。
 残念ながら日本の人口は減少しております。それから、この先、省エネルギーがどんどん進みますので需要も減っていきます。そうすると、このエネルギーを供給するインフラの経済性がどんどん悪化していくということが起こると思います。
 最も端的な例が石油供給でございまして、この折れ線グラフは日本のガソリンスタンドの数の変化を示しています。最盛期には全国で六万か所あったんですけれども、現在ではもう半分以下になっています。特に、生活の足として自動車が欠かせない地方部においてガソリンスタンドが極めて大きく減っていると。場所によっては、ガソリンを供給するだけのために隣町まで行かないといけないというところもございます。
 こういったことが、恐らくほかの電力、ガスのインフラ、今もう既に水道インフラでは顕在化していますけれども、そういったことがどんどん起こっていくんだというふうに思います。この先、エネルギーの供給インフラ、国内のインフラをどうやって維持していくのか、これを真剣に考えないといけないというふうに考えております。
 それから、スライドの八ページ目でございます。こちらは国内の危機対応能力の維持強化という観点です。
 先ほど山本様からもお話ありましたとおり、国内で柔軟性のあるエネルギー供給力は電力であります。例えば、自動車でガソリンがなくなったときに、ほかにもう代替するものがございません。私も車を持っていますけれども、ガソリン自動車を突然電気に変えることはできないんですね。
 ところが、発電であれば、石炭火力、ガス火力、原子力、再エネ、いろいろございますので、ガスが駄目であれば、じゃ、石炭と原子力頑張ろう、原子力で駄目であれば石炭とガスを頑張ろうということで、ほかでバックアップをしやすいシステムにあります。そのため、特にこの電力においてバックアップをきちんと維持しておく、代替可能性を残しておくということが非常に重要になるというふうに思っています。
 それから、もう一点が石油でございます。
 だんだん先しぼみになっていく需要はもう間違いないかもしれませんけれども、この石油の利便性、それから貯蔵のしやすさを考えますと、石油の備蓄というのは非常に重要です。石炭、天然ガスはなかなか貯蔵が難しいです。LNGの場合ですと、マイナス二百度近い低温にしなければなりません。それから、電気もバッテリーがありますけれども、じゃ、例えば東京都全部の電気を賄うために一体どれだけのバッテリーが必要かということを考えると、今すぐにはなかなか現実的でないということかと思います。
 あとは、この石油の重要性。戦争に使うエネルギーということで、国防という観点からもこの石油極めて重要になってきます。この石油備蓄をきちんと維持しておくということも極めて重要だというふうに考えております。
 続いて、スライドの九ページ目が出ます。電力とサイバーのセキュリティーです。
 この先、脱炭素をする中で中軸となる戦略は、なるべく需要を電気に変えていき、電気をクリーンにしていくという戦略になります。そうしますと、様々な見通しあるんですけれども、これは二〇二一年時点で最終消費に占める電気が二九%だったんですけれども、それは恐らく、間違いなくどんどん増えていきます。
 これはパーセンテージで示していますけれども、実数も実際に増えていきます。エネルギー全体が省エネルギーで減っていく中で、電力だけは少なくとも横ばい、あるいは増えていくというふうになります。そのため、この電力のセキュリティー、安定供給はどうするんだということが非常に重要になってくると。かつ、あらゆるものをインターネットでつないでコントロールしていくということが浸透しますので、サイバーのセキュリティー、これが非常に重要になってきます。
 サイバーについてはまだ実績余りないんですけれども、右側にちょっと例を示しています。ウクライナそれからアメリカでは、実際にサイバー攻撃があってエネルギーインフラが止まってしまうということが起こりました。こういったことが日本でも起こり得ますので、このサイバー対策、きちんとエネルギーセクターについてもやっていくということが必要になります。
 次が、十ページ目が技術のセキュリティーであります。
 これ、先ほどもお話ありましたので簡単に行きますけれども、様々なテクノロジー、この先使っていきます。例示していますのは、太陽光、それから風力、蓄電池ですけども、こういった分野でやはり中国の優勢が非常に顕著になっているという事実がございます。
 そうしますと、経済安全保障という観点から、供給国、テクノロジーの供給国の多様化を図っていくということも大事な視点かと考えております。
 一方、この中国の巨大マーケット、非常に有益でもあります。我々に安い、良い製品をどんどん供給してくれる国でもありますので、そういった意味から、中国を完全に排除するというよりも、新たな別の供給源も用意しておくということかというふうに考えております。
 それから、重要鉱物についても、先ほどの山本様の御説明と同じでございます。様々なプロセスが中国に集中するということが見られます。この点からは、研究開発、省資源、それから代替資源、あるいはリサイクル、こういった技術をきちんと開発していくということと、あとは世界全体で公正な貿易が行える環境を維持していくということが重要になってきます。
 一番最後、スライドの十二でございます。エネルギー安全保障と市場と書いています。
 日本のエネルギー供給を担っているのは民間企業であります。民間企業なので、基本的には経済原理、市場原理で活動しております。多くの場合は、その経済原理と日本のエネルギー安全保障、整合するんですけれども、場合によってはそうはならないという視点でございます。
 整合するポイントは、左の下側に書いていますけれども、価格が変化することによって適切な投資が自動的にされていくというふうになります。値段が上がれば供給力が増え、値段が下がれば供給力が減るという自動的な調整機能が働きます。それから、より経済的な方法が選択されていくというところもメリットかと思います。
 一方、エネルギー安全保障の観点からしますと、安いエネルギーあるいは安い手段ばっかりに集中してしまって分散化がなかなかできないということが起こり得ます。それから、コスト削減ということが民間の立場からすれば重要になってきますので、余剰を持つということがなかなかできません。バックアップを持つということが通常の経営の中ではなかなかやりづらいというふうになります。それから、当然、不採算な事業はどんどん切っていくというふうになります。これ、先ほど申しましたガソリンの例ですけれども、ガソリンスタンドはもうもうからない、じゃ、もう廃業しようということが起こってしまうわけです。これを回避するためには、何らかの政策の関与、政治の決断、こういったものが必要になってくるんだというふうに思います。
 以上であります。

発言情報

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発言者: 久谷一朗

speaker_id: 18219

日付: 2024-02-07

院: 参議院

会議名: 資源エネルギー・持続可能社会に関する調査会